勉強ができない絵描きの女の子と勉強しかできない僕

茜カナコ

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5、写真撮影

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日曜日の10時、一樹はいつもの駅でカレンを待っていた。
「お待たせ、一樹君」
「今来たところだよ、カレン」

カレンは肩の出ているTシャツに、短パン姿で現れた。
一樹はすこしドキドキしながら、カメラのセットを小脇に抱えている。
「今日は、何処で撮影するの?」
「中央公園に行こうと思ってる」
「分かった」

歩き出した一樹に、カレンはついていった。
二人は何も言わず公園に向かった。

一樹は公園の池の脇に着くと立ち止まった。
「着いた」
「ここですか?」
「うん」

一樹は三脚をセットすると、カレンに言った。
「じゃあ、池を見つめて」
「見つめる?」
「絵を描く時みたいに」
一樹の言葉にカレンは頷いた。

瞬間、カレンの表情が変わった。

一樹は何も言わず、シャッターを切った。
風が吹いて、カレンの髪を吹き上げる。

「よし、良い写真が撮れた」
「見せて、見せて!」
カレンが近づく。
顔が近くて、一樹は息を止めた。

「うわ、私可愛い」
「自分で言う?」
一樹は笑った。

その後も、場所を変えて何枚か写真を撮った。
カレンが言った。
「あの、写生してるところとかも撮る?」
「いいの?」
「うん、スケッチブックならいつも持ってるから」
カレンはそう言うと、カバンからスケッチブックを取り出した。

スケッチしているときのカレンは大人びた表情で、美しかった。
一樹は夢中でシャッターを切った。

「今日はここまで」
「お疲れ様」
「お昼どうする? これで解散する?」
「ファミレス行こうよ」
カレンの提案に一樹が頷いた。

二人は駅近くのファミレスに入った。
「スパゲティ、ミートソース一つ」
「私も」
「じゃあ、ミートソース二つとドリンクバー二つお願いします」
一樹とカレンは交互に飲み物をとってきた。

カレンはメロンソーダを一口飲んだ。
一樹はウーロン茶をごくごくと飲んだ。
「一緒にご飯なんて、ちょっと楽しいね」
「そうだね。勉強は順調?」
「うん。小学生からやり直しって、ちょっと精神的に辛かったけど、しょうがないよね」
「基礎は大事だから」

一樹は申し訳なさそうに言った。
カレンはそれを見て、慌てて言った。
「私が勉強できないのがいけないから」
「美大の予備校の方は大丈夫?」
「うん、なんとか追いついてる感じかな? みんな上手」

話していると、注文していたミートソースが来た。

「いただきます」
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