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第三章
【秘密がいっぱい 05】
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「アルバン先生、お手伝いのお礼に新鮮な卵を頂きました。昼食にしませんか?」
「ありがとうございます、コイさん」
読み書きが出来るようになった恋唯は、近所の家の手伝いを申し出たり、忙しそうなアルバンやアリッサに代わって料理を担当することになった。
パンは近所の奥さんが焼いたものを厚意で頂くこともあれば、街のお店で買うこともある。
しかしやはり原材料は隣町から入ってくるライ麦らしく、若子が恋しがるフワフワの白いパンとは出会えなかった。
恋唯が聞いたカミルとロッゲンの会話は、アルバンにも若子にも伝えることはなかった。
カミルに口止めされたわけではないが、言いふらさないと信じてもらえたからこそ、あの場に呼ばれたのだろう。
「アルバン先生は、どうして私たちに親切にして下さるのですか」
今日の診察は午前中のみだったので、アルバンはすでにリラックスモードに入っている。この街のワインを食後に飲みながらゆったりと過ごしていたアルバンに、恋唯は探りを入れるつもりで尋ねてみた。
アルバンは恋唯たちに衣食住を提供してくれる、信頼出来る親切な人物だ。
しかし実の息子であるカミルがあそこまで言う以上、彼にも何かあると考えた方がいい。
「もう二十年以上前ですが……昔も貴方たちのように、異世界人をこの診療所で世話していたことがあったのですよ」
はぐらかされるかと思ったが、アルバンはすんなりと昔の話をしてくれた。
思いがけない話に、恋唯と一緒にいた若子も驚いている。
「当時も……名前何でしたっけ。モンスターが、いたんですか?」
「いいえ。その時代、アッフェは出現していませんでした。今の神官長がまだ若かった頃、彼の召喚スキルの検証の為に喚ばれた者がいたのです」
「け、検証の為だけに……!?」
ぎょっとした顔をした若子に、ワインを傾けているアルバンも苦笑している。
「当時は鑑定スキル持ちがいませんでしたから、召喚に際しエダからスキルの付与があることさえ、解ってはいませんでした。突然異世界に喚び出された彼は混乱していましたが、ひとまずこの診療所で預かることになると、次第に落ち着き、自らの状況を受け入れるようになったのです」
「よく受け入れられましたね!?」
「根が明るい人だったんですよ。学校の試験に失敗したとかで、元々前の世界にも居場所がなかったのだと、笑って話すような男でした」
若子が神妙な顔になる。居場所がなかったのは、若子も同じだ。
「私は王都の騎士団に入った兄のハンスとは長く離れて暮らしていましたから、異世界人の彼のことをアニキと呼んで……もう一人の兄のように、慕うようになりました」
「ありがとうございます、コイさん」
読み書きが出来るようになった恋唯は、近所の家の手伝いを申し出たり、忙しそうなアルバンやアリッサに代わって料理を担当することになった。
パンは近所の奥さんが焼いたものを厚意で頂くこともあれば、街のお店で買うこともある。
しかしやはり原材料は隣町から入ってくるライ麦らしく、若子が恋しがるフワフワの白いパンとは出会えなかった。
恋唯が聞いたカミルとロッゲンの会話は、アルバンにも若子にも伝えることはなかった。
カミルに口止めされたわけではないが、言いふらさないと信じてもらえたからこそ、あの場に呼ばれたのだろう。
「アルバン先生は、どうして私たちに親切にして下さるのですか」
今日の診察は午前中のみだったので、アルバンはすでにリラックスモードに入っている。この街のワインを食後に飲みながらゆったりと過ごしていたアルバンに、恋唯は探りを入れるつもりで尋ねてみた。
アルバンは恋唯たちに衣食住を提供してくれる、信頼出来る親切な人物だ。
しかし実の息子であるカミルがあそこまで言う以上、彼にも何かあると考えた方がいい。
「もう二十年以上前ですが……昔も貴方たちのように、異世界人をこの診療所で世話していたことがあったのですよ」
はぐらかされるかと思ったが、アルバンはすんなりと昔の話をしてくれた。
思いがけない話に、恋唯と一緒にいた若子も驚いている。
「当時も……名前何でしたっけ。モンスターが、いたんですか?」
「いいえ。その時代、アッフェは出現していませんでした。今の神官長がまだ若かった頃、彼の召喚スキルの検証の為に喚ばれた者がいたのです」
「け、検証の為だけに……!?」
ぎょっとした顔をした若子に、ワインを傾けているアルバンも苦笑している。
「当時は鑑定スキル持ちがいませんでしたから、召喚に際しエダからスキルの付与があることさえ、解ってはいませんでした。突然異世界に喚び出された彼は混乱していましたが、ひとまずこの診療所で預かることになると、次第に落ち着き、自らの状況を受け入れるようになったのです」
「よく受け入れられましたね!?」
「根が明るい人だったんですよ。学校の試験に失敗したとかで、元々前の世界にも居場所がなかったのだと、笑って話すような男でした」
若子が神妙な顔になる。居場所がなかったのは、若子も同じだ。
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第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
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