異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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辺境の魔導帝国

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辺境の冷たい風が、ヤマトの頬を撫でた。吹き荒れる風は、彼の心境を映すかのようだった。たった数日前まで、彼は勇者候補として、人々の注目を浴びていた。しかし今は、罪人送りの地、北端魔境に追放された身だ。

全ては、勇者の座を射止めたジャスティスによる仕業だった。ジャスティスの目には、ヤマトの固有スキル『献身』は、ダメージを半分肩代わりするだけの無能な能力にしか映らなかったのだろう。勇者選抜レースで勝利した直後、ジャスティスはヤマトを容赦なく解雇し、国王に働きかけて追放させた。

「役に立たない奴は邪魔だ!」

ジャスティスの冷酷な言葉が、今もヤマトの耳に響く。確かに、ヤマトは戦闘能力は低かった。だが、彼の『献身』は、パーティーにとって大きな支えになっていたはずだ。その事実を、ジャスティスは理解しようとしなかった。

北端魔境は、魔物の巣窟だった。だが、ヤマトは生き延びた。彼の『献身』は、想像以上に万能だったのだ。瀕死の魔物を回復させることで、素材を集め、武器や防具を作り、食料を得た。そして、手に入れた神器『大剣者』は、彼の戦闘能力を飛躍的に向上させた。

ある日、ヤマトは森の中で、一人の少女と出会った。彼女は、エルフの亜人だった。名前はリリア。勇者パーティーのサポート部隊に所属していたが、ジャスティスの横暴に嫌気がさし、逃げ出してきたという。

それからしばらくして、もう一人、ヤマトの前に現れた。それは、勇者選定機構のエリートスカウター、レイナだった。彼女は、ヤマトの潜在能力を見抜き、彼をスカウトしに来たのだ。

最初は戸惑ったヤマトだが、リリアとレイナを受け入れることにした。三人で協力し、家を建て、畑を耕し、穏やかな日々を送った。ヤマトは、かつての栄光など忘れて、この辺境でのスローライフに満足していた。

しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。

勇者パーティーは、迷宮での訓練討伐に次々と失敗するようになった。ダメージを肩代わりしてくれるヤマトがいないことが、どれだけ大きなハンデになっているか、ようやくジャスティスは気づいたのだ。

ジャスティスは、国王にヤマトの強制送還を依頼した。そして、重装備の兵士を率いて、北端魔境にやってきた。

「ヤマト!今すぐ王都に戻れ!」

ジャスティスの怒号が、辺境の森に響き渡る。しかし、ヤマトは動かなかった。

「もう、遅いよ」

ヤマトは、穏やかな表情で答えた。彼の周りには、リリアとレイナ、そして、彼を慕う多くの魔物たちがいた。北端魔境は、もはやヤマトの支配地となっていたのだ。

彼は、ここ北端魔境で、新たな国を築き始めていた。魔物たちと共存し、独自の文化を育み、独自の経済圏を形成していた。

ジャスティスの兵士たちは、ヤマトの圧倒的な力の前になすすべもなく敗走した。ヤマトは、彼らを殺すことはしなかった。ただ、二度と戻ってくるな、と警告しただけだ。

ジャスティスは、ヤマトの力を改めて知ることになる。そして、ヤマトが追放されたことで失ったものは、金や地位だけではないことに気づいた。

ヤマトは、辺境で、真の強さと、真の幸せを手に入れたのだ。彼の物語は、ただの成り上がり譚ではない。それは、辺境の小さな村から、やがては巨大な帝国へと成長していく、希望の物語だった。

そして、その帝国は、後に「光の大聖者と豊穣の魔導帝国」と呼ばれ、東方の奇跡として語り継がれることになる。それは、神に愛された男、ヤマトの物語だった。
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