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新たなる仲間たち
22.チロル行き1【挿絵】
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「リンネさ……ちゃん、おはよう」
温かな挨拶で目が覚める。
「もう朝? あ、メルちゃんおはよ! 」
ボクの目の前には、ひらひらが可愛いメイド服を、がっちり着込んだメルちゃんの優しい笑顔がある。そうだ、ボクはもう独りぼっちじゃないんだ!
↑メル(清水翔三様作)
昨日は魔法書や召喚で、思っていた以上に魔力を使い込んだようだ。こんなにぐっすり眠ったのはこの世界に来て初めてだね。でも、1晩寝たお陰でMPも完全回復しているみたいで良かった。
「さぁ、準備しようか」
「一通り終わっています、後は食事と、リンネさ……ちゃんの身支度だけです」
「あ、ホントだ! 」
部屋も綺麗に片付けられていて、今すぐにでも出発できる状態になっている。
「リンネさ……ちゃんの服とローブです。勝手ながら洗濯しておきました。髪を結ぶので、後ろを向いて下さいね」
えっ、洗濯までしてくれたの!?
髪は2つ結びにしてもらった。ポニーテールよりも結び目がやや低め。お下げよりは高いので、ツーサイドアップと言ったところかな。
「綺麗な髪ですね! よくお似合いですよ! 」
「ありがとう! 」
褒められると相変わらず恥ずかしい――。
「では、朝ご飯をいただきましょう。はい、どうぞ。こちらはアイテムボックスに」
「えっ? これって、宿屋の? 」
「はい。今まで食べてなかった分と、今日の分をお弁当にしてもらいました。朝食べる2食と、旅の途中で食べる4食分あります」
うわっ! しっかりしてる! メイドスキル恐るべしだねっ!
「メルちゃん凄い! ありがとう! あと、敬語はなしだよ? ボクを妹だと思ってね! 」
「い、妹ですか? 妹……妹……分かりました、です」
えっと――まぁ、徐々に慣れるでしょ。
朝食を食べ終え、着替えをちゃっちゃと済ませたボクたちは、宿屋の女将アイリスさんに挨拶をして宿屋を出る。
★☆★
暁が町を照らし始めている。神秘的な優しい光が町を包み込み、徐々に目覚めさせていく――。
もうすぐ朝6時を迎えるという頃、町の北門前には既に旅商人と依頼を受けた護衛達の姿があった。
「おはようございます! 同乗をお願いしましたリンネとメルです。遅れてすみません」
「遅ぇよ! 新入りは30分前行動だろ! 」
「おい、止めとけ。美少女は何をしても無罪だ――」
護衛の男たちが定番的な初心者虐めをしてきたかと思ったら、どうやら自然に収まりそうだ。美少女の抑止力? あんまり喜べない。あ、メルちゃん、そんなに睨まないであげて――。
「可愛いお嬢さんたち、俺は今回、護衛のリーダーを任されたリュークだ。28歳独身の槍使い、冒険者ランクはCだ。宜しくな」
「僕は、ランクDのアレルだ。普段は斧を使う。さっきは悪い。あ、18歳独身だ」
「アレル、お前、もっとちゃんと謝れ。おっと、俺はグスタフ、Dランクの剣士だ。アレルの保護者みたいなもんだ。歳か? 歳も言うのか? 31歳――独身だ。この情報必要なのか? 意外と挫折感あるんだが」
そう言いつつ、アレルさんの頭をゴツンと叩いて羞恥心を紛らわせている。別に年齢とか独身かどうかはイラナイんだけど、長旅と必要なのかな? なんで?
「ボクは、リンネと言います。雷の魔法を使えます。Cランクになったばかりで、歳は12歳、独身です――宜しくお願いします」
緊張していた訳じゃないけど、早口で自己紹介をした。
独身と聞いて――いや違う、Cランクと聞いて、護衛の3人がどよめく。棒はメルちゃんにあげたから脱棒使いでいく!
