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陽叶と音信不通になってからひと月が経ち、
輝夜は復帰ライブに向けて動き出していた。
メンバーとダンスレッスンをしたり
ライブの打ち合わせをする毎日だが、
頭の片隅には常に陽叶がいた。
毎日1件はメッセージを送っている。
今日は
『陽叶、ちゃんと飯食べてるか?
寒くなってきたから風邪ひかないようにな』
と送信した。
輝夜は自分で送った文を見つめ、
ページを遡り
「なんでだよ……」と呟く
あの日から【既読】にならなくなった理由を
知りたくて、天を仰いだ。
同時刻、
部屋でパソコンと向き合っている陽叶の
スマホが鳴った。
陽叶は既読が付かないように輝夜からの
メッセージを見て、目を潤ませた。
陽叶「輝夜さん…ごめんね。会いたいよ…」
そう嘆き、顔を手で被う。
陽叶「でももう会ったらだめなんだ…
あの女が母さんといる限り、輝夜さんに
何をするかわからないから…」
陽叶はパソコンの検索ワードに
【占い師 雷架(らいか)】と入力した。
検索結果に出てきた写真には
あの日の派手な魔女のような女が
笑顔で写っていた。
陽叶は裕福な家庭で生まれ、何不自由なく
育つ環境にいた。
母は財閥の令嬢だ。
母は祖父の会社へ定期的に荷物を
配達しに来ていた父を見て一目惚れし、
祖父の力で半ば強引に結婚した。
その時父は両想いの相手がいたが
祖母によって勤務先や親族など全てに
金の力で根回しされ、
諦めるしかなかった。
父は金銭的な心配がなくなり
一生お金に困らない生活を約束されても
何も満たされず、
好きだった人を思い続けていた。
母は大好きな父との子供は欲しくて
毎日のように子作りを義務と課した。
母の強い気持ちとは裏腹に、
一向に子供を授かる事が出来なかった。
結婚して4年が経っていた。
外で楽しそうに走り回る子供を見かけては
苦しみ、どうして自分には出来ないのか…
日に日に心に影を落としていった。
暗い顔で産婦人科を出て歩いていた母。
その時出会ったのが占い師の雷架だ。
雷架は母の身なりを見て、
金持ちだと察し、ニヤリと笑った。
暗い顔で出てきた母の表情は
誰が見ても幸せな妊婦とは思えない。
不妊か死産か…
占い師でなくても様子でわかることだ。
雷架「あなた…辛いでしょう。
私にはわかるわ。
全てが視える。私ならあなたを救える。」
何不自由なく育ってきたことのない母は
手に入れられない物などなかった。
人生で初めて絶望を味わった彼女には
その一言がとても眩しくて、
まるで暗闇に一筋の光が差したようだった。
その日から陽叶の人生は
狂い始める。
雷架と出会った1年後に陽叶が誕生した。
辛い不妊治療の末実った奇跡だが、
母は雷架のおかげだと信じてやまなかった。
マインドコントロールが成功し、
味をしめた雷架は
母に以下の条件を提示した。
・衣食住を提供し続けること
・私の指示には全て従うこと
・常に行動を共にすること
そして、母にある呪いをかけた。
___________________
【陽叶の願いを全て叶えること】
私が神へ取り次ぎ、神はこれから産まれる
陽叶の望むもの全てを叶えるという条件で
あなたの元へ命を宿してくれた
もし一つでも陽叶の願いを
叶えることが出来なければ、
彼を天界へ連れ戻す。
陽叶の願いを叶え続け、雷架には
感謝を惜しむことなく、
自分の人生の全てを
二人のために注ぎなさい
___________________
この呪いによって母は完全に
雷架の支配下に置かれた。
陽叶から見た雷架は優しい人で
初めは雇っている家政婦のうちの
一人という認識だったが、
成長するにつれて
幼ながら母と雷架が放つ空気は
普通ではないと感じるようになった。
父は陽叶のことは大変可愛がったが、
母への愛情は変わらずなかった。
陽叶は父のことが大好きで
父から離れなかった。
母の隣には常にあの人がいる。
不気味で、近寄りたくなかった。
父はよく本を読んでくれた。
父の膝の上で読み聞かせを聞く時間は
陽叶にとって特別なものだった。
母は陽叶がテレビを見ていると
「これが欲しいの?すぐ用意するわね」
「陽ちゃんの願いは全て叶えるわ」
ただ見てるだけで、欲しいなんて
言ってもいないし、思ってもいない。
毎日のようにおもちゃの箱が届き、
使用人や家政婦達は頭を悩ませていた。
保育園へ行けば、流行りものを常に
身につけている陽叶は注目の的で
