24 / 88
第四話【スペシャルパンケーキ】休日ブランチは極甘に!?
[2]ー1
しおりを挟む
[2]
「おまたせしました」
キッチンからやってきた怜の右腕には、大きな皿が二枚。左手側には、陶器で出来た取っ手付きの小さなドレッシングポットが二つある。
「うわっ、すごいっ!」
テーブルに置かれた皿の中を見て、美寧は思わず感嘆の声を上げた。
プレートの上には小ぶりなパンケーキが二枚。
その隣に、ベビーリーフ、紫オニオンのスライス、アボカドやサーモン、トマトが、色とりどりに盛られている。
脇にはクリームチーズや半熟のゆで卵も添えてられていて、ものすごく豪華だ。
「美味しそう!」
「ブランチですからね、食事系にしてみました。好みでこのシーザードレッシングかオリーブドレッシングを掛けて下さい」
怜がドレッシングポットを差しながら、それぞれの中身を説明する。
「少な目にしてありますので、しっかり食べて下さいね」
「ありがとう、れいちゃん!」
笑顔で美寧がそう言った後、二人で「いただきます」と手を合わせ、フォークとナイフを手に取った。
「んん~~っ、おいしいっ!!」
塩気の効いたサーモン。野菜のシャキシャキとした触感。怜特製のチーズの利いたシーザードレッシング。
それらが、ほんのりと甘いふわふわのパンケーキに、絶妙なアクセントを添えている。
「ミネの淹れてくれた紅茶も、とても美味しいですよ」
「ほんと?一応朝ご飯だからイングリッシュブレックファストにしたの。ちょっと濃い目に淹れちゃったんだけど、大丈夫かな?」
「ええ、とても美味しいですよ。俺好みです」
「えへへ…よかった」
怜の好みに淹れられたことが嬉しい。
「このお皿を全部食べ切れたら、デザートバージョンも作りますね」
「え、甘いのもあるの?」
「ええ、そちらの方が好きでしょう?ミネは」
「うん!」
美寧が少食だけど甘いものに目がないことは、怜にすっかり把握されている。
食事系の甘じょっぱいパンケーキもいいけど、やっぱりパンケーキといえばメープルシロップのたっぷり掛かった甘いものが一番。
美寧は、俄然張り切って食べ出した。
頬を膨らませながらもぐもぐとパンケーキを頬張る美寧を見て、怜は気付かれないように心の内だけで微笑む。
(作戦成功、ですね)
目論見が当たって怜は満足だ。
美寧は朝が苦手だ。
そんな彼女が、休日は遅くまで寝てしまうことは怜も把握済みで、自分が声を掛けなければ昼前まで眠ってしまうだろう。
ゆっくりと思う存分寝かせておいてあげたい気持ちはある。けれどそうすると必然的に夜が遅くなり、きっと翌日の朝食はあまり食べられないだろう。
結果的にほどほどの時間で起きるのが彼女の為だと、休日でも今日と同じように十時には声を掛けて美寧を起こすようにしているのだ。
「パンケーキの甘さが控えめで、サーモンとアボカドとすごく合う!シーザードレッシングもチーズが効いてて美味しいよ」
目を輝かせながらそう言った美寧の皿は、もう少しで空になりそうだ。
怜は紅茶を飲み終えると、椅子から腰を上げる。
「ありがとうございます。甘い方は入りそうですか?」
「うん、もちろん!」
「では少し待っていて下さい。次を作って来ますね。」
「ありがとう、れいちゃん。」
丸い瞳をキラキラと輝かせながら自分を見上げてくる美寧の頭を優しく撫でると、怜は空になった自分の皿を持ち、キッチンへと戻る。流しに皿を置くと、怜は残しておいたパンケーキの生地を冷蔵庫から取り出し、フライパンを再度火に掛けた。
(そう言えば、ここに来た当初のミネはコンロの点け方すら知りませんでしたね)
初めのころ、“家事が苦手”というレベルを超えた美寧の動きに、怜は何度も驚かされた。
世の中には料理や家事をほとんどしたことのない成人女性も沢山いると思う。けれど一度目にすれば分かるような些細なことすら、美寧は当たり前のように知らなかった。怜が教えればすぐに覚えるから、“出来ない”のではなく“知らなかった”のだと思う。目にしたこともない風だった。
(フォークとナイフの使い方や花を活けるのはものすごく上手、なんですよね……)
彼女は大半の人が知っていることを知らない代わりに、一般の人があまり出来ないことが難なく出来る。
所作の美しさ。季節の挨拶やしきたり。食事の作法。
さっきのパンケーキも、フランス料理のフルコースの一部かのように、フォークとナイフで綺麗に食べていた。彼女が切ったパンケーキは、皿の上に一つの欠片も残っていない。
(もしかしたらミネは良い家のお嬢様、かもしれませんね……)
そんなことを考えている間にパンケーキは焼き上がり、それを新しい皿に乗せると、冷蔵庫の中から取り出したものを次々に皿の上に盛り付けていく。最後に冷凍庫から出したものを乗せると、怜は満足そうに口の端を上げた。
(さて、俺の子猫は喜んでくれるでしょうか)
大皿を片手に、怜は再び美寧の待つダイニングへと戻って行った。
「おまたせしました」
キッチンからやってきた怜の右腕には、大きな皿が二枚。左手側には、陶器で出来た取っ手付きの小さなドレッシングポットが二つある。
「うわっ、すごいっ!」
テーブルに置かれた皿の中を見て、美寧は思わず感嘆の声を上げた。
プレートの上には小ぶりなパンケーキが二枚。
その隣に、ベビーリーフ、紫オニオンのスライス、アボカドやサーモン、トマトが、色とりどりに盛られている。
脇にはクリームチーズや半熟のゆで卵も添えてられていて、ものすごく豪華だ。
「美味しそう!」
「ブランチですからね、食事系にしてみました。好みでこのシーザードレッシングかオリーブドレッシングを掛けて下さい」
怜がドレッシングポットを差しながら、それぞれの中身を説明する。
「少な目にしてありますので、しっかり食べて下さいね」
「ありがとう、れいちゃん!」
笑顔で美寧がそう言った後、二人で「いただきます」と手を合わせ、フォークとナイフを手に取った。
「んん~~っ、おいしいっ!!」
塩気の効いたサーモン。野菜のシャキシャキとした触感。怜特製のチーズの利いたシーザードレッシング。
