月明かりはスポットライト

夜宵

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光冠

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地面を叩きつけるような雨の音で
輝夜は目を覚ます。




雨の音を聞いているとよく眠れる。
 

最近眠れない夜が続いていたので

自然と眠りにつけて心地いい。



寝ぼけながら天井を見ていると

スマホが鳴った。



陽叶からだ。





『今日はよく眠れるね。雨の音は
リラックス効果があるんだよ。お仕事まで
ゆっくり、おやすみなさい』






陽叶と出会って二月が経とうとしていた。


 

雨の日が続きあの森で会うことが出来ず

スマホで連絡を取り合う日々。





輝夜は




『ありがとう。よく眠れたよ。
しばらく雨が続きそうだから、
どこかで会おうか。店探しておく。
おやすみ』



と返信し、再び眠りについた。






それから3日後


駅前で待ち合わせし、

輝夜が予約した店に二人で向かっていた。





陽叶「何食べよっかなー、今日は
肉の気分だな!」



輝夜「俺は魚かな。どっちもある店で
よかったよ」







そんな他愛もない会話をしていると


いきなり








「すみません!週刊日昇の者ですが」と

声をかけられた。





二人は突然の事に驚き、

思わず立ち止まった。




陽叶が少し顔を赤くさせ、

笑いながら



陽叶「俺達そういう関係じゃないですよ!」




と言うと、記者は



記者「そりゃそうでしょう。
見ればわかりますよ」


と被せ気味に答え、

輝夜にボイスレコーダーを向けた。





二人は言葉は交わさなかったが

お互い何故か記者からの言葉が
胸に刺さり、不思議な感覚を覚えた。




そんな二人をよそに、

記者は写真を見せながら話し始めた。





記者「輝夜さん、先週会ってたこの方。
綺麗でしたねー。交際相手ですか?」





輝夜は何のことかと写真を受け取ると

そこに写っていたのは母親だった。





輝夜「いや、これ…母親です」




記者「そんなベタな嘘はやめましょうよー!
せめて妹でしょ。いやー綺麗な方でしたね」




輝夜「本当です。今はプライベートなんで
困りますよ、後は事務所に連絡してください」




記者に向かってそう言うと

陽叶の腕を掴み、店まで全力で走った。





陽叶は掴まれた腕を見ながら

ひたすら輝夜について行く。




全力で走っているからなのか


心臓は高鳴り、

身体中が熱くなっていた。




走りながら少しずつ腕をずらし、

輝夜の手をぎゅっと繋いだ。







店の前につくとゆっくり手を離し、


二人同時に下を向いて息を整えた。



息が整ったころ、互いに目を見て

数秒して、大笑いし合った。





輝夜「こんなに走ったのいつぶりだろ。
疲れたー!」




陽叶「俺だって!中学生ぶりかも…
本当に疲れた。もー、輝夜さんのせいで
散々だよ。今日はご馳走してよね」




輝夜「悪かったよ、ごめん。
元々そのつもりだったし。
さ、気を取り直して飯食うぞ」






輝夜は陽叶の肩に手を置き、

そのまま自分の元へ引き寄せるようにして
店のドアを開けた。





椅子に座るなり、疲れたー!と背もたれに
寄りかかりながらメニューを見た。


ベルを押し、店員へ互いに注文をし終えた時


陽叶が恐る恐る口を開いた。






陽叶「あの…さっきの写真、あれ本当に
お母さん?綺麗な人だったけど…
もしかして彼女さんとか?」






輝夜「本当に母親だよ。そんなくだらない
嘘はつかない。それに、もし相手がいたら
俺は隠したりしない」





陽叶は返事を聞いてホッとした自分に
違和感を覚えながらも、
水を飲んで冷静になった。





陽叶「お母さん、輝夜さんの腕を
掴んでるし何か怒ってる感じだったね」




輝夜「ああ…俺ずっと、母親に
毎月給料を集られてたんだ。
でももういいかなって。ばあちゃんの
介護施設の費用も俺から払うようにするから、
もうあんたには何も払わないし、
会わないって言ったんだ。」


 

陽叶「それで怒ってるんだ…」





輝夜「事務所の外で待ち伏せしてた
みたいでさ。誰が産んだおかげで…とか
色々言ってたけど、はっきり縁を切るって
伝えたよ。」






陽叶「そうだったんだ…大変だったね。
俺には話して欲しかったよ」





輝夜「ごめん、今日直接話そうと
思ってたんだ。」







陽叶「あ、そっか。だからご飯誘って
くれたんだね。俺、ちゃんと頼れる存在に
なれてるみたいで嬉しいよ」





嬉しそうに陽叶が笑った時

店員がお待たせいたしました、と

料理を運んできた。






陽叶は子供のように大きい声で


『いただきます!』と言い、
夢中になって食べ始める。






輝夜はそんな無邪気な陽叶を見て
 

くすっと優しく笑いながら

 『ゆっくり食べろよ』と言い、

自分の料理に手を付けた。






食べ終えて紅茶を飲んでいると


陽叶が心配そうに語りかけた。



陽叶「ねぇ輝夜さん、俺どうしても
お母さんがこのまま引き下がるとは
思えなくて。もし記者に撮られた日に
さっきみたくお母さんにも話を
聞いてたらさ…」




そう話している途中に

輝夜のスマホが鳴った。




輝夜「ごめん、マネージャーから電話。
ちょっと待ってて」



片手でごめんのポーズをしながら
電話に出て外に向かう輝夜を、

陽叶は不安そうな顔で目で追っていた。




10分程して戻ってきた輝夜が、
頭を掻きながら話し始める。




輝夜「陽叶の読み通りだ。
来週出る記事に母親がインタビューを
受けた内容が載るらしい。
俺が暴力振ってたとか酒乱だとか
嘘だらけだよ。薄情な息子だって世間を
味方につけたいんだろうな」






陽叶「何だか嫌な予感がしたんだ…
ねえ輝夜さん、この際だから全部
話してみない?精神的な負担が大きいから
無理はしてほしくないけど、
そうでもしないとずっとお母さんと
離れられないんじゃないかなって」







輝夜「…デタラメ言われてる以上
反論するしかないしな。黙ってたら
それが真実になっちまうし。」








陽叶「うん…それに、全部話すことによって
輝夜さんが楽になるんじゃないかなって。
最近不眠だったりメンタルの不調が
出てるし。造られた自分を演じるのも
身体が限界なんじゃない?
輝夜さんにはもう、ありのままに
生きてほしいから」








輝夜「それなんだけど、丁度事務所とも
話していて、少し休養期間を設けて欲しいと
お願いしたばかりなんだ。
いいタイミングになるかもな。
色々心配かけてごめん。俺、記者会見するよ」






その後事務所と話し合いをして


週刊誌に記事が出る翌日の夜、

記者会見を受けることになった。





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