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第7話 サリ×ヴァレ?ヴァレ×サリ?魔王様カップリング騒動
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魔導SNSが、爆発していた。
「は???耳打ち???????」
「サリヴァレきたああああああああ!!!!!」
「逆にヴァレサリでは???(冷静に考えて)」
「魔王様の吐息がヴァレンにかかってると思うと死ねる」
「いや、どう見てもヴァレンが受け顔だろ」
「リバこそ至高!異論は認めない!」
私、ラブリア=ヴェルミリオンは、スマホを握りしめたまま固まっていた。
(何が……何が起きたの……??!!)
目の前では、アークデモニア帝国球技大会の決勝戦が行われている。円形闘技場は観客で埋め尽くされ、歓声が響き渡っていた。
特等席には魔王サリオンが悠然と座り、試合を観戦している。今日のお召し物は深紅のジャケットに黒のパンツ。胸元を飾る銀のチェーンが、動くたびに煌めいている。その様子を遠目に見ながら、私は会場全体が見える位置に控えていた。
(魔王様が試合を見つめる真剣な横顔ぉぉおおおお!!!知的で素敵、好き、吐きそう!!!いえ、今はそれどころじゃない!)
私は慌てて耳の魔導通信機を起動させた。
「ヴァレン!ヴァレン!聞こえる!?」
小声で呼びかけると、すぐに応答があった。
「ラブリア?どうした、そんなに慌てて」
「SNS見た!?今、大変なことになってるわよ!」
「いや、見てない。ちょっと待ってくれ……。何だこれ!!?」
事態を知ったヴァレンも困惑している。
「一体何があったの?魔王様があなたに耳打ちしたって……本当なの?」
「ああ、本当だ。さっき試合の途中で魔王様に呼ばれて、用事を言い渡された」
「用事!?何の!?」
「それは後で話す。でも、あの時の様子を誰かが撮影してたみたいだな……俺が身をかがめて魔王様の耳元に顔を寄せた瞬間を」
私は再びスマホの画面を見た。タイムラインには、問題のシーンを捉えた写真や動画が次々とアップされている。
特等席に座る魔王様がヴァレンを手招きし、立っているヴァレンが身をかがめて魔王様の耳元に顔を寄せる瞬間——確かに、傍から見れば、とても親密な雰囲気に見える。
(何これ!??てぇーてぇーーーーーー!!!わかる、私でもサリヴァレ叫ばずにいられない!!!)
「これは……まずいわね」
「まずいって、何がだ?」
「ヴァレン、あなた……雌ゾンビを甘く見てるわよ」
「雌ゾンビか……」
この世界には「雌ゾンビ」と呼ばれる者たちがいる。
彼女たちは、男性同士の麗しき関係性を愛でることに命を燃やす、特殊な感性を持つファンの総称だ。ヒューマンの世界で俗に言う、腐女子である。
雌ゾンビたちの中でも、特に魔王様と四天王の一人であるヴァレンのカップリングを支持する者たちが大勢いる。
「サリヴァレ」——魔王様が攻めでヴァレンが受け、というのが主流派。だが「ヴァレサリ」——ヴァレンが攻めで魔王様が受け、という熱烈な支持者も少なくない。
そして今回の耳打ちシーンで、雌ゾンビたちが一斉に沸騰したのだ。
実を言うと、私自身も雌ゾンビの一人だ。魔王様に関しては何でもOK——夢女子にもなるし、カップリングも楽しむ。基本的に同担OK。そして密かに、サリヴァレ派である。細々と二次創作もしているが、それは誰にも内緒だ。
私はスマホの画面を次々とスクロールした。タイムラインは完全にカオス状態だ。
『#サリヴァレ』『#ヴァレサリ』が同時トレンド入りしている。
「耳元に息がかかる距離感……これは攻めの所作」
「いやヴァレンが身をかがめてるってことは、魔王様に誘われてるんだろ?ヴァレサリでは?」
「スロー再生したけど魔王様の表情が完全に攻め顔」
「逆だ!耳打ち後のヴァレン様の微笑みが慈愛に満ちておる!!」
「リバ派の私、高みの見物」
さらには、早くも推し絵や二次創作のイラストまで投稿され始めている。
(雌ゾンビたちの行動力!!!特にクリエイター陣、相変わらず凄まじいわね……)
「ラブリア?聞いてるか?」
ヴァレンの声で我に返る。
「え、ええ。聞いてるわよ」
「それで、この状況……どうすればいい?」
