異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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黒鳥の仮面舞踏会

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四歳の夏、砂浜で貝殻拾いをしていたカイザーは、突然、記憶が蘇った。乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと。しかも、ゲームの攻略対象である俺様王子と、悪役令嬢の兄という、超絶モブキャラとして転生していたのだ。

「詰んだ…」

小さく呟いたカイザーは、ゲームの結末を思い出していた。悪役令嬢ルートでは、兄である彼は、妹の悪行の尻拭いをさせられ、最後は悲惨な最期を迎える。それを回避するためには、妹を改心させ、攻略対象の王子と仲良くさせなければならない。

しかし、現実は甘くなかった。彼はゲームで描かれていたような、無能で頼りない兄ではなかった。生まれつき美貌に恵まれ、努力によって剣術や魔法もそれなりにこなせるようになった。さらに、莫大な家産も引き継いでいた。まさに、モブキャラの壁をぶち破るための、完璧なスペックを備えていたのだ。

それからカイザーは、策略と愛で妹をコントロールすることにした。妹のわがままを叶え、時には厳しく叱り、時には優しく抱きしめ、完璧な兄を演じた。しかし、それはあくまで表面上の演技。内心では、「うっわ、またこのわがままぶり!でも、可愛いから許す!」と、シスコン全開の独り言が止まらなかった。

王子との関係も良好だった。最初は警戒されていたものの、カイザーの圧倒的な美貌と、知略、そして意外な料理の腕前(実はゲームの攻略情報で覚えたもの)で、あっという間に王子と親友になった。王子はカイザーを「頼れる兄貴」として、心から慕っていた。

「カイザー、今日も料理をありがとう!君の腕前は、王宮の料理長を凌駕するよ!」

王子は、満面の笑みでそう言った。カイザーは内心、「攻略対象キャラをここまで懐柔できるとは…俺、天才かも?」と、鼻高々だった。

ある日、カイザーは不思議な能力に気づいた。それは、周囲の人々の感情を、ある程度操れる力だった。最初は戸惑ったが、すぐにその能力を悪役令嬢ルート阻止に利用することにした。妹の感情をコントロールし、悪事を起こさないように誘導するのだ。

「ふふふ…これで完璧だ!悪役令嬢ルート、回避成功!」

カイザーは、得意満面だった。しかし、彼の能力は、予想外の展開を招くことになる。彼の美貌と謎めいた能力は、王宮や周辺の人々を魅了し、カイザーはいつの間にか、隠された超絶美形キャラとして、噂されるようになった。

「あのカイザー様は、もしかして、魔王の隠し子なのでは…?」

「いやいや、妖精王の血を引いているに違いない!」

様々な憶測が飛び交う中、カイザーは、自分の正体がバレないように、ますます完璧な兄を演じ続けた。しかし、彼の周囲には、彼を慕う人々がどんどん増えていった。妹はもちろん、王子、王宮の侍女たち、さらには、周辺国の王子や、なんと魔王までが、カイザーに好意を抱くようになった。

「これは…まさか、総愛されエンド…?」

カイザーは、予想外の展開に驚きつつも、内心では大喜びだった。彼は、モブキャラから、愛されキャラへと華麗なる転身を遂げたのだ。鉄壁の微笑みの裏で、心の中では常にテンションMAXの独り言とツッコミが炸裂していたが、それは彼だけの秘密だった。

そして、最終的にカイザーは、妹を改心させ、王子と仲良くさせ、そして、様々な人々から愛される、ハッピーエンドを迎えることとなる。彼の周囲には、彼を慕い、彼を支える人々が集まり、彼の黒鳥の仮面の下に隠された、真の優しさと強さが、世界を照らし続けた。  全ては、四歳の夏、砂浜で始まった、乙女ゲームからの転生劇だったのだ。
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