100回生まれ変わっても心のないオレの心を奪ったのは黒い竜

MINORI

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49:祝福の星2

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キラキラした、奇跡みたいに綺麗な瑠璃色の瞳がオレを見上げてくる。

ああ、お前は、本当に奇跡だよ、瑠璃。
出会うべきではなかった、愛し合うべきではなかった魂ふたつが、心の底から望んで、世界に生み出しだ、奇跡。

瑠璃。それが、お前なんだよ?

仔竜の姿に戻って、すっぽりと腕の中におさまる、大切で愛おしい存在を、ぎゅうっと暁は抱き締めた。

瑠璃の温かさを、覚えておきたい。
絶対に、忘れたくはないから。

更にぎゅうっと抱き締めたら、瑠璃が嬉しそうに目を細めて、喉を鳴らしてくる。


「おれ、アカツキにぎゅうってされるのが、大好きなんだ」


オレだって瑠璃を抱き締めると、温かくて、幸せな気持ちになるよ。
お前はこの世界での、初めての友達で、そして、唯一大切なものだから。

瑠璃がオレに最初にくれたものは、青い花だったな。それからは、温かさと、優しさと、感情と、心と……、瑠璃から貰ったものは本当に多いんだ。気付けば抱えきれないほどに増えたお前からのプレゼントは、たとえオレがこの世界から消えてしまっても、絶対に忘れはしない。

もう二度と、何処にも生まれることが出来なくとも……。何も残らない塵と化してしまっても、お前をいつまでも守るからね。

「―――オレも、瑠璃をぎゅうってするの、大好きだ。ごめん、頼んだよ?」
「うん!幻夢の木の花を取ってきたら、アカツキが元気になるんだろ?すぐに取って来るから!待ってて、アカツキ!」

さっきのお返しか、チュッとオレの頬にキスをして、エヘヘっと照れた瑠璃が、黒い翼を広げ、白漣に開けて貰った外への抜け道を一気に飛んで行く。

瑠璃の小さな躰が、どんどん小さくなって、抜け道の向こうに消えていくのを、暁は万感の思いを以って見送った。

どうか元気で。
お前の幸いを、祈っているよ、瑠璃。

道が閉じられて、苔むした石壁に戻っても、暁は瑠璃の姿を追っていた。
もう一度だけでいいから、抱き締められたらと、未練が残る。

白漣がオレの名を呼ぶ。

「アカツキ……いいのですか?」
「これで、いいんだ。いいんだよ、ハク……」

もう、きっと瑠璃には会えない。
でも、これでいいんだ。
オレが消えてしまうところを、瑠璃だけには見せたくはないから。

「……皆のところに、連れてってもらえるかな?皆の血の誓いも、解除しないと」
「アカツキ、私は!」
「今は、何も、言わないでくれ。頼む」

白漣が、オレのことも、大切に思っていてくれることは、わかる。でも、それは、オレが一番星の魂を持つ一番星の転生体であることが、前提なんだと、思う。

今のオレは、一番星であって、一番星でないモノだ。
皆が向ける一番星への思慕の愛情は、今のオレが軽々しく受取って良いものではない。

「―――わかりました。ですが、あの馬鹿どもの血の誓いの解除が終わったら、必ず、私の話を……私の気持をわかってもらいますからね!」

するりと軽々と抱き上げてくる白漣の顔が近過ぎて、暁はとっさに目を逸らす。
真っ赤に燃える白漣の瞳には、怖い程の怒りが滲んでいて、視線を合わせることが出来なかったのだ。
感情と心を持たなかった時は、相手の目など気にしたことも無いというのに、ソレを手にした時から、どうしてこんなに、心臓がどくどくと大きく鳴り出すのだろうか。

「降ろして、くれ。歩ける、から」
「イヤですね。私はアカツキを抱っこ出来る機会を、逃す気はないので」
「―――お前、何言って?」
「あ?瑠璃に倣って、私もお返しをします」

え?っという間もなく、チュッと口の端ギリギリの頬にキスをされてしまった。

恐らくオレは、瞬時に茹でダコみたいに真っ赤になってしまったと、思う。
あまりにも吃驚して目を剥いて、オレの顔より真っ赤な白漣の目を真っ直ぐに見てしまったら、先刻の怒りの色はすっかり消えていて、見えたのは、どこまでも深い、穏やかで温かな優しい色だ。

「あなたが今、何を思って、そんなツレない態度をとるかなんて、お見通しです。先程は、私がミスりましたが、あなたは、私と、我々の想いを甘く見ていますね。本当に甘過ぎるくらいに甘く、盛大に勘違いしています。後で後悔しても知りませんよ?絶対に身をもってわからせてあげますからね」

白漣が何を言っているのか、脳の変換が追い付かない。
思考がフリーズし、瞬きもできないでいる暁の頬にふと白漣が目を止めて、べろっとソコを舐めてきて、暁の意識が一気に戻った。

「な、なんでっイキなりっ―――?!」
「血が出ていたから舐めて止血した迄です。コレもあのイカレた黄色野郎の所業ですね……寸刻みに切り刻まないと怒りが収まりませんね。さて、飛びますよ。しっかりつかまっていてくださいね、アカツキ」

力強くぎゅうっと抱き締め頬を摺り寄せてくる白漣の顔が、「寸刻み」が本気であると言っている。

一番星の記憶を手にして、思い出したことがある。
はじめの竜の中で、一番怒らせてはいけない相手は、この白漣だ。
ここは大人しく、言うことを聞いた方が良さそうである。

白漣の治癒の竜力のお陰で、多少の痛みが治まった両腕を首に回して身を寄せたら、白蓮が満足げに微笑んで、唇に触れてきた。―――彼の唇で……。

「―――っハ、ハク?!」
です。はい!行きますよ!」



予約ってなんだよ……?!



絶対に聞いてはいけないその問いを、喉の中に飲み込んだ瞬間、周囲の景色が変わった。
あり得ないほどに豪華な、煌びやかな空間に、目が眩み堪らず目を閉じたら、覚えのある声が暁の名を呼んだ。

「「アカツキ!!」」

蒼天と蘇芳の声だ。
ああ、無事で、良かった……。と目を開こうとしたら、予想もしなかった怒号が飛び交い、瞬くしかない。

「白?!なんでアカツキをお姫様抱っこで現れやがる!!」
「白いの?!なんでアカツキが、そのようなアラレモナイ姿でって、まさかっ、お前が無体を強いたわけではあるまいな?!」
「手を出す気は満々ですが、ケガ人に手を出すほど、獣ではありません」
「「手を出す気はあるだとっ?!死ね!!」」

さっきまでの緊張感が、全て吹っ飛ぶほどの勢いで、三竜によるコント(?)が始まってしまった……。

不可抗力としても、これはオレが悪いのか?
白漣はオレを助けてくれただけなので、名誉は回復してやらねばいけないようだ。

この怪我は、99%はアビゲイルの所業によるものだし、着衣をぼろぼろにしたのは同じくアビゲイルで、その後、ぼろ布と化した洋服を無体にもはぎ取ってくれた犯人は黄麟だ。白漣にシーツを巻き付けて貰っていなければ、オレは完全なる全裸―――まあ、シーツを巻かれていても全裸には……違いはないが……。

「ハクは、傷の治療をしてくれて―――」
まずは治療の話から説明しようと思ったのを、めた。


「私はですねっ!アカツキから額にちゅ~を貰って、一番最初に!の血の誓いを解いて貰ったんです!!」
前回聞いたときは、アビゲイルの二つ名は「地獄の乙女」だったのに、今回は「地獄の鬼女」に変化している……白蓮の心の叫びと理解する。

「なので、アカツキにはをつけさせてもらいました!!予約一番も私のモノです!!」
予約は聞いたが、唾つけての一番って、それは―――初耳だし、嫌な予感しかしないので強固にお断りをさせてもらいたい……。


「馬鹿タレがっ?!なんだか知らんが許すわけないだろうが、白っ!!」
「唾つけたって!アカツキに何こそしてくれたっ!白いのっ~~?!」


アビゲイルの血の誓いは、日常会話には影響がないらしいことは、これで分かった。
ざっと辺りを見回してみても、アビゲイルの姿はないので、ここが彼女の影響下ではないことは確かだが、ひとまず、血の誓いを解除してしまわなければいけない。残された時間は、限られているから。

暁の頭の中が落ち着きを取り戻し冷静になったのは、周囲のあまりの煌びやかさのお陰である。
贅を尽くした水晶のシャンデリアの下に、金銀宝石をあしらった趣味の悪い調度品が居並び、正直目が痛くなるほどで、一気に頭が冷えたのだ。

絵に描いたような成金の空間の中に、正統派美術工芸品みたいに美々しい青と赤と白の竜が並ぶと、際立つというか、背景が合っていないように見えるというか……。まず、それはどうでもいい事なので、横に置いておくことにする。

放っておくと、この三竜の舌戦はいつまでも終わりを迎えないと、もう理解しているので、暁はまず、手の届く距離に近付いてきた蒼天の袖を引いた。

「ソウ」
「アカツキ!白いのに何された?!俺が千倍返ししてやるから―――」
「それはいいから、ちょっと……顔貸して」

手を伸ばしたら上手い具合に蒼天が顔を近付けて来てくれたので、蒼天のプラチナの短髪を引っ張って、白蓮の時と同じく、その額に創世の息吹を与え、祝福の星を刻印する。

蒼天が、白漣に負けない位に盛大に驚いた顔をしてくれて、暁としては微笑んでしまうしかない。

「アカ…ツ…キ?」
「血の誓いが消えたの、わかる?」
「あ……」

蒼天は凍り付いたように動きを止めて、震える指先で自らの額に触れて、一筋の涙を零した。

これもやっぱり、白蓮と同じだなっと思う。
一番星を思い出して、一番星との大切な記憶が頭を廻っているのが、その顔を見るだけでわかる。

血の誓いでアビゲイルに縛られて、大切な一番星との記憶を歪められていた、彼らの心が解放されたのだ。そこに、の暁であるオレが、入り込む余地なんてない。

蒼天の姿に、蘇芳も動きを止めて、目を見開いている。
それに気付いて白漣に視線を向けたら、床に膝をついて、蘇芳の近くにオレを下ろしてくれた。

「スウ」

手を差し出すと、その手に引かれるように、蘇芳が俺に両手を伸ばし胸の中に縋りついてきた。

もう、涙を零している。
うん。大丈夫だ。
すぐに、自由にしてあげるから。

蘇芳の額にも二人と同じく、ふうっと、創世の息吹を与えて、全ての想いを込めて祝福の星を刻印する。


これで三人はもう、自由だよ?


アビゲイルにも、一番星にも、ましてやオレなんかに縛られることもなく、自由に生きて欲しい。それが、暁である、オレのたったひとつの、願いだから……。
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