タツヤさんの悶絶調教物語

アサシン工房

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第4章 最後の試練

第60話 無敵の人間兵器 ハンニバル中将!

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 ハンニバル中将の巨体がゆっくりと俺たちに歩み寄ってくる。

「もう終わりか? もっと面白ぇもん見せてくれよ、ガキども」

 ハンニバル中将はあくまで無表情のまま、俺たちの様子を冷静に観察していた。
 奴の砲撃によって大ダメージを受けた上にハゲさせられてしまった俺たち。
 唯一ハゲていないミカエルも瀕死のダメージを負い、とても反撃できる状況ではない。

「でもよ……」

 俺はボロボロの身体をなんとか立ち上がらせる。

「それでもよ、勝ちてぇんだよ。あんたに、俺らの力を見せてやりてぇんだ!」
「行くぞ、みんな! 最後の最後まで足掻いてやるんだよオラァ!!」

 レイさんがふらつきながら竹刀を肩に担ぐ。ミカエルも二丁拳銃を構えたまま前に出る。ヨウスケも棒を杖にして立ち上がった。

「みんな、おれの"超回復術"がまだ残ってるよ!」

 ヨウスケの必殺技"超回復術"により、俺たち全員の体力とハゲを回復。これで髪が元通りだぜ。

「お前ら、ヨウスケの必殺技で体勢を立て直したみてぇだな。だが、さっきの攻撃で俺が消耗したとでも思ったか? あの程度の砲撃は何発でも撃てるぜ」
「「「「ファッ!?」」」」

 かつてのナイト軍曹は必殺技"イグニッション"を放った後、大きく消耗していた。
 ハンニバル中将は"イグニッション"よりも厄介な、ハゲ追加効果付きの広範囲高火力砲撃を放った後も消耗している気配は全くない。
 あんな物騒な攻撃を何発もブチ込めるってことかよ!? これじゃ命がいくつあっても足りねーぜ!
 俺以外はすでに必殺技を使い切っている。それでも一向に倒せる気配が無い。
 それでも俺はムチを振るい、レイさんが竹刀で突貫し、ミカエルは弾丸を惜しまず乱射する。ヨウスケは残り少ない回復スプレー温存のため、回避に専念する。

「おらぁああああっ!!」
「YO! YO! YOォー!!」

 ハンニバル中将は俺たちの攻撃を避けない。
 目の前に立つハンニバル中将は、鉄の壁のようにビクともせず、巨体を揺らしてこちらを見下ろしている。

「良い連携だ。だが、ただ攻撃を続けているだけでは俺に勝てんぞ?」
「なぁ、あんたのダメージ計算装置の残量は残りいくつなんだよ? いつになったら0になるんだよォ!?」
「まだ半分以上残ってるぜ」
「ファッ!?」

 こんなに攻撃を当ててもまだ半分以上残ってるってウッソだろお前!
 こりゃダメージ与えて勝利するのは無理だな。ならば俺たちに残された道は一つ……!

「レイさん、ミカエル、ヨウスケ! あの頭の装置を狙うしかねぇぜ!」
「無理だよ、あんな高い位置……!」
「でもよォ、あの装置、奴が一切防御してねぇのはなんでだ? 自信があるからか? それとも……あそこだけは意識の外か?」

 奴のような化け物は致命的な弱点が見えていても自分が負けるとは思っていない。
 だからこそ防御の手を抜く――なら、逆にそこを突くしかない!
 ハンニバル中将の頭部に設置されている装置。あれを取ることができれば、与えたダメージ量に関係なく俺たちの勝利だ。
 全員がこの作戦に賛成し、うなずいたその瞬間、ハンニバル中将がバズーカを構えたまま大ジャンプした!

「次はこいつだ。避けてみろ!」

 ハンニバル中将は地面に着地と同時にバズーカを地面に叩きつけた!
 ドゴォンッ!!  という音と共に地響きが起き、地面からガレキが上空へ押し出される!

「「「「アッー!」」」」

 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 俺たちは派手に上へ打ち上げられてしまった。こんなの攻撃範囲広すぎて避けられねーよ!
 あの大技を放ってもなお、ハンニバル中将の攻撃の手を止めない。

「お前ら、受け身がなって無ぇな。ちょっと吹っ飛ばされたからって何もできねーんじゃ更に痛い追撃を食らうことになるぞ?」

 ハンニバル中将は片手でバズーカを振り回し、宙に浮いた俺たち全員を薙ぎ払った!

「「「「アッー!」」」」

 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 駄目だ、もう動けねぇ……。ハンニバル中将が俺たちの元へゆっくり近づいてくる。
 そして奴はゆっくり俺たちへ手を指し伸ばしてきた。トドメを刺す気か?
 ……いや、なんとハンニバル中将は俺たち全員を手当てし、体力を回復させた! なぜだ……?

「……ハンニバル中将、もう勝負はついたってのに、なぜ俺らを助けるんだぜ?」
「俺の目的はお前ら相手に己の力を誇示することじゃねぇ。お前らがマティアスの試験に合格できるように鍛えてやってんだ。俺、いや……この試験に合格したければ回避や受け身くらい身に着けろ!」
「いやいや! あんな広範囲の攻撃避けられねぇって!」
「避けられねぇなら受け身に回って反撃しろ! 俺やナイトの砲撃を、お前らが全力で軽減した時のようにな」
「そうか! ……いや、ハンニバル中将の砲撃はナイト軍曹のイグニッションと違って食らったらハゲるし、ヨウスケの"超回復術"はもう使えない。あれをもう1回食らったら絶望的なんですがそれは……」
「たかがハゲたくらいで絶望してんじゃねぇ! ハゲても動くことくらいはできるだろうが!」
「お、そうだな……」

 ハンニバル中将の言う通りだ。例えハゲさせられて脱力したとしても、奴の頭部に設置されている装置を奪い取ることさえできれば俺たちの勝ちだ。

「それじゃ、仕切り直しといくぜ。今度こそ俺をがっかりさせるなよ?」

 その瞬間、ハンニバル中将が右肩にバズーカを構え、砲口から巨大な爆炎を放出した! またあのハゲ効果付きイグニッションかよォ!?
 前回同様の守りに徹する作戦では、大ダメージを受ける上にハゲさせられるだけだ。
 しかし、奴の攻撃を軽減しなければ俺たちは確実に全滅してしまう。ヨウスケの回復スプレーも残りが少ない。どうすれば……。

「お前ら、何ボーっとしてやがる! このまま一掃されてーのか!?」
「ファッ!? ちょっとお待ちくださいナス!」

 ハンニバル中将のバズーカから繰り出される巨大な爆炎が俺たち全員を包み込む!
 耳をつんざく爆音、視界を奪う閃光、全身を焼き尽くす灼熱――!

「「「「アッー!」」」」

 痛いんだよおおおお!!!!(マジギレ)
 俺たち全員が吹っ飛ばされ、俺とレイさんとヨウスケはハゲにされ、もう終わりかと思われていた。

「装置……あれを……!」
(最後の一手を賭けるなら、今しかない……!)

 ミカエルだけはかろうじて直撃を逃れ、あの炎の中から素早く脱出していた。
 ミカエルはボロボロの身体に鞭打ちながらハンニバル中将の背後を取る。
 そして二丁拳銃を構え、ハンニバル中将の頭部へ銃弾を連射。
 
 ――バンッ!!!

 ハンニバル中将は頭部を撃たれてもなお無傷だ。だが、奴の頭部に設置されている装置の一部が砕け、固定具のベルトが緩む。

「みんな、後は頼んだぞ……」

 ミカエルはそう言い残し、うつ伏せに倒れてしまった。
 一方、俺とレイさんとヨウスケは、ありったけの冷水シャワーと回復スプレーを使ってなんとか持ちこたえた。ハゲてしまったがな。

「ミカエル、よくやった! 後は俺らに任せろ! レイさん、"ハリケーン"お願いしナス!」
「おう、いっくよ~! ヨウスケも竜巻に乗れ!」
「うん、わかった!」

 レイさんが竹刀を大きく振るい、ハリケーンを放つ。ハゲで脱力しているせいか、風力が弱い。
 それでも俺とヨウスケはその竜巻に乗り、勢いよくジャンプした。
 俺とヨウスケはこのままハンニバル中将の背中へ飛び乗ろうとする。

「ふん! 甘いぜ!」

 ハンニバル中将がバズーカを振り回し、俺とヨウスケを吹っ飛ばした!

「ねーイタいーもう! イッタいよもう!」
「うわー!」

 バズーカが直撃したヨウスケは地面に叩きつけられてダウン。

「ごめん、おれもこれ以上は無理……」
「後は俺に任せろォ!」

 俺はバズーカで殴られた直後、ハンニバル中将の頭部の装置目掛けてムチを伸ばしていた。

「なんだと……!」
「もらったァァァァ!!」

 俺は奴の頭部の装置にムチを巻き付け、装置を引きちぎったッ!

 ――ガキィン!!!

 装置は地面に落下し、数値がゼロを示す。ついに勝利判定が下った。
 俺たちはあの無敵の人間兵器、ハンニバル中将との勝負に勝ったのだ!
 ハンニバル中将はしばし沈黙した後、喜びに満ちた笑みを見せた。

「ハッハッハッ! やるじゃねぇか、ガキども! 最後の最後で、まさかあの状況から勝ちを拾ってくるとはな!」
「はぁ……はぁ……死ぬかと思ったぜ……」
「オレたち勝ったどー!」
「タツヤ、よくやった……」
「みんな、やったよぉ……! ついにやったよぉ……!」

 俺たちはまさに死力を尽くして勝利した。
 ハンニバル中将の圧倒的な力に、怯むことなく立ち向かい、最後の一瞬を掴み取ったのだ。

「お前ら、気に入ったぜ。お前らならきっとマティアスの試験も合格できるぜ」
「ありがとナス!」

 その時、後ろで見ていたマティアス司令官とライナスが拍手を送りながら近寄ってきた。

「諸君、見事なチームワークだったぞ。勝利とは決して相手を打ち負かすことだけが全てでは無い。それを念頭に置いておくのだぞ」
「かしこまり!」
「ハンニバルは俺の銃弾と爆弾を食らっても無傷だったんだぜ。まさかてめぇらがそいつ相手に勝つとはな。ずいぶんと腕を上げたじゃねぇか」
「だろぉ~?」

 戦いの幕が下り、夕陽がヘリポートを赤く染めていた。
 次はいよいよマティアス司令官との最後の戦いだ。俺たちは最後の戦いに備えてゆっくり休むことにした。
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