調律師カノン

茜カナコ

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30.夏休み

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 カノンは何回か図書館に行き、『ライラ・クロークの記録』をこっそり読んだが、新しい情報は得られなかった。
 
 木々が初夏の青さをまとったころ、昼食の時にベンジャミンに聞かれた。
「カノン、夏休みはどうする?」
「ベンジャミンは?」
「俺は家に戻るよ。あーあ、部屋が狭いんだよな、家は」
 カノンはそれを聞いて笑った。

「僕も家に帰るよ」
「そっか」

 カノンたちは家に帰るための荷物をまとめて、一学期が終わるのを待った。

 一学期最後の日、夕食の後にクリス学園長がみんなに言った。
「それでは、明日から夏休みです。みなさん、けがや事故のないように気を付けてください」
「はい」
 生徒たちは食事を終えて部屋に戻ると、帰り支度の仕上げをした。

「カノン、おじさんたちにもよろしく伝えてくれよ」
「うん。ベンジャミンも、おばさんたちに僕がベンジャミンにお世話になってるって伝えてね」
「ああ」
 カノンとベンジャミンは荷物をまとめ終えるとそれぞれのベッドに入った。
「父さんと母さんに会うのも久しぶりだな。元気かな」

 ベッドの中でもカノンは明日のことを考えてしまい、なかなか寝付けなかった。
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