異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
678 / 753

愛しき檻

しおりを挟む
会社帰りの電車で、田中一郎は心臓発作で息を引き取った。いや、息を引き取ろうとした。意識が途切れる直前、眩い光と優しい声が聞こえたのを覚えている。

「田中一郎さんですね?あなたは、特別な存在です」

次に目が覚めると、そこは森の中だった。木々は高く、空は青く、鳥のさえずりが耳に心地よい。前世の記憶は鮮明に残っていた。会社での嫌な上司、毎日の残業、そして、あの不味いインスタントラーメン。すべてが、まるで昨日の出来事のようにリアルだった。

神様らしき存在から説明を受けた。どうやら彼は、異世界に転生させられたらしい。そして、与えられたのは、チート級の能力と、一つだけ願いを叶える権利。田中一郎は迷わず、自分の望みを口にした。「可愛いヤンデレの女の子と暮らしたい!」

前世で培った、ある意味特殊な趣味。それは、彼の転生後の生活を大きく変えることになる。

転生した彼は、驚くほどイケメンになっていた。鏡に映る自分を見て、田中一郎、いや、今は「レオ」と名乗る彼は、ニヤリと笑った。前世の冴えない姿とはまるで別人。これは、チート級の能力の一つ、らしい。

そして、レオは運命の出会いを果たす。それは、森の中で出会った、一人の少女だった。彼女は、真っ白な肌に、漆黒の髪、そして、くりくりとした大きな瞳をしていた。名前は、リリア。

リリアは、レオのことを「主人」と呼び、彼に絶対的な忠誠を誓った。彼女の愛情表現は、少し…いや、かなり過激だった。レオの言うことには何でも従い、少しでも他の女性に目を向けようものなら、容赦なく牙を剥く。まさに、完璧なヤンデレ。レオは、前世からの願望が叶ったことに、心底満足していた。

しかし、リリアの忠誠心は、時に残酷なまでに豹変した。森で出会った他の生き物たちは、リリアによって容赦なく殺された。レオに危害を加えようとした者、レオに近づきすぎたと判断した者、すべてが、リリアの鋭い刃の下に葬られた。レオは、最初は戸惑ったが、すぐに慣れた。むしろ、その残酷さこそが、リリアの魅力の一つだと感じるようになっていった。

レオは、リリアと共に、森の中に小さな家を建てた。リリアは、家事や料理も完璧にこなす。レオは、彼女の作った料理を頬張りながら、前世の不味いインスタントラーメンを思い出していた。

ある日、レオは森の中で、不思議な人形を見つけた。それは、まるで人間そっくりで、美しく、そして、どこか寂しげな表情をしていた。リリアは、その人形を「妹」と呼び、大切に抱きしめた。

リリアは、人形に話しかけ、人形と遊んだ。その姿は、まるで、彼女自身が、かつて、人形のように扱われていたかのような錯覚を与えた。

レオは、リリアの過去について、何も知らなかった。しかし、彼女の残酷な一面と、その裏に隠された悲しみを感じ取っていた。

レオは、リリアと、そして、人形の妹と共に、森の中で暮らしていく。それは、決して平和な生活ではなかった。しかし、レオは、この異世界での生活に、満足していた。

彼のチート能力と、ヤンデレの愛、そして、謎めいた人形。レオの異世界生活は、まだまだ続く。それは、彼の願望が叶った、愛しき檻のようなものだった。しかし、その檻の中で、レオは、自分自身を見つめ直し、新たな自分を見つけ出すことになるのかもしれない。

ある日、リリアはレオに新しい人形をプレゼントした。それは、以前の人形よりもさらに精巧で、まるで本物の人間のように見えた。しかし、その瞳は、以前の人形と違い、冷たく、空っぽだった。

レオは、その人形に、何かを感じた。それは、リリアの過去、そして、彼女自身の心の闇を映し出しているようだった。レオは、リリアを愛していた。しかし、同時に、彼女の闇を理解し、受け入れる覚悟ができていたのだろうか?

レオの異世界生活は、これからも、予想だにしない展開を続けるだろう。それは、彼自身の選択、そして、リリアの愛、そして、人形たちの秘密が絡み合い、複雑に、そして、美しく織りなされていく物語だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...