「私はメルです。近接戦闘が専門のFランクです。14歳、独身です――」
メルちゃん、下を向いて恥ずかしそう。もじもじしているところも可愛いなぁ。男共はメイドメイド騒いでる。確かに彼女のひらひらメイド服は目立つ。
「はっはっは! 皆さん集まりましたね? お嬢さん方は、そんなに独身をアピールしなくても大丈夫ですよ!! おっと失礼、私は旅の行商をしているメロスと申します。この度はチロルまでの5日間の護衛、宜しくお願いしますね」
一通りの挨拶が済んだところで、リーダーのリュークさんを囲んで打ち合わせをする。
[メルがパーティに加わった]
[リューク?がパーティに加わった]
[アレルがパーティに加わった]
[グスタフがパーティに加わった]
あれ? 円陣組んでないよ?
もしかしてパーティ組むのって気持ちの問題だったりして?
こういう野良パーティでは明確なルールが必要らしい。メルちゃんも真剣に聴いている。
ルールはこのように決まった。
1.男3人が先頭車、ボクたちはメロスと後続車
2.先頭の馭者は交替制、後続はメルちゃん
3.魔物のドロップ等は後で均等に配分
4.休憩は1日2回、昼と夜にとる
5.休憩中の警護は各馬車ごとに決める
6.どんな場合でもリーダーの指示に従う
ボクたちはそれぞれの馬車に乗り込み、リーダーの掛け声で出発する。いろいろな思い出と共に、フィーネの町を後にした――。
★☆★
「来ます! 」
馭者席のメルちゃんが短く叫ぶ。
町を出てからまだ5分しか経っていない。ボクはまだメロスさんと何を話そうか考えている最中だった――。
「魔物の襲撃? 」
「はい、オークが8頭。街道を塞ぐように待ち伏せしています。距離は――800mくらい先ですね」
「リーダーの指示はない? 」
「先頭車はまだ止まりません、まだオークを見つけていないようですね」
メルちゃんの危険察知スキル、ではなくて単に視力が優れているのかな。ボクの目には点にすら見えないのに、“オークが8頭”だなんて識別してるし――この子凄いよ、ほんとに。
しばらくして先頭車が停車し、リュークさんとグスタフさんがこっちに歩いて来た。
「よう、魔物見えてるか? ありゃ、オークだ。人間を拐う豚野郎だ」
グスタフさんがいかにも嫌なモノを見るように嫌悪感たっぷりにオークの集団を指差す。
「町のこんな近くにまで魔物が出るようになったんですね。皆さん、宜しくお願いしますよ」
メロスさんは心配そう。5日間の行程の最初の10分で魔物と遭遇――先行きに不安を抱くのはしょうがないか。
「俺が指示を出す。いいな? まず、今回は皆の力を確認する良い機会だから、俺は支援に回る。お前たちは1人2頭ずつ退治してこい」
リュークさん、サボりじゃないよね?
まぁ、魔法も試したいし、メルちゃんと棒2号の相性も見たいから、その案はこちらとしても渡りに船かな。
「了解です、メルちゃん行くよ! 」
ボクはアイテムボックスからこっそり杖を取り出し、ふりふりしてみる。うん、良い感じ。性能を確認しておこう。
[鑑定眼!]
[エルダートレントのスタッフ:攻撃:1.50 魔力:3.00]
オークの強さはどうかな?
[鑑定眼!]
種族:オーク(下級戦士)
レベル:9
攻撃:2.80(+2.15)
魔力:1.65
体力:2.30
防御:2.15(+1.90)
敏捷:1.25
器用:0.80
才能:0.65
種族:オーク(下級戦士)
レベル:10
攻撃:2.90(+2.30)
魔力:1.70
体力:2.25
防御:2.35(+2.05)
敏捷:1.60
器用:0.75
才能:0.70
あぁ、なるほどね。普通の人には勝てないレベルだ。メルちゃんなら大丈夫だよね。
先のことを考えて、初級の雷を撃ってみよう。魔力をお腹で練って……手から杖に……よし。あ、魔法名が分かんないや。確か、魔法の効果はイメージに従うって書いてあったよね。無難にいこう。
「サンダーボルト! 」
杖の先端から蒼白い電撃が迸る!
