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お値段以上、の価値がある[後編]
鬱蒼とした獣道とも呼べるほどの申し訳程度に舗装された森の中を駆ける。
本来ならば多少なりとも小型の魔物程度は出ているはずだが、自分の足音がこだまするかの如く静まりかえっている。
恐らく、彼女が道すがらの掃除でもしていったのだろうとぼんやりと思う。
騒がしいギルドを避けるかのように人当たりの良い笑みを浮かべている割に、必要事項のみのやり取りで依頼の報告と新たな情報のみ受け取って足早に出ていく姿は表情とは裏腹に彼女周りだけ隔てるがごとく薄い膜で覆われているようだった。
普段どんな神でも魔物でも仕事と割り切れるはずが、どこかその姿にざわついていた胸の収め処と報酬も出るのであればとどこまでも冷静なまま勢いをそのままに騎士とギルド内の耳に入った情報から町の街道から逸れた村へと走っていた。
「先輩の手前、恰好をつけたものの私とあの人相性悪い気がするんですがね……」
痛々しい姿だと思っていた。
通常登録から銅級、さらにそこから銀級へ昇格するのはスキルにもよるが、10年は最低掛かると言われているそれを3年で上がりその上が噂されている彼女。
だが、実際のところそこまでギルドは優しくない。
けれども使えるものは使う精神なのはどこの企業も似たり、寄ったりではあるわけでして。
ふと、思考にノイズを入れるソレが鼻につき行く先の方向を変える。
「焦げくさい……村はもう少し先だったはず、崖の方かしら」
やや右に逸れたその匂いが少し足を速めた。
先へ進むごとに焼け焦げた魔物と、なぎ倒された木々。
だが、その魔物の中には切り捨てられた傷も見える。
地を蹴る足に響いてきた振動に、追いついたことが分かった。
「森に地竜ですか、なるほど異変というのも解決できそうですね」
目の前に広がる荒野と森との裂け目、地竜をそこへ渡す橋とするが如く突き立てた剣と片手に割られた盾を持つ女性。
「受付の、お姉さん……?どうしてここに」
見開いた目をこちらに向けたその隙を逃す相手ではないことは彼女も分かっていただろうに、それでも人は想像しえない現実には空白が出来てしまう生き物。
蠢いた竜に跳ね上げられた体は宙を舞った。
「そういった質問は依頼後、もしくは道中でいいでしょうか」
放っておいても命には係るものではなさそうではないかと一瞬逡巡したのち、今ここに自分か来た意味を思い出しその身体を振りかぶった銀色のソレで受け止める。
「今引き上げますので、受け身くらいは取ってください」
しなる鞭を上へと跳ね上げ、身体を離したそれを勢いを殺さぬままこちらへ向かう竜に振り下ろす。
初任給と特別手当諸々を注ぎ込み誂えてもらった特製の鞭へと魔力を流し、大きな鰐のような鱗に覆われた巨体を絡めとり地へと押しつぶした。
「少しばかり身体が大きい程度で、地を這う蜥蜴が策なく突っ込んでくるだけとは嘆かわしい。流石にこの程度で息絶える種ではないことは百も承知ですが……丁度良かった、馬より便利な足が欲しかったので」
身体に巻き付く鞭、最早いくつも寄り集まった鋼鉄の縄のようなソレから逃れようと必死に藻掻く竜へと声をかけ、更に強化するための魔力を流し続ける。
「逃げて、受付のお姉さん……私まだ、戦えます」
「戦う……?ああ、これに討伐依頼はまだ出ていませんので首を落す必要はありませんよ」
数日前に見たときは腰ほどにあった髪も先は焼け焦げ、肺を傷つけたのかおかしな呼吸をして満身創痍ともいえる身体の彼女。
「そもそもあくまで異変の調査の依頼だったので、討伐は出るかすら未定ですから」
「でもこれが村へ向かえば、」
「見つけたのはいつですか?」
「……え?」
藻掻けば藻掻くほど締まる身体にグルグルと何かを訴えるかのように唸り地へと伏せた竜へ目をやり、彼女の元に問う。
