67 / 167
第1章 民間伝承研究部編
転生遺族の邂逅1
しおりを挟む
夏休みが明け、まだ暑さがしぶとく残る8月の終わり頃。縦軸たちは民間伝承研究部略して民研の部室に集まっていた。
「ねえ三角さん……何これ?」
「どうやって作ったのよ……」
「どうってことないわ。未知の文字を翻訳する方法を調べて踏襲しただけだけよ」
「「天才かよ!」」
「2人とも息ピッタリだね」
「先輩、今ツッコむのは私たちの方じゃないわよ。ていりの所行に目を向けなさい」
ていりが持ち込んだノートの表紙にはこう書かれていた「翻訳」と。
その中には、縦軸たちが微の〈天文台〉で見てきた異世界の文字が文字通り翻訳されていた。
「いくつかの違う国の言語が混ざってたから、取り敢えずエウレアール王国のものだけに絞って訳したわ」
「何で国名まで分かってるのよ!」
「お姉様にかかれば当然です」
誇らしげにそう言い張るのは縦軸とていりのクラスメイトの平方成。色々あってていりを慕うようになった少女だ。
「あんたさぁ、何でいんのよ」
「私も民研の部員ですから」
「この前入部届出してもらったよ!」
本人曰く「お姉様の力になりたいんです」とのことだ。
「信者はできるし異世界の言語訳してくるし……あんた急にどうしたのよ」
「そうねえ、成長したのかしら。虚君のおかげかもしれないわ」
そう言ってどこか艶かしい表情を見せるていり。怪しげな視線で縦軸を見ている。
「ちょっと虚、あんたまさか……!」
「ち、違うから!誤解だよ!」
「縦軸君、音ちゃん、どういうこと?」
「あんたは知らんでいい!」
「うぇぇん……縦軸君、音ちゃんがぁ……」
「よ、よしよし?」
「甘やかさんでいい!」
ツッコミを全うすることは音にとっても面倒だが、すでにこの立ち位置を受け入れてしまっていた。
「はああ……とにかく良かったじゃない。これであんたのお姉さんも探しやすくなるでしょ」
「そうだね。ありがとう三角さん」
「お礼はいいわ。この間の分の迷惑料だと思って」
「め、迷惑だなんてそんな……」
「虚さん」
冷たい幼女声が響く。
「お2人は恋人では無いわけですし、もう少しお姉様に対して配慮というものがあってもよろしいのではないかと」
笑顔だ。だから恐ろしい。
「は、はい」
何故か敬語の縦軸。ある意味察しがいい。
「と、取り敢えず早速このノートを使おうよ。先輩、お願いできますか?
できればそのなんとか王国って場所を見たいんですけど」
「エウレアール王国よ。でも先輩の〈天文台〉って場所の指定できましたっけ?」
ていりが疑問形で反応したところ、微は所謂ドヤ顔をして見せた。
「ふっふっふ、みんなよく聞くがいい。私はついに……〈天文台〉がレベルMAXになったのです!」
胸を張る微。しかし胸を張ってもていりには敗北している。
「本当ですか⁉︎やったじゃないですか!」
微のスキルはLv10まで存在する。縦軸の助力により以前レベリングを行ったが、本人はこっそりそれを続けていたのだ。
「この場でその話をしてくるということは、〈天文台〉Lv10には場所を指定する力があるということですか?」
「その通り!さすがていりちゃん!」
微は楽しそうだ。傾子の一件を乗り越えて以来こんな調子で縦軸たちも明るくしてくれる。
傾子を転生させた自分の選択が彼女のこの笑顔を助けられたのかもしれないと、縦軸は少し喜ばしい気分になった。
「それじゃあ先輩、お願いします」
「わかった!いっくよー、〈天文台〉!」
途端に変わりゆく景色、展開されていく中世ヨーロッパの如き街並み。
「これにもすっかり慣れちゃったな。三角さん、ノート見せて」
この進展を喜ぶかのように、縦軸はペラペラとていりのノートをめくりながら周囲の建物や看板に書かれた文字に目を通していく、
「これが微さんのスキル……本当にすごいですね、お姉様」
「そっか、成は初めてだったわね。安心して、じきに慣れるわ」
「あんたが下の名前でって珍しいわね。虚、なんか分かった?」
「うーん……特にこれといったことは」
縦軸がそう答えかけたとき、微が興奮気味に縦軸たちに話しかけた。
