魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ

文字の大きさ
17 / 17

17.ポーション作り

しおりを挟む
 作業所の扉が開き、ニコラスが入ってきた。

「メルヴィン、雑用の前にポーションを作れ。できるだけたくさんだ」
「……はい!」
 僕は嬉しくて立ち上がった。
「え? ポーションを作れるの?」
 ビルが目を丸くしている。

「はい。でも、今はポーションしか作れません」
「……そう」
 ビルは複雑な表情で僕を見つめると、唇を真一文字に引き結んでいた。

 僕は空いている窯に鍋を置き、水と薬草を入れて煮始めた。ニコラスが『たくさん』ポーションを作るように言っていたから、水と薬草は今までの五倍、鍋に入れている。
 力を注ぎこむようにイメージをしながら鍋をかき混ぜていると、だんだん体が冷えてきた。
「あれ? なんか変……?」
「メルヴィン、顔色が良くないよ? 大丈夫?」
 ビルが心配そうな表情で、声をかけてくれた。
「大丈夫……です」
 僕は頑張って微笑み、ビルに頷いて見せた。

 鍋の中が淡く発光してきたので、鍋を火からおろし作業台に移動させた。
「……鍋ってこんなに重たかったっけ……?」
 煮汁を漉して瓶に詰めていく。
「ねえ、メルヴィン、顔が真っ青だよ?」
 ビルが眉間にしわを寄せて僕を見つめている。
「大……丈夫……」
 ふらふらしながら、出来上がったポーションを瓶に詰め終わると、僕は立っていられなくなり、その場にへたり込んでしまった。

「メルヴィン!?」
「なんか、力が入らないんです……」
「……魔力の使い過ぎだよ。父さんには僕が言っておくから、メルヴィンは部屋で休んでおいでよ」
「……ありがとうございます」

 僕はビルに支えられて二階の自分の部屋に行くと、ベッドに寝転がった。
 瞼を開いていられない。体もまるで鉛になったように重くて、手を持ち上げることさえできない。

 全身の倦怠感にあらがうこともできず、僕は眠りに落ちた。

***

「メルヴィン、大丈夫?」
「……!?」
 窓から見える空はもう暗くなっている。
 僕をじっと見つめているビルに「今何時ですか?」と尋ねると、「もう仕事が終わったところだよ」とビルは微笑んだ。

 つまり、昼も午後も、僕はずっと部屋で寝ていたことになる。僕が青ざめていると、ビルは優しい声で言った。
「大丈夫だよ。父さんも怒っていないよ」
「でも、みなさんに迷惑を……」
 僕は起き上がろうとしたけれど、まだ体に力が入らない。
「スープとパン、置いておくから後で食べてね」

 ビルは机の上を指し、にっこりと笑った。
「やっちゃったなぁ……」
 僕はため息をついてベッドの中で、もう一度目を瞑った。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

Conanlove
2025.11.23 Conanlove

頑張って下さいね~〜

解除

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

過労死した家具職人、異世界で快適な寝具を作ったら辺境の村が要塞になりました ~もう働きたくないので、面倒ごとは自動迎撃ベッドにお任せします

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック工房で働き詰め、最後は作りかけの椅子の上で息絶えた家具職人の木崎巧(キザキ・タクミ)。 目覚めると、そこは木材資源だけは豊富な異世界の貧しい開拓村だった。 タクミとして新たな生を得た彼は、もう二度とあんな働き方はしないと固く誓う。 最優先事項は、自分のための快適な寝具の確保。 前世の知識とこの世界の素材(魔石や魔物の皮)を組み合わせ、最高のベッド作りを開始する。 しかし、完成したのは侵入者を感知して自動で拘束する、とんでもない性能を持つ魔法のベッドだった。 そのベッドが村をゴブリンの襲撃から守ったことで、彼の作る家具は「快適防衛家具」として注目を集め始める。 本人はあくまで安眠第一でスローライフを望むだけなのに、貴族や商人から面倒な依頼が舞い込み始め、村はいつの間にか彼の家具によって難攻不落の要塞へと姿を変えていく。

勇者召喚に巻き込まれた俺は『荷物持ち』スキルしか貰えなかった。旅商人として自由に生きたいのに、伝説の運び屋と間違われています

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ある日突然、クラスメイトたちと一緒に異世界へ召喚された俺、高橋昇(タカハシノボル)。クラスメイトが次々と強力な戦闘スキルを授かる中、俺が貰えたのは【荷物持ち】という地味すぎるスキルだった。 「勇者様の荷物を運ぶだけの存在など不要だ」 そう言って、王様は俺にわずかな金貨を握らせて城から追放した。途方に暮れたが、この【荷物持ち】スキル、実はアイテムを無限に収納できるだけでなく、その気になれば巨大な岩や建物すらも収納できる規格外の空間操作能力だと判明する。 これなら商人として自由に生きていけると、俺は各地を旅しながら行商を始めることにした。しかし、山賊に襲われた村に救援物資を瞬時に届けたり、輸送困難な貴重品を運んだりするうちに、俺の存在は裏社会で噂になっていく。本人はのんびり旅をしたいだけなのに、いつしか「どんな不可能も可能にする伝説の運び屋」と呼ばれるようになっていた。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

社畜生活に疲れた俺が転生先で拾ったのは喋る古代ゴーレムだった。のんびり修理屋を開店したら、なぜか伝説の職人だと勘違いされている件

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。 もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。 俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。

スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。 ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。 そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。