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第4章 最後の試練
第56話 疾影の暗殺者 ハイド伍長!
しおりを挟むヘリポートの風が俺たちの頬を撫でる。目の前には小型バズーカと軍用ナイフを構えたハイド伍長。
ホモの町で俺とレイさんを圧倒した男が再び俺たちの前に立ちはだかる。
「準備はいいかい?」
静かに微笑むハイド伍長。しかし、その目には鋭い光が宿っている。
「かかってこいやぁ!」
俺は鞭を構え、レイさんが竹刀を構え、ミカエルは二丁拳銃を手にし、ヨウスケは棒を両手で握り締める。
「みんな頑張れー!」
ヨウスケは活力スプレーで俺たち全員のパワーと身体を強化。
風が止んだように感じた瞬間——ハイド伍長の姿がかき消えた。
「——ッ!?」
反射的に後ろを取られると察した俺は咄嗟に鞭を振るう。しかし——。
「遅いよ!」
鋭い声とともに、レイさんの背後に突如現れたハイド伍長が軍用ナイフを振り下ろす。
ギリギリのところでレイさんが竹刀を横にして受け止めるが、その勢いに押され、レイさんは膝をつく。
「うおっ……!」
そこへミカエルが狙撃。二丁拳銃から放たれる弾丸がハイド伍長をとらえたかに見えたが……。
「フンッ」
ハイド伍長は弾丸の軌道を読むかのように、最小限の動きでかわしていく。そして高くジャンプし、上空でバズーカを構え、トリガーを引いた。
「ほらよ、受け取りな!」
ハイド伍長のバズーカから無数の小型ミサイルが発射された。
俺たちが反応する間もなく、バズーカから発射された複数の小型ミサイルが空中で炸裂し、無数の火球となって降り注ぐ。ねーイタいーもう! イッタいよもう!
そして、倒れたレイさんの背後に、軍用ナイフを構えたハイド伍長が立っていた。
「しまっ——!」
レイさんが確実に斬られると思ったその時——。
「させるか!」
ミカエルの弾丸がハイド伍長の背中に撃ち込まれた。
「くっ!」
ハイド伍長は防弾ベストを着ている為ダメージは少なかったが、わずかに隙ができた。
「隙あり!」
その隙にヨウスケが両手で棒を横なぎに振り、ハイド伍長の腕を狙う。
しかし、ハイド伍長は反射的に軍用ナイフで棒を弾き、即座に後ろへ飛び退いた。
「あぁっ! 弾かれちゃったよ!」
「ははっ、ようやく少しは戦えてきたな!」
ハイド伍長は息も乱さず微笑む。
だが、ハイド伍長が微笑みながら動きを止めた一瞬の隙を俺は見逃さなかった。
俺は両手に鞭を持ち、ハイド伍長の手と足を縛り上げた。
「なっ……!」
「レイさん、今だ!」
「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」
レイさんの必殺技"おじさんブロー"がハイド伍長へ叩き込まれる。
圧倒的機動力を誇るハイド伍長であろうと手足の自由を奪われた状態ではまともに動くことはできない。
「くっ……!」
"おじさんブロー"を受けたハイド伍長はめまいを起こし怯む。
「よくやった。次は私の番だ」
ミカエルが二丁拳銃で必殺技"ラピッドファイア"を放った。毒を含んだ弾丸が雨のようにハイド伍長を襲う。
ハイド伍長は鞭で縛られていない左腕を使い、バズーカを盾に弾丸を弾こうとする。しかし完全に防ぎきることはできない。
「ぐっ……! クソッ、毒か……!」
毒がじわじわとハイド伍長の体力を削り取る。
「よし、今のうちに総攻撃を仕掛けるぜぇ~」
「心得たあぁぁぁ!!」
俺たちは一斉にハイド伍長を攻撃しようとするが……。
「……おっと、そう簡単には捕まらねーぜ!」
ハイド伍長は左手で煙玉を足元に投げた。すると、煙玉は爆発と同時に広範囲の煙を発生。
俺たちは煙で視界を奪われ、ハイド伍長を見失ってしまった。
「クソッ! あと少しでフルボッコタイムだったのによぉ~?」
「みんな、おれが煙を消すから待ってて!」
ヨウスケが手持ちのスプレー缶でミストを撒く。すると、徐々に煙が消え、視界が元通りになっていった。
しかし、俺たちの視界にハイド伍長の姿は無かった。
「Fooooo! 遅いぜー! 俺の必殺技を受けてみろ!」
ハイド伍長はいつの間にかに手足の鞭から逃れていた。俺たちが煙で視界を奪われている隙に鞭をナイフで斬ったのだ。
ハイド伍長は両手にナイフを構え、まるで分身をしているかのように残像を残しながら素早い動きで俺たちに襲い掛かる。
ナイフには敵の視界を一時的に奪う粉が塗られており、ダメージを与えると同時に俺たちの視界を奪っていく。
「痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)」
「しかもハイド伍長にかかった毒が完全回復しているじゃねーか!」
「フフッ……俺は自力で状態異常を回復できるんだぜ」
「ファッ!?」
そういやハイド伍長は過去の任務で俺たちを治療してくれていたな。あれは状態異常を治す効果もあったのか。
「クソッ、見えねぇ!」
「このままじゃやられる!」
俺たちの視界が奪われている中、ヨウスケがスプレー缶を取り出した。
「みんな、これで立て直すよ!」
シュウゥゥゥッ!
スプレーが広範囲に撒かれ、俺たちの体を癒していく。体力が一気に回復し、視界の異常もすべて取り除かれた。ヨウスケの必殺技"超回復術"だ。
「おおっ、力が湧いてくる!」
「さすがヨウスケ、助かったぜ!」
「よし、反撃開始だ」
完全に回復した俺たちは再びハイド伍長へと向き直る。
「やるな……だが、戦いはまだまだこれからだ!」
ハイド伍長は地面を蹴り、瞬時に後方へと跳躍する。その体が空中で捻じれると、彼は煙玉を取り出して地面に叩きつけた。
「クソッ、また煙か!」
レイさんが顔をしかめるが、その時すでにハイド伍長の姿は煙の中に消えていた。
「今度はどこに……?」
ミカエルが警戒を強めた瞬間、真横からの刃の閃きがミカエルを襲った。
「――ッ!」
ミカエルは寸前で身をかわし、ナイフの軌跡を回避する。しかし、ハイド伍長の猛攻は止まらない。彼は影のように素早く動きながら、ナイフの連撃を繰り出してくる。
ミカエルも二刀のナイフで応戦するが、近接戦闘ではハイド伍長が圧倒的に強かった。ミカエルはナイフをはたき落とされてしまう。
「しまった……!」
俺とレイさんとヨウスケも武器を持ってハイド伍長を攻撃していたが、奴は俺たち全員の攻撃全てを避けながらミカエルへ痛恨の一撃を与えた。
ミカエルはハイド伍長のナイフで強く斬りつけられ、血を流しながらうつ伏せに倒れ込んでしまった。
オイ、これって模擬試合ダルルオ!? ちょっとは手加減しろよなァ!?
「ミカエル! 大丈夫かー!?」
「私に構うな……!」
こうしている間にもハイド伍長は高速移動を続けながら俺たちへ襲い掛かる。
俺の背後を取ったハイド伍長が即座にナイフを振り返し、俺の脇腹を狙う。だがその時——。
「誰が後ろから攻撃していいっつったオイオラァ!」
レイさんがハイド伍長のナイフ目掛けて、両手で竹刀を力いっぱい振り下ろした。
「ちっ……! やるねぇ……!」
ハイド伍長は片手で竹刀を受け止めるが、その衝撃でバランスを崩した。
その時、ミカエルが倒れたまま銃を構え、狙いを定めている。
(今度こそ当ててやる……!)
ミカエルは一発、二発と続けて発砲。
「おっと、まだ戦えるのか」
ハイド伍長は即座に回避行動を取るが、その動きはさっきまでのような俊敏さを失っている。
いくら軍人とはいえ、あれだけの高速移動を絶え間なく続けていればスタミナ切れを起こすのも無理は無い。
「どうした~? 動きが鈍くなってんぜぇ~」
俺はすかさず鞭を振るい、ハイド伍長の腕を狙った。狙い通り、鞭がハイド伍長の右腕に絡みつく。
「くっ! また鞭か!」
ハイド伍長が鞭を切ろうとするが、次の瞬間——。
「隙あり!」
「悪い忍者はお仕置きだどー!」
ヨウスケの棒とレイさんの竹刀が同時にハイド伍長を攻撃。
ハイド伍長は避けようとするが、疲労が蓄積した身体では避けきることができなかった。
2人の攻撃を受けたハイド伍長はバランスを崩し、膝を地面につく。
そして俺はハイド伍長の目の前に立ち、片手に散髪刀を握り締める。
「ハイド伍長にハゲが効かないのは分かってるけどよ、最後は俺の必殺技で終わらせるぜ! 髪なんか必要ねぇんだよ!」
俺は散髪刀でハイド伍長の頭部を斬り続ける。奴の頭部はフードで包まれているからハゲさせることはできないが、ダメージは大きかった。
「……参ったよ。君たちの勝ちだ」
ついに地面に倒れ込むハイド伍長。
「いやぁ……本当に強くなったな。ホモの町で戦った時とは比べものにならないぜ。正直、負けるとは思っていなかったのにな」
ハイド伍長は悔しげに笑いながらも、満足そうにうなずいた。
「俺らもここまで成長するとは思っていなかったぜー」
「ホモの町のリベンジ果たしたどー!」
「なかなか手強い相手だったな……」
「みんな、お疲れー!」
俺たちは互いに拳を突き合わせ、勝利を分かち合う。
その時、後ろで見ていたマティアス司令官、エーリッヒ大佐、ナイト軍曹が拍手を送った。
「見事な戦いだった。諸君の成長を見ることができて嬉しいぞ」
「君たちの連携プレー、見事だったよ」
「お前ら、なかなか強くなったなー!」
「だろぉ~?」
これで第1の試験はクリアだ。そして俺たちは次の対戦相手にエーリッヒ大佐を指名した。
「了解。明日は楽しみにしているよ」
これにて今日の仕事は終了だ。俺たちは明日の戦いに備えてゆっくり休むことにした。
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