「通常の地竜、まあこの竜はまだ角が成長途中ですから成体といっても数年でしょうが竜の討伐捕獲は最低銀級が5人以上、銀級が1人もしくは対応できない場合は銅級が15人以上のサポートが見込めるギルドへの依頼になります」
「そうだったんですね、でも私は偶々近くの村にいて最近森からやってくる小型の魔物が増えていると聞いていたのでパトロールがてら駆除していたら出会ってしまって仕方なく対応したので……それに私は基本ソロで動いているので伝令も頼めませんでした」
どこか申し訳なさそうな顔をした彼女は、そう説明をした。
「いいでしょう、その言葉の真偽なんて私には関係がないので信じましょう。しかしここからはギルド、いえ一職員としての意見にすぎませんが言わせていただきます」
鞭の先の竜へ、一歩歩み寄る。
「え、あの!あとは私がどうにかるするのでお姉さんはそのまま押さえておいていただければ……」
こちらを睨むギラギラとした蛇のような瞳、唯一自由の利く尾の先を苛立たし気に地面へと打ち付けている竜は鞭に絞められている口の先からフスフスとした興奮した呼吸が漏れたいた。
「あまり知られていないのかもしれませんが、一般的にギルド職員は最低銀級以上の資格を所持した者もしくはそれに準ずる実力を持つことを義務付けられています」
これほどあっけなく捕獲出来たことと自分の現状を理解出来ておらず降伏の意思も見えない、思ったよりも若い個体かあるいは竜とは龍よりもこれほど劣る種なのか……とりあえず彼女の教育のために、手短に終わらせたい。
「銀級一人の穴埋めに駆り出される下級の冒険者の数は10以上になります。その際迅速に対処すべきと見なされた依頼等にはギルド職員も駆り出されます。それはギルドとしての職務の一環になるため、ほぼ手当などでないに等しいんです」
涎を垂らし唸る大きな蜥蜴、彼女一人でもここまでやれたのは恐らく食すことが目的ではなかったからだろう。若い個体ほど弱者と見做したモノへの侮りがあり、呆れるほどに戦いが下手になる。
「お前は彼女を甚振っていたつもりだったんでしょうね……全く、人も獣も皆どうして愚かな種が生まれるのか。その矮小な生き物に己を殺す猛毒や一撃必殺の何かがあるかもしれないと思わないんでしょうかね……貴方の身体に巻き付くソレ、棘が生やせるんです」
粘液や鱗を持つ魔物を相手取るときにするりと抜けられることがあったため有刺鉄線のようなものが欲しかったところ、昔採ったエルダートレントの枝は魔力を流すと長さや形状、ある程度の重さ強度が補強できる性質を持っていたため軸に使用して貰った特別製の鞭だ
なるべく柔らかな首筋や腹を狙い、いくつか生やした棘に唸り声が悲鳴へと変わり打ち付けていた尾が地面へと垂れ下がる。
「うそ、そんな簡単に無力化できるなんて……」
痛みで震えている腕で構えた剣を支えに、彼女は所在なさげに竜を見つめていた。
「竜種といえど、成体として千年規模の個体でなければ少なくともヒライスの町所属のギルド職員は皆単体で討伐までは採用試験に含まれているんです」
「だったら私は、余計なことでみんなの稼ぐ機会を取っちゃったってことですね……」
項垂れ、薄らと笑い彼女は呟いた。
「いいえ、どちらかと言えばギルドの手間を増やすところだったというところです」
「は?」
本当に全く見当もつかないとでもいう顔を浮かべる。
「先ほど通常銅級15人と言いましたが、この個体ならそこそこの銅級10もいればいけたでしょうね。ですが貴方は単体で挑み、私が間に合わなければ崖から竜と心中運が良くて引退に準ずる怪我は追っていたでしょう」
「……ギルドを通さず依頼、それになりうる討伐を勝手に受けたことなら違反ではないと聞いたことがあるんですが」
「そこではありません。銀級が1人失われるところだったんです、いわば10人分銅級を失い更に銀級一人を穴埋めするに値するものを育てる時間も失われるに等しいところだった!」
どうしてこうも、まともに見える落ち人ほど分からないのか!
