4 / 44
第1章 傭兵と軍人
第2話 軍人ハンニバルとの出会い
しおりを挟む
「お前は自分の利益の為だけに戦っていると言ったな。ならば俺たちと組む気は無いか? お前のような強い男が俺のチームに入ってくれりゃ鬼に金棒だぜ。もっとも、その気が無いならこの場でぶっ殺すのみだがな」
親玉がマティアスに近づき、自分のチームへの勧誘をしてきた。
(確かに私は利己主義者だが、無抵抗の一般人を傷つけてまで金を得たくは無い。しかし、断れば殺される。ならいっそのこと無法者側に寝返ってやろうか……?)
マティアスは悩んだ末、親玉に向かって手を差し出す。今はやむを得ず無法者の一員となり、もっと強い人間が現れたら寝返るつもりで考えていた。
その瞬間、どこからか砲弾が飛んできて親玉に命中し、親玉はその衝撃で吹っ飛んだ。
「ぐっ……! 新手の賞金稼ぎか!? それとも……」
親玉は体を起こし、斧を構える。
親玉の元にやって来たのは、身長2メートルを超す、巨大なバズーカを持った筋肉質な大男だ。
その男は茶髪で赤い瞳を持つ野性的な風貌で、戦闘服を着ており、軍人の証であるエンブレムを装着している。
年齢は20代前半~半ばくらいだろうか。マティアスと同年代と言えるだろう。
軍人の男はバズーカを背中に背負うと、親玉に近づき言葉を放った。
「軍からの命令だ。この荒野を荒らしている貴様を始末してやるぜ」
軍人の男は素手の状態で親玉に飛び掛かる。親玉もすぐさま軍人めがけて斧を振り落とした。
軍人は斧の刃を左手の指のみで受け止め、右手の拳で斧を殴って破壊した。その衝撃で斧の破片が辺りに散らばっていく。
「てめぇ、一体何者だ!? 俺は今までに軍人も何人か殺してきたが、てめぇのような化け物がいるなんて聞いてねーぞ!」
「俺の体はちょっと訳ありなんでな。生まれつき筋力や回復力が優れているんだ」
軍人が親玉に向かってパンチを放つと、親玉も負けじとパンチで対抗する。2人の拳がぶつかり合うと、親玉の拳が破壊され、肉片が飛び散った。
「があああああっ!!!」
親玉は激痛のあまり絶叫し、地面に膝をつく。
軍人はさらに親玉に近づき、両手で親玉の頭部を掴んだ。そしてその両手で親玉の頭部を押し潰そうとする。
「た、助けてくれえぇぇ! もう悪い事はしねぇから! 命だけは頼む!」
「助けてくれだと? てめぇは今までそうやって命乞いをしてきた人間を助けたことがあんのか? あの世でこの女に土下座しな!」
軍人はケイトの無残な死体を見つめつつ、両手で親玉の頭部をヘルメットごと押し潰した。親玉はその場に倒れ、潰れたヘルメットの中からは血が流れている。
2人の戦いを見ていたマティアスは親玉が完全に死んだのを確認すると、軍人に礼を言う。
「助かったよ。礼を言わせてくれ。あなたがいなければ私は賊になり下がるところだった」
「気にすんなって。俺はこう見えても困っている奴を放ってはおけない性質でな。……ん? まさかお前は……無法地帯を中心に活動しているという噂の金髪の傭兵か!?」
軍人はマティアスの姿を見て驚いた。荒野の無法地帯で活動する凄腕の傭兵がいるということが、軍に知れ渡っているからだ。
「その通りだ。私の名はマティアス・マッカーサー。そこの女に雇われて無法者を狩っていたが、雇い主はこのザマだ。雇い主を守れなかった私は傭兵失格だ……」
「そうか、それは残念だったな。俺の名前はハンニバル・クルーガーだ。特殊部隊として単独で任務を受けて回っているぜ。……ところでよ、いきなりこんなこと言うのもなんだが……俺と一緒に働く気はねぇか? この荒野で傭兵として生き抜くよりも、軍人になった方が豊かな生活を送れるぜ」
ハンニバル・クルーガーと名乗る軍人からの突然の勧誘だ。
最初は自称自警団の女に雇われ、その次に無法者の親玉に勧誘されたと思ったら、今度は屈強な軍人に誘われる。モテる男は大変だ。
しかし、相手はすぐに死ぬヤワな雇い主でも無く、悪事を働く悪党でも無い。国家の為に働く、そして自分より遥かに強い軍人だ。
マティアスはこのまま孤独に戦うよりも、強い人間についたほうが得だと確信した。
「断る理由は無い。むしろあなたのような強い男に誘ってもらえて光栄だ」