速い!
バリバリバリッ! ズッゴーン!
『ギャウァァァー!! 』
「えっ、これで初級!? 」
ねぇ、ちょっと強過ぎない? 光の速さでピカッと進んで、しかもこの威力! “軽くダメージを与えてマヒ効果付与”くらいを覚悟していたけど、オークさんは1発で黒焦げになって魔結晶に――。
雷魔法って、空に黒い雲が集まってきて、ゴロゴロッドッカーン!って感じだと思っていましたよ。これ、至近距離だと避けられないよね。
ついでに、もう1頭も――。
「サンダーボルト! 」
『グァァァォォォ!! 』
やはり1発で消し炭だ。かなりオーバーキルな予感が漂ってる。よし、魔結晶を回収して見学に回ろっと!
メルちゃん、こっちの世界での初戦闘がオークとか、厳しかったかも――とか、少しばかり心配しだけど、全くの杞憂でした。
素早いステップから、あっという間に間合いを詰めて、棒2号を一閃! 頸骨を砕かれたオークはもんどりうって地面に叩きつけられた。もう1頭も、振り向き様に一閃! 頭蓋を砕かれて即死。
凄い動きだ――はっきり言って、近接戦闘はボク以上に強いのは確定だね。恐るべし、Fラン青髪美少女!
メルちゃんも魔結晶を2つ回収して戻ってきた。ボクは笑顔で、リーダーは苦笑で出迎える。
アレルさんは苦戦していた。
オーク2頭が連携を上手く取り合って、隙をつく作戦を実行している。オークはそこそこ知能あるんだね。
2頭を剣で斬り捨てたグスタフさんが、アレルさんのオークを微妙に牽制し始めた。手を出すつもりはないらしい。
背後を振り返って隙を見せてしまったオークは、アレルさんの右からの袈裟斬りを肩に受けて後退、連携を失ったもう1頭のオークも、アレルさんの渾身の1撃を防ぎ切れず、肺にまで斧が食い込んで即死――。
こうなれば、さすがにDランカー。落ち着いてもう1匹にトドメをさし、魔結晶を回収して駆け足で戻ってきた。だいぶ息が上がってますけどね。
「ご苦労。思っていた以上の実力だ。今後の対応に役立てる。さぁ、出発するぞ! 」
リーダーの強さが不明ですが、Cランクらしいからランゲイル隊長くらい強そうだね。鑑定眼は使わないでおこう、初日から問題を起こしたくないし。
★☆★
「大蛇です! 体長10m以上!! 」
さらに馬車を進めること30分。また魔物の襲撃ですよ。治安が悪いというレベルじゃない。町や村が孤立状態になるのも時間の問題でしょ、これ。
[鑑定眼!]
種族:グレートレッドスネーク
レベル:18
攻撃:6.80
魔力:10.20
体力:10.55
防御:4.70
敏捷:6.35
器用:2.20
才能:0.90
「グレートレッドスネーク! レベル18!! 」
ボクは先頭車に聞こえるように叫ぶ。
「マジかよ!! 」
アレルさんか誰かの動揺した叫び声が返ってくる。
「あいつは毒持ちだ、近付くなよ! リンネ、魔法で弱らせてくれ!! 」
リーダーからの指示がくる。
願ったり叶ったり。だって、パーティで分配されるとはいえ、ボクが倒した場合は取得経験値2倍で分配されるから、2匹倒すのと同じなんだもん。じゃあなんでボクが全部倒さないかって? それはやっぱり、メルちゃんにも戦闘経験を積ませるため!