「いいですか、貴女は自己犠牲で死に場所ゲットで終わりかもしれませんがこちらとしてはこの程度のことで銀級1人失うのは割に合いません。ギルドとしては管理体制が問われ、落ち人への教育フォローが行き届いていなかったことを責められ、恐らく同じ落ち人として職員にもなっている私も聞き取りをされます。どうして止めなかったのかと」
こちらとしては世界を拒むものはやりたい様にやらせるのが一番だと言いたいが、それを世間は許してはくれやしない。
「貴女十代で一人で落ちて、ここより先の村で夫婦の子として育てられ魔獣被害の多い田舎へと恩を返すために似た村を救っているそうですね」
「どうして、それを……」
「落ち人には教育フォローとして、メンタルケアが必要な場合に限り冒険者としての安否を届ける先がある場合の注意事項が申し送られているんです」
「私別にフォローなんて必要ありません‼」
項垂れていた顔を上げ、噛みつくように叫ぶ様は涙こそ流れていないものの悲痛だった。
「貴女の依頼数、頻度はギルド外で受けているものを除いても働きすぎだと問題視されていたんです。ギルドは人材を使い捨てる様な焼却施設ではないのです、適正な教育義務と支援を受ける権利どちらも出来てこそ両者の立場は成り立つものです」
彼女へと説明を続けながらもこちらとしては早く諸々を終わらせたいので、目の前の大人しくなった竜の棘を抜きその傷口へ直接魔力を送り込む。
「因みにですがメンタルケアに必要な人員として貴女のこちらでのご両親へは連絡がいっており、近々町へ来られると思います。こちらとしてもそんな呼び出した状況で貴女に死に体でいられるのは世間体が悪いんですよ」
送り込む魔力を相手に馴染ませ、ある程度の意思疎通の融通を聞かせねばならないがいかんせん竜など無駄に魔力耐性のあるものは力で屈服させるのも、心を折るのも面倒で討伐に切り替えたくなる。調教師などという職は、本当に手間が多い。
「お父さんとお母さんが、町に……?」
キョトンとしたその顔は、落ちた頃の彼女になっているのか私の話も流れたのか意識が両親へと逸れていた。
「やらなくていいことを態々やっておいて自暴自棄になって、その癖そうやってこっちの両親のことも思えるのなら投げるのが早すぎます。働きすぎて自律神経狂ってメンタルやられて世話ないですよ、サボれるときにサボれるのが立派な大人の仕事のやり方です」
苛立ちで乱れた魔力に竜が悲鳴を上げ、もう締め付けてなどいないのに地に伏せた。
「でも依頼料が出せない人たちがたくさんいて……」
「それは国の仕事、もしくは村として取り組むべき問題であって一個人が負担を負って行うものなど貴女でなくとも破綻します」
伏せた竜を人撫でして、背へと飛び乗る。
馬と違い少し硬いが、小型の魔物が寄り付かず脚も馬より速いため良いところがあるので使い勝手が良さそうだ。
「第一に前の世界から切り離された私たちに、自分と大切な人を失わない以外に大切なものって必要ありますか?それでなくとも、社会とは一個人が背負うべきものではありません、ましてや冒険者なんて本来村に属してなどいない血のつながりも地の所縁もない存在なんです。優しさに付け込んだ搾取はサービス残業と変わりません、労基に訴えてしかるべき処断をされるべきです」
呆然としている彼女へと手を伸ばす。
「良いことを教えてあげましょう。他人は他人、自分は自分。個人以上の何かを変えたいなら人は権力を得るべきです、権力のない自分へは言い訳し放題なんです。仕事は自分と大切なものの為に生き延びるお金を稼ぐ手段、生き急ぐために命削るものではありません」
「私はこっちに来た時自分たちも生きるのが大変な両親に助けられたの……だったら私も大変でも誰かを助けたくて」
「ご両親は貴女だから助けたんですよ、貴女が大切だから育てるために大変さを受け入れた、それはご両親の選んだ義務と権利です貴女のモノじゃない」
「でも……」
伸ばしたままの私の手をぼんやりと泣きそうに見つめたまま、動かないその姿は迷子がついていく親を見失ったかのようだった。
だが、今は兎に角時間が惜しい。
「とかなんとか、それっぱいことを言うことは良いんですが一旦後に回してとりあえず町に帰りますので乗ってください」
竜の身体に回していた鞭を再び彼女へと巻き付け、その背へと固定する。
「ちょっと待ってください!私自分で乗れますから!!うっ…」
「死に急いだ人間の言葉は1年は信じないと決めてるので、死ぬなら冒険者やめてヒライスの町から離れ数十年経ってからにして下さい。さっき言った諸々が問われなくて済むんで。あと治りの早い冒険者でもその傷はもう少し安静にしておいた方が無難ですよ」
「最低じゃないですか、お姉さん!知らなくて迷惑かけちゃってたかもってちょっと思ってたのに!!」
「現在進行形で迷惑はかけてるのでそれは思っていてください、私のこれは業務内として出張費くらいしか出ませんし苦手な人間と二人きりとか気まずい状況にさせられてイラついてますし」
「そこまで言います?……私お姉さんに何かしました?」
鞭の中で藻掻いて、居心地の良い体勢を探っていた彼女は戸惑いつつ収まった。
「一方的なものなので貴女のその生き方以外に落ち度はありませんよ」
「嫌いじゃないですか、それ」
「嫌いというよりも、恩だの大切だなんだと言っておきながら全て捨てて投げやる姿勢がイラつきますね。どんだけ自分の力過信してるんですか貴女」
「別に過信なんてしてないです……ッぐ!!ちょって、締まってます!!痛い、鱗が振動で擦られて痛い削れる!!」
苛立ちと戒めで締め付けてやると抗議の声が上がる。
「やかましいわ、今の自分の状況でそれを口に出せる時点でわかってないんですよ」
「私は!……貴女みたいに割り切って生きられないんです。両親のことは好きだけど、この世界は……今までの世界と違って怖いんです」
「怖ければ逃げればいいじゃないですか、私も嫌なことはやりませんし逃げますよ」
「逃げるってどうやって……」
「冒険者以外にも職はありますし、現にご両親と畑やら手仕事村ではやっていたと聞きましたよ」
「でもそれだけじゃ稼ぎが足りなかったのよ」
この子は10代で落ちてきた、仕事の相談の仕方を知らないまま大人になりこの世界の生き方も半端になっているのか。
「今はもう十分貯めてますよね?だったら村に拠点移して、その周辺の魔獣駆除でもいいじゃないですか。悩んで見えたギルドから遠い村でギルド派遣の職員としてとかでもいいですし」
「そんなこと……出来るんですか?」
「出来ますよ、現に村で雇われる冒険者や傭兵もいますしこの世界は向こうの世界より実力により個人の融通が利きます」
使える人材は、逃げられる前に使える場所で末永く働いてほしいの利害が一致しているのですんなりと通るだろう。
「うそ……じゃあ私村に帰っても、お金が稼げるの?」
「多少の距離的なラグはあるとは思いますが、ギルドの要請として駐在的立場で給料は発生します。そもそもギルドとしての要望や困りごとがあるかを年一の面談で聞かれたはずですが、そこで相談していただければ同じことを言われたはずですよ」
「だって何の相談すればいいのかも分からないし、 そんなこと誰も教えてくれなかった……」
なんとなく彼女の問題が、どうしてメンタルケアが早急に手配されいたのか分かった気がする。
「ソロでやって見えて、ギルドの出入りも事務手続きのみでしたから周りの人たちがどういった話をされてるかも興味なかったんでしょうね。それ事態は別に私もそれほど人付き合いが得意ではないので良いとは思うんですが、意外と必要な情報って話し好きな人の世間話からだったりその場しのぎの雑談が相談になったりするものなので適当でも会話しとくと知識は増えますよ」
会話で脳が動けば、その場で適当に口にしたものが何かの手掛かりになったりしなかったりするんじゃないかは持論なので自己責任とさせていただきたい。
「私それ、やりたいです」
何か光を見出したかのような彼女と、見えてきた町の城壁が暮れ始めた夕日に照らされる。
鳴り響く夕暮れ時のキンベンの鳴き声。
「そうですか、でしたら先ほど説明した際のご要望を夜勤者へ申し伝えて置きますので諸々の手続きよろしくお願いしますね。私は妹の迎えがあるので、ここで失礼します」
竜と固定していた鞭を彼女単体へと巻き付け、ギルドの建物が見えた頃合いで弾く。
「噓ですよね?!この状況で見捨てますか、普通!」
「見捨ててませんよ、私のケアは貴女をここまで連れてくること。夜勤者への申し伝えは連絡鳥がおりますのでご心配なく」
「普通親身になってくれた貴女が最後まで面倒見るべきでは?!」
「それは業務時間内の話ですね、私本日は日勤なのでこれからは夜勤者の担当です。お急ぎでなければ明日は私有給のためおりませんが、明後日の出勤の際にお話し進めることが可能かと思いますのでどちらでも構いませんよ」
一応は手加減をして投げたがなんなくと受け身と着地を決めキャンキャンと吠える彼女の姿に安心し声をかけふと周りの静けさ、これまでの彼女の姿と違うその様に目を丸くするギルド内の面々。
「仕事とは業務時間内にするものです、それ以上は手当をいただければ時と場合によりますが受け賜ります。しかし今日は妹の初めて魔法が使えた日3周年のお祝いの日なのでこれにて失礼します」
あの調子なら少なくともギルド内の夜勤者で対応できるとみなし、蜥蜴の足早に学術院へと向かう。
「リリーちゃん、今日の届け出だしておいてね~!お疲れ様~」
走る背へと届く声に、こちらも張り上げて返答する。
「後ほど連絡鳥に預けておきます、お疲れ様です」
本来ならば多少なりとも小型の魔物程度は出ているはずだが、自分の足音がこだまするかの如く静まりかえっている。
恐らく、彼女が道すがらの掃除でもしていったのだろうとぼんやりと思う。
騒がしいギルドを避けるかのように人当たりの良い笑みを浮かべている割に、必要事項のみのやり取りで依頼の報告と新たな情報のみ受け取って足早に出ていく姿は表情とは裏腹に彼女周りだけ隔てるがごとく薄い膜で覆われているようだった。
普段どんな神でも魔物でも仕事と割り切れるはずが、どこかその姿にざわついていた胸の収め処と報酬も出るのであればとどこまでも冷静なまま勢いをそのままに騎士とギルド内の耳に入った情報から町の街道から逸れた村へと走っていた。
「先輩の手前、恰好をつけたものの私とあの人相性悪い気がするんですがね……」
痛々しい姿だと思っていた。
通常登録から銅級、さらにそこから銀級へ昇格するのはスキルにもよるが、10年は最低掛かると言われているそれを3年で上がりその上が噂されている彼女。
だが、実際のところそこまでギルドは優しくない。
けれども使えるものは使う精神なのはどこの企業も似たり、寄ったりではあるわけでして。
ふと、思考にノイズを入れるソレが鼻につき行く先の方向を変える。
「焦げくさい……村はもう少し先だったはず、崖の方かしら」
やや右に逸れたその匂いが少し足を速めた。
先へ進むごとに焼け焦げた魔物と、なぎ倒された木々。
だが、その魔物の中には切り捨てられた傷も見える。
地を蹴る足に響いてきた振動に、追いついたことが分かった。
「森に地竜ですか、なるほど異変というのも解決できそうですね」
目の前に広がる荒野と森との裂け目、地竜をそこへ渡す橋とするが如く突き立てた剣と片手に割られた盾を持つ女性。
「受付の、お姉さん……?どうしてここに」
見開いた目をこちらに向けたその隙を逃す相手ではないことは彼女も分かっていただろうに、それでも人は想像しえない現実には空白が出来てしまう生き物。
蠢いた竜に跳ね上げられた体は宙を舞った。
「そういった質問は依頼後、もしくは道中でいいでしょうか」
放っておいても命には係るものではなさそうではないかと一瞬逡巡したのち、今ここに自分か来た意味を思い出しその身体を振りかぶった銀色のソレで受け止める。
「今引き上げますので、受け身くらいは取ってください」
しなる鞭を上へと跳ね上げ、身体を離したそれを勢いを殺さぬままこちらへ向かう竜に振り下ろす。
初任給と特別手当諸々を注ぎ込み誂えてもらった特製の鞭へと魔力を流し、大きな鰐のような鱗に覆われた巨体を絡めとり地へと押しつぶした。
「少しばかり身体が大きい程度で、地を這う蜥蜴が策なく突っ込んでくるだけとは嘆かわしい。流石にこの程度で息絶える種ではないことは百も承知ですが……丁度良かった、馬より便利な足が欲しかったので」
身体に巻き付く鞭、最早いくつも寄り集まった鋼鉄の縄のようなソレから逃れようと必死に藻掻く竜へと声をかけ、更に強化するための魔力を流し続ける。
「逃げて、受付のお姉さん……私まだ、戦えます」
「戦う……?ああ、これに討伐依頼はまだ出ていませんので首を落す必要はありませんよ」
数日前に見たときは腰ほどにあった髪も先は焼け焦げ、肺を傷つけたのかおかしな呼吸をして満身創痍ともいえる身体の彼女。
「そもそもあくまで異変の調査の依頼だったので、討伐は出るかすら未定ですから」
「でもこれが村へ向かえば、」
「見つけたのはいつですか?」
「……え?」
藻掻けば藻掻くほど締まる身体にグルグルと何かを訴えるかのように唸り地へと伏せた竜へ目をやり、彼女の元に問う。
「通常の地竜、まあこの竜はまだ角が成長途中ですから成体といっても数年でしょうが竜の討伐捕獲は最低銀級が5人以上、銀級が1人もしくは対応できない場合は銅級が15人以上のサポートが見込めるギルドへの依頼になります」
「そうだったんですね、でも私は偶々近くの村にいて最近森からやってくる小型の魔物が増えていると聞いていたのでパトロールがてら駆除していたら出会ってしまって仕方なく対応したので……それに私は基本ソロで動いているので伝令も頼めませんでした」
どこか申し訳なさそうな顔をした彼女は、そう説明をした。
「いいでしょう、その言葉の真偽なんて私には関係がないので信じましょう。しかしここからはギルド、いえ一職員としての意見にすぎませんが言わせていただきます」
鞭の先の竜へ、一歩歩み寄る。
「え、あの!あとは私がどうにかるするのでお姉さんはそのまま押さえておいていただければ……」
こちらを睨むギラギラとした蛇のような瞳、唯一自由の利く尾の先を苛立たし気に地面へと打ち付けている竜は鞭に絞められている口の先からフスフスとした興奮した呼吸が漏れたいた。
「あまり知られていないのかもしれませんが、一般的にギルド職員は最低銀級以上の資格を所持した者もしくはそれに準ずる実力を持つことを義務付けられています」
これほどあっけなく捕獲出来たことと自分の現状を理解出来ておらず降伏の意思も見えない、思ったよりも若い個体かあるいは竜とは龍よりもこれほど劣る種なのか……とりあえず彼女の教育のために、手短に終わらせたい。
「銀級一人の穴埋めに駆り出される下級の冒険者の数は10以上になります。その際迅速に対処すべきと見なされた依頼等にはギルド職員も駆り出されます。それはギルドとしての職務の一環になるため、ほぼ手当などでないに等しいんです」
涎を垂らし唸る大きな蜥蜴、彼女一人でもここまでやれたのは恐らく食すことが目的ではなかったからだろう。若い個体ほど弱者と見做したモノへの侮りがあり、呆れるほどに戦いが下手になる。
「お前は彼女を甚振っていたつもりだったんでしょうね……全く、人も獣も皆どうして愚かな種が生まれるのか。その矮小な生き物に己を殺す猛毒や一撃必殺の何かがあるかもしれないと思わないんでしょうかね……貴方の身体に巻き付くソレ、棘が生やせるんです」
粘液や鱗を持つ魔物を相手取るときにするりと抜けられることがあったため有刺鉄線のようなものが欲しかったところ、昔採ったエルダートレントの枝は魔力を流すと長さや形状、ある程度の重さ強度が補強できる性質を持っていたため軸に使用して貰った特別製の鞭だ
なるべく柔らかな首筋や腹を狙い、いくつか生やした棘に唸り声が悲鳴へと変わり打ち付けていた尾が地面へと垂れ下がる。
「うそ、そんな簡単に無力化できるなんて……」
痛みで震えている腕で構えた剣を支えに、彼女は所在なさげに竜を見つめていた。
「竜種といえど、成体として千年規模の個体でなければ少なくともヒライスの町所属のギルド職員は皆単体で討伐までは採用試験に含まれているんです」
「だったら私は、余計なことでみんなの稼ぐ機会を取っちゃったってことですね……」
項垂れ、薄らと笑い彼女は呟いた。
「いいえ、どちらかと言えばギルドの手間を増やすところだったというところです」
「は?」
本当に全く見当もつかないとでもいう顔を浮かべる。
「先ほど通常銅級15人と言いましたが、この個体ならそこそこの銅級10もいればいけたでしょうね。ですが貴方は単体で挑み、私が間に合わなければ崖から竜と心中運が良くて引退に準ずる怪我は追っていたでしょう」
「……ギルドを通さず依頼、それになりうる討伐を勝手に受けたことなら違反ではないと聞いたことがあるんですが」
「そこではありません。銀級が1人失われるところだったんです、いわば10人分銅級を失い更に銀級一人を穴埋めするに値するものを育てる時間も失われるに等しいところだった!」
どうしてこうも、まともに見える落ち人ほど分からないのか!