「ねえねえみんな、あっちの建物がすっごい賑やかだよ!行ってみようよ!」
「『行ってみようよ』って、あんたのスキルで映す場所変えるだけでしょ」
「はっ!そうでした!」
慌てて微が〈天文台〉を操作する。景色が少し移動し件の建物までやって来た。例えるなら、インターネットで各地の景色を見ることができる某サービスのそれに近い。
「円形闘技場……古代ローマのコロッセオみたいだわ。」
ていりの表現は的を射ていた。
「随分大きな建物ね。虚、三角、そこの文字、なんて書いてるの?」
入り口と思わきし場所に置かれた標識を見ながら音が訊ねる。
縦軸がノートをめくり、2人は熱心に文字を解読していた。
「えっと……エウレアール……三角さん、これが国名だよね?」
「そうね。次が……冒険者」
「キター、冒険者ァ!」
その後解読し終わった結果、「エウレアール冒険者学園卒業試験会場」と書かれていた。
「冒険者に学園があったのね……先輩、中の様子を見せてくれない?」
「任せて!」
再び景色が移動する。そこは観客席と思われ、下を見下ろすと20代ほどの若者たちと10歳前後の子供が戦っていた。
「ちょ、あいつら何やってんのよ⁉︎まるで虐待じゃない!」
「落ち着いて十二乗さん。入り口にあった看板見たでしょ。たぶん、あれが試験よ」
「あ、あれが?」
音とて「冒険者」という単語から何となく何をするのかは流石に予想できた。だがこれは流石に予想外だ。
「観客席にも同じくらいの子どもがいるね」
「この子たちも受験者……ですか」
縦軸は何となく辺りを見渡す。微のスキルで得られる情報はあまりに多い。それらを少しでも取りこぼしたくないという執念が自然と体を動かしていたのだ。
そして今、その行動は意味を持った。
その人物に視線を向けたまま、縦軸は無意識のうちにこう言った。
「先輩、いました」
「ねえ三角さん……何これ?」
「どうやって作ったのよ……」
「どうってことないわ。未知の文字を翻訳する方法を調べて踏襲しただけだけよ」
「「天才かよ!」」
「2人とも息ピッタリだね」
「先輩、今ツッコむのは私たちの方じゃないわよ。ていりの所行に目を向けなさい」
ていりが持ち込んだノートの表紙にはこう書かれていた「翻訳」と。
その中には、縦軸たちが微の〈天文台〉で見てきた異世界の文字が文字通り翻訳されていた。
「いくつかの違う国の言語が混ざってたから、取り敢えずエウレアール王国のものだけに絞って訳したわ」
「何で国名まで分かってるのよ!」
「お姉様にかかれば当然です」
誇らしげにそう言い張るのは縦軸とていりのクラスメイトの平方成。色々あってていりを慕うようになった少女だ。
「あんたさぁ、何でいんのよ」
「私も民研の部員ですから」
「この前入部届出してもらったよ!」
本人曰く「お姉様の力になりたいんです」とのことだ。
「信者はできるし異世界の言語訳してくるし……あんた急にどうしたのよ」
「そうねえ、成長したのかしら。虚君のおかげかもしれないわ」
そう言ってどこか艶かしい表情を見せるていり。怪しげな視線で縦軸を見ている。
「ちょっと虚、あんたまさか……!」
「ち、違うから!誤解だよ!」
「縦軸君、音ちゃん、どういうこと?」
「あんたは知らんでいい!」
「うぇぇん……縦軸君、音ちゃんがぁ……」
「よ、よしよし?」
「甘やかさんでいい!」
ツッコミを全うすることは音にとっても面倒だが、すでにこの立ち位置を受け入れてしまっていた。
「はああ……とにかく良かったじゃない。これであんたのお姉さんも探しやすくなるでしょ」
「そうだね。ありがとう三角さん」
「お礼はいいわ。この間の分の迷惑料だと思って」
「め、迷惑だなんてそんな……」
「虚さん」
冷たい幼女声が響く。
「お2人は恋人では無いわけですし、もう少しお姉様に対して配慮というものがあってもよろしいのではないかと」
笑顔だ。だから恐ろしい。
「は、はい」
何故か敬語の縦軸。ある意味察しがいい。
「と、取り敢えず早速このノートを使おうよ。先輩、お願いできますか?
できればそのなんとか王国って場所を見たいんですけど」
「エウレアール王国よ。でも先輩の〈天文台〉って場所の指定できましたっけ?」
ていりが疑問形で反応したところ、微は所謂ドヤ顔をして見せた。
「ふっふっふ、みんなよく聞くがいい。私はついに……〈天文台〉がレベルMAXになったのです!」
胸を張る微。しかし胸を張ってもていりには敗北している。
「本当ですか⁉︎やったじゃないですか!」
微のスキルはLv10まで存在する。縦軸の助力により以前レベリングを行ったが、本人はこっそりそれを続けていたのだ。
「この場でその話をしてくるということは、〈天文台〉Lv10には場所を指定する力があるということですか?」
「その通り!さすがていりちゃん!」
微は楽しそうだ。傾子の一件を乗り越えて以来こんな調子で縦軸たちも明るくしてくれる。
傾子を転生させた自分の選択が彼女のこの笑顔を助けられたのかもしれないと、縦軸は少し喜ばしい気分になった。
「それじゃあ先輩、お願いします」
「わかった!いっくよー、〈天文台〉!」
途端に変わりゆく景色、展開されていく中世ヨーロッパの如き街並み。
「これにもすっかり慣れちゃったな。三角さん、ノート見せて」
この進展を喜ぶかのように、縦軸はペラペラとていりのノートをめくりながら周囲の建物や看板に書かれた文字に目を通していく、
「これが微さんのスキル……本当にすごいですね、お姉様」
「そっか、成は初めてだったわね。安心して、じきに慣れるわ」
「あんたが下の名前でって珍しいわね。虚、なんか分かった?」
「うーん……特にこれといったことは」
縦軸がそう答えかけたとき、微が興奮気味に縦軸たちに話しかけた。
「ねえねえみんな、あっちの建物がすっごい賑やかだよ!行ってみようよ!」
「『行ってみようよ』って、あんたのスキルで映す場所変えるだけでしょ」
「はっ!そうでした!」
慌てて微が〈天文台〉を操作する。景色が少し移動し件の建物までやって来た。例えるなら、インターネットで各地の景色を見ることができる某サービスのそれに近い。
「円形闘技場……古代ローマのコロッセオみたいだわ。」
ていりの表現は的を射ていた。
「随分大きな建物ね。虚、三角、そこの文字、なんて書いてるの?」
入り口と思わきし場所に置かれた標識を見ながら音が訊ねる。
縦軸がノートをめくり、2人は熱心に文字を解読していた。
「えっと……エウレアール……三角さん、これが国名だよね?」
「そうね。次が……冒険者」
「キター、冒険者ァ!」
その後解読し終わった結果、「エウレアール冒険者学園卒業試験会場」と書かれていた。
「冒険者に学園があったのね……先輩、中の様子を見せてくれない?」
「任せて!」
再び景色が移動する。そこは観客席と思われ、下を見下ろすと20代ほどの若者たちと10歳前後の子供が戦っていた。
「ちょ、あいつら何やってんのよ⁉︎まるで虐待じゃない!」
「落ち着いて十二乗さん。入り口にあった看板見たでしょ。たぶん、あれが試験よ」
「あ、あれが?」
音とて「冒険者」という単語から何となく何をするのかは流石に予想できた。だがこれは流石に予想外だ。
「観客席にも同じくらいの子どもがいるね」
「この子たちも受験者……ですか」
縦軸は何となく辺りを見渡す。微のスキルで得られる情報はあまりに多い。それらを少しでも取りこぼしたくないという執念が自然と体を動かしていたのだ。
そして今、その行動は意味を持った。
その人物に視線を向けたまま、縦軸は無意識のうちにこう言った。
「先輩、いました」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる