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第二章
2-4:ミカを探して4ヶ月「魔王と勇者の珍道中」
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本日の天気は快晴で、初夏の風は気持ちよく、街道を行く荷馬車の足取りも軽い。
大パノラマの絶景た。なだらかな丘陵は折り重なり、遠くにはまだ白く雪をかぶる山脈の稜線が、青い空に浮き上がっている。穀倉地帯の丘には、様々な作物が白や黄色の花を咲かせており、まるでパッチワークみたいな素晴らしい風景が広がっている。
ああ、ここにミカがいたら。一緒にこの風景を見ながらミカが隣で微笑んでくれたら……、どれだけ幸せだろうと、セルリアンは考える。
だのに……。
隣に居るのは、ミカではなく―――。
「だからな。こう、手のひらを上にして付け根まで中指を突っ込んで、右斜め上辺りがヒットポイントなんだって」
「……左じゃなくってか?」
「まだまだだなあ、ちびっ子! 左じゃなくて右斜め上だって! ちょっと指触りが違うトコがあって、そこを強めに撫でると、ミカの反応が明らかに違うんだって!」
お天道様が空の真上にいる時刻に、とてもじゃないが明らかにそぐわない会話をアンバーと交わしながら、荷馬車は街道を進む。
「ははは。男前な兄ちゃん達は、随分と話が盛り上がってるが、何の話をしてんだい?」
スイカを山積みした荷馬車の後部座席に俺達を乗せてくれた、隣町までこのスイカを売りに行くという髭面の商人が、御者席から振り返って朗らかに笑う。
何の話って……。ミカのイイところの話をしてるなんてことは、言えるわけもない。さて、何とはぐらかせば良いものか、と考えていたら、全く何も考えてないだろうアンバーが、商人に向かってにやりと笑って声を上げた。
「内緒だ! これは俺達だけの秘密なんでな、許せ!」
「そっか! 残念だな~。黒髪の兄ちゃんには敵わんな~!」
はっはっは! と商人とアンバーが笑い合う。
人族の商人となんて、まともに対したこともないだろうに、何なんだその馴染み具合は?
商人の男も、豪気が過ぎるというモノだ。
お前の目の前で大口空けて笑っているのは、人族からしたら、畏怖と恐怖の象徴である魔族の王たる魔王様だぞ。
ミカ探しに魔王城を飛び出してきたアンバーときたら、琥珀色の瞳を茶色に変えたくらいで、変装ひとつしてはいない。服装は、人族というか、村人に混じっても目立たないようにと、俺の服を貸してやったが、後はいつものままである。
「親父。このスイカ食っていいか? 喉が渇いてきた!」
「いーぞ~。兄ちゃん達には、車輪が脱輪して動けなくなったところを助けて貰ったからな。食え食え!」
「やった! じゃあ一個貰うな~」
そう返答するなり、手元のスイカを手刀で真っ二つに割るマオーに、商人が「おお!」と声を上げて、凄いな! と、更にゲラゲラと笑う。
……もしかしなくてもマオー。俺より人族と馴染んでないか?
俺なんて、路銀稼ぎしてたらいつの間にか「勇者」とか呼ばれただけで、対人族スキルは未だ低い自覚はある。今回みたく、街道を通りがかった荷馬車に乗り合わせさせて貰うとかの交渉は、いっつもエルドに任せていて、最近はケイが担当している。エルドとケイは人族の扱いが上手いからな。俺なんて一言も口をきかないで、魔物をぶった切っていただけである。
「ん。お前も食うだろ?」
「あ、ああ」
「親父~! 馳走になるな!」
「おう! うちのスイカは美味いから、味わって食えよ~!」
アンバーが手渡してくれるスイカを受け取っても、俺は、商人に礼も言えない。
言ってしまえば、俺はミカ以外の人族との会話が苦手である。
アンバーだって俺と同じだろうに。魔王になって城からほとんど出た事のない、引籠りマオーの分際で、こんな対人スキルと社会性を、どこで身に着けたんだよ、お兄様。
「仲が良いなあ、兄ちゃん達」
「そう見えるか? いっつも殴り合いの殺し合いに明け暮れてるんだがなあ」
「喧嘩するほど仲が良いっていう、アレだろ? 兄弟みたいな空気感に見えるぞ。いいなあ、男同士の二人旅! 若いうちはやっぱ旅をせんとなあ!」
好きで二人旅をしているわけではないのだが、コレはコレで、なかなかに味わい深い旅でもあるのかもな。そんなことを思うと、何故だろうか、セルリアンの口元は我知らず口角が上がっていた。
それを隣のアンバーに知られたくなくて、水気の多いスイカに噛り付き飲み込むと、喉の渇きが癒えてゆく。確かに、美味い。がつがつと食いまくる俺を見て、商人が「がはは」と声を上げる。
「色男は喰いっぷりも色っぽいな! 兄ちゃん達、そんなに男前なら、どこの村に行ったって、モテモテの選び放題の遊び放題だろッ?!」
「見くびって貰っては困るな親父! 俺達のたった一人は決まってるんでな。そんなことしたら、愛しの君から雷が落ちる! 浮気なんて絶対にせん!」
「おおお~~~! 男前は言うことが違うなあ」
のどかな丘陵の街道をのどかな会話で進んでいたら、不意に荷馬車の上を大きな影が覆ってきた。
せっかくの良い気分が台無しだ。
つまらなそうに顔を上げると、上空にワイバーンの群れがこちらに向かい赤い攻撃色の目を光らせていた。隣のアンバーから、ちッ! と舌打ちが聞こえてくる。お兄様も、俺と同じか。良い気分を害されて、かなりご立腹の様子である。
「ああああああ! また! ワイバーンの群れだあ!」
「「また?」」
御者台で頭を抱え丸まる商人に、二人して声が揃った。
「いつもコレなんだ! アイツら、夏の水分補給を狙い、果物を輸送中はいっつも狙って来やがる! また大損害だ~~~!」
「ふうん。難儀なことだな、ところで親父」
しゃくっとスイカをひと齧りして、口元を舌で舐めながらアンバーがにやりと笑う。
「アイツら追っ払ったら、もう一個スイカ食っていいか?」
「いい! いいぞ!! 二個でも三個でもどんと食え!」
「よし。勇者。追っ払え」
「マ――でなくて、お兄様のひと睨みで事足りるだろ」
真っ青になって身を丸め、ワイバーンをやり過ごそうとする商人を尻目に、俺は次に食べるスイカの選定に入った。商人の言うように、このスイカはことのほか美味いので、次に食べるのは吟味の上、一個目より美味いのが食いたかったのである。
「おいおい。勇者の風上にも置けんな」
「アレは、お兄様の、はい――範疇だろ」
商人の手前、ワイバーンは魔王の「配下だろ」とも言えず、「範疇」と言った俺に、アンバーがにやりと笑う。
「ま、そだな。俺に歯向かうトカゲなど、不要だ」
荷馬車に向かい、空から一気に急降下してくるワイバーンの群れに、アンバーが顔を上げ、魔王スマイルで冷たく笑った。
「一族郎党消し炭にするか」
急降下してきたワイバーンは、にたりと仄暗い笑みを浮かべるアンバーに気付くなり、目が飛び出る程に驚き、耳をつんざく奇声を上げた。空中で「キィッ!!」とブレーキ音が聞こえる程に静止したかと思ったら、くるりと踵を返し、蜘蛛の子を散らすように一瞬にして空の彼方に消えてしまった。
空中でブレーキを掛ける魔獣は、初めて見た……。なかなかに、レアだな。
「ちッ。逃がさん」
ぱちっと指を鳴らし顎を上げたアンバーの向こうに、影が走った。みつ角が、どうやら追尾に向かったらしい。魔王様に牙を向けたんだから、さもありなん、だ。
「え……えええっと。た、助かった、のか?」
「ああ。俺が睨んだら消えた。親父には一食の恩ができたからな、この荷馬車に呪いをかけてやろう。魔獣に今後、襲われないようにな」
そりゃあ、魔王様直々にマーキングを施せば、この商人の荷馬車は、今後魔獣に襲われることはないだろうなあ。
ところで、随分太っ腹だな、アンバー。
何がどうしてそんなに、上機嫌なんだ?
「に、兄ちゃん達――もしかして、勇者なのか……?」
「コッチはな。俺は魔王だ」
くいっと親指を立てて俺様魔王様が盛大に尊大なお顔で、不敵に笑った。
ここで名乗るトコロが、マオーの魔王たる所以だな……。
「は、はひ?」
「……マオー、親父さんの頭がついて行ってないぞ」
「いんだよ。俺は親父のスイカが気に入った。ミカにも食わせたいから、魔王城に売りに来い! ふたつ角! 契約だ。出てこい」
商人の親父さんが、魔王のロイヤルワラントをゲットして、故郷に錦を飾ることになるのは、この先のこととなるが、俺達は今、ソレどころではない。
まずは、ミカである。
アンバーと目星を付けた、魔国から遠い、西辺境の村が見えてきた。
この村は、堅牢な城塞に囲まれながら、のどかで、風光明媚で有名な村だ。
ミカのことだから、きっと一番遠くて、でも静かで、隠れ場所が沢山ありそうな、ケイと行ったことがない場所に身を隠しているに違いない、と、アンバーとはるばるここまでやって来たのだ。
途中で寄った、小国ベルガの呉羽から、この村を訪れたいとミカ言っていたと聞いたことによる、大博打である。ミカが見つかる可能性は――ざっくり見積もって30%くらいか?
「ミカ……待っててよ。スライディング土下座で謝るからな」
「同時に行くか、セルリアン?」
遠くに見える村に向かい、生唾を飲み込む勇者と魔王を乗せた荷馬車を操る商人は、今だ正気に戻れず真っ白な顔をして口をポカンと空けていた。
「ま、まおーとゆうしゃ?」
魔王と勇者は、愛する放浪の大賢者様が、この村に潜伏していることに賭けていた。
ミカが、魔国のお膝元の七大悪魔【嫉妬】のレヴィアタンの所に居候しているなんて、二人を1グラムも予想していなかった。アンバーとセルリアンが、このピントのズレように気付くのは、まだ先―――。
魔王と勇者の珍道中は、もうちょびっと続きます。
ーーーーーーーーーー
【次回予告】
城出してから5か月「ミカはエンドレス酒盛りで二日酔い」(予定)
※不定期更新です。
大パノラマの絶景た。なだらかな丘陵は折り重なり、遠くにはまだ白く雪をかぶる山脈の稜線が、青い空に浮き上がっている。穀倉地帯の丘には、様々な作物が白や黄色の花を咲かせており、まるでパッチワークみたいな素晴らしい風景が広がっている。
ああ、ここにミカがいたら。一緒にこの風景を見ながらミカが隣で微笑んでくれたら……、どれだけ幸せだろうと、セルリアンは考える。
だのに……。
隣に居るのは、ミカではなく―――。
「だからな。こう、手のひらを上にして付け根まで中指を突っ込んで、右斜め上辺りがヒットポイントなんだって」
「……左じゃなくってか?」
「まだまだだなあ、ちびっ子! 左じゃなくて右斜め上だって! ちょっと指触りが違うトコがあって、そこを強めに撫でると、ミカの反応が明らかに違うんだって!」
お天道様が空の真上にいる時刻に、とてもじゃないが明らかにそぐわない会話をアンバーと交わしながら、荷馬車は街道を進む。
「ははは。男前な兄ちゃん達は、随分と話が盛り上がってるが、何の話をしてんだい?」
スイカを山積みした荷馬車の後部座席に俺達を乗せてくれた、隣町までこのスイカを売りに行くという髭面の商人が、御者席から振り返って朗らかに笑う。
何の話って……。ミカのイイところの話をしてるなんてことは、言えるわけもない。さて、何とはぐらかせば良いものか、と考えていたら、全く何も考えてないだろうアンバーが、商人に向かってにやりと笑って声を上げた。
「内緒だ! これは俺達だけの秘密なんでな、許せ!」
「そっか! 残念だな~。黒髪の兄ちゃんには敵わんな~!」
はっはっは! と商人とアンバーが笑い合う。
人族の商人となんて、まともに対したこともないだろうに、何なんだその馴染み具合は?
商人の男も、豪気が過ぎるというモノだ。
お前の目の前で大口空けて笑っているのは、人族からしたら、畏怖と恐怖の象徴である魔族の王たる魔王様だぞ。
ミカ探しに魔王城を飛び出してきたアンバーときたら、琥珀色の瞳を茶色に変えたくらいで、変装ひとつしてはいない。服装は、人族というか、村人に混じっても目立たないようにと、俺の服を貸してやったが、後はいつものままである。
「親父。このスイカ食っていいか? 喉が渇いてきた!」
「いーぞ~。兄ちゃん達には、車輪が脱輪して動けなくなったところを助けて貰ったからな。食え食え!」
「やった! じゃあ一個貰うな~」
そう返答するなり、手元のスイカを手刀で真っ二つに割るマオーに、商人が「おお!」と声を上げて、凄いな! と、更にゲラゲラと笑う。
……もしかしなくてもマオー。俺より人族と馴染んでないか?
俺なんて、路銀稼ぎしてたらいつの間にか「勇者」とか呼ばれただけで、対人族スキルは未だ低い自覚はある。今回みたく、街道を通りがかった荷馬車に乗り合わせさせて貰うとかの交渉は、いっつもエルドに任せていて、最近はケイが担当している。エルドとケイは人族の扱いが上手いからな。俺なんて一言も口をきかないで、魔物をぶった切っていただけである。
「ん。お前も食うだろ?」
「あ、ああ」
「親父~! 馳走になるな!」
「おう! うちのスイカは美味いから、味わって食えよ~!」
アンバーが手渡してくれるスイカを受け取っても、俺は、商人に礼も言えない。
言ってしまえば、俺はミカ以外の人族との会話が苦手である。
アンバーだって俺と同じだろうに。魔王になって城からほとんど出た事のない、引籠りマオーの分際で、こんな対人スキルと社会性を、どこで身に着けたんだよ、お兄様。
「仲が良いなあ、兄ちゃん達」
「そう見えるか? いっつも殴り合いの殺し合いに明け暮れてるんだがなあ」
「喧嘩するほど仲が良いっていう、アレだろ? 兄弟みたいな空気感に見えるぞ。いいなあ、男同士の二人旅! 若いうちはやっぱ旅をせんとなあ!」
好きで二人旅をしているわけではないのだが、コレはコレで、なかなかに味わい深い旅でもあるのかもな。そんなことを思うと、何故だろうか、セルリアンの口元は我知らず口角が上がっていた。
それを隣のアンバーに知られたくなくて、水気の多いスイカに噛り付き飲み込むと、喉の渇きが癒えてゆく。確かに、美味い。がつがつと食いまくる俺を見て、商人が「がはは」と声を上げる。
「色男は喰いっぷりも色っぽいな! 兄ちゃん達、そんなに男前なら、どこの村に行ったって、モテモテの選び放題の遊び放題だろッ?!」
「見くびって貰っては困るな親父! 俺達のたった一人は決まってるんでな。そんなことしたら、愛しの君から雷が落ちる! 浮気なんて絶対にせん!」
「おおお~~~! 男前は言うことが違うなあ」
のどかな丘陵の街道をのどかな会話で進んでいたら、不意に荷馬車の上を大きな影が覆ってきた。
せっかくの良い気分が台無しだ。
つまらなそうに顔を上げると、上空にワイバーンの群れがこちらに向かい赤い攻撃色の目を光らせていた。隣のアンバーから、ちッ! と舌打ちが聞こえてくる。お兄様も、俺と同じか。良い気分を害されて、かなりご立腹の様子である。
「ああああああ! また! ワイバーンの群れだあ!」
「「また?」」
御者台で頭を抱え丸まる商人に、二人して声が揃った。
「いつもコレなんだ! アイツら、夏の水分補給を狙い、果物を輸送中はいっつも狙って来やがる! また大損害だ~~~!」
「ふうん。難儀なことだな、ところで親父」
しゃくっとスイカをひと齧りして、口元を舌で舐めながらアンバーがにやりと笑う。
「アイツら追っ払ったら、もう一個スイカ食っていいか?」
「いい! いいぞ!! 二個でも三個でもどんと食え!」
「よし。勇者。追っ払え」
「マ――でなくて、お兄様のひと睨みで事足りるだろ」
真っ青になって身を丸め、ワイバーンをやり過ごそうとする商人を尻目に、俺は次に食べるスイカの選定に入った。商人の言うように、このスイカはことのほか美味いので、次に食べるのは吟味の上、一個目より美味いのが食いたかったのである。
「おいおい。勇者の風上にも置けんな」
「アレは、お兄様の、はい――範疇だろ」
商人の手前、ワイバーンは魔王の「配下だろ」とも言えず、「範疇」と言った俺に、アンバーがにやりと笑う。
「ま、そだな。俺に歯向かうトカゲなど、不要だ」
荷馬車に向かい、空から一気に急降下してくるワイバーンの群れに、アンバーが顔を上げ、魔王スマイルで冷たく笑った。
「一族郎党消し炭にするか」
急降下してきたワイバーンは、にたりと仄暗い笑みを浮かべるアンバーに気付くなり、目が飛び出る程に驚き、耳をつんざく奇声を上げた。空中で「キィッ!!」とブレーキ音が聞こえる程に静止したかと思ったら、くるりと踵を返し、蜘蛛の子を散らすように一瞬にして空の彼方に消えてしまった。
空中でブレーキを掛ける魔獣は、初めて見た……。なかなかに、レアだな。
「ちッ。逃がさん」
ぱちっと指を鳴らし顎を上げたアンバーの向こうに、影が走った。みつ角が、どうやら追尾に向かったらしい。魔王様に牙を向けたんだから、さもありなん、だ。
「え……えええっと。た、助かった、のか?」
「ああ。俺が睨んだら消えた。親父には一食の恩ができたからな、この荷馬車に呪いをかけてやろう。魔獣に今後、襲われないようにな」
そりゃあ、魔王様直々にマーキングを施せば、この商人の荷馬車は、今後魔獣に襲われることはないだろうなあ。
ところで、随分太っ腹だな、アンバー。
何がどうしてそんなに、上機嫌なんだ?
「に、兄ちゃん達――もしかして、勇者なのか……?」
「コッチはな。俺は魔王だ」
くいっと親指を立てて俺様魔王様が盛大に尊大なお顔で、不敵に笑った。
ここで名乗るトコロが、マオーの魔王たる所以だな……。
「は、はひ?」
「……マオー、親父さんの頭がついて行ってないぞ」
「いんだよ。俺は親父のスイカが気に入った。ミカにも食わせたいから、魔王城に売りに来い! ふたつ角! 契約だ。出てこい」
商人の親父さんが、魔王のロイヤルワラントをゲットして、故郷に錦を飾ることになるのは、この先のこととなるが、俺達は今、ソレどころではない。
まずは、ミカである。
アンバーと目星を付けた、魔国から遠い、西辺境の村が見えてきた。
この村は、堅牢な城塞に囲まれながら、のどかで、風光明媚で有名な村だ。
ミカのことだから、きっと一番遠くて、でも静かで、隠れ場所が沢山ありそうな、ケイと行ったことがない場所に身を隠しているに違いない、と、アンバーとはるばるここまでやって来たのだ。
途中で寄った、小国ベルガの呉羽から、この村を訪れたいとミカ言っていたと聞いたことによる、大博打である。ミカが見つかる可能性は――ざっくり見積もって30%くらいか?
「ミカ……待っててよ。スライディング土下座で謝るからな」
「同時に行くか、セルリアン?」
遠くに見える村に向かい、生唾を飲み込む勇者と魔王を乗せた荷馬車を操る商人は、今だ正気に戻れず真っ白な顔をして口をポカンと空けていた。
「ま、まおーとゆうしゃ?」
魔王と勇者は、愛する放浪の大賢者様が、この村に潜伏していることに賭けていた。
ミカが、魔国のお膝元の七大悪魔【嫉妬】のレヴィアタンの所に居候しているなんて、二人を1グラムも予想していなかった。アンバーとセルリアンが、このピントのズレように気付くのは、まだ先―――。
魔王と勇者の珍道中は、もうちょびっと続きます。
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【次回予告】
城出してから5か月「ミカはエンドレス酒盛りで二日酔い」(予定)
※不定期更新です。
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