異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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ふわふわ悪役令嬢のリッテと、少しズレた世界の王子様

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真知子、いや、リッテはため息をついた。鏡に映る、金髪碧眼の美少女。侯爵令嬢として生まれた彼女は、乙女ゲーム『アイリスの涙』の世界に転生していた。はずだった。

問題は、このゲームの設定がめちゃくちゃだったことだ。そもそも『アイリスの涙』は、発売直後に「設定がガバガバ」と酷評され、瞬く間に廃れてしまった、いわば幻のゲームだった。だから、リッテはゲームの知識をほとんど役に立てられない。

例えば、ヒロインのアイリスは、容姿端麗、魔法の才能抜群、おまけに性格も完璧。まさに理想のヒロイン像。だが、この世界には、何故か『アイリスの涙』のコミカライズ版から飛び出してきたような、ちょっとデフォルメされたキャラがうろちょろしている。

「あの、あの…あの緑色の髪の毛の人、誰ですか?」

リッテは、授業中に隣に座った、緑色の髪の毛に大きな目をした少女に尋ねた。その少女は、まるでアニメキャラのように大きく目をぱちくりさせて、

「あたし?あたしは、ミントだよ!…って、なんでそんなこと聞くの?」

と返答した。ミント?そんなキャラ、ゲームにはいなかった。いや、コミカライズ版にもいなかったはずだ。

そして、第一王子であるライオネルは、ゲームの設定通り、完璧な王子様だった。だが、第二王子、リッテの推しであるエドワードは、ゲームの設定とは全く違う、妙に天然で、どこか抜けている青年だった。

「リッテ様、今日はお月見ですね!…って、あれ?お月様、今日は三日月ですね…あれれ?」

エドワードは、満月を期待して用意した、巨大な月見団子を前に、困惑していた。

リッテは、悪役令嬢として振舞おうとした。ヒロインとライオネルをくっつけるため、策略を巡らした。だが、彼女の策略はことごとく失敗する。何故なら、彼女は前世の真知子の思考回路を完全に捨てきれていないからだ。

例えば、ライオネルに毒を盛ろうとした時、間違えて彼に超高級チョコレートをプレゼントしてしまった。

「これは…リッテ様からの贈り物ですか?…なんて贅沢な!」

ライオネルは、目を輝かせながらチョコレートを食べた。毒殺計画は、あっけなく失敗した。

そして、ヒロインのアイリスは、予想外の行動に出た。彼女は、ライオネルよりもエドワードに惹かれている様子だった。

「王子様…って、エドワード様のことですよね?ライオネル王子は、ちょっと堅苦しいですもの…」

アイリスは、そう言ってエドワードに寄り添った。リッテは、呆然とするしかなかった。

リッテは、この世界が、ゲームの設定とは全く違う、独自のルールで動いていることに気づいた。これは、もはや『アイリスの涙』の世界ではない。別の、もっと奇妙で、自由な世界だった。

彼女は、悪役令嬢の役割を諦めた。そして、自分のペースで、この世界を生きていくことにした。

エドワードと、妙に現実離れしたキャラクター達と、そして、少しズレた世界で、リッテは、予想外の幸せを見つけた。

ある日、ミントが、

「リッテ、明日、みんなでピクニックしようよ!…あれ?もしかして、魔法で空飛ぶやつ、作れる?」

と、提案してきた。空飛ぶ魔法?そんな設定は、ゲームにはなかった。だが、リッテは、不思議と抵抗を感じなかった。

この世界では、何でもありなのだ。

彼女は、笑顔で答えた。

「いいわよ!魔法で空飛ぶピクニック、楽しみね!」

リッテは、魔法の杖を振った。すると、魔法陣が出現し、彼女と仲間たちは、空へと舞い上がった。

下には、広大な森が広がっていた。風を感じ、太陽の光を浴びながら、彼らは自由に空を飛んだ。

この世界は、確かに、ガバガバだった。だが、そのガバガバさが、リッテに、本当の幸せを与えてくれたのだ。

彼女は、もう悪役令嬢ではない。ただ、この少しズレた世界を、自由に生きている一人の少女だった。そして、その幸せは、本物の、キラキラと輝くものだった。
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