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第四話【スペシャルパンケーキ】休日ブランチは極甘に!?
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「れいちゃん?」
美寧の呼びかけに応えず、怜は真顔のまま黙ったままだ。
「……どうしたの?私、何か変?」
首を傾げると、怜は「変なところなどありませんよ」と答える。
それなのに、穴が空くのではないかと思えるほど見つめられて、美寧はむずむずと落ち着かない気持ちになってきた。
(なにか言いたいことでもあるのかな?……さっきから私が食べてばっかりだし。―――あぁっ!)
美寧の頭に一つの考えが過ぎる。それを思いついた途端、美寧は大いに慌てた。
「ごっ、ごめんなさい!」
突然頭を下げた美寧に、怜は目をしばたかせる。
「なんのことですか」と言うために口を開きかけた怜に、美寧は言葉を重ねた。
「私、一人で食べちゃってた!よく見たられいちゃんのお皿が無いってことは、これ、二人分だったんだよね?ごめんなさい……れいちゃんも食べて」
ずいっとおもむろに差し出されたプレートに怜は目を丸くした。「いや、それは、」と言いかけたが、美寧の耳には届かない。
「はしたなくてごめんなさいっ、私……食いしん坊で!れいちゃんの分まで食べちゃうなんてっ!!」
食べ残しのような状態の皿を相手に突きつける方がよっぽど無作法に当たるのだが、動揺しすぎの美寧はそこまで思い到らない。
青ざめた顔で必死に皿を押しやってくる美寧に、怜は詰めていた息をお腹の底から思いっきり吐きだした。
「はぁ~~~」という盛大な溜め息が耳に届いて、美寧は下げていた頭を上げ隣に座る怜を見る。
開いた足の上に両肘をつき、組んだ両手に額を乗せて俯いている怜は、項垂れているように見える。顔を伏せているので美寧にはその表情は見えない。
(れいちゃん怒ってるの?どうしよう………)
これまでの人生の中で、他の人の食べ物を勝手に食べてしまった経験のない美寧は、どうしてよいのか分からない。
自分がもし、大好物を誰かに食べられてしまったことを想像すると、泣きそうなくらいに悲しくなる。しかもそれがたった一つしかなかったのなら。
「本当にごめんなさい……わたし、どうお詫びしたら……」
「―――お詫び?」
それまで黙っていた怜が口を開いたことが嬉しくて、美寧は前のめりに答える。
「うん!私に出来ることなら何でも言って。ちゃんとお詫びをしたいから」
「……本当に?」
「もちろん。あ、でも……その…パンケーキは作れないんだけど………」
「わかりました。―――じゃあ、ミネが食べさせてください」
「えっ!?」
「パンケーキ。俺に食べさせて」
「っ!」
美寧は息を詰め固まった。
怜は指を組んだ両手の甲に顎を乗せ、覗き込むように美寧を見ている。艶やかなダークブラウンの前髪から覗く瞳はしっとりと甘く煌めき、美寧を見上げる姿は色香に満ち溢れている。
美寧は怜が纏う恐ろしいほどの色香に、目を見開いたまま固まっていた。
「ミネ」
「ぅっ……あ、……ぇっと……」
戸惑う美寧に怜は更に言葉を続ける。
「お詫び、してくれるんですよね?“なんでも”」
「うぅっ……」
確かに言った。『出来ることなら何でも言って』と。
美寧は誰かに何かを「食べさせる」ことなんてしたことはない。だってそれは“不作法”なことだと教えられてきたから。
何も出来ない赤子のころならいざ知らず、美寧は物心ついたころには、“自分で食べる”ということしかしたことはない。もちろんその逆もしかり。
「ここには誰もいませんよ。俺とあなたしか」
美寧の心を読んだかのような怜の台詞に、美寧はピクリと肩を跳ねさせる。
視線をうろうろとさまよわせた後、美寧は意を決してフォークとナイフを手に持った。
ゆっくりとパンケーキを切り分ける。かすかに手が震えて、ナイフが皿とぶつかり小さな音を立てた。
さっきまでは上手に乗せられたフルーツは、なぜかなかなかフォークの上に乗ってくれず、三度目に落ちたとき、美寧はそれを諦めた。
パンケーキだけが刺さったフォークを慎重に持ち上げ、怜の方に差し出した。
『はい、どうぞ』
いつものように無邪気に笑顔でそう言うことがなぜか出来ない。
それがどうしてなのか、自分でも分からない。
怜の口元十センチところにあるパンケーキをただ見つめながら、黙って待つ。すぐに食べられると思っていたそれはなかなか無くならず、パンケーキに付いているメープルシロップが今にも垂れ落ちそうになっている。
「シロップ、落ち―――っ」
言いかけた時、美寧は手首に熱を感じ、そのままグッと引かれた。
ハッと目を見張った瞬間。
―――パクリ
怜がフォークの先を口に含んだ。
美寧の呼びかけに応えず、怜は真顔のまま黙ったままだ。
「……どうしたの?私、何か変?」
首を傾げると、怜は「変なところなどありませんよ」と答える。
それなのに、穴が空くのではないかと思えるほど見つめられて、美寧はむずむずと落ち着かない気持ちになってきた。
(なにか言いたいことでもあるのかな?……さっきから私が食べてばっかりだし。―――あぁっ!)
美寧の頭に一つの考えが過ぎる。それを思いついた途端、美寧は大いに慌てた。
「ごっ、ごめんなさい!」
突然頭を下げた美寧に、怜は目をしばたかせる。
「なんのことですか」と言うために口を開きかけた怜に、美寧は言葉を重ねた。
「私、一人で食べちゃってた!よく見たられいちゃんのお皿が無いってことは、これ、二人分だったんだよね?ごめんなさい……れいちゃんも食べて」
ずいっとおもむろに差し出されたプレートに怜は目を丸くした。「いや、それは、」と言いかけたが、美寧の耳には届かない。
「はしたなくてごめんなさいっ、私……食いしん坊で!れいちゃんの分まで食べちゃうなんてっ!!」
食べ残しのような状態の皿を相手に突きつける方がよっぽど無作法に当たるのだが、動揺しすぎの美寧はそこまで思い到らない。
青ざめた顔で必死に皿を押しやってくる美寧に、怜は詰めていた息をお腹の底から思いっきり吐きだした。
「はぁ~~~」という盛大な溜め息が耳に届いて、美寧は下げていた頭を上げ隣に座る怜を見る。
開いた足の上に両肘をつき、組んだ両手に額を乗せて俯いている怜は、項垂れているように見える。顔を伏せているので美寧にはその表情は見えない。
(れいちゃん怒ってるの?どうしよう………)
これまでの人生の中で、他の人の食べ物を勝手に食べてしまった経験のない美寧は、どうしてよいのか分からない。
自分がもし、大好物を誰かに食べられてしまったことを想像すると、泣きそうなくらいに悲しくなる。しかもそれがたった一つしかなかったのなら。
「本当にごめんなさい……わたし、どうお詫びしたら……」
「―――お詫び?」
それまで黙っていた怜が口を開いたことが嬉しくて、美寧は前のめりに答える。
「うん!私に出来ることなら何でも言って。ちゃんとお詫びをしたいから」
「……本当に?」
「もちろん。あ、でも……その…パンケーキは作れないんだけど………」
「わかりました。―――じゃあ、ミネが食べさせてください」
「えっ!?」
「パンケーキ。俺に食べさせて」
「っ!」
美寧は息を詰め固まった。
怜は指を組んだ両手の甲に顎を乗せ、覗き込むように美寧を見ている。艶やかなダークブラウンの前髪から覗く瞳はしっとりと甘く煌めき、美寧を見上げる姿は色香に満ち溢れている。
美寧は怜が纏う恐ろしいほどの色香に、目を見開いたまま固まっていた。
「ミネ」
「ぅっ……あ、……ぇっと……」
戸惑う美寧に怜は更に言葉を続ける。
「お詫び、してくれるんですよね?“なんでも”」
「うぅっ……」
確かに言った。『出来ることなら何でも言って』と。
美寧は誰かに何かを「食べさせる」ことなんてしたことはない。だってそれは“不作法”なことだと教えられてきたから。
何も出来ない赤子のころならいざ知らず、美寧は物心ついたころには、“自分で食べる”ということしかしたことはない。もちろんその逆もしかり。
「ここには誰もいませんよ。俺とあなたしか」
美寧の心を読んだかのような怜の台詞に、美寧はピクリと肩を跳ねさせる。
視線をうろうろとさまよわせた後、美寧は意を決してフォークとナイフを手に持った。
ゆっくりとパンケーキを切り分ける。かすかに手が震えて、ナイフが皿とぶつかり小さな音を立てた。
さっきまでは上手に乗せられたフルーツは、なぜかなかなかフォークの上に乗ってくれず、三度目に落ちたとき、美寧はそれを諦めた。
パンケーキだけが刺さったフォークを慎重に持ち上げ、怜の方に差し出した。
『はい、どうぞ』
いつものように無邪気に笑顔でそう言うことがなぜか出来ない。
それがどうしてなのか、自分でも分からない。
怜の口元十センチところにあるパンケーキをただ見つめながら、黙って待つ。すぐに食べられると思っていたそれはなかなか無くならず、パンケーキに付いているメープルシロップが今にも垂れ落ちそうになっている。
「シロップ、落ち―――っ」
言いかけた時、美寧は手首に熱を感じ、そのままグッと引かれた。
ハッと目を見張った瞬間。
―――パクリ
怜がフォークの先を口に含んだ。
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