調律師カノン

茜カナコ

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10.基礎魔法2

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 次の授業も基礎魔法の練習だった。
 カノンは土、風の魔法も使えなかった。水の魔法を唱えたとき、かろうじて小さな水滴が現れただけだった。
「カノン、この学校に何を学びに来たんだ?」
 クラストップのミランがカノンに笑いながら言った。

「……魔法にきまってるじゃないか」
 カノンは小さな声で答えた。
 ミランは鼻で笑ってから、カノンから目をそらした。
「カノン、気にしないほうがいいぜ」
 ベンジャミンがカノンを励ました。

「みんな、がんばっているかな?」
「クリス校長先生!」
 クラスのみんなが校庭に現れたクリス校長を見つめた。
「……」
 カノンはうつむいて、地面をじっと見つめた。
 クリス校長がカノンに近づいて言った。
「君は……苦戦しているのかな? でも、大丈夫。この学校に呼ばれたということは、魔法の才能があるということだからね」
 カノンはクリス校長の顔を見た。クリス校長は優しく微笑んでいる。

「さあ、みなさん。授業に戻って!」
 カノンはアラン先生の声を聞いて、前を見た。
「ウォーターボール!」
 カノンの両手の中に小さな水球がふわふわと漂っている。
「それでは、失礼する」
 クリス校長が校舎に戻っていった。

「明日は魔力増幅の練習を行います」
 アラン先生はそう言うと、授業を終わりにした。
「疲れたな、カノン」
 ベンジャミンがカノンの肩を軽く叩いた。
「……うん」

 カノンは教室への道をとぼとぼと歩きながら、クリス校長の言葉を思い出していた。
「僕にも……魔法の才能なんてあるんだろうか……」
 カノンはため息をついた。

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