Red Assassin(完結)

まさきち

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1章 時間の路

14話 ルーン

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広い空間にドアがぽつんとあった。



レッド「何か…不思議な場所だ。俺は何でこんな所に居るんだろうか。」




ドアの前に立つ。ドアは完全にドアだけで存在しており、壁も裏も無かった。全く開ける必要性すら感じない。振り返ると、そこに何者かが降り立った。


レッド「な、何者だ?」


それは大きな羽を付けており、まるで天使か何かの様だった。


天使?「私はルーン。時間の流れを見守る守護霊です。」
レッド「ルーン…だって?」
ルーン「たった1人。しかもいくら高純度とは言え、そんな小さなルーン鉱石でここへ来るとは…余程、ルーンナーとしての能力を有しているのですね。」


ルーンナー。俺の村でルーン鉱石を媒体に占いとかをする職業の事だ。本当かどうかは分からないが、ルーンの力を開放する事の出来る者という意味もある。


レッド「ちょっと待って。俺はルーンナーじゃない。ルーンナーとしての訓練も修行もしちゃいないんだ。」
ルーン「そうでしたか。それでも貴方は此処へ来る事が出来た。この路を開く事が出来た。それは紛れもなく貴方の中に眠るルーンナーの血の力なのです。」
レッド「う…訳が分からない。何で俺は此処へ?」

ルーン「ここは時間の路(ときのみち)。時間の流れの外側なのです。」
レッド「時間の流れの…外側?」
ルーン「時間を遡り、本来あった事象・事柄を変化させる事は出来ません。それが例外的に可能なのがルーンナーなのです。」
レッド「え、それって、とんでもない事なんじゃ…」

ルーン「そう。つまり歴史を変える事が出来るのです。」
レッド「そんな事が出来たら、世界が壊れてしまうじゃないか。」
ルーン「壊れるですか…この今の歴史が、既に壊れてしまっているとは思いませんか?」
レッド「それは…」

ルーン「過去にも数多のルーンナーが歴史を変えて来ました。しかし実際にそれらは恐ろしい事。故に彼等は力の行使を自分達が生き残る為だけの、最低限の物に抑えて来ました。」
レッド「…言いたい事は何となくだけど分かった。でも俺は此処へ来ようとして来た訳じゃないんだけど。」
ルーン「貴方の強い想いが首から下げている小さなルーン鉱石に反応したのでしょう。貴方は今までの人生で何か後悔をした事はありませんか?」
レッド「それは…」


ルーン「ルーンナーの能力を有する貴方であれば、それらをやり直す事が出来るかもしれません。記憶などは、ほぼその時の状態に戻されてしまいます。」
レッド「え、それじゃあどうやって変えて行くって言うんだ?」
ルーン「貴方の得た物や能力は今のまま受け継がれます。それにより少しずつ何かが変わっていくはずです。また、何かのきっかけで記憶が欠片でも戻る可能性もあります。先人たちはそうやって新しい可能性を切り開いていったのです。」

レッド「…俺に出来るんだろうか。」
ルーン「此処へ来た時点で、貴方のルーンナーとしての能力は疑う余地はありません。そこに見えるドアを開けてみてはいかがでしょうか?」
レッド「あのドアは何なんだ?」
ルーン「あれは時間(とき)の扉。貴方が今回此処へ訪れた切っ掛けとなる時間軸、その少し前に移動する事が可能です。」
レッド「…時間の扉。」



あのドアを開いて本当に過去へ戻れるのか?バダグ達に騙される事を防げるのか?ナーダを救えるのか?…そもそもどこまで戻されるんだ?

色々な考えが頭に浮かぶが、結局は体験しなければ分からないだろう。


レッド「因みに、その近くに浮いている光の粒は何なんだ?」
ルーン「これは貴方がルーンナーとしての能力を使用せずに今のままの時間軸で進んでいった時に、どの様な結末を迎えるかを垣間見る事が出来る魔力の塊です。たまに貴方の知らない真実が眠る過去の世界を垣間見れる事もありますし、全く違う世界線の貴方を知る事もあります。横話の間、とも呼ばれています。」
レッド「どう言う事だ?未来とかが見えるって事なのか?」
ルーン「有体に言えばそうです。ここは時間の路、今と言う概念がありません。全ての時間軸は繋がっていて、また同列なのです。どの状態でもどの横話の間へも入れます。」

レッド「本当に意味が分からない。取り敢えず、どこからかは分からないがやり直しが出来るんだな。んで、この横話の間で実際にどうなっていくかの未来が見えたり、たまに過去やIFの世界を見れると。」
ルーン「細かく言うと違うのですが、何となくの認識としては概ね合っています。」
レッド「分かった。」




※横話Aが解禁されました。現状でのエピローグを垣間見る事が可能になります。ただし、これがこの物語の最終的なエピローグではありません。レッドはこのエピローグを見た後、また時間の扉を開ける事になります。




レッドは躊躇いながらもゆっくりと時間の扉の前へ行く。


レッド「何処まで戻るかは教えてくれないのか?」
ルーン「それは私には分かりません。貴方の深層心理に潜む意思がそれを決定するのです。」
レッド「今一番後悔しているのは…やっぱりナーダの事か。ナーダの死ぬ前まで戻るのか。村が襲われる日まで戻るのか。」



ゆっくりと静かに時間の扉を開けた。途端に光が拡がり、レッドの身体を包む。時間の路へ来た時と同じ様な感覚に包まれながら、レッドは目を塞いだ。




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