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7. ◇知らない夫の顔
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7. ◇知らない夫の顔
私は入ってくる夫と女の方に、小走りに向かった。
驚きながらも私に声を掛けようとしている夫を振り切り、
素通りしてエントランスを潜り抜け、マンションに面して走っている
幅広の道路をひたすら走った。
300mぐらいはその道に、悲しみの私の涙の粒がポツポツと
染込んだろうと思う。
気がつくと私は泣いていた。
紀ちゃん、紀ちゃんの言う通り凸したら
こんなことになっちゃったじゃないの。
責任取ってよぉ~。うっうっ。
訳の分からない文句を郷里の幼友達の紀子にぶつける
ことで、やっとなんとか私は自分を保った。
ねぇ、紀ちゃんはこんな結末が、もしかしたらあるかもって思ってたの?
もしそうなら、どうして教えてくれなかったの?
心の準備がなかった分、ものすごい衝撃だよ!
メガトン級。
紀ちゃん、啓吾がきれいな女と仲良くしてたよ……。
ううん。
……だけじゃなく、きっと一緒に暮らしてるんだ。
管理人さんの言葉を反芻してみると、そういうことだったのよね。
あの綺麗な女が啓吾の奥さんで……。じゃあ私は誰?
お払い箱ってこと?
気が付くとちゃんと新幹線の席に座っていて、帰る道々
私はそんなことを考えていた。
あの後、夫からは何通ものメールや電話があったけれど、
管理人からの話を聞いていなければまだしも、こんな状況で
何が話せるというのだろう。
それに、夫の横にいた女性があまりに美しかったことも
あって気後れしてしまった私は途方に暮れるばかりで――――。
夫からの電話にも出なかったし、ううん、出れなかったって
いう方が正解なんだけど、メールも見なかった。
怖過ぎて読めなかったのだ。
このままどうなっていくのか。
どう考えても、流れとして別れ話になるのだろぅなぁと
漠然とではあるけれど、怖い想像しかできなかった。
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こんなことになっちゃったじゃないの。
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