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第1章 民間伝承研究部編
転生遺族と自称ライバル12
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そこまでの過程はさほど重要ではない。せいぜい音や微と合流したぐらいで後はこれといった出来事は起こらなかった。6人で夏祭りを楽しんだだけである。
問題はその後だ。
「場所を変えましょう」
ていりがそう提案したのだ。
そしていつの間にか手に入れた狐のお面を顔の横につけ、縁日で手に入れた水風船をどこかぼーっとした顔で眺めながら歩いている。一見足元が危なそうだが、転ぶ様子は全くない。
「ていり、どうしたの?」
「すぐに分かるわ」
縦軸が訊ねてもせいぜいこの程度。彼女の考えは微や音も読むことができなかった。
ていりたちがやって来たのは人気の無い神社だった。明かりもほとんどなく、下手をすれば何か出そうである。
「三角さん、何だってこんな所へ……」
「互君」
再びていりの声が除を制圧する。まるで氷が水を蝕むかのように、ていりの声は除はもちろんその場にいた全員を呑み込んだ。
「改めて言うけどあなたとは付き合えないわ。私には縦軸がいるし」
あくまでも恋人設定は通すようだ。
「そんなことは分かっている!だが俺もそう簡単に諦めはしn……」
「それともう1つ」
除の話を最後まで聞くという選択肢をていりはとうに捨てていた。
そしてこの辺りから常日頃ていりと一緒にいる縦軸たちでさえいくらかの恐怖感を覚えていた。ていりの言霊によるものだ。
「あなたと付き合えない理由がもう1つあるわ。何か分かる?」
「な、何かって……すまん、分からん」
「でしょうね。多分無理だと思ったわ」
失望は無い。当然である。
「じゃあ教えてあげるわ、互除」
判決を下すかの如くていりは告げる。
「あなた、見えてないもの」
その瞬間、縦軸たちですらていりの言葉の真意を理解できなかった。
「み、三角さん、それはどういう?」
「平方さん、彼とのデートは楽しんだ?」
「……」
「三角さん、詳しく教えてくれないか」
「十二乗さん」
ていりに呼ばれた音はどこかめんどくさそうにしながら応える。
「はいはい、ちゃんと撮ってるわよ」
音はていりに携帯電話を渡した。
「ふーん……ちゃんと動画なのね」
「その方が分かりやすいでしょ?」
「ええ、ありがとう十二乗さん。互君」
そう言ってていりは除に動画を見せる。
「何か気づかない?」
「……分からん」
「追いかけてるのよ、平方さんがあなたを。まるで置いてかれないように」
「み、三角さん、この動画はどういう……」
「うるさい、黙れ」
ていりの命令口調を縦軸は初めて聞いた。
「きっとあなたには見えてないのね、平方さんが。いや見えないようにしてるって言った方がいいかしら」
「見えてない?ていり、どういうこと?」
「縦軸、思い出して。これまでで1度でも、互君が平方成の言葉に反応したかしら?」
「……!」
「多分彼にとって不必要な存在は視界か、消してるんじゃないかしら。無意識の内にやってるのならすごいことだわ」
ていりの言葉に伴い、除の隣に立つ成の表情が暗くなる。何かを堪えるように両手で浴衣を握りしめていた。
「私や縦軸はあなたの恋の成就という筋書きに必要だから見えていた。帰り道で親切に人助けしてたのも『互除は優しい』って命題のために必要だから。
じゃあ平方さんはどうかしら?そう、今のあなたには必要無いのよ」
除は何も発言しない。今彼の思考がどの範囲まで含んで働いているのかをていりは考えたくもなかった。
「軽率にある人の存在を無いものと見なせる。すごい才能かもしれないけど、私はそんな現実逃避じみたことを平然とやってのける恋人はごめんだわ。いつ自分が消えるか分からないもの。
以上の理由から互除君、あなたとは付き合えません」
誰も逆らえなかった。ただ自分の見解を述べているだけなのに、ていりの言葉には反論を許さない力があった。
言葉が彼女の影となって伸びていき、除を始めとする全員を喰らい尽くしていた。
「あ……あ……」
除は何も言えてなかった。ていりはそんな彼をただ空虚な目で見ていた。
「平方さん、行きましょう」
「ふぇ?きゃっ!」
「あ、待ってよていり!」
「ていりちゃーん!待ってー!」
「もう……いつも通りうっさい」
ていりが成の手を取って歩き出す。縦軸たちは除をその場に残して彼女を追いかけ始めた。互除が見えなくなるまで彼らは歩いた。
問題はその後だ。
「場所を変えましょう」
ていりがそう提案したのだ。
そしていつの間にか手に入れた狐のお面を顔の横につけ、縁日で手に入れた水風船をどこかぼーっとした顔で眺めながら歩いている。一見足元が危なそうだが、転ぶ様子は全くない。
「ていり、どうしたの?」
「すぐに分かるわ」
縦軸が訊ねてもせいぜいこの程度。彼女の考えは微や音も読むことができなかった。
ていりたちがやって来たのは人気の無い神社だった。明かりもほとんどなく、下手をすれば何か出そうである。
「三角さん、何だってこんな所へ……」
「互君」
再びていりの声が除を制圧する。まるで氷が水を蝕むかのように、ていりの声は除はもちろんその場にいた全員を呑み込んだ。
「改めて言うけどあなたとは付き合えないわ。私には縦軸がいるし」
あくまでも恋人設定は通すようだ。
「そんなことは分かっている!だが俺もそう簡単に諦めはしn……」
「それともう1つ」
除の話を最後まで聞くという選択肢をていりはとうに捨てていた。
そしてこの辺りから常日頃ていりと一緒にいる縦軸たちでさえいくらかの恐怖感を覚えていた。ていりの言霊によるものだ。
「あなたと付き合えない理由がもう1つあるわ。何か分かる?」
「な、何かって……すまん、分からん」
「でしょうね。多分無理だと思ったわ」
失望は無い。当然である。
「じゃあ教えてあげるわ、互除」
判決を下すかの如くていりは告げる。
「あなた、見えてないもの」
その瞬間、縦軸たちですらていりの言葉の真意を理解できなかった。
「み、三角さん、それはどういう?」
「平方さん、彼とのデートは楽しんだ?」
「……」
「三角さん、詳しく教えてくれないか」
「十二乗さん」
ていりに呼ばれた音はどこかめんどくさそうにしながら応える。
「はいはい、ちゃんと撮ってるわよ」
音はていりに携帯電話を渡した。
「ふーん……ちゃんと動画なのね」
「その方が分かりやすいでしょ?」
「ええ、ありがとう十二乗さん。互君」
そう言ってていりは除に動画を見せる。
「何か気づかない?」
「……分からん」
「追いかけてるのよ、平方さんがあなたを。まるで置いてかれないように」
「み、三角さん、この動画はどういう……」
「うるさい、黙れ」
ていりの命令口調を縦軸は初めて聞いた。
「きっとあなたには見えてないのね、平方さんが。いや見えないようにしてるって言った方がいいかしら」
「見えてない?ていり、どういうこと?」
「縦軸、思い出して。これまでで1度でも、互君が平方成の言葉に反応したかしら?」
「……!」
「多分彼にとって不必要な存在は視界か、消してるんじゃないかしら。無意識の内にやってるのならすごいことだわ」
ていりの言葉に伴い、除の隣に立つ成の表情が暗くなる。何かを堪えるように両手で浴衣を握りしめていた。
「私や縦軸はあなたの恋の成就という筋書きに必要だから見えていた。帰り道で親切に人助けしてたのも『互除は優しい』って命題のために必要だから。
じゃあ平方さんはどうかしら?そう、今のあなたには必要無いのよ」
除は何も発言しない。今彼の思考がどの範囲まで含んで働いているのかをていりは考えたくもなかった。
「軽率にある人の存在を無いものと見なせる。すごい才能かもしれないけど、私はそんな現実逃避じみたことを平然とやってのける恋人はごめんだわ。いつ自分が消えるか分からないもの。
以上の理由から互除君、あなたとは付き合えません」
誰も逆らえなかった。ただ自分の見解を述べているだけなのに、ていりの言葉には反論を許さない力があった。
言葉が彼女の影となって伸びていき、除を始めとする全員を喰らい尽くしていた。
「あ……あ……」
除は何も言えてなかった。ていりはそんな彼をただ空虚な目で見ていた。
「平方さん、行きましょう」
「ふぇ?きゃっ!」
「あ、待ってよていり!」
「ていりちゃーん!待ってー!」
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