毎日のように友達に囲まれては
羨ましがられた。
陽叶は鼻にかけるようなことは
しなかった。
自分で求めた物ではなく
一方的に与えられた物だからだ。
母は本当に欲しいものには
気付いたことがない。
ショッピングモールで両親に手を繋がれ
嬉しそうに歩く同年代の子。
心が締め付けられるような
切ない気持ちになった。
これが「欲しい」という感情なのだと
産まれて初めて気付く。
母「陽ちゃん、行くわよー!」
ほら、本当に欲しい物が
目の前にあったのに
僕のこと何も見えてないね。
そんなふうに思っていた。
目につくもの全てに興味を持つような
年齢でありながら、
次第に
陽叶の中の「物欲」が
なくなった。
陽叶はいつものように父に本を
読み聞かせてもらっていた。
父が話し終わり、陽叶は暗い顔で
自分の気持ちを話した。
陽叶「ねえパパ、このお話みたいに
サンタさんは一年に一度がいいよ。
うちには毎日ママサンタがいるからさ…」
父「そうだね…その中に陽くんが
欲しいものはあったかな?」
陽叶「一つもなかったよ。そのかわり、
お友達はいっぱい出来るけどさ。僕は
お友達のおうちがいいなって思うのに。」
父は悲しそうな顔をして
陽叶を抱きしめ、頭を撫でた。
父「よし、じゃあ今から陽叶の
欲しいもの探しに出かけようか!」
陽叶「…うん!やったー、パパとお出かけ!」
二人は歩いて最寄りの駅へ行き、
電車に乗って隣町へ向かうことに。
初めて乗る電車に、陽叶ははしゃぎ
窓にしがみついて走り出すのを待った。
父が笑顔で隣に座り、一緒に窓の外を見る。
発車ベルが鳴り響き、何の音だと
ひとしきり辺りを見渡した後、陽叶は
真横の父の顔を見た。
父は見たことのない悲しい顔をして
窓の外を見つめ、窓に手を当てた。
父の視線の先には
黒い長髪の綺麗な女の人が立っていた。
彼女もまた、父と同じ
見たことのない悲しい表情をして
こちらを見ていた。
両親や雷架だけではなく
使用人や家政婦たちなど、
多くの大人の手で育てられている
陽叶は、無意識に人の表情から
感情が読み取れるようになっていた。
人の顔を伺うようになってしまった。
この方が正しい表現だろう。
陽叶は一瞬で
父が本当に「欲しい」ものが
その女性だったのだと、
陽叶のためにならどんな物でも
どんな手を使ってでも
絶対に手に入れて用意する母は
陽叶が産まれる前は自分のために
何でも手に入れてきたのだろう
父を無理やり手に入れたんだ と
察してしまった。
陽叶の欲しいもの探しに出かけたはずが、
父の「欲しい」ものを見つけてしまった。
その日の夜、
陽叶は父に頼んで買ってもらった
うさぎのぬいぐるみの手を握りながら
窓から見える月を眺めていた。
欲しいものを探しに行ってくれた父に、
欲しいものが見つけられたことを
喜んでほしくて、
何か買ってもらおうと店内を見て
うさぎのぬいぐるみを見つけた。
うさぎは寂しいと死んでしまう。
父が読んでくれた本にあった話を
思い出し、自分と一緒にいれば
死なないと思い、買ってもらった。
陽叶「パパがいなくても…パパが
買ってくれた君がいれば寂しくないよね……」
そういいながら涙を流し、
うさぎをぎゅっと抱きしめ
何かを決意した顔をした。
暗い部屋で月明かりに照らされた
陽叶の顔からは
涙が何度も頬を伝った。
翌朝、
陽叶は早起きして父の部屋に
起こさないよう入り、
頬にキスをした。
小さい声で
「パパ、大好きだよ。ずっと」と
囁いて、部屋を出た。
うさぎのぬいぐるみと手を繋ぎ、
玄関に向かう。
毎朝8時になると、
父くらいの若い男が牛乳を届けに来る。
彼はとても愛想がよく、気が利く。
どこにいっても可愛がられるタイプだ。
陽叶が会いに行く度に
「僕、こんないいおうちに生まれて幸せだね。羨ましいよ」と話していく。
今日もきっと言ってくるだろう。
陽叶はその言葉を待っていた。
8時になり、男がやってきた。
男「おはようございまーす!お、
今日は僕が出迎えてくれるんだね。
ありがとう。」
陽叶「おはようございます。うん、
今日もごくろうさまです。」
男「えらいなー!牛乳1本
サービスしちゃう!」
陽叶「ありがとうお兄さん。
僕牛乳大好き。」
男「そうかそうか!僕、いい子だね。
こんな幸せな家庭で育ってるんだもん、
いい子に育つよな」
陽叶「羨ましい?」
男「そりゃあ羨ましいさ!
ママも綺麗だしね」
陽叶「もし僕が子供になったら
可愛がってくれる?」
男「どうしたんだよ急に!
