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変身
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赤毛の変人と言われる令嬢、アーリン・パチルは図書館の住人でもあった。
ある日、いつものように図書館に行くと、見慣れない一人の男性に声を掛けられた。
「あなたは宝石の原石ですね。どうか私に磨かせて下さい!」
「あなた、お名前は? 私はアーリン・パチルと申します」
「申し遅れました。私の名はブレット・ラスマンです」
アーリンは時計を見た。まだ10時を過ぎたばかりだ。
たまには、こういう意外な出来事に乗ってみるのも悪くないかも知れないとアーリンは考えた。
「わかりましたわ。お任せ致しましょう」
「ありがとうございます!!」
ブレットはアーリンの手を取り、ラスマン家に連れて行った。
「このくしゃくしゃの赤毛、綺麗に梳かしたいとずっと見ていたんですよ」
「そうですか。それはどうも申し訳ありません」
アーリンは、ブレットの流れるような櫛捌きに感心していた。
「次はお化粧です」
「はい」
ブレットは化粧箱を取り出した。意外とシンプルな装飾で、小鳥の彫刻が可愛らしい木箱だった。
「目はつむっていてくださいね、アーリン様」
「はい」
しばらくして、ブレットがアーリンの頬を撫でる手が止まった。
「完成です!!」
アーリンは恐る恐る鏡を見つめた。
そこには可憐な女性が自分を見つめていた。
「これが私?」
「はい。アーリン様の真の姿です」
ブレットは自分の手腕でアーリンが本来の美しさを取り戻したのを見ると、満足げに微笑んだ。
「ありがとうございました、ブレット様」
「よろしければ、昼食を外で一緒に食べませんか? せっかくの美貌を皆様に見せつけてあげましょう」
「ええ、せっかくのお化粧ですから、外へ行きましょう」
アーリンはブレットについて行った。
その日は天気がよかった。
アーリンが一人で行くと、いつもトイレの脇の席に案内されるレストランに入った。今日は一番通りに近い、目立つ席に通された。
「まあ、可愛らしいお嬢さん」
「何見とれてるの!?」
歩いている人たちの声がアーリンにも届いた。
「すこし目立ちすぎていませんか?」
「いいえ、本来のアーリン様が美しいからですよ」
ブレットと昼食を楽しんだ後、アーリンはブレットに礼を言った。
「今日は魔法に掛けられた気分でしたわ。とても楽しかったです。ありがとうございました」
「いいえ、私こそ、原石を磨かせて頂けて楽しかったです」
そう言うと、ブレットはアーリンの手を取り、その甲にキスをした。
「また、お会いできますか? アーリン様」
「よろこんで、ブレット様。私はいつも、あの図書館におりますわ」
二人は見つめ合った後、微笑んでそれぞれの屋敷に帰っていった。
ある日、いつものように図書館に行くと、見慣れない一人の男性に声を掛けられた。
「あなたは宝石の原石ですね。どうか私に磨かせて下さい!」
「あなた、お名前は? 私はアーリン・パチルと申します」
「申し遅れました。私の名はブレット・ラスマンです」
アーリンは時計を見た。まだ10時を過ぎたばかりだ。
たまには、こういう意外な出来事に乗ってみるのも悪くないかも知れないとアーリンは考えた。
「わかりましたわ。お任せ致しましょう」
「ありがとうございます!!」
ブレットはアーリンの手を取り、ラスマン家に連れて行った。
「このくしゃくしゃの赤毛、綺麗に梳かしたいとずっと見ていたんですよ」
「そうですか。それはどうも申し訳ありません」
アーリンは、ブレットの流れるような櫛捌きに感心していた。
「次はお化粧です」
「はい」
ブレットは化粧箱を取り出した。意外とシンプルな装飾で、小鳥の彫刻が可愛らしい木箱だった。
「目はつむっていてくださいね、アーリン様」
「はい」
しばらくして、ブレットがアーリンの頬を撫でる手が止まった。
「完成です!!」
アーリンは恐る恐る鏡を見つめた。
そこには可憐な女性が自分を見つめていた。
「これが私?」
「はい。アーリン様の真の姿です」
ブレットは自分の手腕でアーリンが本来の美しさを取り戻したのを見ると、満足げに微笑んだ。
「ありがとうございました、ブレット様」
「よろしければ、昼食を外で一緒に食べませんか? せっかくの美貌を皆様に見せつけてあげましょう」
「ええ、せっかくのお化粧ですから、外へ行きましょう」
アーリンはブレットについて行った。
その日は天気がよかった。
アーリンが一人で行くと、いつもトイレの脇の席に案内されるレストランに入った。今日は一番通りに近い、目立つ席に通された。
「まあ、可愛らしいお嬢さん」
「何見とれてるの!?」
歩いている人たちの声がアーリンにも届いた。
「すこし目立ちすぎていませんか?」
「いいえ、本来のアーリン様が美しいからですよ」
ブレットと昼食を楽しんだ後、アーリンはブレットに礼を言った。
「今日は魔法に掛けられた気分でしたわ。とても楽しかったです。ありがとうございました」
「いいえ、私こそ、原石を磨かせて頂けて楽しかったです」
そう言うと、ブレットはアーリンの手を取り、その甲にキスをした。
「また、お会いできますか? アーリン様」
「よろこんで、ブレット様。私はいつも、あの図書館におりますわ」
二人は見つめ合った後、微笑んでそれぞれの屋敷に帰っていった。
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