「よし、決まりだ! これから軍事基地に帰るぜ。運よくここにバイクが落ちている。この大きさならなんとか2人乗りで行けるだろ」
ハンニバルは無法者の親玉が乗っていた大型バイクを起こした。
マティアスもケイトが使っていた銃を拾い上げる。無法地帯で生きてきた者にとって、死体から戦利品や金目のものを回収するのは当たり前のことだ。
ハンニバルは大型バイクに乗ると、マティアスに後ろの席に乗るように呼び掛ける。
「俺の後ろに乗れ。振り落とされないように、しっかり俺につかまってろよ」
「分かった。くれぐれも危険運転はやめてくれよ?」
マティアスが後ろからハンニバルの体につかまると、ハンニバルは勢いよくバイクを発進させた。
大の男の2人乗りは狭くて窮屈だが、手っ取り早く軍事基地へ向かうにはこれが一番だ。
ハンニバルはあまりにもスピードを出し過ぎていて、マティアスは何度も振り落とされそうになる。
「もう少しゆっくり走ってくれ! このままじゃ振り落とされる!」
「ちんたらしてたら日が暮れちまうだろ? 俺の軍に入るなら、これくらい耐えられるようにしろよな」
それにしても非常に荒い運転だ。ハンニバルは外見に違わずワイルドな男だった。
しばらくすると2人は荒野を抜け、緑豊かな森林地帯に入った。
そして出発から数十分ほど経過したところでバイクが停止した。どうやらガソリンが切れてしまったようだ。
「ちっ……こんなところでガソリン切れかよ! 軍事基地はまだまだ先だってのに!」
「盗んだバイクで、しかも大の男2人分の重量でこの距離を走ることが出来ただけ上出来だろう」
さっきまでの荒野とは一変、辺りは木で覆われている。
(懐かしいな……森を見たのは子供の時以来だ)
ずっと荒野で過ごしてきたマティアスにとって、大自然はとても新鮮で懐かしさを感じさせるものだった。
よく見ると、少し離れた場所に一軒の大きな屋敷がある。
「ハンニバル、あそこに屋敷があるぞ。今日はもう遅いし、あの屋敷の人間に一晩泊めてもらえるように頼んでみないか?」
「仕方ねぇな。ついでにガソリンも譲ってもらえると良いがな」
2人はバイクを押しながら目の前の屋敷へ向かっていった。
親玉がマティアスに近づき、自分のチームへの勧誘をしてきた。
(確かに私は利己主義者だが、無抵抗の一般人を傷つけてまで金を得たくは無い。しかし、断れば殺される。ならいっそのこと無法者側に寝返ってやろうか……?)
マティアスは悩んだ末、親玉に向かって手を差し出す。今はやむを得ず無法者の一員となり、もっと強い人間が現れたら寝返るつもりで考えていた。
その瞬間、どこからか砲弾が飛んできて親玉に命中し、親玉はその衝撃で吹っ飛んだ。
「ぐっ……! 新手の賞金稼ぎか!? それとも……」
親玉は体を起こし、斧を構える。
親玉の元にやって来たのは、身長2メートルを超す、巨大なバズーカを持った筋肉質な大男だ。
その男は茶髪で赤い瞳を持つ野性的な風貌で、戦闘服を着ており、軍人の証であるエンブレムを装着している。
年齢は20代前半~半ばくらいだろうか。マティアスと同年代と言えるだろう。
軍人の男はバズーカを背中に背負うと、親玉に近づき言葉を放った。
「軍からの命令だ。この荒野を荒らしている貴様を始末してやるぜ」
軍人の男は素手の状態で親玉に飛び掛かる。親玉もすぐさま軍人めがけて斧を振り落とした。
軍人は斧の刃を左手の指のみで受け止め、右手の拳で斧を殴って破壊した。その衝撃で斧の破片が辺りに散らばっていく。
「てめぇ、一体何者だ!? 俺は今までに軍人も何人か殺してきたが、てめぇのような化け物がいるなんて聞いてねーぞ!」
「俺の体はちょっと訳ありなんでな。生まれつき筋力や回復力が優れているんだ」
軍人が親玉に向かってパンチを放つと、親玉も負けじとパンチで対抗する。2人の拳がぶつかり合うと、親玉の拳が破壊され、肉片が飛び散った。
「があああああっ!!!」
親玉は激痛のあまり絶叫し、地面に膝をつく。
軍人はさらに親玉に近づき、両手で親玉の頭部を掴んだ。そしてその両手で親玉の頭部を押し潰そうとする。
「た、助けてくれえぇぇ! もう悪い事はしねぇから! 命だけは頼む!」
「助けてくれだと? てめぇは今までそうやって命乞いをしてきた人間を助けたことがあんのか? あの世でこの女に土下座しな!」
軍人はケイトの無残な死体を見つめつつ、両手で親玉の頭部をヘルメットごと押し潰した。親玉はその場に倒れ、潰れたヘルメットの中からは血が流れている。
2人の戦いを見ていたマティアスは親玉が完全に死んだのを確認すると、軍人に礼を言う。
「助かったよ。礼を言わせてくれ。あなたがいなければ私は賊になり下がるところだった」
「気にすんなって。俺はこう見えても困っている奴を放ってはおけない性質でな。……ん? まさかお前は……無法地帯を中心に活動しているという噂の金髪の傭兵か!?」
軍人はマティアスの姿を見て驚いた。荒野の無法地帯で活動する凄腕の傭兵がいるということが、軍に知れ渡っているからだ。
「その通りだ。私の名はマティアス・マッカーサー。そこの女に雇われて無法者を狩っていたが、雇い主はこのザマだ。雇い主を守れなかった私は傭兵失格だ……」
「そうか、それは残念だったな。俺の名前はハンニバル・クルーガーだ。特殊部隊として単独で任務を受けて回っているぜ。……ところでよ、いきなりこんなこと言うのもなんだが……俺と一緒に働く気はねぇか? この荒野で傭兵として生き抜くよりも、軍人になった方が豊かな生活を送れるぜ」
ハンニバル・クルーガーと名乗る軍人からの突然の勧誘だ。
最初は自称自警団の女に雇われ、その次に無法者の親玉に勧誘されたと思ったら、今度は屈強な軍人に誘われる。モテる男は大変だ。
しかし、相手はすぐに死ぬヤワな雇い主でも無く、悪事を働く悪党でも無い。国家の為に働く、そして自分より遥かに強い軍人だ。
マティアスはこのまま孤独に戦うよりも、強い人間についたほうが得だと確信した。
「断る理由は無い。むしろあなたのような強い男に誘ってもらえて光栄だ」
「よし、決まりだ! これから軍事基地に帰るぜ。運よくここにバイクが落ちている。この大きさならなんとか2人乗りで行けるだろ」
ハンニバルは無法者の親玉が乗っていた大型バイクを起こした。
マティアスもケイトが使っていた銃を拾い上げる。無法地帯で生きてきた者にとって、死体から戦利品や金目のものを回収するのは当たり前のことだ。
ハンニバルは大型バイクに乗ると、マティアスに後ろの席に乗るように呼び掛ける。
「俺の後ろに乗れ。振り落とされないように、しっかり俺につかまってろよ」
「分かった。くれぐれも危険運転はやめてくれよ?」
マティアスが後ろからハンニバルの体につかまると、ハンニバルは勢いよくバイクを発進させた。
大の男の2人乗りは狭くて窮屈だが、手っ取り早く軍事基地へ向かうにはこれが一番だ。
ハンニバルはあまりにもスピードを出し過ぎていて、マティアスは何度も振り落とされそうになる。
「もう少しゆっくり走ってくれ! このままじゃ振り落とされる!」
「ちんたらしてたら日が暮れちまうだろ? 俺の軍に入るなら、これくらい耐えられるようにしろよな」
それにしても非常に荒い運転だ。ハンニバルは外見に違わずワイルドな男だった。
しばらくすると2人は荒野を抜け、緑豊かな森林地帯に入った。
そして出発から数十分ほど経過したところでバイクが停止した。どうやらガソリンが切れてしまったようだ。
「ちっ……こんなところでガソリン切れかよ! 軍事基地はまだまだ先だってのに!」
「盗んだバイクで、しかも大の男2人分の重量でこの距離を走ることが出来ただけ上出来だろう」
さっきまでの荒野とは一変、辺りは木で覆われている。
(懐かしいな……森を見たのは子供の時以来だ)
ずっと荒野で過ごしてきたマティアスにとって、大自然はとても新鮮で懐かしさを感じさせるものだった。
よく見ると、少し離れた場所に一軒の大きな屋敷がある。
「ハンニバル、あそこに屋敷があるぞ。今日はもう遅いし、あの屋敷の人間に一晩泊めてもらえるように頼んでみないか?」
「仕方ねぇな。ついでにガソリンも譲ってもらえると良いがな」
2人はバイクを押しながら目の前の屋敷へ向かっていった。
0
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる