2 / 76
序章 プロローグ
2話 殺し屋のレッド②
しおりを挟む
ブルーがスラム街に着いた頃には、もうスウァムのロックは完了していた。
倒れているターゲット。一目で死んでいるのが分かる。その傍らでは目を塞ぎ手を合わせている相棒。いつもこれをやっている。
ブルー「やっぱりこっちだったわね。」
レッド「ああ。」
ブルー「いつも気になってるんだけど、何やってるのそれ?」
レッド「分からないか?死者の冥福を祈ってるんだ。」
この男はまた意味の分からない事を言う。
ブルー「冥福?殺した人間が冥福を祈るって言うの?」
レッド「仕事の間は何も考えないんだ。せめて終わった後位は考えてやらないと。」
ブルー「現場に長居するのはどうかと思うわよ?貴方、こんなんでこの仕事やっていけるの?」
レッド「今までやって来れたじゃないか。」
本当に、ああ言えばこう言う。
ブルー「はいはい、もうお祈りは済んだでしょ?いい加減行くわよ。」
レッド「そうだな。そろそろ帰るか。」
ブルー「金の受け渡しは明日、8:00にアサシン本部で。」
レッド「了解。」
ブルーは帰ってしまった。俺も帰ろう。
あの人にも家族が居たんだろうな。
残された者の痛みや苦しみを知っているのに。理解出来るのに。
俺はこの仕事を辞める事が出来ない。
…いや、他の方法を知らないだけなんだ。
家に着いた。サッとシャワーを浴びて軽く食事を摂る。ブルーと言い合いしたせいか胸がザワつく。この感じだとあの日の夢を見そうだな。
アサシンという仕事は好きでやっている訳じゃ無い。当たり前だろう?でも俺の目的の為には、この方法が一番だと思いここまで来た。
そのせいかどうかは分からないが、仕事に違和感を覚えたり深く考えたりした日には決まって同じ夢を見てしまう。
夢って言うのは記憶の残骸だと聞いた事がある。
だとするならば、俺の周りは残骸だらけなんだろうな。
レッド「...ここは何処だ?」
気付くと村から山へ向かう道の途中に居た。だいたい夕方前だろうか?
レッド「あ、そうか。今から狩りに向かうんだったな。」
腰にはいつもの短剣。背中にはいつもの弓矢のセット。猪でも取れれば一番良いんだけど、今日は居るかな?
刹那、村の方から轟音が聞こえる。
レッド「えっ?」
煙があがっているのが見える。
その瞬間に俺は理解した。
だいたいいつもここで気付く。
これはあの日の夢だと。
全てを奪い去ってしまった悪夢だと。
村へ向かって走り出す。夢特有の現象だろうか?勢いは出ずに、まるでスローモーションの様にゆっくり進んでいく。
でも気付くと場面は村の入口だった。燃え盛る炎と立ち上る煙であまり見えない。
急いで家に行く。
レッド「誰も居ない。何処かに避難したのか?」
焦りながらも家を出る。そして広場の前で父親を発見する。
レッド「父さん!?大丈夫か?」
父親「おお…レシ…ア…」
父親は全身に傷を負っており最早、虫の息の様だ。
レッド「何が…何があったんだ!?」
父親「ア…アサシンが…攻めてきて…」
レッド「アサシンだって?」
父親「村の…たか…ら…」
レッド「父さん?」
そのまま父親は動かなくなった。
レッド「父さん!父さん!」
もう何度も見た夢だ。ノンフィクションの俺の過去だ。この夢の中で何度も村は滅び、父は死んでいった。一切を違えぬ全く同じ悪夢。
そして何度も叫ぶ。
レッド「うわあああああっ!」
洗練された役者の様に、俺は同じ事を呟く。
レッド「許さない…許さないぞ!アサシン!」
どれだけ睡眠時間が違えど、同じ始まり方で同じ終わり方をする。
レッド「目覚ましにも使えないな。」
目が覚めてボーッとした状態でポツリと呟いた。現実に戻ってしまえば暢気なものだ。目覚ましが鳴る前に起きてしまったが、寝直す気にもなれずに起き上がる。仕方がない、シャワーでも浴びるか。
ブルー「遅かったじゃない。」
レッド「後1分ある。遅刻した訳じゃ無い。」
ブルー「はいはい。行くわよ。」
ドアをノックして中に入る。
男「あ、二人ともおはよう。」
ブルー「おはよう、バダグ。」
レッド「うっす。」
バダグと呼ばれた男はニコニコしながら二人を迎えた。
バダグ「いやぁ、昨夜はお疲れ様。ちゃんとロック出来て一安心だよ。」
レッド「そうか。」
ブルー「賞金は?」
バダグ「冷たいなぁ…はい。」
金の入った麻袋を2つ机の上に置く。
バダグ「全部で30,000Gだ。いつもの通り折半で良いんだろ?」
レッド「ああ、じゃあな。」
ブルー「じゃあね。」
バダグ「冷たいって。いやいや、今日は依頼があるんだ。」
ブルー「あら、連日依頼があるなんて。」
レッド「珍しいじゃないか。」
普通、殺しなんて依頼が毎日来るなんて事は無い。昨夜の仕事と関係でもあるのか?
バダグ「昨夜のよりか安い仕事になっちゃうんだけどね。」
ブルー「どんな感じ?」
バダグ「ハンターの魔法使いを殺して欲しいんだってさ。」
レッド「怨みか何かか?」
バダグ「そうみたいだね。今日の夕方になるんだけど?」
レッド「俺は構わない。」
ブルー「私も良いわよ。」
バダグ「決まりだね。」
パチンと指を鳴らすバダグ。格好良く…は無い。
バダグから詳しい内容を聞く。なるほど、護衛付きではあるが簡単そうな依頼だ。
ブルー「時間までどうするの?」
レッド「家で寝るわ。」
ブルー「分かったわ。じゃあ17:30に現場の河川敷で。」
レッド「理解。」
さて、商店で回復薬とか食べ物とかを買い足してから寝るか。
倒れているターゲット。一目で死んでいるのが分かる。その傍らでは目を塞ぎ手を合わせている相棒。いつもこれをやっている。
ブルー「やっぱりこっちだったわね。」
レッド「ああ。」
ブルー「いつも気になってるんだけど、何やってるのそれ?」
レッド「分からないか?死者の冥福を祈ってるんだ。」
この男はまた意味の分からない事を言う。
ブルー「冥福?殺した人間が冥福を祈るって言うの?」
レッド「仕事の間は何も考えないんだ。せめて終わった後位は考えてやらないと。」
ブルー「現場に長居するのはどうかと思うわよ?貴方、こんなんでこの仕事やっていけるの?」
レッド「今までやって来れたじゃないか。」
本当に、ああ言えばこう言う。
ブルー「はいはい、もうお祈りは済んだでしょ?いい加減行くわよ。」
レッド「そうだな。そろそろ帰るか。」
ブルー「金の受け渡しは明日、8:00にアサシン本部で。」
レッド「了解。」
ブルーは帰ってしまった。俺も帰ろう。
あの人にも家族が居たんだろうな。
残された者の痛みや苦しみを知っているのに。理解出来るのに。
俺はこの仕事を辞める事が出来ない。
…いや、他の方法を知らないだけなんだ。
家に着いた。サッとシャワーを浴びて軽く食事を摂る。ブルーと言い合いしたせいか胸がザワつく。この感じだとあの日の夢を見そうだな。
アサシンという仕事は好きでやっている訳じゃ無い。当たり前だろう?でも俺の目的の為には、この方法が一番だと思いここまで来た。
そのせいかどうかは分からないが、仕事に違和感を覚えたり深く考えたりした日には決まって同じ夢を見てしまう。
夢って言うのは記憶の残骸だと聞いた事がある。
だとするならば、俺の周りは残骸だらけなんだろうな。
レッド「...ここは何処だ?」
気付くと村から山へ向かう道の途中に居た。だいたい夕方前だろうか?
レッド「あ、そうか。今から狩りに向かうんだったな。」
腰にはいつもの短剣。背中にはいつもの弓矢のセット。猪でも取れれば一番良いんだけど、今日は居るかな?
刹那、村の方から轟音が聞こえる。
レッド「えっ?」
煙があがっているのが見える。
その瞬間に俺は理解した。
だいたいいつもここで気付く。
これはあの日の夢だと。
全てを奪い去ってしまった悪夢だと。
村へ向かって走り出す。夢特有の現象だろうか?勢いは出ずに、まるでスローモーションの様にゆっくり進んでいく。
でも気付くと場面は村の入口だった。燃え盛る炎と立ち上る煙であまり見えない。
急いで家に行く。
レッド「誰も居ない。何処かに避難したのか?」
焦りながらも家を出る。そして広場の前で父親を発見する。
レッド「父さん!?大丈夫か?」
父親「おお…レシ…ア…」
父親は全身に傷を負っており最早、虫の息の様だ。
レッド「何が…何があったんだ!?」
父親「ア…アサシンが…攻めてきて…」
レッド「アサシンだって?」
父親「村の…たか…ら…」
レッド「父さん?」
そのまま父親は動かなくなった。
レッド「父さん!父さん!」
もう何度も見た夢だ。ノンフィクションの俺の過去だ。この夢の中で何度も村は滅び、父は死んでいった。一切を違えぬ全く同じ悪夢。
そして何度も叫ぶ。
レッド「うわあああああっ!」
洗練された役者の様に、俺は同じ事を呟く。
レッド「許さない…許さないぞ!アサシン!」
どれだけ睡眠時間が違えど、同じ始まり方で同じ終わり方をする。
レッド「目覚ましにも使えないな。」
目が覚めてボーッとした状態でポツリと呟いた。現実に戻ってしまえば暢気なものだ。目覚ましが鳴る前に起きてしまったが、寝直す気にもなれずに起き上がる。仕方がない、シャワーでも浴びるか。
ブルー「遅かったじゃない。」
レッド「後1分ある。遅刻した訳じゃ無い。」
ブルー「はいはい。行くわよ。」
ドアをノックして中に入る。
男「あ、二人ともおはよう。」
ブルー「おはよう、バダグ。」
レッド「うっす。」
バダグと呼ばれた男はニコニコしながら二人を迎えた。
バダグ「いやぁ、昨夜はお疲れ様。ちゃんとロック出来て一安心だよ。」
レッド「そうか。」
ブルー「賞金は?」
バダグ「冷たいなぁ…はい。」
金の入った麻袋を2つ机の上に置く。
バダグ「全部で30,000Gだ。いつもの通り折半で良いんだろ?」
レッド「ああ、じゃあな。」
ブルー「じゃあね。」
バダグ「冷たいって。いやいや、今日は依頼があるんだ。」
ブルー「あら、連日依頼があるなんて。」
レッド「珍しいじゃないか。」
普通、殺しなんて依頼が毎日来るなんて事は無い。昨夜の仕事と関係でもあるのか?
バダグ「昨夜のよりか安い仕事になっちゃうんだけどね。」
ブルー「どんな感じ?」
バダグ「ハンターの魔法使いを殺して欲しいんだってさ。」
レッド「怨みか何かか?」
バダグ「そうみたいだね。今日の夕方になるんだけど?」
レッド「俺は構わない。」
ブルー「私も良いわよ。」
バダグ「決まりだね。」
パチンと指を鳴らすバダグ。格好良く…は無い。
バダグから詳しい内容を聞く。なるほど、護衛付きではあるが簡単そうな依頼だ。
ブルー「時間までどうするの?」
レッド「家で寝るわ。」
ブルー「分かったわ。じゃあ17:30に現場の河川敷で。」
レッド「理解。」
さて、商店で回復薬とか食べ物とかを買い足してから寝るか。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる