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24 ◇帰省
しおりを挟む『今回、帰省しないのはもしかして、満島まほりのことがあったせいなのだろうか?』
一瞬、そのような考えが浮かばなかったわけでもなかったが……。
由香が本当に体調不良だったなら、自分が彼女のことを疑っていることが分かれば、
ますます自分たちの関係が……自分の立場が危うくなりそうで、正義は口が裂けても
そんな素振りはできなかった。
それでこのあとすぐ、息子たちに帰省する準備を促そうと二階へ上がる。
2人に現状を説明するも、2人とも口を揃えて「母さんが行かないなら
僕たちも行かないよ」と言う。
「それに体調の悪い母さんを置いていけないでしょ?」
と上の息子が言った。
そう言われれば、真っ当な話なので、息子相手ではあっても反論もできず
正義は引き下がるしかなかった。
俺だけが帰省しても、両親は残念がるだろうなぁ。
それにお節料理の手伝いをする人手が|ない『行かない』のだから
母親も大変だよなぁ~などと、そのような考えが頭を過る。
そうだ、俺しか帰省できないんじゃあ、意味なくね?
いっそ、誰も帰省しなけりゃあ、母親も楽かもしれない。
そんな風に結論付けて、正義はすぐに実家に連絡を入れた。
実情を母親に話すと――――
『孫たちも帰省しないんじゃあ寂しいけど、由香さんは仕事も持っていることだし、
今のうちに養生して治しておかないと後々困るでしょ?
あなたがそこにいたら由香さんがゆっくりできないわよ。
それに私たちもあなたに会いたいし、あなただけでも帰ってらっしゃい。
お節は簡単なものだけにして、ばら寿司でも作って待ってるから帰ってらっしゃい』
そう強く諫められてしまい、正義は帰らないわけにはいかなくなった。
薄情なようだが、今まで家族全員で帰省した時は両親に会えるのが楽しみでさえ
あったというのに、1人で準備をして帰るとなると、正義は面倒くさくてしかた
なかった。
何故なのか、自分でもその心理は分からなかった。
いや、本当は分かっていた。
これまで何もかも人任せで楽をしていたため、自分で準備するとなると、
面倒に感じるのだ。
手土産も買わなけりゃならないし、両親への小遣いも準備しなけりゃあならない。
妻は毎年、一万円札のぱりっとした新札を用意してくれていた。
今回は間に合わず、古いお札を入れるしかないよな。
念のため、正義は由香に声を掛ける。
「えーとっ、一万円札の新札ってある?」
「ええ、封筒に入れてあるから持って行って。
食器棚の真ん中の引き出しに入れてあるから」
「ありがとう。助かる」
新札を用意してくれていたことで、めんどうな手間がひとつ省けた。
そのため、なんとか帰省しなければならない自分を鼓舞することができた。
そして、準備を整え、ひとり寂しく自宅を後にした。
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