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2、反抗

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 ある日、アーヴィンは意を決してマックスに言った。

「マックス頭領、僕はもう盗賊団をやめたいです」
 マックスは鼻で笑うと、酒を飲みながら答えた。
「アーヴィン、お前に務まる仕事なんてあるわけないだろう? 寝言は寝てからいいな」
 アーヴィンはマックスが恐ろしくて、それ以上何も言えなかった。

 マックスは酒を飲み終えると立ち上がって言った。
「さあ、今日も稼ぎに行くか!」
「はい! 頭領!」
 盗賊団の仲間たちが声を上げた。
「はい……」
 アーヴィンも渋々ながら、盗賊団の仲間について行った。

 町外れまで出かけると、一人の白髪交じりの男性が歩いてきた。
「よし、今日のターゲットはアイツだ」
「了解です!」
 盗賊団は男性を取り囲んだ。
「さあ、アーヴィン、やれ!」

「……」
 アーヴィンは一度は剣を構えたが、すぐに剣を下ろしマックスに言った。
「僕はもう、人を襲いたくありません……」
 マックスが苦々しい表情でアーヴィンを睨んだ。
「この期に及んでなにをいってやがる、アーヴィン」

「何だ? お前らは? 盗賊か?}
 白髪交じりの男性が剣を構えた。
「仲間割れか? そんな余裕は無いはずだがな」
 男性はアーヴィンと盗賊団を見て、戦闘態勢に入った。
「お前ら、サッサと奴をやれ!」
「おう!」
 マックスの号令で、アーヴィン以外の盗賊団は男性に斬り掛かった。

 次の瞬間、男性は盗賊団を次々と倒していった。
「何だ!? お前ら真面目にやってるのか!?」
「頭領、コイツ……強いです!」
 男性は剣についた血を振り払い言った。
「まだやるのか? 命だけは助けてやろうと思ったが……」
 男性は剣を構え治し、マックスに切っ先を向けた。

「ちっ。今日はここまでにしてやる。……アーヴィン、お前はもう仲間じゃねえ……!」
「……マックス頭領……今までありがとうございました」
 アーヴィンはマックスに礼をした。
 顔を上げた瞬間、マックスに額をを切りつけられた。
「その顔で仕事につけると思うなよ。ただでさえ子どもに仕事なんてないだろうがな」
「!?」
 アーヴィンは真っ赤に染まった視界と、痛みでその場にへたりこんだ。

「やれやれ。……坊や、大丈夫か?」
「あの……僕……貴方に殺されるんですか……?」
 おびえるアーヴィンに、男性は笑って言った。
「子どもを殺す趣味はねえよ。俺の名前はケネス。坊や、盗賊なのか?」
「……他に仕事がなかったので……」
 アーヴィンの答えを聞いて、ケネスは頭をかきながら、ため息をついた。

「しかたねえなぁ……俺の弟子になるか? えっと……」
「僕の名前はアーヴィンです」
「そうか。アーヴィン、俺の元で剣の修行をしないか? これでも俺は昔、ちょっとは名の知れた傭兵だったからな」
 ケネスは腰に手を当てたまま、アーヴィンに言った。

「いいんですか? あの……言いにくいんですが……家には病気の母が居て……」
 アーヴィンはケネスの様子をうかがいながら言った。
「金か? まあ、俺の手伝いをしてくれれば給料を出そう。ま、あまり金額は期待されても困るがな」 
 アーヴィンはそれを聞いて、頭を下げた。
「おねがいします。弟子にして下さい」

「……ああ、いいぜ。来年には国の剣術大会がある。そこで上位に食い込めば、騎士の仕事にありつけるかもしれないしな」
「騎士……僕が……?」
 首をかしげるアーヴィンを見て、ケネスは笑った。
「ま。強くなきゃ話は始まらないがな」
「はい」
 ケネスはアーヴィンに言った。

「明日から、町外れの俺の家に来い。剣の稽古を付けてやる。あと、かんたんな仕事も与えてやろう」
 アーヴィンはケネスに訊ねた。
「どうして、僕にそこまで親切にしてくれるんですか?」
「ん? まあ……気まぐれって奴だな」
 ケネスはアーヴィンの真剣な目を見て、言葉を濁した。

「じゃ、明日からよろしくな」
「はい、ありがとうございます」
 アーヴィンは初めて会ったケネスを、何故か信じていた。
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