こんな可愛い子、大事に育てたいに
決まってるよ」
陽叶「よかった。じゃあね、お兄さん」
男「お、おう、また明日来るね!」
男は不思議な質問に疑問を覚えたが、
子供の言うことだからと
深くは考えなかった。
陽叶は二階への階段を駆け上がり、
一番慕っている家政婦の手を引いて
誰もいない部屋へ入った。
家政婦「なーに、陽ちゃん。かくれんぼ?」
陽叶「違うの、このお手紙を読んで
ほしいんだ。間違いがないか確認して。」
家政婦「まぁ素敵。誰に書いたの?」
陽叶「パパだよ。よく書けていたら、
明日パパに渡してほしいんだ。」
家政婦が手紙を開けると
こう書かれていた。
___________________
パパへ
いつもほんをよんでくれてありがとう。
ぼくはほんがだいすきだよ。
パパのほうがもっとだいすき。
ずっとわすれないよ。
うさぎさんといっしょだから
さびしくないよ。
パパとパパのすきなひとが
しあわせになれますように。
はるとより
___________________
家政婦は目を潤ませながら
家政婦「陽ちゃん、とってもよく
書けてるわ。でも、どうしたの?
明日何かあるの?」
と、聞いた。
家政婦は父と仲が良く、
彼のことは全て知っていた。
何故陽叶が知ってしまったのか
明日何があるのか
いろんな不安が涙として現れた。
陽叶「この間パパとお出かけしたの。
その時、パパが悲しい顔してお姉さんを
見てたんだ。その人もパパを見てた。
パパの好きな人なんだってわかったんだ。」
家政婦「陽ちゃん…」
陽叶「僕はパパが大好きだから、
幸せになってほしいんだ。ママは僕の
お願い事はなんだって叶えてくれる。
僕にしかできないから。」
陽叶は泣きながらそう話した。
家政婦も陽叶を見て、
涙を流しながら強く抱き締めた。
家政婦「パパもあなたの事が大好きなのよ。
わかってあげて…この手紙は必ず
パパに渡すわ。陽ちゃん、私はずっと
一緒にいるから。どんな時だって絶対に
味方でいる。私があなたのパパとママに
一人でなってみせるわ。」
陽叶「ありがとう…パパとママを
合わせて、パマちゃんって呼んでいい?」
家政婦「もちろんよ!」
二人はしばらく抱き締めあっていた。
沢山泣いて気持ちが落ち着き、
母と雷架の元へ向かう。
母「あら陽ちゃん、どうしたの?」
陽叶「ママ、あのね。お願いがあるの」
母「陽ちゃんからお願いなんて
初めてね!嬉しいわ、なんでも言って?」
陽叶「……毎朝来る牛乳屋のお兄さんに、
僕のパパになってほしいんだ。」
陽叶の思いがけない要望に
雷架や周囲にいた家政婦は凍りついた。
雷架「陽ちゃんにはもうパパが…」
雷架が言いかけた時、食い気味で母が
母「わかったわ。今から準備するわね。」
と、答えた。
口元は笑顔だが、目は瞳孔が開いていた。
さすがの雷架も驚いた様子だ。
母はすぐに牛乳の配達員の元へ
使用人を向かわせた。
大金を入れたアタッシュケースを
手土産に。
父には母が直接出ていくように伝えた。
母「パパ、私と陽叶を出会わせてくれて
ありがとう。このお金で好きに生きて。
今日中に荷物をまとめてちょうだい。
すぐに運び出せるようにしとくわ。」
父「ちょっと…急にどういうこと?」
母「陽ちゃんがね…別の人をパパに
選んだの。初めて私にお願いしてくれたのよ!」
母は嬉しそうにスカートを揺らしながら
部屋を後にした。
あんなに必死になって手に入れた父を
一瞬で手放した。
マインドコントロールの恐ろしさが
窺える。
父「陽叶…俺、何か嫌われるようなこと
したのか?」
思い当たる節がなく、呆然としていた。
何が起こっているのか理解をしようと
している間に、家政婦達によって
次々と父の荷物が運び出される。
全ての荷物が運び出され、
専属の運転手が父を迎えに来た。
運転手「旦那様、ご用意が出来ました。」
父「え……待って。陽叶に、陽叶に
一度会わせて欲しい!」
周囲に居合わせた使用人達は
父が家を出たくなくて足掻いていると
勘違いし、無理やり車まで連れていく。
父「やめろ!離してくれ!陽叶!!!」
父の叫び声は次第に小さくなっていき、
最後にバタン とドアが閉まる音が響いた。
陽叶は自分の部屋のドアに背を付けて
膝を抱えて泣いていた。
車に乗せられた父の元へ
今にも泣きそうな顔をしたパマさんが
やってきて、手紙を差し出した。
パマさん「これ、陽ちゃんから…」
父「陽叶から手紙……?」
渡された手紙を読んだ父は
あの日の電車での出来事を思い出し、
ハッとして涙を流しながら言った。
父「あんな小さい子に俺、
気を遣わせたのか…情けないよ……
俺のためにこんな…」
パマさん「あの子の初めての願い事よ。
どうか…叶えてあげて。幸せにならないと
ダメよ。私があの子を支えていくから。」
父「陽叶に伝えてほしい、パパは誰よりも
何よりも陽叶が大事だって。ずっと
大好きだって…
陽叶をよろしくお願いします。」
嗚咽するほど父は泣いている。
パマさんも堪らずもらい泣きした。
静かに走り出す車の窓から、
部屋からこちらを見る陽叶を見つけた。
父は窓を全開にして叫んだ
父「陽叶!!!パパはずっと大好きだぞ!」
何か言ってるのが見えて、
陽叶は急いで窓を開け、父の声を聞いた。
大好きという声が聞こえ、
泣きながら叫び返した。
陽叶「パパだけがずっと僕のパパだよ!
