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2.錬金術との出会い
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――錬金術を使える人間は限られている。なぜなら魔力を物質化するには稀有な才能が必要だからだ――
『世界の理』と書かれた本を開くと、一番最初にそう書かれていた。
「……そうだよね、ましてや魔力の無い僕に錬金術が使えるはずなんてないよね……」
おもわずつぶやきながら、でも僕は本を閉じることもできなかった。
「『回復薬』って、ポーションのことかな? 薬草なら庭に生えてるし……薬草を煮るだけなら僕にもできる。ただ、それがポーションになるかは……」
僕は本を置いて、ベッドに寝転がった。失敗する要素しかないのに、なんだかうまくいくような気がして『回復薬』を作ってみたくなっている。
「……とりあえず、薬草を取ってこよう」
僕は『世界の理』をまたハンカチでくるんで、上着のポケットにしまった。
***
両手を広げたくらいの大きさの布袋を持って、僕は庭の林を歩き回った。
「あ、あった」
木のそばに薬草が生えている。僕は布袋がいっぱいになるまで薬草を摘んだ。
「つぎは、薬草を煮出すんだよね……」
火を使うならキッチンが思い浮かぶけど、勝手に使うわけにはいかない。
僕が調理室の前で考えていると母上に声をかけられた。
「メルヴィン? こんなところでどうしたの?」
「母上、ちょっと……」
僕は良い言い訳を思いついた。
「薬草茶を作りたいと思っているのですが、調理室には入れないし、どうしたものかと考えていたんです」
「そうなの?」
母上は少し考えてから言った。
「空いている部屋で、暖炉が使える部屋があったと思うわ。暖炉でもお湯くらいならわかせるでしょう?」
「……はい!」
僕は調理人から小さめの鍋を借りてから、母上に部屋を開けてもらい、暖炉に火を起こしてもらった。
水は、大き目の水差しに入れてメイドに運んでもらった。
「ありがとう、母上」
「お父様やお兄様の迷惑にならないようにね」
「はい」
母上が出て行き、部屋に一人になったことを確認して、『世界の理』を開く。
「『薬草は土を拭きとって、水と一緒に鍋に入れて煮る。このとき混ぜながら魔力を注入する』か」
僕は水と薬草の入った鍋を火の入った暖炉に置き、木べらで混ぜた。
「魔力を注入? どうすればいいんだろう? 回復薬になれ、って念じればいいのかな?」
僕は目を瞑り、体の力が木べらを伝い鍋の中に入って行く様子をイメージしながら、ゆっくりと鍋を混ぜた。そっと目を開けると、鍋の中がほんのり光っているような気がする。
「次は『中の水溶液が淡い緑色になったら薬草を取り出し、液体を瓶に詰める』ね」
やけどをしないように気をつけながら、薬草を取り出し、熱い液体を空いていた瓶に詰めた。
「念のためにじょうごをもってきておいてよかった。これで冷めるまで待てば『回復薬』の完成だね。……うまくできてるのかな?」
僕は暖炉の灯を消し、使った道具を一か所にまとめた。
「うーん。水と火が自由に使える場所の方がいいなあ……でも、そんな場所あるかな? まあ、次までにさがしてみよう。時間はあるし」
僕はメイドに、借りた道具を調理室に戻すようたのんでから、出来上がった『回復薬』をもって自分の部屋に戻った。
「……これ、飲んでみようかな? 薬草と水しか使ってないから、具合が悪くなることは無いはずだよね……」
ふたを開けて、一口、口に含む。
「うわ……にっがい」
おもわず顔をしかめる。
「……回復、したかな?」
もともと疲れてもいないし、怪我もしていないから『回復薬』の効果はわからなかった。
「そうだ! 玄関の脇の木が枯れかかっていたから、それで試してみよう!」
僕はワインの瓶に入れた『回復薬』を、二つの小瓶に移して玄関に向かった。
『世界の理』と書かれた本を開くと、一番最初にそう書かれていた。
「……そうだよね、ましてや魔力の無い僕に錬金術が使えるはずなんてないよね……」
おもわずつぶやきながら、でも僕は本を閉じることもできなかった。
「『回復薬』って、ポーションのことかな? 薬草なら庭に生えてるし……薬草を煮るだけなら僕にもできる。ただ、それがポーションになるかは……」
僕は本を置いて、ベッドに寝転がった。失敗する要素しかないのに、なんだかうまくいくような気がして『回復薬』を作ってみたくなっている。
「……とりあえず、薬草を取ってこよう」
僕は『世界の理』をまたハンカチでくるんで、上着のポケットにしまった。
***
両手を広げたくらいの大きさの布袋を持って、僕は庭の林を歩き回った。
「あ、あった」
木のそばに薬草が生えている。僕は布袋がいっぱいになるまで薬草を摘んだ。
「つぎは、薬草を煮出すんだよね……」
火を使うならキッチンが思い浮かぶけど、勝手に使うわけにはいかない。
僕が調理室の前で考えていると母上に声をかけられた。
「メルヴィン? こんなところでどうしたの?」
「母上、ちょっと……」
僕は良い言い訳を思いついた。
「薬草茶を作りたいと思っているのですが、調理室には入れないし、どうしたものかと考えていたんです」
「そうなの?」
母上は少し考えてから言った。
「空いている部屋で、暖炉が使える部屋があったと思うわ。暖炉でもお湯くらいならわかせるでしょう?」
「……はい!」
僕は調理人から小さめの鍋を借りてから、母上に部屋を開けてもらい、暖炉に火を起こしてもらった。
水は、大き目の水差しに入れてメイドに運んでもらった。
「ありがとう、母上」
「お父様やお兄様の迷惑にならないようにね」
「はい」
母上が出て行き、部屋に一人になったことを確認して、『世界の理』を開く。
「『薬草は土を拭きとって、水と一緒に鍋に入れて煮る。このとき混ぜながら魔力を注入する』か」
僕は水と薬草の入った鍋を火の入った暖炉に置き、木べらで混ぜた。
「魔力を注入? どうすればいいんだろう? 回復薬になれ、って念じればいいのかな?」
僕は目を瞑り、体の力が木べらを伝い鍋の中に入って行く様子をイメージしながら、ゆっくりと鍋を混ぜた。そっと目を開けると、鍋の中がほんのり光っているような気がする。
「次は『中の水溶液が淡い緑色になったら薬草を取り出し、液体を瓶に詰める』ね」
やけどをしないように気をつけながら、薬草を取り出し、熱い液体を空いていた瓶に詰めた。
「念のためにじょうごをもってきておいてよかった。これで冷めるまで待てば『回復薬』の完成だね。……うまくできてるのかな?」
僕は暖炉の灯を消し、使った道具を一か所にまとめた。
「うーん。水と火が自由に使える場所の方がいいなあ……でも、そんな場所あるかな? まあ、次までにさがしてみよう。時間はあるし」
僕はメイドに、借りた道具を調理室に戻すようたのんでから、出来上がった『回復薬』をもって自分の部屋に戻った。
「……これ、飲んでみようかな? 薬草と水しか使ってないから、具合が悪くなることは無いはずだよね……」
ふたを開けて、一口、口に含む。
「うわ……にっがい」
おもわず顔をしかめる。
「……回復、したかな?」
もともと疲れてもいないし、怪我もしていないから『回復薬』の効果はわからなかった。
「そうだ! 玄関の脇の木が枯れかかっていたから、それで試してみよう!」
僕はワインの瓶に入れた『回復薬』を、二つの小瓶に移して玄関に向かった。
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