20 / 167
第1章 民間伝承研究部編
転生遺族のむかしむかし7
しおりを挟む
「何?止める気?」
「まさか、止めないよ」
「え?」
ていりは意外に思った。今の発言は彼女の中の虚縦軸という人物像と全く合わなかったからだ。作子の話が正しければ、縦軸は自殺なんて見逃さなかっただろう。実際音のことも一度助けている。
「先輩、十二乗さんに〈天文台〉のことは?」
「は、話したよ。それに見せた」
「十二乗さん、ちょっと相談がある。ここじゃあれだし、場所を変えよう」
「……分かったわよ」
縦軸たちは部室にいた。外はもう夕方。縦軸の顔には、影があった。
「で、わざわざここに来てまで何の用?」
「うーん……部室にしたのは特に意図はないかな。ゆっくり話のできる場所を選んだだけだよ」
「ねえ虚君、そんなに大事なの?その話って」
「もちろんだよ三角さん、これは是非十二乗さんに聞いてほしいんだ。まあ2人は作子から聞いてるだろうけど」
「……それって」
「そうだよ。まあ察しはついたさ。三角さんが急に優しくなったり、先輩が十二乗さんに急に近づいたり、あいつだったら頼みかねない」
「ていりちゃん、バレてるよ?」
「……」
「ねえ、私、置いてけぼりなんだけど?」
流石に痺れを切らした音が話しかける。縦軸は少し申し訳なさそうに謝った。
「あはは、ごめんなさい。それじゃあ音さんには僕の話を聞いてもらおうか。参考になると思うからね、自殺の」
「じ、自殺の⁉︎」
「ああそうだよ。では話すとしよう。2人はもう知ってるだろうけどね」
ー僕と、姉さんの話だー
僕には8つ上の姉がいた。僕と姉さんはとても仲良しだった。名前は虚愛、訳あって敬語で話す優しい人だった。
「たてじくー、お姉ちゃんだよー」
「キャハッ!」
僕がまだお喋りもできない頃、姉さんは僕によく話しかけてくれていた。そんなに鮮明な記憶は無いけど、あの頃の記憶と言えば大抵姉さんの顔なんだ。
姉さんはよく絵本を読んでくれた。まあ育児ってのは大変だから、そうやって幼い僕を楽しませるだけでも彼女の功績は素晴らしいものだ。
「……こうして桃太郎は鬼を退治したのでした。めでたしめでたし」
「わあーい!お姉ちゃん、もっと読んで!」
「ふふ、いいよ。じゃあ次はこれね。むかしむかし、とある貴族が事故にあってしまいました。すると、そこに通りかかった泥棒が……」
あと、姉さんと友達だった作子も遊びに来てくれた。男子にいじめられていたところを姉さんに助けられたとか。
「やっほー、元気かね弟くん?」
「こんにちは、作子お姉ちゃん!」
「縦軸、ただいま」
「お姉ちゃん、おかえりなさい!!」
「きゃっ⁉︎きゅ、急に抱きつかないでよ、もう!」
「相変わらず仲良いね~」
「見てください作子、ここに弟がいます」
「会話繋がってないぞー」
「縦軸、今日は作子がウチにお泊まりするから迷惑かけちゃダメだよ?」
「うん、分かった」
その日は作子が姉さんの部屋を使ったので、僕と姉さんは僕の部屋で寝た。
「ふふ、縦軸のことぎゅーっとしてると、何だかポカポカしてあったかいなあ」
「へへ、僕も、お姉ちゃん大好き」
僕がそう言うと、姉さんは思い切り笑顔になってまた僕を強く抱きしめた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「ずっと一緒にいてね?」
「うん、いいよ。約束する」
姉さんが僕に対して嘘をついたり、約束を破ったりしたのはこの時だけだった。
「まさか、止めないよ」
「え?」
ていりは意外に思った。今の発言は彼女の中の虚縦軸という人物像と全く合わなかったからだ。作子の話が正しければ、縦軸は自殺なんて見逃さなかっただろう。実際音のことも一度助けている。
「先輩、十二乗さんに〈天文台〉のことは?」
「は、話したよ。それに見せた」
「十二乗さん、ちょっと相談がある。ここじゃあれだし、場所を変えよう」
「……分かったわよ」
縦軸たちは部室にいた。外はもう夕方。縦軸の顔には、影があった。
「で、わざわざここに来てまで何の用?」
「うーん……部室にしたのは特に意図はないかな。ゆっくり話のできる場所を選んだだけだよ」
「ねえ虚君、そんなに大事なの?その話って」
「もちろんだよ三角さん、これは是非十二乗さんに聞いてほしいんだ。まあ2人は作子から聞いてるだろうけど」
「……それって」
「そうだよ。まあ察しはついたさ。三角さんが急に優しくなったり、先輩が十二乗さんに急に近づいたり、あいつだったら頼みかねない」
「ていりちゃん、バレてるよ?」
「……」
「ねえ、私、置いてけぼりなんだけど?」
流石に痺れを切らした音が話しかける。縦軸は少し申し訳なさそうに謝った。
「あはは、ごめんなさい。それじゃあ音さんには僕の話を聞いてもらおうか。参考になると思うからね、自殺の」
「じ、自殺の⁉︎」
「ああそうだよ。では話すとしよう。2人はもう知ってるだろうけどね」
ー僕と、姉さんの話だー
僕には8つ上の姉がいた。僕と姉さんはとても仲良しだった。名前は虚愛、訳あって敬語で話す優しい人だった。
「たてじくー、お姉ちゃんだよー」
「キャハッ!」
僕がまだお喋りもできない頃、姉さんは僕によく話しかけてくれていた。そんなに鮮明な記憶は無いけど、あの頃の記憶と言えば大抵姉さんの顔なんだ。
姉さんはよく絵本を読んでくれた。まあ育児ってのは大変だから、そうやって幼い僕を楽しませるだけでも彼女の功績は素晴らしいものだ。
「……こうして桃太郎は鬼を退治したのでした。めでたしめでたし」
「わあーい!お姉ちゃん、もっと読んで!」
「ふふ、いいよ。じゃあ次はこれね。むかしむかし、とある貴族が事故にあってしまいました。すると、そこに通りかかった泥棒が……」
あと、姉さんと友達だった作子も遊びに来てくれた。男子にいじめられていたところを姉さんに助けられたとか。
「やっほー、元気かね弟くん?」
「こんにちは、作子お姉ちゃん!」
「縦軸、ただいま」
「お姉ちゃん、おかえりなさい!!」
「きゃっ⁉︎きゅ、急に抱きつかないでよ、もう!」
「相変わらず仲良いね~」
「見てください作子、ここに弟がいます」
「会話繋がってないぞー」
「縦軸、今日は作子がウチにお泊まりするから迷惑かけちゃダメだよ?」
「うん、分かった」
その日は作子が姉さんの部屋を使ったので、僕と姉さんは僕の部屋で寝た。
「ふふ、縦軸のことぎゅーっとしてると、何だかポカポカしてあったかいなあ」
「へへ、僕も、お姉ちゃん大好き」
僕がそう言うと、姉さんは思い切り笑顔になってまた僕を強く抱きしめた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「ずっと一緒にいてね?」
「うん、いいよ。約束する」
姉さんが僕に対して嘘をついたり、約束を破ったりしたのはこの時だけだった。
10
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる