調律師カノン

茜カナコ

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4.通知

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「カノン、手紙が届いてるぞ」
 カノンは父親から手紙を受け取ると、差出人を確認した。
「父さん、魔法学校からだ」
「そうか。開けてごらん」
 父親に言われて、カノンはそっと手紙の封を開いた。
「入学式の日程が書かれてる……」

 驚いた表情のカノンに、父親は言った。
「おめでとう! カノン! 合格したんだな」
「え!?」
 父親はカノンから手紙を取り上げると、声を出して読み上げた。
「必要なものは……学校で用意します、か」
 母親も、父親の声を聞いて昼食作りを中断して台所から飛び出してきた。
「カノン、王立魔法学校に入れるなんてすごいじゃない!!」

「うん。でも……」
 カノンの金色の瞳がかすかに揺らいだ。
「僕に、魔法の才能なんてあるのかな?」
 母親はそれを聞いて、口を開いた。
「昔、冬なのに春の花をもってきてくれたことがあったでしょう? あれは魔法をつかったんじゃないの?」

「……うーん」
 カノンは一人で森に遊びに行っては、いろいろな植物や動物のリズムを聞いていたことを思い出した。
「魔法使いになれば、国の誇りである王宮魔法団に入れるかもしれないぞ!」
 父親は、カノンの入学を無邪気に喜んでいた。
「王宮魔法学校は、寮にはいらなければいけないのよね……」
 母親はさみしそうにつぶやいた。
「大丈夫だよ、お母さん。僕、休みにはきちんと帰ってくるから」
「まだ、入学式も済んでいないのに気が早いなあ」
 父親はしょんぼりとしている母親を抱きしめて、優しく背中をなでた。

 カノンはまだ、自分が王宮魔法学校に入ることが信じられず、なんども手紙を見直した。
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