大好きだよ」
二人の掛け合いは
鈴虫の鳴き声を掻き消した。
次の日、牛乳の配達員だった男が
新しく父としてやってきた。
陽叶を見つけ、すぐに人気のない所へ
手を引いて話を聞いた。
男「昨日僕が子供だったら…って
言ってたけど、まさか本気だとは
思わなかったよ。本当にいいの?」
陽叶「それは僕のセリフだよ。
大事に育ててよね。」
新しい父は陽叶を裏切ることなく
愛を持って接してくれた。
母とも最初はうまくやっていたが
雷架の存在をよく思っておらず、
時折見せる異常な様子に
次第に愛想をつかしていった。
金と陽叶のために
婚姻関係を続けていたが、
何の不満もなかった。
彼はこの生活を
一生手放せないだろう。
本当の父が出て行ってからの陽叶は、
取り憑かれたかのように
本を読むようになった。
暇さえあれば図書館に通う日々だ。
歳を重ねるごとに、読む本の
難易度も上がってくる。
小学三年生で読んだ本に
占い師と称して人を騙すも、
ウソがバレていく話があった。
陽叶はその占い師と雷架が
重なって見えた。
帰宅すると、雷架の元へ向かった。
雷架「陽ちゃん、おかえり」
陽叶「ただいま。ねえ雷架さん、
僕の事占ってよ。よく当たる占い師さん
なんでしょ?」
雷架「ふふ、いいわよ。陽ちゃんの
考えてることや未来、何でも
わかっちゃうんだから」
雷架はシャッフルしたタロットカードを
テーブルへ並べ、
3つのカードを表に返した。
雷架「今の陽ちゃんは…前のお父さんが
いなくなってとてもスッキリしてるわね。
嫌いだったんでしょう?新しい人は理想通りで
これからもいいパパで居てくれるわ。ただし、
大きくなっても私に逆らったりしなければよ。
私は神と繋がっているのだから」
陽叶「そう……わかった。占ってくれて
ありがとう」
雷架に背を向けた陽叶の顔は
怒りに満ちていた。
僕が本当にパパが嫌いで追い出したと
思っている。
雷架が嘘つきの占い師だと確証を得た。
その後、パマさんに
何故雷架が家に住む事になったのかを
詳しく聞いた。
そして、母が完全に雷架の
マインドコントロール下にいると
理解した。
陽叶は母のような被害者を
これ以上作らないためにも
偽善者を見抜く術が欲しかった。
沢山の本を読んでいく中で
犯罪心理学に出会った。
いつか必ず地獄に落としてやる。
その為には知識を、力をつけたい。
その一心で猛勉強した。
四季の移ろいを横目に
友達は作らず、時間があれば図書館。
そんな生活を続け、
気付けば大学入試の歳になっていた。
猛勉強の末、心理学で最難関の
大学へ合格した。
自分が成長していくなかでも、
母は何一つ変わらなかった。
大学へ通うには上京しなければならない。
母の元から離れられることが
何よりも嬉しかった。
母には
自立したいからもう俺のことは
何もしないで欲しい
そう「お願い」した。
新居はずっと支え続けてくれた
パマさんにだけ教えた。
お盆やお正月に大量の食材を持って
毎年やってくる。
陽叶はそれが楽しみだった。
思い返してみると
母と再会してしまった前日、
パマさんがサプライズで会いに来ていた。
その後を付けたのかもしれない。
待ち伏せしてるようでは家までは
特定出来ていないのだろう。
安心しつつも、不安が募り
荷造りを始めた。
母は手に入れるためなら何でもする
雷架がいる限り。
いつも陽叶が望むだろうと
一方的に欲しそうな物を
押し付けてきた母が、
初めて陽叶の「欲しい」ものを
見抜いた時は驚いた。
輝夜さんにだけは
絶対に迷惑をかけたくない。
だって初めて人を
こんなにも愛おしく思えて、
「欲しい」と思ったんだ。
だから
大事な人だから
もう会えないんだ。
輝夜は復帰ライブに向けて動き出していた。
メンバーとダンスレッスンをしたり
ライブの打ち合わせをする毎日だが、
頭の片隅には常に陽叶がいた。
毎日1件はメッセージを送っている。
今日は
『陽叶、ちゃんと飯食べてるか?
寒くなってきたから風邪ひかないようにな』
と送信した。
輝夜は自分で送った文を見つめ、
ページを遡り
「なんでだよ……」と呟く
あの日から【既読】にならなくなった理由を
知りたくて、天を仰いだ。
同時刻、
部屋でパソコンと向き合っている陽叶の
スマホが鳴った。
陽叶は既読が付かないように輝夜からの
メッセージを見て、目を潤ませた。
陽叶「輝夜さん…ごめんね。会いたいよ…」
そう嘆き、顔を手で被う。
陽叶「でももう会ったらだめなんだ…
あの女が母さんといる限り、輝夜さんに
何をするかわからないから…」
陽叶はパソコンの検索ワードに
【占い師 雷架(らいか)】と入力した。
検索結果に出てきた写真には
あの日の派手な魔女のような女が
笑顔で写っていた。
陽叶は裕福な家庭で生まれ、何不自由なく
育つ環境にいた。
母は財閥の令嬢だ。
母は祖父の会社へ定期的に荷物を
配達しに来ていた父を見て一目惚れし、
祖父の力で半ば強引に結婚した。
その時父は両想いの相手がいたが
祖母によって勤務先や親族など全てに
金の力で根回しされ、
諦めるしかなかった。
父は金銭的な心配がなくなり
一生お金に困らない生活を約束されても
何も満たされず、
好きだった人を思い続けていた。
母は大好きな父との子供は欲しくて
毎日のように子作りを義務と課した。
母の強い気持ちとは裏腹に、
一向に子供を授かる事が出来なかった。
結婚して4年が経っていた。
外で楽しそうに走り回る子供を見かけては
苦しみ、どうして自分には出来ないのか…
日に日に心に影を落としていった。
暗い顔で産婦人科を出て歩いていた母。
その時出会ったのが占い師の雷架だ。
雷架は母の身なりを見て、
金持ちだと察し、ニヤリと笑った。
暗い顔で出てきた母の表情は
誰が見ても幸せな妊婦とは思えない。
不妊か死産か…
占い師でなくても様子でわかることだ。
雷架「あなた…辛いでしょう。
私にはわかるわ。
全てが視える。私ならあなたを救える。」
何不自由なく育ってきたことのない母は
手に入れられない物などなかった。
人生で初めて絶望を味わった彼女には
その一言がとても眩しくて、
まるで暗闇に一筋の光が差したようだった。
その日から陽叶の人生は
狂い始める。
雷架と出会った1年後に陽叶が誕生した。
辛い不妊治療の末実った奇跡だが、
母は雷架のおかげだと信じてやまなかった。
マインドコントロールが成功し、
味をしめた雷架は
母に以下の条件を提示した。
・衣食住を提供し続けること
・私の指示には全て従うこと
・常に行動を共にすること
そして、母にある呪いをかけた。
___________________
【陽叶の願いを全て叶えること】
私が神へ取り次ぎ、神はこれから産まれる
陽叶の望むもの全てを叶えるという条件で
あなたの元へ命を宿してくれた
もし一つでも陽叶の願いを
叶えることが出来なければ、
彼を天界へ連れ戻す。
陽叶の願いを叶え続け、雷架には
感謝を惜しむことなく、
自分の人生の全てを
二人のために注ぎなさい
___________________
この呪いによって母は完全に
雷架の支配下に置かれた。
陽叶から見た雷架は優しい人で
初めは雇っている家政婦のうちの
一人という認識だったが、
成長するにつれて
幼ながら母と雷架が放つ空気は
普通ではないと感じるようになった。
父は陽叶のことは大変可愛がったが、
母への愛情は変わらずなかった。
陽叶は父のことが大好きで
父から離れなかった。
母の隣には常にあの人がいる。
不気味で、近寄りたくなかった。
父はよく本を読んでくれた。
父の膝の上で読み聞かせを聞く時間は
陽叶にとって特別なものだった。
母は陽叶がテレビを見ていると
「これが欲しいの?すぐ用意するわね」
「陽ちゃんの願いは全て叶えるわ」
ただ見てるだけで、欲しいなんて
言ってもいないし、思ってもいない。
毎日のようにおもちゃの箱が届き、
使用人や家政婦達は頭を悩ませていた。
保育園へ行けば、流行りものを常に
身につけている陽叶は注目の的で
毎日のように友達に囲まれては
羨ましがられた。
陽叶は鼻にかけるようなことは
しなかった。
自分で求めた物ではなく
一方的に与えられた物だからだ。
母は本当に欲しいものには
気付いたことがない。
ショッピングモールで両親に手を繋がれ
嬉しそうに歩く同年代の子。
心が締め付けられるような
切ない気持ちになった。
これが「欲しい」という感情なのだと
産まれて初めて気付く。
母「陽ちゃん、行くわよー!」
ほら、本当に欲しい物が
目の前にあったのに
僕のこと何も見えてないね。
そんなふうに思っていた。
目につくもの全てに興味を持つような
年齢でありながら、
次第に
陽叶の中の「物欲」が
なくなった。
陽叶はいつものように父に本を
読み聞かせてもらっていた。
父が話し終わり、陽叶は暗い顔で
自分の気持ちを話した。
陽叶「ねえパパ、このお話みたいに
サンタさんは一年に一度がいいよ。
うちには毎日ママサンタがいるからさ…」
父「そうだね…その中に陽くんが
欲しいものはあったかな?」
陽叶「一つもなかったよ。そのかわり、
お友達はいっぱい出来るけどさ。僕は
お友達のおうちがいいなって思うのに。」
父は悲しそうな顔をして
陽叶を抱きしめ、頭を撫でた。
父「よし、じゃあ今から陽叶の
欲しいもの探しに出かけようか!」
陽叶「…うん!やったー、パパとお出かけ!」
二人は歩いて最寄りの駅へ行き、
電車に乗って隣町へ向かうことに。
初めて乗る電車に、陽叶ははしゃぎ
窓にしがみついて走り出すのを待った。
父が笑顔で隣に座り、一緒に窓の外を見る。
発車ベルが鳴り響き、何の音だと
ひとしきり辺りを見渡した後、陽叶は
真横の父の顔を見た。
父は見たことのない悲しい顔をして
窓の外を見つめ、窓に手を当てた。
父の視線の先には
黒い長髪の綺麗な女の人が立っていた。
彼女もまた、父と同じ
見たことのない悲しい表情をして
こちらを見ていた。
両親や雷架だけではなく
使用人や家政婦たちなど、
多くの大人の手で育てられている
陽叶は、無意識に人の表情から
感情が読み取れるようになっていた。
人の顔を伺うようになってしまった。
この方が正しい表現だろう。
陽叶は一瞬で
父が本当に「欲しい」ものが
その女性だったのだと、
陽叶のためにならどんな物でも
どんな手を使ってでも
絶対に手に入れて用意する母は
陽叶が産まれる前は自分のために
何でも手に入れてきたのだろう
父を無理やり手に入れたんだ と
察してしまった。
陽叶の欲しいもの探しに出かけたはずが、
父の「欲しい」ものを見つけてしまった。
その日の夜、
陽叶は父に頼んで買ってもらった
うさぎのぬいぐるみの手を握りながら
窓から見える月を眺めていた。
欲しいものを探しに行ってくれた父に、
欲しいものが見つけられたことを
喜んでほしくて、
何か買ってもらおうと店内を見て
うさぎのぬいぐるみを見つけた。
うさぎは寂しいと死んでしまう。
父が読んでくれた本にあった話を
思い出し、自分と一緒にいれば
死なないと思い、買ってもらった。
陽叶「パパがいなくても…パパが
買ってくれた君がいれば寂しくないよね……」
そういいながら涙を流し、
うさぎをぎゅっと抱きしめ
何かを決意した顔をした。
暗い部屋で月明かりに照らされた
陽叶の顔からは
涙が何度も頬を伝った。
翌朝、
陽叶は早起きして父の部屋に
起こさないよう入り、
頬にキスをした。
小さい声で
「パパ、大好きだよ。ずっと」と
囁いて、部屋を出た。
うさぎのぬいぐるみと手を繋ぎ、
玄関に向かう。
毎朝8時になると、
父くらいの若い男が牛乳を届けに来る。
彼はとても愛想がよく、気が利く。
どこにいっても可愛がられるタイプだ。
陽叶が会いに行く度に
「僕、こんないいおうちに生まれて幸せだね。羨ましいよ」と話していく。
今日もきっと言ってくるだろう。
陽叶はその言葉を待っていた。
8時になり、男がやってきた。
男「おはようございまーす!お、
今日は僕が出迎えてくれるんだね。
ありがとう。」
陽叶「おはようございます。うん、
今日もごくろうさまです。」
男「えらいなー!牛乳1本
サービスしちゃう!」
陽叶「ありがとうお兄さん。
僕牛乳大好き。」
男「そうかそうか!僕、いい子だね。
こんな幸せな家庭で育ってるんだもん、
いい子に育つよな」
陽叶「羨ましい?」
男「そりゃあ羨ましいさ!
ママも綺麗だしね」
陽叶「もし僕が子供になったら
可愛がってくれる?」
男「どうしたんだよ急に!
