優秀すぎる令嬢は愚かな人々に疎まれ神の供物にされかけましたが、現れたイケメン悪魔に助けられました

茜カナコ

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出会い

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 ある夜、令嬢達に町の離れまで呼び出されたフローラは、怪しい魔方陣の中央に立つよう命じられた。
「貴方、少し賢いからって調子に乗りすぎですわ」
「そうよ」
「私も貴方が嫌いでしたの」
「さあ、神様への供物にしてあげるから、その魔方陣の中央に立ちなさい」
 フローラは、多勢に無勢で敵わないことを悟り、言われるまま魔方陣の中央に立った。

 令嬢の代表、レイスが呪文を唱える。
 しかし、魔方陣は光ることは無かった。その時、低く落ち着いた男の声で静寂が破られた。
「誰だ? こんな真夜中に。他人の家の庭で何をしている?」
「あ、悪魔が現れたわ! 逃げましょう、皆さん!!」
「はい!!」
「きゃあっ! 来ないで、悪魔!!」
「悪魔とは、私のことか?」
 背の高い紳士は、両手に雷を光らせながら令嬢達の方に歩いて行った。
 令嬢達は古びた屋敷から出てきた背の高い紳士に向かって、暴言を吐きながら転がるように走って逃げ出した。

 一人残されたフローラは言った。
「夜分にお騒がせして申し訳ございません」
「いや、君はただ連れてこられて虐められていただけだろう?」
「彼女たちは愚かなだけで、それを罪だというのは……真実だけに残酷ですわ」
 悪魔と呼ばれた紳士は、吹き出して笑った。
「君は愉快な人だね」
「そうですか?」
「ああ。もう少し君と話がしたい。良かったら屋敷に泊まらないか?」

 フローラは首をかしげて言った。
「悪魔の家に泊まりたい女性がいると思いまして?」
「私は悪魔では無いよ。ちょっと、変わり者と呼ばれているけれどね」
「変わり者?」

「私は科学が好きで、天気を当てたり電気をおこしたりして遊んでいたら、いつの間にか神だの悪魔だの、好き勝手に呼ばれるようになってね」
「まあ、そうでしたの。でも、科学って、電気って何でしょうか?」
 紳士はちょっと考えてから言った。
「便利で楽しくて、怖いものだよ」
「私も使えるようになるものですか? 先ほどの雷は」
「ああ、勉強と練習をすればね」
「勉強と練習なら、得意です」

 フローラは翌朝、改めて紳士の家を訪問する事にした。
「それでは、よろしくお願いします……あの……」
「アルフレッドだよ、私の名前は」
「アルフレッド様」
 アルフレッドはフローラに小さな名刺を渡して微笑んだ。
「また愚か者に嫌がらせをされたら、それを見せれば良い。きっと飛んで逃げていく」
「ありがとうございます」
 フローラは家に帰っていった。

「面白い子だ」
 アルフレッドは屋敷に戻って、眠りについた。
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