「とりあえず、四天王で緊急会議ね。この騒動、放置できないわ」
球技大会が終わり、魔王様が居城に戻られた後、私たちは例の会議室——「魔王様公式FC本部」に集まった。
既にガルドとメルは席についている。私とヴァレンが最後に入室すると、メルが目を輝かせて駆け寄ってきた。
「ヴァレン!SNS見たのだ!魔王様との耳打ちシーン、ばっちり撮られてる!」
「あ、ああ……」
ヴァレンは困ったような表情で頭を掻く。
「SNSが大騒ぎなのだ!『サリヴァレ』『ヴァレサリ』でトレンドが埋まってるのだ!」
ガルドは戸惑いながら口を開いた。
「俺も一応SNSは見てるが……正直、何が起きているのかよくわからん」
武人として魔王様を崇拝しているガルドには、こういったオタク文化は理解できないのだろう。私は溜息をつきながら説明を始めた。
「簡単に言えば、魔王様とヴァレンの『カップリング』——つまり恋愛関係を妄想する人たちが大勢いるの。今回の耳打ちシーンが、その妄想に火をつけたってわけ」
「カップリング……恋愛……」
ガルドが眉をひそめる。
「魔王様もヴァレンも、そういう関係ではないだろう?」
「もちろんよ」
私は頷いた。
「でも、ファンは妄想するの。その妄想が『推しへの愛』となって、魔王様の力になる。それがこの世界の真理でしょう?」
ヴァレンが腕を組んで呟いた。
「俺も魔王様もそういう関係じゃないのに、大勢にそう思われてるのは何とも言えない気分だ……」
「でもこの熱量がパワーになってるのも真実よ」
私はヴァレンを真っ直ぐ見つめた。
「あなただって多少力が増してるんでしょう?魔王様にはかなりの力が集まっているでしょうね」
「……確かに」
ヴァレンが認めた。
「さっきから、なんだか体が軽い。魔力も増してる気がする」
メルが勢いよく立ち上がった。
「ヴァレンすごいのだ!魔王様と一緒に力を得てるのだ!いっそ魔王様にその身を差し出すのだ!」
「何言ってんだ!」
ヴァレンが顔を赤くして叫ぶ。
「ダメよ、メル!」
私は冷静に首を横に振った。
「妄想の余地を残している状態がいいんだから。実際にそういう関係になったら、逆に興が冷める人もいるのよ」
ガルドが首を傾げる。
「うーむ、俺にはわからん……」
私は立ち上がり、ホワイトボードに向かった。
「とにかく、今は対応を考えないと。このまま放置すれば、『サリヴァレ派』と『ヴァレサリ派』の対立が激化するわ」
「対立?」
「ええ。自分の信じる解釈こそが正しいと、お互いに主張し合うの。タグ荒らしや、過度な布教活動、解釈の押し付け……」
私はホワイトボードに問題点を列挙していく。
「最悪の場合、ファン同士の諍いになって、魔王様のイメージダウンにも繋がりかねないわ」
「それは困るな……」
ヴァレンが真剣な表情になった。
「じゃあ、どうするんだ?」
「まずは、公式として指針を示すわ」
私はノート型魔導デバイスを起動して、魔王様FC公式ページの管理画面を開き、文章を打ち始めた。
「タグの運用ルールを明確にして、お互いの解釈を尊重するよう呼びかける。これで、少しは秩序が保てるはずよ」
数分後、私は完成した文章を三人に見せた。
________________________________________
⚖️【公式広報:タグ運用に関するお知らせ】
現在、魔王サリオン様とヴァレン殿に関する創作活動が大変活発であり、誠に尊きことでございます。
つきましては、皆さまの尊き布教をより平和かつ快適に行っていただけますよう、以下の指針を設けました。
• 「#サリヴァレ」:魔王様×ヴァレン殿(魔王様が攻め)
• 「#ヴァレサリ」:ヴァレン殿×魔王様(ヴァレン殿が攻め)
• 「#リバ注意」:両方の要素を含む場合の注意喚起タグ
• 「#サリヴァレ考察」「#サリヴァレ供給」など、派生タグはご自由にお使いください。
※解釈の押し付け、タグ荒らし、過度な布教活動は、博愛と秩序を重んじる魔王様の御心に反する行為です。 推しは推し方の数だけ尊いことを、どうかお忘れなきよう。
________________________________________
「……なんだか、すごく丁寧な文章だな」
ヴァレンが苦笑する。
「公式広報ですもの。品位が大切よ」
私は胸を張った。