こんな可愛い子、大事に育てたいに
決まってるよ」
陽叶「よかった。じゃあね、お兄さん」
男「お、おう、また明日来るね!」
男は不思議な質問に疑問を覚えたが、
子供の言うことだからと
深くは考えなかった。
陽叶は二階への階段を駆け上がり、
一番慕っている家政婦の手を引いて
誰もいない部屋へ入った。
家政婦「なーに、陽ちゃん。かくれんぼ?」
陽叶「違うの、このお手紙を読んで
ほしいんだ。間違いがないか確認して。」
家政婦「まぁ素敵。誰に書いたの?」
陽叶「パパだよ。よく書けていたら、
明日パパに渡してほしいんだ。」
家政婦が手紙を開けると
こう書かれていた。
___________________
パパへ
いつもほんをよんでくれてありがとう。
ぼくはほんがだいすきだよ。
パパのほうがもっとだいすき。
ずっとわすれないよ。
うさぎさんといっしょだから
さびしくないよ。
パパとパパのすきなひとが
しあわせになれますように。
はるとより
___________________
家政婦は目を潤ませながら
家政婦「陽ちゃん、とってもよく
書けてるわ。でも、どうしたの?
明日何かあるの?」
と、聞いた。
家政婦は父と仲が良く、
彼のことは全て知っていた。
何故陽叶が知ってしまったのか
明日何があるのか
いろんな不安が涙として現れた。
陽叶「この間パパとお出かけしたの。
その時、パパが悲しい顔してお姉さんを
見てたんだ。その人もパパを見てた。
パパの好きな人なんだってわかったんだ。」
家政婦「陽ちゃん…」
陽叶「僕はパパが大好きだから、
幸せになってほしいんだ。ママは僕の
お願い事はなんだって叶えてくれる。
僕にしかできないから。」
陽叶は泣きながらそう話した。
家政婦も陽叶を見て、
涙を流しながら強く抱き締めた。
家政婦「パパもあなたの事が大好きなのよ。
わかってあげて…この手紙は必ず
パパに渡すわ。陽ちゃん、私はずっと
一緒にいるから。どんな時だって絶対に
味方でいる。私があなたのパパとママに
一人でなってみせるわ。」
陽叶「ありがとう…パパとママを
合わせて、パマちゃんって呼んでいい?」
家政婦「もちろんよ!」
二人はしばらく抱き締めあっていた。
沢山泣いて気持ちが落ち着き、
母と雷架の元へ向かう。
母「あら陽ちゃん、どうしたの?」
陽叶「ママ、あのね。お願いがあるの」
母「陽ちゃんからお願いなんて
初めてね!嬉しいわ、なんでも言って?」
陽叶「……毎朝来る牛乳屋のお兄さんに、
僕のパパになってほしいんだ。」
陽叶の思いがけない要望に
雷架や周囲にいた家政婦は凍りついた。
雷架「陽ちゃんにはもうパパが…」
雷架が言いかけた時、食い気味で母が
母「わかったわ。今から準備するわね。」
と、答えた。
口元は笑顔だが、目は瞳孔が開いていた。
さすがの雷架も驚いた様子だ。
母はすぐに牛乳の配達員の元へ
使用人を向かわせた。
大金を入れたアタッシュケースを
手土産に。
父には母が直接出ていくように伝えた。
母「パパ、私と陽叶を出会わせてくれて
ありがとう。このお金で好きに生きて。
今日中に荷物をまとめてちょうだい。
すぐに運び出せるようにしとくわ。」
父「ちょっと…急にどういうこと?」
母「陽ちゃんがね…別の人をパパに
選んだの。初めて私にお願いしてくれたのよ!」
母は嬉しそうにスカートを揺らしながら
部屋を後にした。
あんなに必死になって手に入れた父を
一瞬で手放した。
マインドコントロールの恐ろしさが
窺える。
父「陽叶…俺、何か嫌われるようなこと
したのか?」
思い当たる節がなく、呆然としていた。
何が起こっているのか理解をしようと
している間に、家政婦達によって
次々と父の荷物が運び出される。
全ての荷物が運び出され、
専属の運転手が父を迎えに来た。
運転手「旦那様、ご用意が出来ました。」
父「え……待って。陽叶に、陽叶に
一度会わせて欲しい!」
周囲に居合わせた使用人達は
父が家を出たくなくて足掻いていると
勘違いし、無理やり車まで連れていく。
父「やめろ!離してくれ!陽叶!!!」
父の叫び声は次第に小さくなっていき、
最後にバタン とドアが閉まる音が響いた。
陽叶は自分の部屋のドアに背を付けて
膝を抱えて泣いていた。
車に乗せられた父の元へ
今にも泣きそうな顔をしたパマさんが
やってきて、手紙を差し出した。
パマさん「これ、陽ちゃんから…」
父「陽叶から手紙……?」
渡された手紙を読んだ父は
あの日の電車での出来事を思い出し、
ハッとして涙を流しながら言った。
父「あんな小さい子に俺、
気を遣わせたのか…情けないよ……
俺のためにこんな…」
パマさん「あの子の初めての願い事よ。
どうか…叶えてあげて。幸せにならないと
ダメよ。私があの子を支えていくから。」
父「陽叶に伝えてほしい、パパは誰よりも
何よりも陽叶が大事だって。ずっと
大好きだって…
陽叶をよろしくお願いします。」
嗚咽するほど父は泣いている。
パマさんも堪らずもらい泣きした。
静かに走り出す車の窓から、
部屋からこちらを見る陽叶を見つけた。
父は窓を全開にして叫んだ
父「陽叶!!!パパはずっと大好きだぞ!」
何か言ってるのが見えて、
陽叶は急いで窓を開け、父の声を聞いた。
大好きという声が聞こえ、
泣きながら叫び返した。
陽叶「パパだけがずっと僕のパパだよ!
