【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ

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36.夕食

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「あーあ、この塩がいつもあれば、お客さんも増えて、ホテルもたたまなくてすむのに」
 ミナの言葉を聞いて、俺は驚いた。
「このホテル、閉めるのか?」
「ええ、今年いっぱいで。だって、お客さん来ないんだもん」

 ミナはそう言って寂しそうに笑った。大翔が少し考えた後に口を開いた。
「ミナさん、この塩をたくさん作って売ったり、食事作りに使ったりしたら、お客さん増えるんじゃないですか? この塩の作り方を知っているのは、僕たちとミナさんだけなんだから……」
 ミナの顔がパッと明るくなった。
「え!? いいの!? たしかにこの美味しい塩があれば、このホテルも立て直せるかも」

「やってみろよ」
「うん。父さんに相談してみる!」
 ミナはそういうと、ホテルの中に駆けて行った。大翔がミナに慌てて声をかける。
「ミナさん! 今日の夕食に、今作った塩を使ってみて!」
「分かった!」

 俺は大翔に言った。
「今日の夕食は期待できそうだな」
「うん」
 大翔が頷いた。
「昼飯を食べたら……何をする?」
「健は塩作り、疲れちゃった?」
「うーん、それほどじゃない」
「それなら、もう一度塩作りをしようよ、健。ミナさんに手順を再確認してもらって。それで今度から、ここで作った塩を買わせてもらえるようにミナさんと交渉しようと思う。山の塩と海の塩は味が違うからね」
「いいんじゃないか」
「うん」

 俺たちは昼食として、海辺に並んでいる屋台で焼きイカや焼き魚を買って食べた。
 やっぱり塩味にえぐみがあってあまり美味しくなかった。
「健、ジュース買わない?」
「いいな、買おう」

 この海辺で唯一美味しいと感じた、トロピカルフルーツのジュースを二つ買って、海岸に座って飲んだ。
「美味しいね、健」
「ああ」

 俺たちはジュースを飲み終えるとホテルに戻って、再び塩作りをすることをミナに伝え、一緒に手順を確認しながら新しい塩を作った。

「これだけあれば、今日の皆さんの夕食に使えます!」
「良かった」
 大翔は優しく微笑むと、作ったばかりの塩をミナに渡した。
 俺たちは一度部屋に戻った。

「今日の夕食、楽しみだね」
「ああ。今日の食事がおいしければ、ホテルのリピーターも増えるだろう」
「そうだね」
 俺たちはベッドで少しまどろんだ。
「そろそろお食事の用意が整いますよ!」
 ミナの声で目を覚ます。

「僕たちの塩、喜んでもらえるかな?」
「さあな」
 俺たちは食堂に向かって歩き出した。

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