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第二章
5. パウンドケーキを売る
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「クロッカさん、今日はこの【毛生えケーキ】を売りにいきましょう!」
「・・・そのネーミングやめない?なんか凄く不味そうだわ。」
クロッカさんはウゲーッという表情をした。研究室の机の上にはパウンドケーキが21個置いてある。
「そうねぇ、【のびケーキ】にしましょうよ。この方が絶対に可愛いし、食べようとも思うわ!」
「そうですね。私はネーミングセンスがないらしいので名前はクロッカさんにお任せします。あ、昨日、2つ食べていましたけど、効果はどうなりましたか?」
「効力が続くのは4時間が最大みたいで、1個食べた時と特に変わらなかったわ。」
「そうなんですね。つまり、クルクルの実は8分の1で4時間髪の毛が伸びる効果がある。ということか。」
私はフムフムと頷いた。
「そういえばライファ、昨日言われた通りパーティードレスを持ってきたけど、これは何に使うの?」
「それは販売促進の映像を作るのに使おうと思っています。ほら、買い物に行くと商品の前に動画があるじゃないですか。あれを作りたいなと思っていて・・・。ハッ!動画を記憶させるための記憶石ってありますか!?」
すっかり忘れていた。記憶石がないと、動画を流すことができないじゃないか。うわーと頭を抱えた。
「あるわよ。ここは研究所よ。ちょっとした思い付きが研究のヒントになったりするから、簡単に記録できるようにと各研究室に支給されているの。」
「さすが研究所。なんて有り難い!それから、頭の禿げている方をモデルに使いたいのですが、心当たりありますか?それと、仲の良い美容師さんいます?」
クロッカさんが午前中に精力的に動いてくれたお蔭で午後には必要なものが全て揃った。そして今、禿げの研究員さんと共に研究所の近くにある美容室に来ている。
「この子、私の家の隣に住んでるナナちゃん。このお店のスタッフなの。」
クロッカさんが連れて行ってくれた美容室は大衆向けのどこにでもあるような美容室だった。
「クロッカさん、今日はどうしたんですか?なにかお願いがあるっておっしゃっていましたが。」
ナナさんは人懐っこそうな笑みを浮かべた。
「研究所で新しい調合料理を作ったから、そのプロモーション用の動画を撮りたいの。協力してもらえない?」
「私にできることならいいですけど。」
「大丈夫よ。髪の毛をセットしてもらえればいいから。いつもどおりよ!」
「あの、わ、私は何を・・・。」
「あぁ、トトさんはこのケーキを食べて座っていてくれればいいわ。」
禿げ・・・トトさんは40前半の気弱そうな研究員だ。若くして頭の真ん中が剥げてしまい、すごく気にしているらしい。
いよいよ撮影がスタートだ。
まず最初にのびケーキを食べる前の二人を撮影する。その後、クロッカさんには着替えてもらいトトさんはそのままの姿でのびケーキを食べる。美容室の一角にある綺麗なテーブルを使い、お茶も添えてまるでカフェにでもいるかのようだ。
「おいしい。」
トトさんがぽつりと呟く。あぁ、どうせならもう少し大きな声で言ってくれればいいのに。クロッカさんを見れば、うまい、うまいとガツガツ食べている。あー、もっと上品にとお願いすべきだったか。
その後、10分くらい経つと、二人の髪の毛がにょきにょき伸びてきた。トトさんに関しては頭の真ん中の禿げている部分も生えてきている。その、生えてきている姿も録画する。
「お、おぉーっ!!」
トトさんは鏡で自身の姿を確認しては頭を触り、凄く嬉しそうだ。心なしか声も大きくなってきている。
「ここでナナさんの出番です。トトさんの方はイケメン風にカット、クロッカさんの方はある程度髪の毛をカットしたあと、長さを生かした素敵ヘアーにセットして欲しいのです。」
「このケーキ、すごぉーいっ!任せてっ。二人とも、素敵にしちゃうから!」
「あら、なんだかすごーく楽しそうなことしてるじゃない?」
「あ、オーナー!会議はもう終わったんですか?」
ナナさんの質問にラメが散りばめられたキラキラのスーツを着た男性がやってきた。
「えぇさっき終わったの。面白そうだから、こちらの女性は私がセットしてあげるわ。」
オーナーが小さなスティックを振ると髪の毛が綺麗にカットされていく。スティックで大きな泡を作れば、泡が髪の毛を包んで洗い、スティックに息を吹きかければスティックが風を吐き出すようになり、髪の毛を乾かしていく。最後に大きくスティックをふると髪の毛はクルクルと勝手に結われていった。全体のバランスを見ながら頭に飾りをさしていく。私は二人が変身していく様子も記録石におさめた。
「さぁ、できあがり。」
すっかりイケメンと美女に変身した二人を記録する。ここでの撮影はここまでだ。あとは、元の姿にもどった二人を撮影して終了になる。セット料金をクロッカさんが払おうとすると、「お代はいらないわ。それより・・・」とオーナーが話を切り出した。
「この薬の権利は誰がお持ちなのかしら?」と綺麗な長い指を自身の口のあたりに持っていきながら聞いてきた。ク
ロッカさんが私を指さす。え?っとクロッカさんを見ると、あなたが作った薬だもの、と言った。
「ちょっとご相談があるのだけど。」
オーナーがニコリと笑って私の背中に手を回した。
オーナーに連れていかれたのは美容室の向かいにある喫茶店だった。貴族の屋敷をイメージしているのか高そうな家具が並ぶ高級そうな喫茶店だ。お、お金ないぞ・・・とドキドキしているとオーナーが「なんでもお好きなものを頼んでね。お代は心配しないで」と言ってくれた。ラッキー!
「「じゃあ、遠慮なく!!」」
私とクロッカさんがぱぁああっと表情を明るくした横で、トトさんが「ありがとうございます」とキリッと言った。髪の毛が増えてからなんだか自信ありげである。
「早速本題に入るのだけれど、この薬の効果は・・・」
とオーナーが言いかけたところで、「この調合料理はと言っていただけると嬉しいです」とクロッカさんが言った。そこは私たちにとっては重要なところだ。私が隣で頷くと、オーナーは言葉を変えた。
「失礼しましたわ。調合料理というのですのね。」
「私たちは料理と調合を掛け合わせた研究をしているのです。美味しくて役立つ薬というのがテーマなんです。」
「まぁ、それじゃあ、この毛が生えるケーキは美味しいってこと!?」
「えぇ、美味しさは私が保証しますよ。いつも全部たいらげたい衝動に駆られますので。」
「本当に美味しくてびっくりしました。」
トトさんがしっかりとした声で発言をした。
「この調合料理の効果は毛が生えるということでいいのかしら?その効果はどれくらいあって、効果が切れたらどうなるの?」
「それを聞いて、どうするのですか?」
「もし、私が思うような効果なのならば、うちに優先的に卸して欲しい。いや、むしろうちで独占させてほしいわ。」
「効果はこの【のびケーキ】を食べると髪の毛が伸びたり生えたりします。ケーキひとつで効果は4時間持続します。
4時間たてば元の髪型に戻ります。効果中に髪の毛を切ったとしても、効果が切れればのびケーキを食べる前の髪型に戻るのです。」
「すばらしいっ!!」
オーナーは立ち上がって両手を宙に掲げた。
「これは美容界の新な扉になる!いいでしょう。このケーキをうちの独占販売にしてくれるのなら、いくらでも出すわ。」
「本当ですか?」
「私を誰だと思っているの!私のお店はターザニアを拠点に世界各地にあるのよ。」
言ってはみたものの、相場が分からない・・・。クロッカさんを見ると分からないのはクロッカさんも同じようで・・・。でも、えぇいっ、釘は熱いうちに打て!だ。
「独占契約料として300万オン、その他はのびケーキ一つにつき5千オンでどうでしょう?」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。隣を見ればクロッカさんもトトさんも前のめりの体勢でオーナーの様子を伺っている。オーナーは宙を見ながらすこし考えたあと、「勿論、いいわ。じゃあ、早速契約をしましょう」と言った。
それからのオーナーの行動は早かった。ささっと電話をかけると秘書がやってきて、次々と書類が作成された。どれも世界的に魔力の効力を持つ契約書になっていて違反すれば違反が判明した地点でいた国の法律で裁かれることになる。私とクロッカさんは次々と契約書にサインしながら、独占契約の契約では契約期限を設けてもらい、その年数を
3年とした。3年経ったら他のお店に売るつもりはないが、万が一、魔木研究所がクルクルの木の栽培をやめることも考えてのことだ。3年間はなんとしてでも作ってもらわなくてはいけないのだが。
「それで、これが契約料ね。」
オーナーは紙にさらさらっと数字を記入して、はい、と渡した。金魔紙である。これを銀行に持っていくとお金にしてくれるのだ。金額は300万オン。初めて見る大金に、おぉぉぉぉっと声が出た。クロッカさんも同じように声を出している。
「で、今、手持ちののびケーキはいくつあるの?すぐ使ってみたいのよ。」
「19個です。」
「じゃあそれはこの場で買うわ。えーと、全部で9万5千オンね。」
オーナーはそう言うと、ポンと私にお金を渡した。クロッカさんとトトさんの目が現金に釘づけである。
「うちで独占販売するとなると、さっきの記録石は要らないわよね。こちらで貰ってもいいかしら?」
「「勿論です!」」
私とクロッカさんの声が揃った。
「このケーキは料理として考えるのなら、保存魔法を施しておいた方が良さそうよね。」
「そうですね。このままの状態ではおいしく食べられるのは2、3日なので。」
「わかったわ。で、次の納品はいつでいくつくらいになるのかしら?」
「むしろ、どのくらい欲しいですか?」
「こちらの希望としては、とりあえず5日後に20個。その次は、また考えさせて。売れ行きによっては倍になるでしょうし。」
「わかりました。こちらとしても、元になる実の生育状況もありますし5日後までには木のデータを把握しておきます。」
「じゃぁ、そういうことで。」
オーナーがそう言い話が終わったところで、注文していた食べ物が届いた。私はターザニアに来て初めての外食を存分に楽しんだのだった。
その日の夕方、レイのリトルマインを見つめながら今日の出来事を思い出していた。なんだか、凄いことになったな。ワクワクする。今日一日で凄い額を稼げちゃったし。レイにも話したいな。凄いねって驚いてくれるだろうか。
「ねぇ、ベル。このリトルマインってこっちから話しかけることはできるのかなぁ。」
私は机の上からリトルマインを取ると、ベッドに横になりながらリトルマインをひっくり返したり触ったりして調べている。
「スイッチでもあるの?」
ベルに聞いてみるも、ベルはキュイッキュイッと首を傾けるだけだ。リトルマインに魔力を通してみるか。私はリトルマインに魔力を通した。
「レイ、いる?」
話しかけても返事はない。やっぱり、こちらからは話しかけられないのかな。
ベッドに顔を突っ伏したまま、目を閉じる。
「ライファ、眠ってるの?」
耳元で聞こえたレイの声に飛び起きた。
「・・・そのネーミングやめない?なんか凄く不味そうだわ。」
クロッカさんはウゲーッという表情をした。研究室の机の上にはパウンドケーキが21個置いてある。
「そうねぇ、【のびケーキ】にしましょうよ。この方が絶対に可愛いし、食べようとも思うわ!」
「そうですね。私はネーミングセンスがないらしいので名前はクロッカさんにお任せします。あ、昨日、2つ食べていましたけど、効果はどうなりましたか?」
「効力が続くのは4時間が最大みたいで、1個食べた時と特に変わらなかったわ。」
「そうなんですね。つまり、クルクルの実は8分の1で4時間髪の毛が伸びる効果がある。ということか。」
私はフムフムと頷いた。
「そういえばライファ、昨日言われた通りパーティードレスを持ってきたけど、これは何に使うの?」
「それは販売促進の映像を作るのに使おうと思っています。ほら、買い物に行くと商品の前に動画があるじゃないですか。あれを作りたいなと思っていて・・・。ハッ!動画を記憶させるための記憶石ってありますか!?」
すっかり忘れていた。記憶石がないと、動画を流すことができないじゃないか。うわーと頭を抱えた。
「あるわよ。ここは研究所よ。ちょっとした思い付きが研究のヒントになったりするから、簡単に記録できるようにと各研究室に支給されているの。」
「さすが研究所。なんて有り難い!それから、頭の禿げている方をモデルに使いたいのですが、心当たりありますか?それと、仲の良い美容師さんいます?」
クロッカさんが午前中に精力的に動いてくれたお蔭で午後には必要なものが全て揃った。そして今、禿げの研究員さんと共に研究所の近くにある美容室に来ている。
「この子、私の家の隣に住んでるナナちゃん。このお店のスタッフなの。」