大好きだよ」
二人の掛け合いは
鈴虫の鳴き声を掻き消した。
次の日、牛乳の配達員だった男が
新しく父としてやってきた。
陽叶を見つけ、すぐに人気のない所へ
手を引いて話を聞いた。
男「昨日僕が子供だったら…って
言ってたけど、まさか本気だとは
思わなかったよ。本当にいいの?」
陽叶「それは僕のセリフだよ。
大事に育ててよね。」
新しい父は陽叶を裏切ることなく
愛を持って接してくれた。
母とも最初はうまくやっていたが
雷架の存在をよく思っておらず、
時折見せる異常な様子に
次第に愛想をつかしていった。
金と陽叶のために
婚姻関係を続けていたが、
何の不満もなかった。
彼はこの生活を
一生手放せないだろう。
本当の父が出て行ってからの陽叶は、
取り憑かれたかのように
本を読むようになった。
暇さえあれば図書館に通う日々だ。
歳を重ねるごとに、読む本の
難易度も上がってくる。
小学三年生で読んだ本に
占い師と称して人を騙すも、
ウソがバレていく話があった。
陽叶はその占い師と雷架が
重なって見えた。
帰宅すると、雷架の元へ向かった。
雷架「陽ちゃん、おかえり」
陽叶「ただいま。ねえ雷架さん、
僕の事占ってよ。よく当たる占い師さん
なんでしょ?」
雷架「ふふ、いいわよ。陽ちゃんの
考えてることや未来、何でも
わかっちゃうんだから」
雷架はシャッフルしたタロットカードを
テーブルへ並べ、
3つのカードを表に返した。
雷架「今の陽ちゃんは…前のお父さんが
いなくなってとてもスッキリしてるわね。
嫌いだったんでしょう?新しい人は理想通りで
これからもいいパパで居てくれるわ。ただし、
大きくなっても私に逆らったりしなければよ。
私は神と繋がっているのだから」
陽叶「そう……わかった。占ってくれて
ありがとう」
雷架に背を向けた陽叶の顔は
怒りに満ちていた。
僕が本当にパパが嫌いで追い出したと
思っている。
雷架が嘘つきの占い師だと確証を得た。
その後、パマさんに
何故雷架が家に住む事になったのかを
詳しく聞いた。
そして、母が完全に雷架の
マインドコントロール下にいると
理解した。
陽叶は母のような被害者を
これ以上作らないためにも
偽善者を見抜く術が欲しかった。
沢山の本を読んでいく中で
犯罪心理学に出会った。
いつか必ず地獄に落としてやる。
その為には知識を、力をつけたい。
その一心で猛勉強した。
四季の移ろいを横目に
友達は作らず、時間があれば図書館。
そんな生活を続け、
気付けば大学入試の歳になっていた。
猛勉強の末、心理学で最難関の
大学へ合格した。
自分が成長していくなかでも、
母は何一つ変わらなかった。
大学へ通うには上京しなければならない。
母の元から離れられることが
何よりも嬉しかった。
母には
自立したいからもう俺のことは
何もしないで欲しい
そう「お願い」した。
新居はずっと支え続けてくれた
パマさんにだけ教えた。
お盆やお正月に大量の食材を持って
毎年やってくる。
陽叶はそれが楽しみだった。
思い返してみると
母と再会してしまった前日、
パマさんがサプライズで会いに来ていた。
その後を付けたのかもしれない。
待ち伏せしてるようでは家までは
特定出来ていないのだろう。
安心しつつも、不安が募り
荷造りを始めた。
母は手に入れるためなら何でもする
雷架がいる限り。
いつも陽叶が望むだろうと
一方的に欲しそうな物を
押し付けてきた母が、
初めて陽叶の「欲しい」ものを
見抜いた時は驚いた。
輝夜さんにだけは
絶対に迷惑をかけたくない。
だって初めて人を
こんなにも愛おしく思えて、
「欲しい」と思ったんだ。
だから
大事な人だから
もう会えないんだ。
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