私の好きなお兄様

3

お兄様が3年生になった夏の長期休暇前に、お父様から、お兄様が婚約する事を知らされた。

お相手は、グリル伯爵家のご令嬢スーザン様。

とうとう、この日が来てしまったのね。

お兄様に「おめでとう」と伝えなければ…。

ちゃんと泣かないで言えるかしら…。


長期休暇に入り、お兄様が帰ってきた。

「おかえりなさい、お兄様。この度はご婚約、おめでとうございます」

「あぁ…」

頑張って御祝いの言葉を伝えたのに、やっぱり私の顔は見てくれないのですね。


休み期間中にスーザン様が、お兄様に会う為に我が家に遊びに来られた。

庭のガゼボで話をしている2人の姿を窓から見ていた。

お兄様の優しそうな笑顔。

私には見せる事のない表情。

兄妹なのに触れる事も出来ないお兄様の手が彼女の手に触れていた。

いつからお兄様に触れる事もなくなったのだろう？

もういつだかも思い出せない位、遥か昔の事の様に思える。

お兄様、何故ですか？

私は、お兄様に何故、嫌われてしまったのですか？

聞きたくても聞けない…。

これ以上、お兄様に嫌われるのは怖いから…。