クロッカさんが連れて行ってくれた美容室は大衆向けのどこにでもあるような美容室だった。
「クロッカさん、今日はどうしたんですか?なにかお願いがあるっておっしゃっていましたが。」
ナナさんは人懐っこそうな笑みを浮かべた。
「研究所で新しい調合料理を作ったから、そのプロモーション用の動画を撮りたいの。協力してもらえない?」
「私にできることならいいですけど。」
「大丈夫よ。髪の毛をセットしてもらえればいいから。いつもどおりよ!」
「あの、わ、私は何を・・・。」
「あぁ、トトさんはこのケーキを食べて座っていてくれればいいわ。」
禿げ・・・トトさんは40前半の気弱そうな研究員だ。若くして頭の真ん中が剥げてしまい、すごく気にしているらしい。
いよいよ撮影がスタートだ。
まず最初にのびケーキを食べる前の二人を撮影する。その後、クロッカさんには着替えてもらいトトさんはそのままの姿でのびケーキを食べる。美容室の一角にある綺麗なテーブルを使い、お茶も添えてまるでカフェにでもいるかのようだ。
「おいしい。」
トトさんがぽつりと呟く。あぁ、どうせならもう少し大きな声で言ってくれればいいのに。クロッカさんを見れば、うまい、うまいとガツガツ食べている。あー、もっと上品にとお願いすべきだったか。
その後、10分くらい経つと、二人の髪の毛がにょきにょき伸びてきた。トトさんに関しては頭の真ん中の禿げている部分も生えてきている。その、生えてきている姿も録画する。
「お、おぉーっ!!」
トトさんは鏡で自身の姿を確認しては頭を触り、凄く嬉しそうだ。心なしか声も大きくなってきている。
「ここでナナさんの出番です。トトさんの方はイケメン風にカット、クロッカさんの方はある程度髪の毛をカットしたあと、長さを生かした素敵ヘアーにセットして欲しいのです。」
「このケーキ、すごぉーいっ!任せてっ。二人とも、素敵にしちゃうから!」
「あら、なんだかすごーく楽しそうなことしてるじゃない?」
「あ、オーナー!会議はもう終わったんですか?」
ナナさんの質問にラメが散りばめられたキラキラのスーツを着た男性がやってきた。
「えぇさっき終わったの。面白そうだから、こちらの女性は私がセットしてあげるわ。」
オーナーが小さなスティックを振ると髪の毛が綺麗にカットされていく。スティックで大きな泡を作れば、泡が髪の毛を包んで洗い、スティックに息を吹きかければスティックが風を吐き出すようになり、髪の毛を乾かしていく。最後に大きくスティックをふると髪の毛はクルクルと勝手に結われていった。全体のバランスを見ながら頭に飾りをさしていく。私は二人が変身していく様子も記録石におさめた。
「さぁ、できあがり。」
すっかりイケメンと美女に変身した二人を記録する。ここでの撮影はここまでだ。あとは、元の姿にもどった二人を撮影して終了になる。セット料金をクロッカさんが払おうとすると、「お代はいらないわ。それより・・・」とオーナーが話を切り出した。
「この薬の権利は誰がお持ちなのかしら?」と綺麗な長い指を自身の口のあたりに持っていきながら聞いてきた。ク
ロッカさんが私を指さす。え?っとクロッカさんを見ると、あなたが作った薬だもの、と言った。
「ちょっとご相談があるのだけど。」
オーナーがニコリと笑って私の背中に手を回した。
オーナーに連れていかれたのは美容室の向かいにある喫茶店だった。貴族の屋敷をイメージしているのか高そうな家具が並ぶ高級そうな喫茶店だ。お、お金ないぞ・・・とドキドキしているとオーナーが「なんでもお好きなものを頼んでね。お代は心配しないで」と言ってくれた。ラッキー!
「「じゃあ、遠慮なく!!」」
私とクロッカさんがぱぁああっと表情を明るくした横で、トトさんが「ありがとうございます」とキリッと言った。髪の毛が増えてからなんだか自信ありげである。
「早速本題に入るのだけれど、この薬の効果は・・・」
とオーナーが言いかけたところで、「この調合料理はと言っていただけると嬉しいです」とクロッカさんが言った。そこは私たちにとっては重要なところだ。私が隣で頷くと、オーナーは言葉を変えた。
「失礼しましたわ。調合料理というのですのね。」
「私たちは料理と調合を掛け合わせた研究をしているのです。美味しくて役立つ薬というのがテーマなんです。」
「まぁ、それじゃあ、この毛が生えるケーキは美味しいってこと!?」
「えぇ、美味しさは私が保証しますよ。いつも全部たいらげたい衝動に駆られますので。」
「本当に美味しくてびっくりしました。」
トトさんがしっかりとした声で発言をした。
「この調合料理の効果は毛が生えるということでいいのかしら?その効果はどれくらいあって、効果が切れたらどうなるの?」
「それを聞いて、どうするのですか?」
「もし、私が思うような効果なのならば、うちに優先的に卸して欲しい。いや、むしろうちで独占させてほしいわ。」
「効果はこの【のびケーキ】を食べると髪の毛が伸びたり生えたりします。ケーキひとつで効果は4時間持続します。
4時間たてば元の髪型に戻ります。効果中に髪の毛を切ったとしても、効果が切れればのびケーキを食べる前の髪型に戻るのです。」
「すばらしいっ!!」
オーナーは立ち上がって両手を宙に掲げた。
「これは美容界の新な扉になる!いいでしょう。このケーキをうちの独占販売にしてくれるのなら、いくらでも出すわ。」
「本当ですか?」
「私を誰だと思っているの!私のお店はターザニアを拠点に世界各地にあるのよ。」
言ってはみたものの、相場が分からない・・・。クロッカさんを見ると分からないのはクロッカさんも同じようで・・・。でも、えぇいっ、釘は熱いうちに打て!だ。
「独占契約料として300万オン、その他はのびケーキ一つにつき5千オンでどうでしょう?」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。隣を見ればクロッカさんもトトさんも前のめりの体勢でオーナーの様子を伺っている。オーナーは宙を見ながらすこし考えたあと、「勿論、いいわ。じゃあ、早速契約をしましょう」と言った。
それからのオーナーの行動は早かった。ささっと電話をかけると秘書がやってきて、次々と書類が作成された。どれも世界的に魔力の効力を持つ契約書になっていて違反すれば違反が判明した地点でいた国の法律で裁かれることになる。私とクロッカさんは次々と契約書にサインしながら、独占契約の契約では契約期限を設けてもらい、その年数を
3年とした。3年経ったら他のお店に売るつもりはないが、万が一、魔木研究所がクルクルの木の栽培をやめることも考えてのことだ。3年間はなんとしてでも作ってもらわなくてはいけないのだが。
「それで、これが契約料ね。」
オーナーは紙にさらさらっと数字を記入して、はい、と渡した。金魔紙である。これを銀行に持っていくとお金にしてくれるのだ。金額は300万オン。初めて見る大金に、おぉぉぉぉっと声が出た。クロッカさんも同じように声を出している。
「で、今、手持ちののびケーキはいくつあるの?すぐ使ってみたいのよ。」
「19個です。」
「じゃあそれはこの場で買うわ。えーと、全部で9万5千オンね。」
オーナーはそう言うと、ポンと私にお金を渡した。クロッカさんとトトさんの目が現金に釘づけである。
「うちで独占販売するとなると、さっきの記録石は要らないわよね。こちらで貰ってもいいかしら?」
「「勿論です!」」
私とクロッカさんの声が揃った。
「このケーキは料理として考えるのなら、保存魔法を施しておいた方が良さそうよね。」
「そうですね。このままの状態ではおいしく食べられるのは2、3日なので。」
「わかったわ。で、次の納品はいつでいくつくらいになるのかしら?」
「むしろ、どのくらい欲しいですか?」
「こちらの希望としては、とりあえず5日後に20個。その次は、また考えさせて。売れ行きによっては倍になるでしょうし。」
「わかりました。こちらとしても、元になる実の生育状況もありますし5日後までには木のデータを把握しておきます。」
「じゃぁ、そういうことで。」
オーナーがそう言い話が終わったところで、注文していた食べ物が届いた。私はターザニアに来て初めての外食を存分に楽しんだのだった。
その日の夕方、レイのリトルマインを見つめながら今日の出来事を思い出していた。なんだか、凄いことになったな。ワクワクする。今日一日で凄い額を稼げちゃったし。レイにも話したいな。凄いねって驚いてくれるだろうか。
「ねぇ、ベル。このリトルマインってこっちから話しかけることはできるのかなぁ。」
私は机の上からリトルマインを取ると、ベッドに横になりながらリトルマインをひっくり返したり触ったりして調べている。
「スイッチでもあるの?」
ベルに聞いてみるも、ベルはキュイッキュイッと首を傾けるだけだ。リトルマインに魔力を通してみるか。私はリトルマインに魔力を通した。
「レイ、いる?」
話しかけても返事はない。やっぱり、こちらからは話しかけられないのかな。
ベッドに顔を突っ伏したまま、目を閉じる。
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耳元で聞こえたレイの声に飛び起きた。
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