それらが、ほんのりと甘いふわふわのパンケーキに、絶妙なアクセントを添えている。
「ミネの淹れてくれた紅茶も、とても美味しいですよ」
「ほんと?一応朝ご飯だからイングリッシュブレックファストにしたの。ちょっと濃い目に淹れちゃったんだけど、大丈夫かな?」
「ええ、とても美味しいですよ。俺好みです」
「えへへ…よかった」
怜の好みに淹れられたことが嬉しい。
「このお皿を全部食べ切れたら、デザートバージョンも作りますね」
「え、甘いのもあるの?」
「ええ、そちらの方が好きでしょう?ミネは」
「うん!」
美寧が少食だけど甘いものに目がないことは、怜にすっかり把握されている。
食事系の甘じょっぱいパンケーキもいいけど、やっぱりパンケーキといえばメープルシロップのたっぷり掛かった甘いものが一番。
美寧は、俄然張り切って食べ出した。
頬を膨らませながらもぐもぐとパンケーキを頬張る美寧を見て、怜は気付かれないように心の内だけで微笑む。
(作戦成功、ですね)
目論見が当たって怜は満足だ。
美寧は朝が苦手だ。
そんな彼女が、休日は遅くまで寝てしまうことは怜も把握済みで、自分が声を掛けなければ昼前まで眠ってしまうだろう。
ゆっくりと思う存分寝かせておいてあげたい気持ちはある。けれどそうすると必然的に夜が遅くなり、きっと翌日の朝食はあまり食べられないだろう。
結果的にほどほどの時間で起きるのが彼女の為だと、休日でも今日と同じように十時には声を掛けて美寧を起こすようにしているのだ。
「パンケーキの甘さが控えめで、サーモンとアボカドとすごく合う!シーザードレッシングもチーズが効いてて美味しいよ」
目を輝かせながらそう言った美寧の皿は、もう少しで空になりそうだ。
怜は紅茶を飲み終えると、椅子から腰を上げる。
「ありがとうございます。甘い方は入りそうですか?」
「うん、もちろん!」
「では少し待っていて下さい。次を作って来ますね。」
「ありがとう、れいちゃん。」
丸い瞳をキラキラと輝かせながら自分を見上げてくる美寧の頭を優しく撫でると、怜は空になった自分の皿を持ち、キッチンへと戻る。流しに皿を置くと、怜は残しておいたパンケーキの生地を冷蔵庫から取り出し、フライパンを再度火に掛けた。
(そう言えば、ここに来た当初のミネはコンロの点け方すら知りませんでしたね)
初めのころ、“家事が苦手”というレベルを超えた美寧の動きに、怜は何度も驚かされた。
世の中には料理や家事をほとんどしたことのない成人女性も沢山いると思う。けれど一度目にすれば分かるような些細なことすら、美寧は当たり前のように知らなかった。怜が教えればすぐに覚えるから、“出来ない”のではなく“知らなかった”のだと思う。目にしたこともない風だった。
(フォークとナイフの使い方や花を活けるのはものすごく上手、なんですよね……)
彼女は大半の人が知っていることを知らない代わりに、一般の人があまり出来ないことが難なく出来る。
所作の美しさ。季節の挨拶やしきたり。食事の作法。
さっきのパンケーキも、フランス料理のフルコースの一部かのように、フォークとナイフで綺麗に食べていた。彼女が切ったパンケーキは、皿の上に一つの欠片も残っていない。
(もしかしたらミネは良い家のお嬢様、かもしれませんね……)
そんなことを考えている間にパンケーキは焼き上がり、それを新しい皿に乗せると、冷蔵庫の中から取り出したものを次々に皿の上に盛り付けていく。最後に冷凍庫から出したものを乗せると、怜は満足そうに口の端を上げた。
(さて、俺の子猫は喜んでくれるでしょうか)
大皿を片手に、怜は再び美寧の待つダイニングへと戻って行った。
0
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
俺様系和服社長の家庭教師になりました。
蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。
ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。
冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。
「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」
それから気づくと色の家庭教師になることに!?
期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、
俺様社長に翻弄される日々がスタートした。
あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。
汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。
書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
―――――――――――――――――――
ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。
傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。
―――なのに!
その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!?
恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆
「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」
*・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・*
▶Attention
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる