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5.試作
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ライラは護衛の兵二人と一緒に、グローサ国のゴードン王子を訪ねた。
王宮に着き馬車を降りると、ライラ達は応接室に案内され、そこでしばらく待つように言われた。
「ピコラ国の辺境伯令嬢ライラ様がいらっしゃいました」
ライラ達を出迎えた兵が、ゴードン王子に報告した。
「今行きます」
ゴードン王子は前髪で左顔を隠すと、ライラ達の待つ応接室に移動した。
廊下を歩いていると、ゴードン王子は憂鬱な気持ちになってきた。
(ライラ様も、私より弟が良いと心変わりをされたのではないだろうか……)
ゴードン王子が応接室に着くと、グローサ国の兵士がドアをノックして言った。
「ゴードン王子がいらっしゃいました」
ライラの返事が聞こえる。
「どうぞ、お入りください」
「本日はよくいらっしゃいました」
ゴードン王子は社交用の笑みを浮かべて、ライラ達にあいさつをした。
「こちらこそ、お時間をいただきありがとうございます」
ライラは屈託のない笑顔でゴードン王子を見つめている。
ゴードン王子は内心、婚約を解消したいのだろうと思いながらライラに言った。
「要件を伺いましょう」
ゴードン王子の言葉を聞いて、ライラは兵士に持たせた荷物から仮面の土台を取り出した。
「仮面のサイズがあっているか、確認させていただきたいのです」
作りかけの仮面を見て、ゴードン王子は意表を突かれた表情になった。
「……ああ、そうでしたか……」
ゴードン王子は、ほっとして軽く息をついた。
「つけてみていただけますか?」
「ええ、そのバンドは?」
「このバンドで頭を押さえ、仮面を顔に固定するつもりです」
ライラが作りかけの仮面を持ち、ゴードン王子に近づいた。
「すこし、かがんでいただけますか? 仮面をつけさせていただきますので……」
「……はい、お願いします」
近づいたライラの髪から、石鹸のような淡い香りが漂ったのでゴードン王子は少なからず動揺した。母親以外の女性とこんな近距離で接することは、ゴードン王子にとって今までにないことだった。
「目をつむっていただけますか?」
「はい」
ライラの手が、ゴードン王子の前髪をかき上げた。しっとりとして心地よい手がゴードン王子の頭に優しく触れる。
「はい、目を開けて鏡をご覧ください」
ライラの作った仮面の土台は、ゴードン王子の顔の傷跡をきちんと隠している。
「顔にぶつかって痛いところはありませんか? 小さかったり大きかったりしませんか?」
「大丈夫です。思っていたよりも軽いですね」
ゴードン王子は削られた木の仮面をつけて、微笑んだ。
ライラは言った。
「少し、視界が狭くなりますが……。出来上がりは木を絹で覆い、目元に刺繍を少しいれようと思っています」
ゴードン王子は仮面を外し、ライラに返した。
「ありがとうございます。出来上がりが楽しみです」
「……頑張ります」
ライラの恥じらうような笑顔が、ゴードン王子にはまぶしく感じられた。
「それでは、今日はこれで失礼いたします」
ライラはゴードン王子に別れのあいさつをすると、護衛の兵と一緒に馬車に乗ってピコラ国に帰っていった。
「……仮面、ですか」
ゴードン王子は鏡に映っていた仮面姿の自分を思い出し柔らかな表情をうかべた。
「兄様、なにかうれしいことがあったのですか?」
「マルク、いつからそこにいたのですか?」
ライラが去るときに開けたドアの陰から、第二王子のマルクがゴードン王子を見つめていた。
「兄様、今度はうまくいきそうですか?」
「マルク……」
マルク王子はゴードン王子に言った。
「いつも令嬢が来ると、兄様ではなく私が選ばれてしまいますから」
マルク王子は悪意がない分、より悪質な言葉をゴードン王子に投げかけた。
王宮に着き馬車を降りると、ライラ達は応接室に案内され、そこでしばらく待つように言われた。
「ピコラ国の辺境伯令嬢ライラ様がいらっしゃいました」
ライラ達を出迎えた兵が、ゴードン王子に報告した。
「今行きます」
ゴードン王子は前髪で左顔を隠すと、ライラ達の待つ応接室に移動した。
廊下を歩いていると、ゴードン王子は憂鬱な気持ちになってきた。
(ライラ様も、私より弟が良いと心変わりをされたのではないだろうか……)
ゴードン王子が応接室に着くと、グローサ国の兵士がドアをノックして言った。
「ゴードン王子がいらっしゃいました」
ライラの返事が聞こえる。
「どうぞ、お入りください」
「本日はよくいらっしゃいました」
ゴードン王子は社交用の笑みを浮かべて、ライラ達にあいさつをした。
「こちらこそ、お時間をいただきありがとうございます」
ライラは屈託のない笑顔でゴードン王子を見つめている。
ゴードン王子は内心、婚約を解消したいのだろうと思いながらライラに言った。
「要件を伺いましょう」
ゴードン王子の言葉を聞いて、ライラは兵士に持たせた荷物から仮面の土台を取り出した。
「仮面のサイズがあっているか、確認させていただきたいのです」
作りかけの仮面を見て、ゴードン王子は意表を突かれた表情になった。
「……ああ、そうでしたか……」
ゴードン王子は、ほっとして軽く息をついた。
「つけてみていただけますか?」
「ええ、そのバンドは?」
「このバンドで頭を押さえ、仮面を顔に固定するつもりです」
ライラが作りかけの仮面を持ち、ゴードン王子に近づいた。
「すこし、かがんでいただけますか? 仮面をつけさせていただきますので……」
「……はい、お願いします」
近づいたライラの髪から、石鹸のような淡い香りが漂ったのでゴードン王子は少なからず動揺した。母親以外の女性とこんな近距離で接することは、ゴードン王子にとって今までにないことだった。
「目をつむっていただけますか?」
「はい」
ライラの手が、ゴードン王子の前髪をかき上げた。しっとりとして心地よい手がゴードン王子の頭に優しく触れる。
「はい、目を開けて鏡をご覧ください」
ライラの作った仮面の土台は、ゴードン王子の顔の傷跡をきちんと隠している。
「顔にぶつかって痛いところはありませんか? 小さかったり大きかったりしませんか?」
「大丈夫です。思っていたよりも軽いですね」
ゴードン王子は削られた木の仮面をつけて、微笑んだ。
ライラは言った。
「少し、視界が狭くなりますが……。出来上がりは木を絹で覆い、目元に刺繍を少しいれようと思っています」
ゴードン王子は仮面を外し、ライラに返した。
「ありがとうございます。出来上がりが楽しみです」
「……頑張ります」
ライラの恥じらうような笑顔が、ゴードン王子にはまぶしく感じられた。
「それでは、今日はこれで失礼いたします」
ライラはゴードン王子に別れのあいさつをすると、護衛の兵と一緒に馬車に乗ってピコラ国に帰っていった。
「……仮面、ですか」
ゴードン王子は鏡に映っていた仮面姿の自分を思い出し柔らかな表情をうかべた。
「兄様、なにかうれしいことがあったのですか?」
「マルク、いつからそこにいたのですか?」
ライラが去るときに開けたドアの陰から、第二王子のマルクがゴードン王子を見つめていた。
「兄様、今度はうまくいきそうですか?」
「マルク……」
マルク王子はゴードン王子に言った。
「いつも令嬢が来ると、兄様ではなく私が選ばれてしまいますから」
マルク王子は悪意がない分、より悪質な言葉をゴードン王子に投げかけた。
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