This Feeling この想い   

設楽理沙

文字の大きさ
52 / 62

第52話 ◇入院

しおりを挟む
52.


 妻には、南が入院したけどすぐに退院できそうなこと
今夜は付き添うから心配しなくていいことなど、連絡を入
れた。南のほうは母親に子供のことを自分で頼んだよう
だった。
 
 俺はそのまま家には帰らず南に付き添い、翌日は午前
中休みを取って、入院に必要なものの買出しに行った。

 彼女の母親が子供の世話をしてから病院に来るそうなの
で、それまでの間、彼女に付き添うことにした。

 南は俺との約束通り、誤って自分で川に落ちたと証言
してくれた。


「君と結婚するに当たり、まだ妻とは離婚してないので
お互い今はあまり接触しないほうがいいと思う。何かあ
ればもちろんここに駆け付けるが、極力来るのは控える
ことにするよ。君が完治する頃までには妻との離婚話を
進めておかないといけないし、どうだろう? 俺の提案に
何か不足ある?」

 
「結婚したらずっと一緒に居られるんだし、OKよ。思っ
たより大怪我でもないし、母を頼れば入院生活は切り抜
けられると思う。でも何かあったら駆け付けてくれる存
在がいるって、有難いことだと実感するわね。心のどこ
かですごく頼りにしてるのよ?」


 俺が自宅に帰ったのは、南が入院した翌日の夜遅くの
ことだった。俺が帰宅すると妻が涙目で待っていた。自
分が突き落して殺してしまったかもと思っていたぐらい
だから、助かったと聞いてもずっと心配だったに違いない。

「あなた、南さんはどうなったの? 大怪我してなかった?」

「うん、大丈夫だよ。落ちたにしては軽傷で済んだんじ
ゃないかな。話もできるし、しっかりしてたからね」

「私、警察に行かないと、大変なことしてしまって。い
つ警察が来るんだろう? ってドキドキしながら待ってた。
けど、誰も来ないしどうなってるんだろうって……エッ
エッ」


「聖、心配しなくていいよ、大丈夫だ。南さんは警察に
は届けないと言ってくれてるから。もう忘れろ、彼女に
も非はあるんだ。君に、きっとまた酷いことを言ったん
だろう?」

「でも川に突き落したりするなんて、許されないことよ。
 やっぱり私、警察に連絡しないと」

「君のすっきりしない気持ちは分かるけど、子供たちの将来
のことを考えて、ここは南さんの申し出に甘えておこう
……なっ、聖」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。 ◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。   ご了承ください。 斉藤准一 税理士事務所勤務35才 斎藤紀子    娘 7才  毒妻:  斉藤淳子  専業主婦   33才 金遣いが荒い 高橋砂央里  会社員    27才    山本隆行  オートバックス社員 25才    西野秀行   薬剤師   22才  岡田とま子  主婦    54才   深田睦子  見合い相手  22才 ――――――――――――――――――――――― ❧イラストはAI生成画像自作 2025.3.3 再☑済み😇

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

『 ゆりかご 』 

設楽理沙
ライト文芸
  - - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - - ◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。 " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。 ―――― 「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語 『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』 過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、 そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。 [大人の再生と静かな愛] “嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”  読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。 ――――            ・・・・・・・・・・ 芹 あさみ  36歳  専業主婦    娘:  ゆみ  中学2年生 13才 芹 裕輔   39歳  会社経営   息子: 拓哉   小学2年生  8才  早乙女京平  28歳  会社員  (家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト) 浅野エリカ   35歳  看護師 浅野マイケル  40歳  会社員 ❧イラストはAI生成画像自作  

処理中です...