This Feeling この想い   

設楽理沙

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第54話

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54.
 

「預貯金が800万円ほどあるから、君は今まで通りパート
して、それからこの家は貸し出して生活の足しにしたら
いい。君と子供たちは、小振りの賃貸に入って節約して暮
らせば5~6年はなんとかなると思う。それからなるべく
俺たちの近くに越しておいで、行き来がしやすいからね。
 その間、俺も貯金するしね。君や子供たちを路頭に迷わ
すようなことだけは、しないつもりだから」

「凛太郎さん、きっと私や子供たちに会いに来てね」

「あぁ、心配しなくていいよ。急なことですまないね」

「ううん私、妻失格だもん。会いに来てくれるだけでも
有難いと思わないと」

 聖はめそめそしながら、そう言った。普通は怒り狂う
ところなんだが、しかし今回は、聖が素直に応じてくれ
て、正直助かった。

 しかし、どうしてこんなことになったんだか。少し妻
を懲らしめるだげでよかったのに、離婚にまでなってし
まって。一番驚いているのは、きっと俺だ。


 聖には余所見しないで欲しいと言い含めたけれど、万
が一、また元彼に連絡を取って焼け木杭に火がついても
こうなってしまったからには、しようがないとも考えてい
る。


  ほんとに胸を掻き毟られるかと思うほど悲しくて辛かっ
たけど、私は離婚を受け入れた。それなのに……。

「こんなことになったけど、この先も君たちのことはずっ
と見守っていくから、その……新しく男を作ったり、元
彼とよりを戻したりしないで欲しい」

って、離婚して元妻になってしまう哀れな私に夫はそう
言ってきた。


「ずるいっ、あなたは南さんと結婚するのに私にはそん
なコトを約束させるの?」

「そうだな、ごめん。だけど君や子供たちの気持ちが俺以
外の男にいくのは嫌なんだ。縛ったりできないってのは
分かっているけど、俺の本音の気持ちだけは知っておいて
ほしいんだ」

 離婚に納得したはずだったけど、理不尽にも聞こえる
言い草につい、未練と腹立たしさを凛太郎さんに投げつけ
てしまった。

「私と子供たちを捨てて南さんと結婚するのに、どうして
気があるようなことを言うの。これって私がした浮気の
せいなの? そうなの? 謝ったのに……」

「そうじゃない、そうじゃないんだよ」

「じゃあ、どうして? 私のこと嫌いになったんじゃない
ならどうして別れなきゃならないの!
訳わかんないよぉ~」

 泣いたって決意の固そうな凛太郎さんが離婚を撤回
するはずもないというのに、それでも私は泣けてしようが
なかった。

「ごめん、ごめんな。なるべく沢山会いに来るから……
なっ?」

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