【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵

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デイジーは、アリッサと一緒に裏の薬草畑で薬草を摘んでいた。

「ねえ、お母さん。今年は薬草の育ちがとても良いね。」

「そうだね。この間のヤツも良かったけれど、今回のは更に青々して育ちも早いねぇ。こんな事は、あたしが物心付いてから初めての事だよ。ほら、これなんて立派に育って♪」

今年の薬草は、例年の物より出来が良い。
この薬草なら、薬屋も何時もより良い値で買ってくれそうだし、煎じ薬も良い物が出来そうだ。
今年は、少し生活にも余裕が出来るかもしれない。我が家は、食べるのに困る程ではないが、決して裕福ではない。

「アリッサっ!」

「カイン、ロビン、おかえり。どうしたんだい、そんなに慌てて。」

「前回売りに持って行った煎じ薬が、前の物よりも効きが良くなっていると言われた。」

「へー、それは良かったじゃないか。薬草が良いと効き目も良くなるのかねぇ?」

「腹痛で転げ回って痛がっていた奴が、煎じ薬を飲んだら直ぐに痛みが収まり嘘みたいに元気になったって。それだけじゃない。高熱でうなされていた人が飲んだら直ぐに熱が下がったと言われた。」

おかしい。
いくら薬草が青々と育っても、そんな即効性の薬が出来る筈がない。

「街で聞いたのだが、聖女が倒れたそうだ。国王のお達しで、新しい聖女は、今年成人する女性の中にいるらしく、国が勢力を掛けて探しているそうだ。うちの薬草の育ちが良いのは、まさかデイジーが…」

3人の眼がデイジーを見る。

「えぇー!あたしが聖女!?ないない。大体、あたしは魔法さえ使えないのよ。聖女様は、豊潤の力があるんだっけ?んじゃあ試してみる?えっと、この芽が出たばかりの薬草に手をかざして…」

デイジーが手をかざし「大きくなれ!」と念じれば、キラキラと光輝き、小さな芽がみるみる大きく育ってしまった。

「「「「嘘ぉー!!!」」」」

これはヤバい状況では無いだろうか。
このまま聖女と認められれば、王都に連れて行かれて家族と離ればなれになってしまう。
そんなの嫌だ。

「う~ん困ったねぇ。煎じ薬は、誰が作ったか話したのかい?」

「いや、言っていない。薬屋も何時も通りアリッサが作ったと思っていると思う。聖女の話も薬屋で聞いたのではなく食堂で話しているのを小耳に挟んだだけだ。」

幸いな事に我が家は村から外れた一軒家。
カインとロビンは村や街に出るが、あたしとデイジーは、年に1、2回しか出掛ける事はない。

皆、デイジーが何歳なのかも、顔だってろくに覚えてはいないだろう。

「デイジー。あんたは聖女かも知れない。どうする?申し出て神殿に行くかい?」

「嫌よ!絶対に嫌!!お父さんとお母さんと兄さんと離れて暮らすなんて絶対に嫌だからっ!」

煎じ薬の事が知られたら、神官が確かめに来るのは時間の問題だろう。
ぐずぐずしていたら、デイジーは連れ去られてしまう。

当面の荷物を持つと皆で魔森に向かった。
デイジーが聖女なら魔物も襲って来ないのでは?と僅かな望みを持って。

元々貴族の血を持つあたし達は、魔法が使える。
平民は、使えないから、何か無い限り使う事はしなかったけれど。
ロビンは、結構な魔力を持っている。
本当なら高位貴族の子息だったのでは無いかと思う。

あたし達は、魔森の前にいた。

「最後にもう1度聞くよ。デイジー、あんたは聖女かも知れない。王都に行けば聖女として今までよりも良い暮らしが待っている。それでも、ここで暮らす事を望むかい?」

デイジーは、頷いた。

「ロビン。あんたは何も魔森で暮らさなくても良いんだ。あたし達と別れて1人で街に出て暮らしても良い。街に出るなら、このお金を持って…」

「俺も皆と一緒に行く。俺はデイジーを守りたい!」

心を決めた4人は、魔森へと入っていった。
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