【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第一章

16. 国王からの手紙

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夕食後のこと。

「師匠、レイから手紙をもらったのですが、師匠も一緒に観ていただけますか?」

なんとなく一人で観る気になれず師匠を誘う。師匠はなんだ?と顔をあげ手紙を見ると、王家からじゃないか、と声をあげた。ほれほれ、開けてみろ、と師匠に促され封を開ける。手紙からはもやもやとした薄い煙のようなものが上がり、やがてそれが形を作り威厳のある40代半ばの男性の姿になった。

「ベルライトも歳をとったなぁ。昔はまぁまぁイケメンだったが、髪の毛薄くなったんじゃないか?数年後には禿げるかもな、ふふ。」

相手に聞こえないことをいいことに師匠が好き放題言う。ベルライトはユーリスアの国王だ。ジェーバ・ミーヴァやカラン、フランツェもユーリスア国になる。国王は真顔のまま話し始めた。

「先日、我が騎士団を救ってくれたことに対し礼を言う。其の方がいなければ我が騎士団は大きな痛手を被ることになったであろう。感謝する。国王として其の方に褒美を与える。一週間後、ユーリスア国最大の祭りがある。祭りの3日目に其の方を城に招待しよう。レイ・ジェンダーソンを迎えにやるので道中の心配は無用だ。」

国王は最後の最後に少しだけ微笑むと、会えるのを楽しみにしている、と言って消えた。

「へぇ~王から城への招待か。面白そうじゃないか。ユーリスア、私も随分行ってないな。一緒に行くかな。」

師匠はなんだかご機嫌だ。

「まさか断るつもりじゃないよな?」
「国王からの招待を断るほどバカじゃないですよ。それに、ユーリスアは行ったことが無いので行ってみたいです。」
「では早速返事を。」

師匠に言われ、国王が消えた後の封筒に魔力を流し返信をする。

「ライファ・グリーンレイと申します。勿体なきお言葉恐れ入ります。王宮へのご招待、謹んでお受けいたします。」

慣れない言遣いに戸惑いながらもなんとか無事に返信を送ることが出来た。

「よし、決めた。私も行くぞ。魔女だと色々と面倒だから、ライファの親戚ということにしよう。ユーリスアで一時の恋に身を焦がすのも悪くはない。」

いひひひひ。師匠が悪巧みをしているような顔で笑っていた。


 翌日の午後、森で小弓の練習をしているとレイからチョンピーが届いた。チョンピーは口に何か丸い宝石のようなものを咥えており、チョンピーは私の肩に止まるとそこから手の方へ移動して手の平に石を置いた。

「レイだ。今夜20時頃、この石をテーブルか机かに置いて待っていてもらえないだろうか。君と話をしたい」とのことだった。私はすぐに、わかったとチョンピーを送った。

今日の夕食はシチューだ。一昨日、先生の家で食べたことでシチューの美味しさを師匠が再確認。ハマったらしい。前回はパンを合わせたが、今日はサワンヤの粉を水で練ったものをカリッと焼いて合わせることにした。クリーミーなシチューにカリカリの食感が楽しいはずだ。食卓にシチューとサワンヤ、ピンパのドレッシングをかけたフルーティなサラダとランチョウの卵をふわふわに炒めたものをセットしていると、匂いにつられて師匠がやってきた。鼻歌なんか歌ってかなり機嫌が良さそうだ。

「うまそうだな。」

師匠はササッと席に着くとシチューを口に入れ、これこれっと頷いた。

「そういえばライファ、その右のポケットに入っている物はなんだ?微弱ながら魔力を感じる。」

師匠はすごい。この家のどこになにがあるか、魔力のあるものが勝手に侵入してないか、まるで家全体が師匠の体内であるかのように感じ取ることができるみたいだ。

「これですか?昼間にレイからチョンピーが送られてきてこれを渡されたんです。」

私はポケットからレイに貰った宝石のようなものを取り出して師匠に渡す。師匠は宝石を見ると、あぁ、これはリトルマインだな、と言った。

「リトルマイン?」

「そうだ。なんだ、なにも知らずに貰ったのか。これは魔力を登録した相手がリトルマインに向かって魔力を送ると、リトルマインの元へいる相手と話すことが出来るものだ。リトルマインが相手の姿に変わるんで結構人気があるぞ。高価な物でもあるし、登録の際に魔力を食うから貴族間での人気だがな。恋人同士が送りあったりするそうだ。」

二ヒヒ、と師匠が恋愛物語を読んでいるときにする笑みを浮かべた。最後の一言は、そうなんですねー、と流しておく。


 20時をちょっと過ぎた頃、リトルマインが震え騎士団の服装をしたレイの姿になった。身長20cmのレイだ。スクッと立ち上がったレイに、思わず、おぉっと声をあげる。

「こんばんは、ライファ。」

ちびレイはそう言うとクルッと部屋を見渡した。

「へぇー、ここがライファの部屋か。」

んん!?

「こっちが見えるのか?」
「うん、なんかごめん。でも30cm四方の中でしか動けないから、どこにでもいけるわけじゃないよ。」

ちびレイはそういうと肩を竦めた。私はちびレイがどうなっているか知りたくて、ちびレイをつっついたりつまんだりしてみる。

「んをっ。」
「あ、ごめん。どうなっているのかと思ってつい。触られている感じがわかるのか?」

「んー、ざわざわする感じ。たとえばその小さな私が傷ついたりしても痛みは感じないし、私自身が怪我をするわけでもない。でも、何をされたのかはなんとなくわかる。そんな感じ。」

「へぇー、すごいな、これ。いちいちシューピンを飛ばさなくていいのも便利だ。」

私はなんとなくちびレイの頭を撫でていると、ちびレイは何とも言えないような微妙な表情をした。

「今日連絡したのは、王都の祭りの件なんだ。国王の招待を受けることにしたんだろう?」
「うん。断れるわけなどないし、それに楽しみでもある。ユーリスアに行くのは初めてだからな。」

「そうか。喜んでいるなら良かった。それで、その時なんだけどしばらくジェンダーソン家に滞在しないか?祭りは6日間にわたって行われる。その間、ライファさえ良ければ我が家へ招待したい。父も母もライファにはすごく感謝していてぜひお礼がしたいと言っているんだ。」

「えぇっ、それは・・・」

確かに有り難い申し出ではある。ユーリスアにはまだ食べたことのない物も珍しい食材もあるに違いない。滅多にない機会だし、なるべく多く手に入れたい。そうなるとお金がかかる。レイの家に滞在させてもらえるなら、宿代がかからないということになる。その分、食材へ回せるお金が増えるのだ。だが、6日間もお世話になっていいものだろうか。私は頭の中で珍しい食材たちと図々しさを天秤にかけた。勿論、珍しい食材の圧勝である。

「よろしくお願いします!」
「よろこんで。」

ちびレイはホッとしたように優しく微笑んだ。

「あ・・・私の親戚のおばさ・・お姉さんも行くと言っていたんだけど、一緒でもいいかな。」
「勿論大丈夫だよ。ライファ一人では心配だろう。両親にも伝えておく。」
「ありがとう。」

レイに嘘をつくのは心苦しいが、師匠の許可を取らずに師匠が行くことを話すわけにはいかなかった。

「じゃぁ、6日後に。昼過ぎには迎えに行くよ。」
「わかった。」
「じゃぁ、また。」
「うん、おやすみ。」

話が終わると、ちびレイはちびレイのまま動かなくなった。
そうか、話が終わったからといって宝石にもどるわけじゃないんだ。不思議な気持ちで動かなくなったちびレイを見つめる。レイの人形みたいだな。ついつい、またレイの頭を撫でてしまった。

話の流れで6日間お世話になることになったが、まぁ、いいか。ユーリスアに行くことは師匠も喜んでいたし。
私はちびレイの頭を撫でることをやめると、今話したことを伝えるために師匠の部屋へ向かった。


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