魔王と勇者と放浪の大賢者【一章完結済】

MINORI

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第二章

2-1:ミカを探して1カ月「魔王様出陣」

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細々とですが、二章を始めてみます。読んで頂けたら嬉しいです。


ーーーーーーーーーー



『……探さないでください』


そんな書き置きを残して、ミカ様が二度目の家出(城出?)をなさいました。

実況はワタクシ、ひとつ角がお送り致します。

通常であれば、ミカ様がほんのちょびっとお姿を隠しただけで大騒ぎ。
ミカ様が姿を消したのは「お前のせいだ!」と大喧嘩を始め、魔王城を木っ端微塵に破壊する魔王様と勇者様が、不気味な程に静かで、息をするのですら躊躇する程の緊張感が城内を満たしております。

いつも一言多いとお叱りを受けるワタクシですら、本日は口を開くことすら憚られ、成り行きを見つめる他はありません。


一言口を滑らせたら、その瞬間が私の命の終わりの時であると、わかるからです。私はまだ、死にたくはありません。


魔王様は、頬を紅潮させて虚ろな目で宙を見つめ、唇を噛み締めていて、勇者様も以下同文。一体全体お二人とミカ様の間に、何があったのでしょうか?

魔王様にお仕えする我々三魔人は、余りの重々しい空気感に堪えられず、この場を辞したい気持ちで一杯なのですが、如何せん足が動きません。大理石の床にコツンとひとつ足音を響かせただけで、心臓を止められそうです。動けないと言ったほうが正しいですね……。


あ、魔王様が動かれました。


はあ~~~っ! と、肺に溜まった空気を全部吐き出す大きな溜息を吐いて、魔王様は両手で顔面を覆い、上体を伏せ呟かれます。


「……お前が悪い。ちびっ子」
「その言葉、そのまま返してやる。ドスケベマオー」
「こっちもその言葉、そのまま返すぞ。スケベマイスター。事の発端は、テメーのせいだろーが」
「―――ノったのは、マオーも同じだろう。同罪だ」


魔王様に負けぬほどの大きな溜息を吐いて、勇者様が玉座の横の絨毯引きの床にどっかと胡坐をかき、これまた魔王様と同じように両手で顔を押さえて項垂れました。


「……ミカが、あんまりにも可愛いのが、悪いと思う」
「ソコは、同意する。ちびっ子……」


ごつい指の隙間から見えるお二人の顔は、遠目でもわかります。真っ赤ですね。


「てめーがミカを『嫁』なんて呼ぶから、俺も真似したら、ミカ、真っ赤になって―――可愛くて可愛くて……二人して、ヤリ過ぎた……な」
「うん。お互い完全に、ヤリ過ぎだった……」


ははあ、そういう事でしたか。

ならば、ミカ様の書き置きの意味も少々分かるというモノです。
お二人に抱き潰された次の日は、大体においてミカ様はあらぬ世界を半目で見つめ、太陽が黄色いって呟いていますから。


「ミカ様をご無体な目に合わせて、遂に逃げられたんだあ」


ぴきん。と、空気が凍り付く音が聞こえました。


「ひいッ! 馬鹿ッ?! ひとつ角!!」
「ふたつ角!! ひとつ角に道連れにされる気か?! 逃げるぞ!!」


あ、心の中で呟いたつもりが、声に出ておりましたね。

いけないいけない。と、そこは心の中で呟いたのですが、みつ角ったら、私を置いてふたつ角だけを担ぎ上げ―――私を置いて逃げ出すなんて、酷くないですか?

玉座の間に残ったのは、私と……魔王様と勇者様のみ。

ギラリと琥珀の瞳と、青空色の瞳に睨みつけられて、私の心臓は静止しました。どうして私の口ったら、つらっと要らぬ言葉を紡いでしまうのでしょう。


ひとつ角の頬に、一筋の涙が零れ落ちたが、自分の失言なので致し方有りますまい。


ひとつ角はその日、ギリギリ命は長らえたモノの、魔王城は木っ端みじんに砕け散った。それも、今までで一番に、草木も生えぬほどに粉々に。その全面改修と修繕は、お仕置きも含め、ひとつ角一人(一魔人?)に任された。というか……魔王と勇者からの完全なる八つ当たりであると言えよう。

その後、魔王様と勇者様の全面監視の中、ひとつ角は泣きながら、たった一人で(自業自得)、今までで一番に立派で豪華絢爛な魔王城を築城した。



「よし」



との、魔王様のOKのお言葉に、ひとつ角はその場にばったりと倒れ込んだ。完全なる魔力枯渇である。


「おおォ……。今回すっげー立派だね。どうせすぐ破壊されるのに」
『言うなケイ。さすがにひとつ角が憐れだ』


最近めっきりとコンビでいることが通常営業となっているケイ殿とエルド殿が、新設された玉座の間に続く大きなテラスに降りてきた。ああ、魔力不足により視力も落ちてきたらしく、麗しのケイ殿のご尊顔がぼやけて見えます。


「ケイ! どうだった? ミカの所在地は掴めたか?」
「掴めるわけないだろ。魔王が師匠に魔力譲渡なんてするから、魔王と勇者のせっかくのは、師匠がキレイさっぱり消してしまったみたいで、足取りが全然見つけられない」


流石ケイ殿……。魔王様にタメ口だなんて……惚れてまうやろ。


「ベルガのあの女の所は見てきたのか、ケイ?」
「呉羽姐さんのトコは行ってきたけど、来てないって。他に師匠が行きそうな場所に心当たりはないのか勇者殿?」
『ケイ。このミカの心知らず共に聞くより、お前の予想で動いた方が早い。行こう』


あああああ。酷いエルド殿……。もうちょっと、ケイ殿を堪能させてくれたって良いではないですか? 私のエネル源なのですからあ……。


どんどんと意識が遠のいてゆくひとつ角の耳に、エルドの羽ばたきが聞こえ。沈黙が降りてきた。

その時、予想だにしなかった一言が、ひとつ角の鼓膜を破り、ひとつ角は、指一本動かせない程の疲労困憊状態の中で、がっ! っと背筋を使い起き上がった。



「俺もミカ探しに出る!!」



魔王様出陣ですと?!
そんなの、こんなトコロで床とお友達になっている時間などゴザイマセン!!


「ワタクシ、ひとつ角! 魔王様の御供つかまつります!!」
「お前は城で留守番してろ!!」


魔王様の足にしがみついてでも、魔王様の一番の側近(?)として、付いていこうとしたのでが、魔王様と勇者様たってのご希望で、私は、城での留守番組が決定してしまいました。

後で聞いた理由が、また酷かったので、ここでお伝え致します。

なんでも、私の失言が、かなりのご立腹だったとのことで、留守番もお仕置きの一環なのだそうです。



私の失言、それは、




――ミカ様をご無体な目に合わせて、遂に逃げられたんだあ




ですが、この一言は、半分だけ正しかったそうなのです。

お二人は、ミカ様の家出(城出?)前日の夕刻、というか日中、いや、朝食後? から次の日の朝まで、ミカ様を好き放題にしたそうなのです。

では、残りの半分はなんなのか?

それは後にケイ殿からお聞きしたのですが、お二方はこんなことを宣い、ミカ様の精神を混乱に貶めたとのことです。




「「ミカ。俺達と子供作らない?」」



魔人は、つがいも性別も何も関係なく、魔力をもってして、単体分離とか、生殖とかで、木の股から生まれたり、闇から生まれたり、卵から生まれたりと、色々ですが、人間ってオス同士で、子供を作る事って出来ましたっけ?

「出来ません」と、頭を押さえるケイ殿に、エルド殿が人型に変化してこそこそとケイ殿に耳打ちしていた言葉を、拾わなくてよいのに、私の地獄耳は拾ってしまいました……。


「竜族は魔力で卵を作るから、心配いらない」


エルド殿……もしかして、ケイ殿と子供を作る気満々って言いませんよね?



ーーーーーーーーーー



【次回予告】
ミカを探して2ヶ月「ヤリ過ぎた二人」(予定)
※不定期更新です。
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