「いいですか、貴女は自己犠牲で死に場所ゲットで終わりかもしれませんがこちらとしてはこの程度のことで銀級1人失うのは割に合いません。ギルドとしては管理体制が問われ、落ち人への教育フォローが行き届いていなかったことを責められ、恐らく同じ落ち人として職員にもなっている私も聞き取りをされます。どうして止めなかったのかと」
こちらとしては世界を拒むものはやりたい様にやらせるのが一番だと言いたいが、それを世間は許してはくれやしない。
「貴女十代で一人で落ちて、ここより先の村で夫婦の子として育てられ魔獣被害の多い田舎へと恩を返すために似た村を救っているそうですね」
「どうして、それを……」
「落ち人には教育フォローとして、メンタルケアが必要な場合に限り冒険者としての安否を届ける先がある場合の注意事項が申し送られているんです」
「私別にフォローなんて必要ありません‼」
項垂れていた顔を上げ、噛みつくように叫ぶ様は涙こそ流れていないものの悲痛だった。
「貴女の依頼数、頻度はギルド外で受けているものを除いても働きすぎだと問題視されていたんです。ギルドは人材を使い捨てる様な焼却施設ではないのです、適正な教育義務と支援を受ける権利どちらも出来てこそ両者の立場は成り立つものです」
彼女へと説明を続けながらもこちらとしては早く諸々を終わらせたいので、目の前の大人しくなった竜の棘を抜きその傷口へ直接魔力を送り込む。
「因みにですがメンタルケアに必要な人員として貴女のこちらでのご両親へは連絡がいっており、近々町へ来られると思います。こちらとしてもそんな呼び出した状況で貴女に死に体でいられるのは世間体が悪いんですよ」
送り込む魔力を相手に馴染ませ、ある程度の意思疎通の融通を聞かせねばならないがいかんせん竜など無駄に魔力耐性のあるものは力で屈服させるのも、心を折るのも面倒で討伐に切り替えたくなる。調教師などという職は、本当に手間が多い。
「お父さんとお母さんが、町に……?」
キョトンとしたその顔は、落ちた頃の彼女になっているのか私の話も流れたのか意識が両親へと逸れていた。
「やらなくていいことを態々やっておいて自暴自棄になって、その癖そうやってこっちの両親のことも思えるのなら投げるのが早すぎます。働きすぎて自律神経狂ってメンタルやられて世話ないですよ、サボれるときにサボれるのが立派な大人の仕事のやり方です」
苛立ちで乱れた魔力に竜が悲鳴を上げ、もう締め付けてなどいないのに地に伏せた。
「でも依頼料が出せない人たちがたくさんいて……」
「それは国の仕事、もしくは村として取り組むべき問題であって一個人が負担を負って行うものなど貴女でなくとも破綻します」
伏せた竜を人撫でして、背へと飛び乗る。
馬と違い少し硬いが、小型の魔物が寄り付かず脚も馬より速いため良いところがあるので使い勝手が良さそうだ。
「第一に前の世界から切り離された私たちに、自分と大切な人を失わない以外に大切なものって必要ありますか?それでなくとも、社会とは一個人が背負うべきものではありません、ましてや冒険者なんて本来村に属してなどいない血のつながりも地の所縁もない存在なんです。優しさに付け込んだ搾取はサービス残業と変わりません、労基に訴えてしかるべき処断をされるべきです」
呆然としている彼女へと手を伸ばす。
「良いことを教えてあげましょう。他人は他人、自分は自分。個人以上の何かを変えたいなら人は権力を得るべきです、権力のない自分へは言い訳し放題なんです。仕事は自分と大切なものの為に生き延びるお金を稼ぐ手段、生き急ぐために命削るものではありません」
「私はこっちに来た時自分たちも生きるのが大変な両親に助けられたの……だったら私も大変でも誰かを助けたくて」
「ご両親は貴女だから助けたんですよ、貴女が大切だから育てるために大変さを受け入れた、それはご両親の選んだ義務と権利です貴女のモノじゃない」
「でも……」
伸ばしたままの私の手をぼんやりと泣きそうに見つめたまま、動かないその姿は迷子がついていく親を見失ったかのようだった。
だが、今は兎に角時間が惜しい。
「とかなんとか、それっぱいことを言うことは良いんですが一旦後に回してとりあえず町に帰りますので乗ってください」
竜の身体に回していた鞭を再び彼女へと巻き付け、その背へと固定する。
「ちょっと待ってください!私自分で乗れますから!!うっ…」
「死に急いだ人間の言葉は1年は信じないと決めてるので、死ぬなら冒険者やめてヒライスの町から離れ数十年経ってからにして下さい。さっき言った諸々が問われなくて済むんで。あと治りの早い冒険者でもその傷はもう少し安静にしておいた方が無難ですよ」
「最低じゃないですか、お姉さん!知らなくて迷惑かけちゃってたかもってちょっと思ってたのに!!」
「現在進行形で迷惑はかけてるのでそれは思っていてください、私のこれは業務内として出張費くらいしか出ませんし苦手な人間と二人きりとか気まずい状況にさせられてイラついてますし」
「そこまで言います?……私お姉さんに何かしました?」
鞭の中で藻掻いて、居心地の良い体勢を探っていた彼女は戸惑いつつ収まった。
「一方的なものなので貴女のその生き方以外に落ち度はありませんよ」
「嫌いじゃないですか、それ」
「嫌いというよりも、恩だの大切だなんだと言っておきながら全て捨てて投げやる姿勢がイラつきますね。どんだけ自分の力過信してるんですか貴女」
「別に過信なんてしてないです……ッぐ!!ちょって、締まってます!!痛い、鱗が振動で擦られて痛い削れる!!」
苛立ちと戒めで締め付けてやると抗議の声が上がる。
「やかましいわ、今の自分の状況でそれを口に出せる時点でわかってないんですよ」
「私は!……貴女みたいに割り切って生きられないんです。両親のことは好きだけど、この世界は……今までの世界と違って怖いんです」
「怖ければ逃げればいいじゃないですか、私も嫌なことはやりませんし逃げますよ」
「逃げるってどうやって……」
「冒険者以外にも職はありますし、現にご両親と畑やら手仕事村ではやっていたと聞きましたよ」
「でもそれだけじゃ稼ぎが足りなかったのよ」
この子は10代で落ちてきた、仕事の相談の仕方を知らないまま大人になりこの世界の生き方も半端になっているのか。
「今はもう十分貯めてますよね?だったら村に拠点移して、その周辺の魔獣駆除でもいいじゃないですか。悩んで見えたギルドから遠い村でギルド派遣の職員としてとかでもいいですし」
「そんなこと……出来るんですか?」
「出来ますよ、現に村で雇われる冒険者や傭兵もいますしこの世界は向こうの世界より実力により個人の融通が利きます」
使える人材は、逃げられる前に使える場所で末永く働いてほしいの利害が一致しているのですんなりと通るだろう。
「うそ……じゃあ私村に帰っても、お金が稼げるの?」
「多少の距離的なラグはあるとは思いますが、ギルドの要請として駐在的立場で給料は発生します。そもそもギルドとしての要望や困りごとがあるかを年一の面談で聞かれたはずですが、そこで相談していただければ同じことを言われたはずですよ」
「だって何の相談すればいいのかも分からないし、 そんなこと誰も教えてくれなかった……」
なんとなく彼女の問題が、どうしてメンタルケアが早急に手配されいたのか分かった気がする。
「ソロでやって見えて、ギルドの出入りも事務手続きのみでしたから周りの人たちがどういった話をされてるかも興味なかったんでしょうね。それ事態は別に私もそれほど人付き合いが得意ではないので良いとは思うんですが、意外と必要な情報って話し好きな人の世間話からだったりその場しのぎの雑談が相談になったりするものなので適当でも会話しとくと知識は増えますよ」
会話で脳が動けば、その場で適当に口にしたものが何かの手掛かりになったりしなかったりするんじゃないかは持論なので自己責任とさせていただきたい。
「私それ、やりたいです」
何か光を見出したかのような彼女と、見えてきた町の城壁が暮れ始めた夕日に照らされる。
鳴り響く夕暮れ時のキンベンの鳴き声。
「そうですか、でしたら先ほど説明した際のご要望を夜勤者へ申し伝えて置きますので諸々の手続きよろしくお願いしますね。私は妹の迎えがあるので、ここで失礼します」
竜と固定していた鞭を彼女単体へと巻き付け、ギルドの建物が見えた頃合いで弾く。
「噓ですよね?!この状況で見捨てますか、普通!」
「見捨ててませんよ、私のケアは貴女をここまで連れてくること。夜勤者への申し伝えは連絡鳥がおりますのでご心配なく」
「普通親身になってくれた貴女が最後まで面倒見るべきでは?!」
「それは業務時間内の話ですね、私本日は日勤なのでこれからは夜勤者の担当です。お急ぎでなければ明日は私有給のためおりませんが、明後日の出勤の際にお話し進めることが可能かと思いますのでどちらでも構いませんよ」
一応は手加減をして投げたがなんなくと受け身と着地を決めキャンキャンと吠える彼女の姿に安心し声をかけふと周りの静けさ、これまでの彼女の姿と違うその様に目を丸くするギルド内の面々。
「仕事とは業務時間内にするものです、それ以上は手当をいただければ時と場合によりますが受け賜ります。しかし今日は妹の初めて魔法が使えた日3周年のお祝いの日なのでこれにて失礼します」
あの調子なら少なくともギルド内の夜勤者で対応できるとみなし、蜥蜴の足早に学術院へと向かう。
「リリーちゃん、今日の届け出だしておいてね~!お疲れ様~」
走る背へと届く声に、こちらも張り上げて返答する。
「後ほど連絡鳥に預けておきます、お疲れ様です」
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