聖剣の光Ⅰ(完結)

まさきち

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ニャン太編

「ャ」のお話

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一瞬の閃光の後、コズキのバリアが切り裂かれた。


バチバチバチッ!


バリアは散り散りになり消えて行った。その奥には一匹の鶏が居た。


ニャン太「こいつは…?」
コズキ「なんということでしょう。主竜様に授かったバリアが。」



鶏「案外脆い物だったな。このバリアは。」
ニャン太「何か分からないけど、これで勝負あったんじゃないか?お守りを返せ。」

コズキ「あわわわ…」
ニャン太「いい加減にしろ!」



ニャン太は身体に魔力を宿し、そのままコズキに体当たりした。ニャン太のタックル、ニャンタックルだった。


ドゴッ!


コズキは反応すら出来ずに正面から攻撃を食らい、吹っ飛んだ。


ニャン太「さあ、お守りを返せ。」
コズキ「うぐぐ…あれはもう主竜様へ送ってしまったわ。どうしても取り返したいのなら主竜の塔へ行くのね。」
ニャン太「にゃんだって?」

鶏「主竜が絡んでいる様だな。どうやら面倒な事になっていそうだ。まあ私には関係ないがな。」
ニャン太「アンタは何者なんだ?」
鶏「私はただの鶏。皆は私をフーテンの鶏さんと呼ぶ。」


そう言いながら鶏はカツカツと足音を鳴らし去っていった。よく分からないやつだった。



ニャン太「…お守りに思い入れは正直ないんだけどな。たまたま助けた猫にお礼に貰っただけだし。まあ、しょうがない、どうせ主竜の塔も行く予定だったんだ。」



ニャン太は洞窟を後にした。



また橋の所へ戻って来る。先に進むにはどうしてもこの橋を超えないといけない。


ニャン太「よし…全力ジャンプで飛び越えてみるか。」


ニャン太は自走を付けて全力で走り出した。崖のギリギリでジャンプ。



ニャン太「うわあ、最高のジャンプをしてしまったぜ!」


良い場所で踏切を行い、ジャンプ加減も最高だった。しかし距離は足りなかった。




ニャン太「やべえ!」


何とか爪が橋の端に引っ掛かる。片手だけでギリギリぶら下がっている状態。



ニャン太「これは落ちるしかないな…死にはしないが、痛いのは嫌だな。」


なるべく痛くなさそうな落ちルートを探していると、急に身体がフワッと浮いた。


ニャン太「えっ!?」


見ると大きな虎がニャン太を橋の上に引っ張っていた。




ニャン太「ありがとう、助かった。」
虎「大丈夫か?それともああいうのが流行っているのか?」
ニャン太「そんな訳あるか。飛び越え損じて落ちる所だったんだ。」

虎「ワシは虎だ。この先の虎の楽園で暮らしている。」
ニャン太「虎の楽園…こんなに近いのか。」
虎「来てみるか?大したものは無いけどな。」






虎の楽園は…ただの村だった。


ニャン太「楽園感なんてねえし!」
虎「小さい村だが食べ物は沢山あるし、寝床もある。ワシたち虎には楽園だ。」
ニャン太「なるほどな…」


虎「んで、お前はどこに向かってたんだ?」
ニャン太「ああ、主竜の塔って所に行くんだ。」
虎「お前、主竜の手先か!」

ニャン太「え、違…」



虎はいきなり襲い掛かってきた。巨大な肉球を飛び退いてかわす。


ニャン太「でかい肉球…かっけえ!」
虎「ガルルルル!」


虎の再攻撃をかわして肉球裏拳を叩き込む。しかし流石に虎にはダメージが通らない。


ニャン太「落ち着け。俺は奪われたお守りを取り返しに行くんだよ。」
虎「…お守りとな?」
ニャン太「うわあ、めっちゃ話の分かるヤツだな。」



ニャン太は事の経緯を説明した。



虎「がははは、すまんすまん。早とちりってやつだな。」
ニャン太「いや、話が出来るヤツで良かったぜ。」
虎「最近、主竜の手下動物が楽園の食べ物を盗みに来るのでな。」

ニャン太「アンタは主竜とは関係ないんだな。」
虎「おうよ。よく分からいヤツは嫌いだな。虎は見たものしか信じないのだ。」
ニャン太「分かりやすいな。それで、主竜の塔はこの先を行けばあるんだよな?」

虎「おうよ。ほれ、遠くに塔が見えるだろ?」
ニャン太「言われてみれば、あるな。あれがそうか。」
虎「よし、早とちりしたお詫びにこれをやろう。」


虎は寝床から爪を持ってきた。


ニャン太「爪がはがれたのか?」
虎「これは付け爪だ。虎用の爪だから強力だぞ。」
ニャン太「マジか、これで俺も虎だな!」
虎「うむ、がははは!」



ニャン太は虎の付け爪を装備した。


ニャン太「かっけえ!」
虎「これで主竜をぶっ飛ばしてこいや。」
ニャン太「任せろ!」




テンションの上がったニャン太は颯爽と走り出した。


ニャン太「塔までは…走って10分程度ってとこか。」



道は段々と細くなっていく。道の幅が5メートル程まで狭まった辺りで塔がはっきりと見えた。


ニャン太「あれが主竜の塔の入り口だな。」


特に何者かの妨害も無く、ニャン太は塔までたどり着けた。



ニャン太「さて、行くか。」


扉は鍵が掛かっておらず、ゆっくりと開いていく。中には階段があり、その前に馬が立っていた。



馬「何だお前は、不法侵入だぞ。」
ニャン太「動物に適応されるんかよ、それって。」
馬「確かに…」


馬は暫く考えこむ。基本的に動物たちは単純なのかもしれない。


馬「まあいい。私は主竜の塔の門番、メズキだ。」
ニャン太「え、門番だったらここじゃなくて門の前に居ろよ。」
メズキ「確かに…」


メズキは暫く考えこむ。ここまで来ると単純では無く、バカなのかもしれない。


メズキ「まあいい。とにかくここを通す訳にはいかない。」
ニャン太「全く、どっちにしてもバトルなんだろ?さっさとやるぜ。」


ニャン太も単純だった。




メズキは体当たりをしてきた。基本的に動物の攻撃は種類が限られている。ニャン太は体当たりをかわし、後ろから蹴り込んだ。


メズキ「うぎゃあ!」


メズキはそのまま塔の外へ飛んで行った…ほとんどは自分の体当たりの勢いでだが。ニャン太は扉を閉めた。前足を手として使えないあいつは、扉を開けられないだろう。



塔の中は迷路ほどではないが、凝った造りになっている。何故か途中で外に出て、非常階段みたいな場所を通らないと上に行けなかったり…


ニャン太「これ不便じゃないか?住んで居る主竜って奴も。」




そしてやっと、最上階らしき場所へ辿り着いた。ここだけ他の階とは感じが違う。

生活感があると言うか何と言うか…取り敢えず、ここに主竜が居るのだろう。



扉の先には、王の間みたいな場所が待っていた。広めの場所に赤い絨毯。奥には玉座もあり、そこに一匹の竜が鎮座していた。


ニャン太「お前が主竜か?」
主竜「そうだ。お前が報告にあった猫か。コズキやメズキも倒した様だし、だいぶ出来ると見た。」
ニャン太「あのさ、そんな事はどうでも良いの。取り敢えずお守りを返せよ。」
主竜「良いだろう。そこの机に置いてある。」


確かに机の上には盗られたお守りがあった。ニャン太はそれを回収する。他にも机には色々な物が置いてあった。思ったよりも乱雑だ。


主竜「お前の力を見込んで頼みがある。」
ニャン太「頼みだって?」
主竜「私はこの動物が蔓延る国を破壊する。その手伝いをして欲しいのだ。」
ニャン太「何だって!?動物の国を破壊?」

主竜「そうだ。何の役にも立たない無能な動物が多すぎる。動物は私の統治の元、有能な者だけが残れば良い。」
ニャン太「いやいや、意味が分からない。何を言ってるんだ、お前は。」
主竜「協力するのなら、お前だけは助けてやっても良いぞ。」
ニャン太「舐めんじゃねえよ。」


主竜「ふん。今猫の村にライオンを向かわせている。このままだと猫は全滅だ。お前が協力すれば猫の村だけでも助けるぞ?」
ニャン太「言ってる事がお願いから脅迫に変わってきてるぜ。お前の言う事なんて信用出来ないし、そもそもお前に協力する気はない。」

主竜「ならば仕方がないな。この話を聞いてしまった以上は、生きては返せない。死んで貰うとしようか。」
ニャン太「はん。その方が話は早そうだな。」



相手はドラゴンタイプか。じじいと魔王の決戦直前に戦ったドラゴンよりかは小さいが。


ニャン太「お前を倒して、猫の村も救ってやるよ。」
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