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私アイリスとイザーク第2王子との出会いは彼の8歳を祝う誕生日お茶会。

同じ年頃の子息、令嬢が招待されたお茶会で、初めてイザーク殿下を見た時は『うわぁ~、キラキラしてる。本物の王子様だぁ~』なんて可愛い事を思ったっけ。

まさかそのお茶会が婚約者を決めるお茶会だったなんて知らなかったけれどねぇ~。

まさかイザーク王子の婚約者に私が選ばれるなんてねぇ~。

まさか私がヒロインを虐めて断罪される悪役令嬢かもしれないなんてねぇ~。

異世界転生させた神(?かしら)恨むわっ!



お茶会から10年後の入学式。

私は、ゲームのヒロインであるドイル男爵家のミシェルさんの姿を見た時に、前世の記憶が蘇ったんですの。

あまりの情報量に目眩を起こしましたけれど、幸いにも既に着席しておりましたので倒れる事なく済んで良かったですわ。

もし倒れるなんて醜態を晒してしまえば、生徒会長であるイザーク殿下にも大変ご迷惑をお掛けしてしまいましたもの。



私は、学園長の挨拶を聞きながらも、横目でチラッとミシェルさんを見る。

『ミシェル・ドイル…男爵の庶子で半年前に引き取られた。彼女は、男爵からの命令で高位貴族子息、令嬢と交流しようとする。貴族令嬢の嗜みも出来ていない彼女は、なかなか打ち解けられない。困り涙ぐむ彼女を、のちに取り巻きとなる子息達が相談にのっているうちに恋仲になる。彼女の攻略対象の子息達は全て高位貴族で既に婚約者がいる。彼らの内の誰かがミシェルと結ばれ、1年後の卒業パーティーで婚約者を断罪し婚約破棄宣言をされるのだ。ご令嬢はその後、処罰されたり、家を勘当されたり…』

因みに、私の婚約者は、イザーク・ファントム第2王子。
残念な事に、このゲームの攻略対象者の1人。

殿下の他に、宰相のご子息、騎士団長のご子息、公爵家のご子息、辺境伯のご子息が攻略対象者になるりますわね…。

ミシェルさんが選んだ攻略対象者との恋を成就させる恋愛ゲーム。
どの攻略対象者を選んでも、婚約者は悪役令嬢となり嫉妬から彼女を虐め断罪され処罰を受ける運命。

前世で流行っていたから、私も友達と一緒にプレイしていたけれど「政略結婚の婚約者が浮気したからと嫉妬してヒロインを虐めて殺そうとする!?ゲームなのに怖いわぁ~。大体ねぇ、結婚前に浮気する様な男なんて結婚してからも浮気するのよ!そんな男の為に断罪されて処罰を受けるなんて悲しすぎる!あたしなら、そんな男は要らない。あたしが友達なら止めてるねっ!」と言っていたなぁ~。

まさか、そのゲームの世界に転生するなんてね。
しかも攻略対象の婚約者なんて辛すぎる。

ミシェルは誰を選ぶのだろう?

私は、イザーク殿下は、嫌いではない。
寧ろ、今では好意を抱いている。
私の事を気に掛けてくれるし、手紙やプレゼントも贈ってくれる。
月1回のお茶会も、私の好きな物を用意して、笑顔で迎えてくれる。

それは愛なのか?と問われれば、悩むけれど、貴族令嬢として政略結婚は仕方がないと思って生きてきた。

まして相手は王族。
愛があろうとなかろうと決まってしまえば、こちらから婚約を解消するなど出来ないのだ。

ゲームの中で、ミシェルがイザーク殿下を選んだ時は、アイリスはミシェルと殿下の仲を裂こうと躍起になり取り巻き達と一緒に虐めを繰り返していた。

イザーク殿下がミシェルに向け笑う笑顔は、アイリスには向けられた事のない笑顔だった。
それを見たアイリスは嫉妬からミシェルを虐めるが、ミシェルは、愛する殿下の側を離れる事は死ぬのと同じと決して離れない。
それなら本当に死んでもらいましょう♪と言って人を雇いミシェルを襲わせるが失敗。
アイリスは、イザーク殿下の卒業パーティーにて、全ての悪事が暴かれ婚約破棄宣言された後に衛兵により牢へと連れて行かれ、1ヶ月後には処刑される。

アイリスは、重罪を犯したのだ。
処刑されても仕方ないのだろう。
けれど、何もしていない家族までもが捕まり、一緒に処刑されていた。

お父様もお母様も私をとても愛してくれている。
嫡男である弟とも仲良しだ。
その家族が、私の醜い嫉妬からの行いで一緒に処刑されるなんてあってはならない。

もしミシェルがイザーク殿下を選んだのなら、私は素直にそれを受け入れよう。

2人が結ばれるのが運命ならば、どうせ私が虐めなくても婚約破棄は回避出来ないはず。

お父様とお母様は悲しむかも知れないけれど、家族が処刑されるより婚約破棄の方が良い。

3ヶ月が過ぎた頃にはミシェルの周りに5人の攻略対象者が一緒にいた。

ミシェルは誰を狙っているの?
まさか逆ハー狙いとか!?
そんなの無かったわよね?
う~ん、誰か分からないなら、攻略対象者の婚約者達と共に行動すれば、ご令嬢達の虐めも止められるのでは?
それに異世界転生物で良くある、ヒロインのでっち上げも防げるのでは?

私は、攻略対象者の婚約者であるご令嬢達と行動を共にし、泣き崩れる令嬢は慰め、怒る令嬢を落ち着かせた。
5人だけで行動しては、私達が断罪された時に口裏を合わせて嘘を言っていると言われ可能性があると、イザーク殿下の妹であるシルビア王女と公爵家令嬢のマリアナ様とも行動を共にした。

シルビア王女は、ミシェルと行動をするイザーク殿下に王族として慎みある行動をと咎めたが、イザーク殿下にはその思いは伝わらなかった。



「アイリス・ハルマン!!お前は俺の婚約者で在りながらミシェルを虐めていたそうだなっ!王族である俺の顔に泥を塗りおってっ!お前との婚約は破棄だ!俺は…」

「殿下、宜しいですか!?シリア・ルアー、お前もミシェルを虐めて居たそうだな!俺も、お前とは婚約破棄する!」

残りの3人も婚約破棄宣言をした。

「終わったか?それでだ、俺は、ここに居るミシェル・ドイルと婚約…」

「「「「ちょっと待ったぁー!!ミシェルと婚約するのは俺(僕)です!いくら王子でも、それは譲れません!!!」」」」

あらあら、ミシェルは1人しか居ませんのに、5人が婚約宣言ですか?
6人の茶番劇を卒業パーティー会場に居る者達は冷めた目で見ていますよ。

「はあぁー!?王子である俺がミシェルと結婚するのが当然だろう?」

「王子だからと言ってミシェルを奪うのは止めて下さい!僕とミシェルは真実の愛で結ばれているのです」

「何を言っているんだ!俺とミシェルは、運命の赤い糸で結ばれている。俺がミシェルと結婚するんだ」

「皆、私の為に喧嘩をしないで!!」

「「「「「ミシェル、君は誰を選ぶんだ?」」」」」

「……ごめんなさい。私、皆が好きなの。1人なんて選べないわ。そうだ!6人で一緒に住めば良いじゃない!皆は私の事を愛してくれているのでしょう。今まで6人で仲良くして来たんだもの、これからも皆で仲良く暮らしましょうよ♪」

会場に居る者達の目が更に冷めた目になる。

あの人は一体何を言っているのだろう。
6人で仲良く暮らす?
まぁ勝手に遣って下さい。

それよりも…

「イザーク殿下、発言して宜しいですか?イザーク殿下ならびにご子息令息様、わたくし達は全員、婚約破棄をお受け致します。ですが…先程、わたくし達がドイル男爵令嬢を虐めたと仰って下りましたが、わたくし達はドイル男爵令嬢を虐めた事など1度も御座いません。していない罪を認めるわけにはいきません。殿下、どうか発言の撤回をお願い致します」

「はあぁ!?この期に及んで罪を認めぬとは。お前はミシェルの教科書を破き、運動着を焼却炉に捨て、階段からミシェルを突き落とそうとした。これが虐めでないと言うのか!?」

「それを、わたくし達が行ったという証拠をお見せ下さい」

「証拠?ミシェルが泣きながら訴えて来たのだ。それが何よりの証拠だろう!」

他の4人も、うんうんと頷いている。

「つまり証拠はないと…。証拠も無しに、ドイル男爵令嬢の言葉だけで、わたくし達を断罪されると…。ドイル男爵令嬢、貴女はわたくし達から虐めを受けたと殿下に言ったそうですが、なぜ わたくし達だと分かったのです?5人で虐めをすれば目立ちますわよね?ここに居る方で、わたくし達が虐めをしているのを見た方はいらっしゃるかしら?」

勿論、誰も居ない。
だって虐めなんてしていないのですもの。

「虐める時は1人でした。後ろ姿を見たんです。噴水に突き落とすしたのは、あの人です。私、噴水の中から見ました」

「それは、何日の何時かしら?」

「一昨日の昼休みです」

「それは可笑しいわね。一昨日の昼休みは彼女はわたくし達と一緒に居ましてよ」

「イザークぅ~、この人達、グルになって私を陥れようと嘘を言ってるぅ~」

「お前達5人でグルになってミシェルを虐めていたのか!?お前達の言う事など…」

「いい加減にせんかっ!!」

怒鳴り声と共に現れたのはイザーク殿下のお父様。
つまりこの国の国王陛下だ。

「イザーク、お前という奴は…シルビアから聞いた時は信じらる事は出来なかったが…こんなにも愚かだったとは情けない。王族として真実を見極めて行動しなければならない。調べもせずに言葉だけを鵜呑みにし虚偽を真実だと告げるなどあってはならない。人を貶める事は重罪に値する。王族としてお前は決してしては行けない過ちを犯したのだ」

「ち、父上、お待ち下さい!ミシェルは、嘘を言う様な…」

「彼女は嘘を付いているわよ!一昨日の昼休み、わたくしも彼女達と一緒に居ましたの。勿論、護衛の影も見ていますわ。お父様に頼んで影をドイル男爵令嬢にも付けておきましたの。影の報告では、一昨日、ドイル男爵令嬢は自ら噴水に入り、水浸しになると笑いながらお兄様達の元に走って行ったそうですわ。はぁー。お兄様、わたくしは何回も注意致しましたよね?お兄様達が卒業パーティーで何かしようとしているのも気が付いていましたのよ。お忙しい陛下に時間を作って来てもらって正解でしたわね。とても残念ですわ、お兄様」

シルビア王女は、私の卒業パーティーでイザーク殿下達が何かする様な気がしてならない!という言葉を信じて国王陛下にパーティーに参加してくれる様に頼んだ。

「衛兵!こやつらを連れて行け!」

暴れていたのはミシェルだけ。
攻略対象者は、自分達が仕出かした事の重大性が分かったのか、青ざめ震えヨロヨロしながら大人しく連行されて行った。

「皆の者、卒業パーティーという祝いの場を愚息達が台無しにした。さぁこれからの時間は楽しんで欲しい」

パーティーは再開された。
さっきまでの断罪劇が嘘の様だ。

陛下は、明日、王宮に登城する様に私達に告げると会場を後にした。

次の日に両親と共に登城した私達は無事に婚約破棄をした。

イザーク殿下は、王位継承権を剥奪され王家が持つ辺境の地で生涯幽閉となった。
その他の子息達は、勘当され平民となった。

ミシェルとドイル男爵家の家族は、厳しい北の犯罪者労働場送りとなり、ドイル男爵家は取り潰し。

誰も処刑にならずに済んだのは良かったと思う。

婚約破棄された私達5人は今でも仲良くしている。
なかなか次の婚約者が決まらない子、直ぐに決まった子と様々だ。
なかには、ずっと好きだった人がいたが、家格が彼女よりも低くお父様が許さなかった。
しかし今回の件で、行き遅れになるよりは…と渋々承諾して貰った子もいた。

実は私も、まだ決まっていない。
沢山の釣書は届いているみたいなのだけれど、今回の事で、お父様もお母様も私がショックを受けていると思っている様で、もう少し傷が癒えてからとなったみたい。

私は、イザークがミシェルと行動を共にし始めた時に彼に見切りを付けた。
自分の為、家族の為にイザークと距離を置き、イザークとミシェルがイチャイチャしようが、学園中に噂され様が放置した。
イザークが真実の愛だ、運命だ!と言うなら誰が何を言ったって聞くはずがない。
注意して怒鳴られる位なら、無駄な労力は使わないと決めた。
好きだという想いも直ぐに消え去った。

お父様とお母様が、婚姻はまだ良いと言ってくれるなら、それに甘えよう♪

そう思っていたのに…。

「た、大変だ!隣国のアーロン王子から釣書が届いてしまった!」

隣国のアーロン王子ですって!?

ちょっと、またゲームの攻略対象者じゃないっ!!

これ、一体いつまで続くのよ?

異世界転生させた奴、本当に恨んでやるぅー!!!




End

*****

最後まで読んで頂き ありがとうございます。
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