異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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雪ノ宮の灯火

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鼬の燈華(いたちのとうか)は、もふもふの尻尾を揺らしながら、港町・雪ノ宮の狭い路地を駆け抜けた。  夕暮れの空は、燃えるような朱色に染まっていた。  今日の仕事は、いつものように魚屋からこぼれ落ちた魚を拾うこと。  燈華は、人間に化けることができない獣の妖怪、イタチの姿をしていたのだ。  だから、人間社会で暮らすのは、いつも少しばかり大変だった。

突然、凄まじい悲鳴が聞こえてきた。  振り返ると、巨大な影が民家を破壊し、人々が逃げ惑っている。  それは、噂でしか聞いていなかった、凶暴な妖怪・山姥(やまうば)だった。  山姥は、鋭い爪で家をひっかき、怒号をあげていた。

恐怖に慄いた燈華は、逃げ出した人波に巻き込まれ、気づけば運河に突き落とされていた。  冷たい水に沈みかけたその時、美しい青年が燈華の手を掴んだ。  青年の顔は、まるで月光に照らされた真珠のように輝いていた。

「大丈夫か?」

青年は、燈華を岸に引き上げた。  水から上がった燈華は、息を切らしながら青年を見つめた。  青年は、美しい顔立ちをしていたが、その手には、奇妙な鱗のようなものがついていた。  そして、彼の足は、魚の尾のようにヒレ状になっていた。  人魚……?

「……あなたは?」

燈華が尋ねると、青年は少し戸惑った表情で言った。

「雪成(ゆきなり)と申す。  ……助けてくれてありがとう」

雪成は、半人半魚の姿をしていた。  彼は、雪ノ宮の有力者の御曹司で、その正体は人魚と人間の混血だった。  燈華は、命の恩人である雪成に、不思議な魅力を感じた。  彼の優しさ、そして、その異形の姿に。

それからというもの、燈華は雪成に会うため、彼の屋敷の近くをうろつくようになった。  雪成は、燈華を気にかけてくれ、こっそりと魚を分けてくれたり、話を聞いてくれたりした。  燈華は、雪成と話すのがとても楽しかった。  雪成は、燈華のイタチの姿を嫌悪することなく、むしろ、その可愛らしさに目を細めていた。

ある日、雪成は燈華に、雪ノ宮の古い言い伝えを話してくれた。  それは、人魚が、この港町に呪いをかけたという話だった。  その呪いは、人間の心を蝕み、妖怪を凶暴化させるというのだ。  そして、その呪いを解くには、人魚とイタチの血が必要だと。

燈華は、驚いた。  自分の血が、この町の救世主になるかもしれないなんて。  しかし、同時に、不安も感じた。  自分の血を、人間のために捧げるなんて、本当に良いのだろうか?

その夜、山姥は再び現れた。  今回は、雪成の屋敷を襲撃してきたのだ。  雪成は、山姥と戦い、傷を負った。  燈華は、迷わず雪成の元に駆けつけた。

「大丈夫ですか!?」

燈華は、雪成を抱きしめ、彼の傷口を舐めた。  イタチの唾液には、不思議な治癒力があったのだ。  雪成は、燈華の優しさに涙を浮かべた。

そして、燈華は決意した。  自分の血を捧げ、この町を救うために。  雪成と共に、山姥と対峙し、呪いを解くために。  冷たい海の底からも、灯火はきっと見えるでしょう。  暗い林の中からも、雪原に灯る明かりはよく見えるのですから。

その戦いは長く、激しかった。  しかし、燈華と雪成は、互いに支え合い、力を合わせて戦った。  最後に、燈華は自身の血液を捧げ、呪いを解き放った。  山姥は消え去り、雪ノ宮の町は、再び平和を取り戻した。

戦い後、雪成は燈華に言った。

「燈華、君と一緒で本当に良かった」

燈華は、雪成の温かい言葉に、幸せを感じた。  人魚とイタチ、異なる種族の二人は、互いに愛し合い、雪ノ宮の灯火として、これからも共に生きていくことを誓った。  冷たい海、そして、温かい灯火。  二人の物語は、これからも続いていく。
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