「これで投稿すれば、ある程度は落ち着くはず……」
「ある程度?」
ガルドが首を傾げる。
「完全には収まらないってことか?」
「ええ。タグを分けても、派閥争いは続くでしょうね。特に熱烈なファンほど、自分の解釈に自信を持ってるから……」
私は溜息をついた。
その時、ヴァレンが何かを思いついたような表情になった。
「なあ、ラブリア」
「何?」
「対立がなかなか収まらないんだったら、別のエサを投下したらいいんじゃないか?」
「エサ?何よ、何かいいネタでもあるの?」
ヴァレンがニヤリと笑う。
「魔王様が俺に耳打ちした内容とか……」
「!!!」
私は思わず身を乗り出した。
「知りたい!!知りたいわ!!でも……話して問題ないのかしら?」
「大丈夫だと思うぞ。別に機密事項ってわけじゃないし」
ヴァレンは私に近づくと、耳元で小声で囁いた。
「ごにょごにょ……」
「――っ!!!」
私の顔が一気に熱くなる。
「それは……それは……!!」
(尊いぃぃぃ!尊すぎるぅぅぅ!!魔王様のそういうところ!!!最&高!!!)
メガネの奥で目がハートマークになりそうになるのを必死に堪える。
「ラブ?どうしたのだ?」
メルが不思議そうに覗き込んでくる。
「な、何でもないわ!ただ……これは使えるわね。ヴァレン、一応魔王様に公開して問題ないか確認とってくれる?」
「おお。今はテラスで寛いでいらっしゃるはずだ。すぐに確認してくる」
ヴァレンは早速魔王様のもとへ駆けて行った。
――数分後。
魔王様からのOKの返事を聞いた私は、早速SNSに投稿する準備を始めた。
「よし、これで行くわよ」
私は先ほどのFC公式ページの管理画面を操作しながら、投稿文を打ち込んでいく。
「まず、さっきのタグ運用ルールを投稿して……それから時間を置いて、萌え投下ね」
「われもわくわくするのだ!」
メルが目を輝かせている。
「魔王様、何て仰ったのか教えて欲しいのだ!」
「ダメよ。これはサプライズなんだから」
私はにやりと笑った。
「ファンたちが、カップリング論争で頭がいっぱいになってるところに……この爆弾を投下するの」
まず、タグ運用ルールの投稿ボタンを押す。
そして、数分待つ。
SNSの反応を確認すると、案の定、賛否両論だ。
「公式がルール作ってくれた!」
「まぁでも当たり前の内容。守る人はもう守ってるし」
「でもやっぱりサリヴァレが至高だから!」
「いやヴァレサリだろ!」
(まだまだ収まらないわね……じゃあ、そろそろ次の一手よ!)
私は深呼吸をして、次の投稿を打ち込んだ。
________________________________________
⚖️【公式広報:魔王様耳打ち事件について】
皆さまにおかれましてはサリヴァレ・ヴァレサリ騒動で炎上中でございますが、解釈の強要は博愛でいらっしゃる魔王様の目指すところではございません。
今回鎮火のために特別にヴァレン殿に確認したところ、球技大会での耳打ちの内容は――
「民衆の持っている屋台のいちご飴が気になる。買ってこい」
とおっしゃったとのことでした。
つきましてはこちらの萌え投下にてご了承ください。
________________________________________
投稿ボタンを押す。
瞬間――
SNSが再び爆発した。
「いちご飴!!!!!」
「魔王様がいちご飴!!!!!」
「可愛すぎる死ぬ」
「あの魔王様が屋台のいちご飴に興味を……ギャップ萌えが過ぎる」
「というか、いちご飴って……魔王様の瞳の色じゃん!!!」
「赤くてキラキラしてて……確かに魔王様の瞳みたい……」
「待って、魔王様は自分の瞳に似たものに惹かれたってこと!?ナルシストで尊い!!」
「いちご飴屋に行く!!!今すぐ行く!!!!」
タイムラインがあっという間に埋め尽くされる。
そして――
『#サリヴァレ』『#ヴァレサリ』というタグが、みるみるうちに別のタグに塗り替えられていった。
『#魔王様のいちご飴』 『#魔王様の瞳』
「……成功ね」
私は満足そうに頷いた。
「すごいのだ!完全に話題が切り替わったのだ!」
メルが興奮して飛び跳ねる。
「ヴァレン、お前が買いに行かされたいちご飴が、こんな大事になるとは……」
ガルドが呆れたように笑う。
「まさか、こんな展開になるとは思わなかったよ……」
ヴァレンも苦笑している。
私はスマホの画面を見つめながら、さらなる投稿が流れてくるのを眺めた。
「あの屋台のいちご飴、完売したって!」
「別の屋台にも人が殺到してる!」
「いちご飴職人、今日は大儲けだな」
「魔王様に捧げるためにいちご飴買ってきた♥」
「いちご飴を見ると魔王様を思い出すようになってしまった……」
球技大会に合わせて開かれていた周辺の屋台は、いちご飴屋だけすぐに完売している。街の飴屋も大忙しだろう。しばらくは特設屋台も増えるに違いない。
赤くてキラキラと輝くいちご飴——確かに、魔王様の美しい赤い瞳を連想させる。
(まさか、いちご飴でここまで盛り上がるとは……でも、これが推し活の力よね)
――その日の夜。
私は自室で、再びノート型魔導デバイスを開いた。
タイムラインは、相変わらず『#魔王様のいちご飴』『#魔王様の瞳』で溢れている。
そして、いちご飴が帝国中で大人気になり、職人たちが増産に追われているというニュースまで流れていた。
「アークデモニア帝国は今日も平和ね……」
カップリング論争は、いちご飴という新たな萌えポイントによって、無事に鎮火した。そして今日も、魔王様への愛が、この国を、魔王様を、強くしている。
私はノート型魔導デバイスを閉じると、部屋の隅に飾られた魔王様の等身大パネルに向かって手を合わせた。
「魔王様、今日もお疲れ様でした。明日も、あなたのために全力で推し活します」
そう誓って、私はベッドに入る。
魔王様の抱き枕を抱きしめながら、今日見た魔王様の耳打ちシーンを思い出す。
(あんなすました顔で魔王様がいちご飴をおねだりなんてっっっ!!!萌えすぎるぅぅぅ~~~!!)
胸がきゅっとして、今夜もなかなか眠れそうにない。
__________
次回予告
ハーレムの女たちはもちろん調教済みですが!?
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ブックマークもよろしくお願いします。
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「は???耳打ち???????」
「サリヴァレきたああああああああ!!!!!」
「逆にヴァレサリでは???(冷静に考えて)」
「魔王様の吐息がヴァレンにかかってると思うと死ねる」
「いや、どう見てもヴァレンが受け顔だろ」
「リバこそ至高!異論は認めない!」
私、ラブリア=ヴェルミリオンは、スマホを握りしめたまま固まっていた。
(何が……何が起きたの……??!!)
目の前では、アークデモニア帝国球技大会の決勝戦が行われている。円形闘技場は観客で埋め尽くされ、歓声が響き渡っていた。
特等席には魔王サリオンが悠然と座り、試合を観戦している。今日のお召し物は深紅のジャケットに黒のパンツ。胸元を飾る銀のチェーンが、動くたびに煌めいている。その様子を遠目に見ながら、私は会場全体が見える位置に控えていた。
(魔王様が試合を見つめる真剣な横顔ぉぉおおおお!!!知的で素敵、好き、吐きそう!!!いえ、今はそれどころじゃない!)
私は慌てて耳の魔導通信機を起動させた。
「ヴァレン!ヴァレン!聞こえる!?」
小声で呼びかけると、すぐに応答があった。
「ラブリア?どうした、そんなに慌てて」
「SNS見た!?今、大変なことになってるわよ!」
「いや、見てない。ちょっと待ってくれ……。何だこれ!!?」
事態を知ったヴァレンも困惑している。
「一体何があったの?魔王様があなたに耳打ちしたって……本当なの?」
「ああ、本当だ。さっき試合の途中で魔王様に呼ばれて、用事を言い渡された」
「用事!?何の!?」
「それは後で話す。でも、あの時の様子を誰かが撮影してたみたいだな……俺が身をかがめて魔王様の耳元に顔を寄せた瞬間を」
私は再びスマホの画面を見た。タイムラインには、問題のシーンを捉えた写真や動画が次々とアップされている。
特等席に座る魔王様がヴァレンを手招きし、立っているヴァレンが身をかがめて魔王様の耳元に顔を寄せる瞬間——確かに、傍から見れば、とても親密な雰囲気に見える。
(何これ!??てぇーてぇーーーーーー!!!わかる、私でもサリヴァレ叫ばずにいられない!!!)
