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第六章
【憧れの人 01】
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「あっ、恋唯さん! もう一度広場に行きませんか?」
診療所の手伝いを終えた若子に誘われて、恋唯はもう一度広場に行くことになった。
夕方になると子どもの数が減り、そこかしこで体を密着し合う大人たちが増えている。
午前中とは明らかに祭りの空気が変わっており、二人は少し驚いていた。
「な、なんかイチャついてる人、多いですね……!?」
「そうですね……あっ、ワコさんっ」
「えっ、きゃっ!」
「あ、うそ、ごめんね~」
キョロキョロしていた若子は、前から歩いてきた二人組の片方にぶつかってしまった。
ぶつかった相手は若子と同い年くらいの少女で、隣を歩いていたのは長身の男性だった。
「……連れがすまない。怪我は?」
「いえ、大丈夫です。あたしこそ、ごめんなさい」
「ちょっと! なんで相手を先に心配するの? そこはまりあを一番に心配してよね!」
恋人同士なのだろうか。自分を優先してくれなかった男性に、女の子が怒り出した。
背が高い男性はくすみのある灰色の髪に、紫の目をしている。
女の子は黒い前髪を眉毛にかかるくらいでまっすぐに切り揃えており、腰まである長い髪は緩くウェーブがかかっている。
恋唯は彼女を見て、まず目が異様に大きいこと、鼻が不自然にまっすぐなことに違和感を覚えた。身長の低さや声の幼さに対して、露骨に胸を強調し、足を大胆に露出した格好をしているのも妙にアンバランスだ。
しかしあまり不躾に見るのも失礼だと思い、そっと目を逸らす。
「まりあ……?」
目を逸らした恋唯とは反対に、若子は彼女のことを食い入るように見つめていた。
やがて確信を得たように目を見開くと、驚きのあまり口元を手で覆う。
「ま、まりあ姫!? うそ……まりあ姫も召喚されてたんですか!?」
「え? なに……? まりあのこと、知ってるの?」
大きな目を縁取る長い睫毛が、ぱちぱちと瞬いている。
若子がSNSで見つけて憧れた少女、まりあ姫。
実物に出会うのは、これが初めてのことだった。
診療所の手伝いを終えた若子に誘われて、恋唯はもう一度広場に行くことになった。
夕方になると子どもの数が減り、そこかしこで体を密着し合う大人たちが増えている。
午前中とは明らかに祭りの空気が変わっており、二人は少し驚いていた。
「な、なんかイチャついてる人、多いですね……!?」
「そうですね……あっ、ワコさんっ」
「えっ、きゃっ!」
「あ、うそ、ごめんね~」
キョロキョロしていた若子は、前から歩いてきた二人組の片方にぶつかってしまった。
ぶつかった相手は若子と同い年くらいの少女で、隣を歩いていたのは長身の男性だった。
「……連れがすまない。怪我は?」
「いえ、大丈夫です。あたしこそ、ごめんなさい」
「ちょっと! なんで相手を先に心配するの? そこはまりあを一番に心配してよね!」
恋人同士なのだろうか。自分を優先してくれなかった男性に、女の子が怒り出した。
背が高い男性はくすみのある灰色の髪に、紫の目をしている。
女の子は黒い前髪を眉毛にかかるくらいでまっすぐに切り揃えており、腰まである長い髪は緩くウェーブがかかっている。
恋唯は彼女を見て、まず目が異様に大きいこと、鼻が不自然にまっすぐなことに違和感を覚えた。身長の低さや声の幼さに対して、露骨に胸を強調し、足を大胆に露出した格好をしているのも妙にアンバランスだ。
しかしあまり不躾に見るのも失礼だと思い、そっと目を逸らす。
「まりあ……?」
目を逸らした恋唯とは反対に、若子は彼女のことを食い入るように見つめていた。
やがて確信を得たように目を見開くと、驚きのあまり口元を手で覆う。
「ま、まりあ姫!? うそ……まりあ姫も召喚されてたんですか!?」
「え? なに……? まりあのこと、知ってるの?」
大きな目を縁取る長い睫毛が、ぱちぱちと瞬いている。
若子がSNSで見つけて憧れた少女、まりあ姫。
実物に出会うのは、これが初めてのことだった。
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