【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。

山葵

文字の大きさ
15 / 30

15 アリシア視点

しおりを挟む
「奥様、ユリア様がご懐妊されたそうです」

 ユリアが妊娠したのなら、当分は、ユリアの元に行くことはないわね!あとは、カミラだけか…。

 などと安心していたのだが、サイードは、市井に視察に行った際、立ち寄った食堂の娘リンドを気に入り無理矢理、公妾として宮廷に入れた。

「はぁ!?何なのっ!信じられない!!」


「サイード、一体どういう事かしら?私を愛していると言ったでは有りませんか?それなのに公妾とは…説明して頂けるかしら?」

「すまないアリシア。私は真実の愛に目覚めてしまったんだ!リンドこそ私の運命の相手なのだ!!」

 何を言っちゃってるの?真実の愛???
笑わせるんじゃないわよ!!
うっとりとした顔をしちゃって、キモーい!!
これはもう今は何を言っても無駄ねっ!

「はぁー…真実の愛ですか?本気なんですね…でも、これからも夫としての務めは果して頂けるのですよね?」

「いや…これからは私はリンドしか欲しくない!
王子妃には、もう皆、子供がいるから、十分に夫としての務めは果たした。これからは、リンドだけが私の相手をしてくれれば他は必要ない。君達には、これからも不自由がない生活はさせる。」

「はぁぁ?何言っちゃってるわけ?何が運命の相手よ!馬鹿じゃないの!?あんたは、運命の相手だと言っているけれど、向こうは逆らえないから嫌なのに泣く泣く宮廷に連れてこられたと聞いているわよ!それで、真実の愛?運命の相手?あんたの独り善がりじゃない!あんたが愛していると言うからザイルまで来た私は、どうなるのよっ!!」

「なっ…!!」

「アリシア様、言葉が過ぎます!」

ダリルに窘められたがアリシアは止まらない。

「サイードが好きなようにするなら、私も好きにして良いのよね?!私も運命の相手やらを探そうかしら?」

「…第3夫人としての務めを果てしてくれれば、自由にして構わない。但し、他に男を作るのは駄目だ。
子供を作られては困るからなっ!」

「はぁ?自分は好きな女と乳くりあうのに、こっちは駄目っておかしいでしょう?」

「兎に角、男は駄目だ!!それ以外は好きにしろっ!」

許さないっ!私を馬鹿にしてっ!冗談じゃないわ!

***

「奥様…聞きました…その…殿下の事」

「あぁ公妾の事?…もういいのよ、サイードは私なんか本当は愛してなかったのよ…愛されていると信じていたのに…。真実の愛なんですって…私、馬鹿みたいよね?サイードに愛していると言われて、信じてザイル国まで来ちゃって…」

「奥様…」

「ありがとう、カイド。あーこれからは、愛される事がないのに、此処に居るしかないのね…」

「・・・俺が…俺が奥様の側に居ます!
あっ!変な意味じゃなくて…話し相手として…」

「ふふふ、ありがとう。これからも私の話し相手になってくれるの?嬉しいわ~」

「はいっ!喜んで!!」

***

 此処は何処かしら?宮廷は広すぎて迷ってしまったわ!

 リンドの侍女は、自分より身分の低い平民上がりの主人に不満があり、侍女長に分からないように仕事に手を抜き、リンドを放置する。

「うわぁ~綺麗!何て美しい庭なの!!」

「誰?」

「あっ!勝手に入って、ごめんなさい。
迷ってしまって…」

「新しい侍女?それにしては服が…」

「えっと、私はリンド。最近、此処に来たの」

「俺はカイド。庭の手入れを任されてる。」

「じゃあ貴方が、この庭を?凄い綺麗!」

「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいよ!」

「また見に来ても良い?」

「勿論いつでも来てくれ」

「ありがとう。もう行かないと…またね!」

「あぁまた!」

何だったの(んだ)?胸がドキドキして、こんなの初めて(だ)。

この2人の出会いがアリシアの運命をも変えてしまうなど、誰も思わなかった…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。 だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・ ※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。

君を自由にしたくて婚約破棄したのに

佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」  幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。  でもそれは一瞬のことだった。 「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」  なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。  その顔はいつもの淡々としたものだった。  だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。  彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。 ============ 注意)ほぼコメディです。 軽い気持ちで読んでいただければと思います。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

処理中です...