「これは……まずいわね」
「まずいって、何がだ?」
「ヴァレン、あなた……雌ゾンビを甘く見てるわよ」
「雌ゾンビか……」
この世界には「雌ゾンビ」と呼ばれる者たちがいる。
彼女たちは、男性同士の麗しき関係性を愛でることに命を燃やす、特殊な感性を持つファンの総称だ。ヒューマンの世界で俗に言う、腐女子である。
雌ゾンビたちの中でも、特に魔王様と四天王の一人であるヴァレンのカップリングを支持する者たちが大勢いる。
「サリヴァレ」——魔王様が攻めでヴァレンが受け、というのが主流派。だが「ヴァレサリ」——ヴァレンが攻めで魔王様が受け、という熱烈な支持者も少なくない。
そして今回の耳打ちシーンで、雌ゾンビたちが一斉に沸騰したのだ。
実を言うと、私自身も雌ゾンビの一人だ。魔王様に関しては何でもOK——夢女子にもなるし、カップリングも楽しむ。基本的に同担OK。そして密かに、サリヴァレ派である。細々と二次創作もしているが、それは誰にも内緒だ。
私はスマホの画面を次々とスクロールした。タイムラインは完全にカオス状態だ。
『#サリヴァレ』『#ヴァレサリ』が同時トレンド入りしている。
「耳元に息がかかる距離感……これは攻めの所作」
「いやヴァレンが身をかがめてるってことは、魔王様に誘われてるんだろ?ヴァレサリでは?」
「スロー再生したけど魔王様の表情が完全に攻め顔」
「逆だ!耳打ち後のヴァレン様の微笑みが慈愛に満ちておる!!」
「リバ派の私、高みの見物」
さらには、早くも推し絵や二次創作のイラストまで投稿され始めている。
(雌ゾンビたちの行動力!!!特にクリエイター陣、相変わらず凄まじいわね……)
「ラブリア?聞いてるか?」
ヴァレンの声で我に返る。
「え、ええ。聞いてるわよ」
「それで、この状況……どうすればいい?」
「とりあえず、四天王で緊急会議ね。この騒動、放置できないわ」
球技大会が終わり、魔王様が居城に戻られた後、私たちは例の会議室——「魔王様公式FC本部」に集まった。
既にガルドとメルは席についている。私とヴァレンが最後に入室すると、メルが目を輝かせて駆け寄ってきた。
「ヴァレン!SNS見たのだ!魔王様との耳打ちシーン、ばっちり撮られてる!」
「あ、ああ……」
ヴァレンは困ったような表情で頭を掻く。
「SNSが大騒ぎなのだ!『サリヴァレ』『ヴァレサリ』でトレンドが埋まってるのだ!」
ガルドは戸惑いながら口を開いた。
「俺も一応SNSは見てるが……正直、何が起きているのかよくわからん」
武人として魔王様を崇拝しているガルドには、こういったオタク文化は理解できないのだろう。私は溜息をつきながら説明を始めた。
「簡単に言えば、魔王様とヴァレンの『カップリング』——つまり恋愛関係を妄想する人たちが大勢いるの。今回の耳打ちシーンが、その妄想に火をつけたってわけ」
「カップリング……恋愛……」
ガルドが眉をひそめる。
「魔王様もヴァレンも、そういう関係ではないだろう?」
「もちろんよ」
私は頷いた。
「でも、ファンは妄想するの。その妄想が『推しへの愛』となって、魔王様の力になる。それがこの世界の真理でしょう?」
ヴァレンが腕を組んで呟いた。
「俺も魔王様もそういう関係じゃないのに、大勢にそう思われてるのは何とも言えない気分だ……」
「でもこの熱量がパワーになってるのも真実よ」
私はヴァレンを真っ直ぐ見つめた。
「あなただって多少力が増してるんでしょう?魔王様にはかなりの力が集まっているでしょうね」
「……確かに」
ヴァレンが認めた。
「さっきから、なんだか体が軽い。魔力も増してる気がする」
メルが勢いよく立ち上がった。
「ヴァレンすごいのだ!魔王様と一緒に力を得てるのだ!いっそ魔王様にその身を差し出すのだ!」
「何言ってんだ!」
ヴァレンが顔を赤くして叫ぶ。
「ダメよ、メル!」
私は冷静に首を横に振った。
「妄想の余地を残している状態がいいんだから。実際にそういう関係になったら、逆に興が冷める人もいるのよ」
ガルドが首を傾げる。
「うーむ、俺にはわからん……」
私は立ち上がり、ホワイトボードに向かった。
「とにかく、今は対応を考えないと。このまま放置すれば、『サリヴァレ派』と『ヴァレサリ派』の対立が激化するわ」
「対立?」
「ええ。自分の信じる解釈こそが正しいと、お互いに主張し合うの。タグ荒らしや、過度な布教活動、解釈の押し付け……」
私はホワイトボードに問題点を列挙していく。
「最悪の場合、ファン同士の諍いになって、魔王様のイメージダウンにも繋がりかねないわ」
「それは困るな……」
ヴァレンが真剣な表情になった。
「じゃあ、どうするんだ?」
「まずは、公式として指針を示すわ」
私はノート型魔導デバイスを起動して、魔王様FC公式ページの管理画面を開き、文章を打ち始めた。
「タグの運用ルールを明確にして、お互いの解釈を尊重するよう呼びかける。これで、少しは秩序が保てるはずよ」
数分後、私は完成した文章を三人に見せた。
________________________________________
⚖️【公式広報:タグ運用に関するお知らせ】
現在、魔王サリオン様とヴァレン殿に関する創作活動が大変活発であり、誠に尊きことでございます。
つきましては、皆さまの尊き布教をより平和かつ快適に行っていただけますよう、以下の指針を設けました。
• 「#サリヴァレ」:魔王様×ヴァレン殿(魔王様が攻め)
• 「#ヴァレサリ」:ヴァレン殿×魔王様(ヴァレン殿が攻め)
• 「#リバ注意」:両方の要素を含む場合の注意喚起タグ
• 「#サリヴァレ考察」「#サリヴァレ供給」など、派生タグはご自由にお使いください。
※解釈の押し付け、タグ荒らし、過度な布教活動は、博愛と秩序を重んじる魔王様の御心に反する行為です。 推しは推し方の数だけ尊いことを、どうかお忘れなきよう。
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「……なんだか、すごく丁寧な文章だな」
ヴァレンが苦笑する。
「公式広報ですもの。品位が大切よ」
私は胸を張った。
「これで投稿すれば、ある程度は落ち着くはず……」
「ある程度?」
ガルドが首を傾げる。
「完全には収まらないってことか?」
「ええ。タグを分けても、派閥争いは続くでしょうね。特に熱烈なファンほど、自分の解釈に自信を持ってるから……」
私は溜息をついた。
その時、ヴァレンが何かを思いついたような表情になった。
「なあ、ラブリア」
「何?」
「対立がなかなか収まらないんだったら、別のエサを投下したらいいんじゃないか?」
「エサ?何よ、何かいいネタでもあるの?」
ヴァレンがニヤリと笑う。
「魔王様が俺に耳打ちした内容とか……」
「!!!」
私は思わず身を乗り出した。
「知りたい!!知りたいわ!!でも……話して問題ないのかしら?」
「大丈夫だと思うぞ。別に機密事項ってわけじゃないし」
ヴァレンは私に近づくと、耳元で小声で囁いた。
「ごにょごにょ……」
「――っ!!!」
私の顔が一気に熱くなる。
「それは……それは……!!」
(尊いぃぃぃ!尊すぎるぅぅぅ!!魔王様のそういうところ!!!最&高!!!)
メガネの奥で目がハートマークになりそうになるのを必死に堪える。
「ラブ?どうしたのだ?」
メルが不思議そうに覗き込んでくる。
「な、何でもないわ!ただ……これは使えるわね。ヴァレン、一応魔王様に公開して問題ないか確認とってくれる?」
「おお。今はテラスで寛いでいらっしゃるはずだ。すぐに確認してくる」
ヴァレンは早速魔王様のもとへ駆けて行った。
――数分後。
魔王様からのOKの返事を聞いた私は、早速SNSに投稿する準備を始めた。
「よし、これで行くわよ」
私は先ほどのFC公式ページの管理画面を操作しながら、投稿文を打ち込んでいく。
「まず、さっきのタグ運用ルールを投稿して……それから時間を置いて、萌え投下ね」
「われもわくわくするのだ!」
メルが目を輝かせている。
「魔王様、何て仰ったのか教えて欲しいのだ!」
「ダメよ。これはサプライズなんだから」
私はにやりと笑った。
「ファンたちが、カップリング論争で頭がいっぱいになってるところに……この爆弾を投下するの」
まず、タグ運用ルールの投稿ボタンを押す。
そして、数分待つ。
SNSの反応を確認すると、案の定、賛否両論だ。
「公式がルール作ってくれた!」
「まぁでも当たり前の内容。守る人はもう守ってるし」
「でもやっぱりサリヴァレが至高だから!」
「いやヴァレサリだろ!」
(まだまだ収まらないわね……じゃあ、そろそろ次の一手よ!)
私は深呼吸をして、次の投稿を打ち込んだ。
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⚖️【公式広報:魔王様耳打ち事件について】
皆さまにおかれましてはサリヴァレ・ヴァレサリ騒動で炎上中でございますが、解釈の強要は博愛でいらっしゃる魔王様の目指すところではございません。
今回鎮火のために特別にヴァレン殿に確認したところ、球技大会での耳打ちの内容は――
「民衆の持っている屋台のいちご飴が気になる。買ってこい」
とおっしゃったとのことでした。
つきましてはこちらの萌え投下にてご了承ください。
________________________________________
投稿ボタンを押す。
瞬間――
SNSが再び爆発した。
「いちご飴!!!!!」
「魔王様がいちご飴!!!!!」
「可愛すぎる死ぬ」
「あの魔王様が屋台のいちご飴に興味を……ギャップ萌えが過ぎる」
「というか、いちご飴って……魔王様の瞳の色じゃん!!!」
「赤くてキラキラしてて……確かに魔王様の瞳みたい……」
「待って、魔王様は自分の瞳に似たものに惹かれたってこと!?ナルシストで尊い!!」
「いちご飴屋に行く!!!今すぐ行く!!!!」
タイムラインがあっという間に埋め尽くされる。
そして――
『#サリヴァレ』『#ヴァレサリ』というタグが、みるみるうちに別のタグに塗り替えられていった。
『#魔王様のいちご飴』 『#魔王様の瞳』
「……成功ね」
私は満足そうに頷いた。
「すごいのだ!完全に話題が切り替わったのだ!」
メルが興奮して飛び跳ねる。
「ヴァレン、お前が買いに行かされたいちご飴が、こんな大事になるとは……」
ガルドが呆れたように笑う。
「まさか、こんな展開になるとは思わなかったよ……」
ヴァレンも苦笑している。
私はスマホの画面を見つめながら、さらなる投稿が流れてくるのを眺めた。
「あの屋台のいちご飴、完売したって!」
「別の屋台にも人が殺到してる!」
「いちご飴職人、今日は大儲けだな」
「魔王様に捧げるためにいちご飴買ってきた♥」
「いちご飴を見ると魔王様を思い出すようになってしまった……」
球技大会に合わせて開かれていた周辺の屋台は、いちご飴屋だけすぐに完売している。街の飴屋も大忙しだろう。しばらくは特設屋台も増えるに違いない。
赤くてキラキラと輝くいちご飴——確かに、魔王様の美しい赤い瞳を連想させる。
(まさか、いちご飴でここまで盛り上がるとは……でも、これが推し活の力よね)
――その日の夜。
私は自室で、再びノート型魔導デバイスを開いた。
タイムラインは、相変わらず『#魔王様のいちご飴』『#魔王様の瞳』で溢れている。
そして、いちご飴が帝国中で大人気になり、職人たちが増産に追われているというニュースまで流れていた。
「アークデモニア帝国は今日も平和ね……」
カップリング論争は、いちご飴という新たな萌えポイントによって、無事に鎮火した。そして今日も、魔王様への愛が、この国を、魔王様を、強くしている。
私はノート型魔導デバイスを閉じると、部屋の隅に飾られた魔王様の等身大パネルに向かって手を合わせた。
「魔王様、今日もお疲れ様でした。明日も、あなたのために全力で推し活します」
そう誓って、私はベッドに入る。
魔王様の抱き枕を抱きしめながら、今日見た魔王様の耳打ちシーンを思い出す。
(あんなすました顔で魔王様がいちご飴をおねだりなんてっっっ!!!萌えすぎるぅぅぅ~~~!!)
胸がきゅっとして、今夜もなかなか眠れそうにない。
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次回予告
ハーレムの女たちはもちろん調教済みですが!?
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ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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