よし、雷の中級魔法を試してみよう!!
さっきより時間を掛けて魔力をしっかり練る。手から杖に魔力を流す。魔力が杖の先端部分に溜まっていき、ビリビリっと手に痺れが走る。魔力が増幅されているみたいだ。なかなか良い杖だね。
魔法の名前は何でもいいや。雷がズババンッ!って飛んでいくサンダーボルトと同じイメージで撃つけど、ちょっと威力を上げてみよう!
「サンダーストーム! 」
巨大な雷が轟音と共に杖から弾き出される!
辺り一面に激しい閃光が煌めき、思わず眩しさで目を細める。
ドガァァァーン!!!
『――ッ!? 』
大蛇は全身に雷撃を受け、痙攣する暇もなく黒焦げになって崩れ落ち、すぐに魔結晶へと変わる――。
ん? 何か落ちてる?
[鑑定眼!]
[レッドスネークの牙:強い毒性を帯びた素材。武器や毒薬に加工可能]
危ないアイテムだね。一応、回収しておくか。
ボクの魔法で弱った後、突撃しようと身構えていた男性陣は、突撃どころか、腰が引けて下がり始めている。まずい、勇者は力を誇示し過ぎちゃ駄目だった! 実にまずい展開――。
「リンネちゃん、さすがです! 凄い威力でした!! 」
メルちゃんが誉めてくれた。
“ふっふっふ、今のは中級魔法じゃない、初級魔法だ!”って言いたいのは山々だけど、ボクは空気が読める賢者です。
「あれぇー!? まぐれで倒せちゃいました! 」
内股で杖を抱き締めるぶりっ子の仕草――可愛いポーズ付きで繰り出される、最高の笑顔!
「「「……」」」
リーダー、グスタフさん、アレルさんの沈黙が続く――女の武器が不発だったのか、別の理由なのか分からない。
「リンネさん、凄い魔法でしたね! 」
メロスさんだけは目をキラキラさせながら誉めてくれた。うちの馬車内の空気は大丈夫そうです。
★☆★
その後、日が次第に深く傾き始めた頃、街道脇の平地で夜営に入った。
夜営に入るまでに退治した魔物の数は、なんと100匹を超えている。このペース、本当に5日間でチロルに到着できるのだろうか?
食事の後、先頭車も後続者も各々3時間交代で見張りをすることになった。
ちなみに、メロスさんが馬車の中で寝るので、ボクもメルちゃんも外の木陰に毛布を敷いて休む。身体的にオジサンと一緒には寝られない。今のところ、変な目で見られたことはないけど、気を付けなきゃね!
深夜――。
見張りはボクの番。
満天の星を従えて輝く綺麗な満月を見上げる。地球と同じで月が1つしかない世界だけど、兎さんも蟹さんも見当たらない、全くの異世界だと逆に思い知らされる。
ボクの隣から、メルちゃんの静かな寝息が聞こえる。でも、寝ている振りをして、実は起きてるみたい。根っからのメイド精神だね。けど、馭者全部任せてるから休んでほしいのが本音だよ。
「メルちゃん起きてるでしょ。明日以降もあるんだから、今はしっかり寝てね? 」
「でも――誰かがさっきからずっとこっちを見ています。嫌な視線です」
「護衛の人? 」
「そう、です。あっ、立ち上がりました。こっちではなく、森の方に歩いて行ったみたいです」
「トイレじゃない? ボクたちは楽で良いね! 」
「そうですね。こっちには来ないみたいですので、少し寝ておきますね、ありがとうございます。お休みなさい」
ボクが見張りをしている間、襲撃は3度あった。
ゴブリンの襲撃は、ゴブリンキラーの称号のお陰で労せずして回避、当然追撃はしなかった。
次はダークバットの群れ。サンダーレインという雷を雨のように降らせる範囲魔法をイメージして撃ってみたら、群れが1撃で全滅した――雷属性に弱いのかもしれない。
最後に、またオーク。バカの一つ覚えと言われそうだけど、サンダーボルトの餌食。だって、雷の魔法しか使えないんだもん。
メルちゃんが見張りの時にも数回の襲撃があった模様で、朝起きたら毛布の回りに魔結晶の山が作られていた。アイテムボックス大活躍――と言うか、魔物が多過ぎでしょ!
★☆★
2日目。
ボクたちは、日の出と共に再び馬車を走らせた。
相変わらずの魔物の襲撃を駆逐しながら進むと、街道沿いに村が見えてきた。
「村のようですが――何か様子が変です」
メルちゃんが眉を顰め、怪訝な声を上げる。
先頭車の3人も異変に気付いたらしく、馬車を止めてこっちに歩いて来た。
「皆、集まってくれ。村が魔物に襲われたようだ。様子を見に行きたい。メロスさん、許可をくれ」
「分かりました。私としてもこの村には何度かお世話になっているので――」
「感謝する! まだ魔物がいるかもしれない。グスタフさんとアレル、メルとメロスさんは馬車に残って警戒してくれ。俺とリンネで村を見てくる。何かあれば大声を出せ。いいな? 」
メルちゃんは心配そうにこっちを見ている。
でも、大丈夫。笑顔で手を振って村に向かう。
リーダーは村の東から、ボクは西から入って行った――。
★☆★
西部劇さながらの、寂れた町並み――でも、静か過ぎる。人の気配が全くない。
時々吹き荒れる風に、開かれた扉がパタパタ音を立てている。メルちゃんが居れば気配察知で情報収集できるのに。まぁ、リーダーの指示だから仕方がない。
悪いとは思いつつ、いくつかの家に入らせてもらったけど、人も魔物も居なかった。
いくつ目の家だろう。7軒目くらい?
扉を開けて家の中を覗き込んだ瞬間、黒い影が飛んできた――。
「うわっ!? 」
ボクが咄嗟に放った無詠唱サンダーボルトで消滅するオーク。
おっ!? レベルが上がりましたよ!
いや、今はそんなことどうでもいい!!
家の中に、女性が居た!! しかも、まだ生きてる!!
「こっちに人が居る!! 」
夢中で叫んだボクの声を聞き付けて、メルちゃんとリーダーが駆けつけて来た。
「助けにきました! 大丈夫ですか? 」
「あぁ……旅の?……娘が、シオンが浚われたの! お願い、お願いします! た……助けてくだ……さい」
「オークに浚われたんですか!? 」
「盗賊……オーク襲撃の……後……盗賊が……どうか……娘だけでも……シオン……生きて……生きて……ほしい」
「分かりました! 任せてください! 」
「あぁ、良かった――」
女性は乱暴されていた。目が虚ろだった。自分のことよりも娘の心配を――この人、長くは生きられない。だって、両手両足が……もう、見ていられない!
そうだ、エリクサーがある!!
メルちゃんの方を見る。メルちゃんもこっちを見ている。そして、彼女はゆっくり首を振った――。
「残念ですが、手遅れです。この人は血を流し過ぎています。生きる意思もありません――」
これほどの怪我、そして心の傷。いくらエリクサーでも流れ落ちた血は戻らない、心は癒えない。ボクは泣きながら彼女の生を諦めた。だって、既に女性は息をしていなかったから――。
盗賊!! 絶対に許さないぞ!!!
彼女の娘、シオンさんを絶対に救い出す!!
この辺りでは有名な盗賊団だった。総勢20人強。数は多いが、そんなことは関係ない。一応は対話するつもりだよ。だけど、戦う覚悟だってある。
アジトの場所は、リーダーに心当たりがあるらしい。街道から山道を登った先の自然洞窟だそうだ。
話し合いの結果、グスタフさんとメロスさんを馬車に残し、準備ができ次第、リーダー、アレルさん、メルちゃん、ボクの4人でアジトに奇襲を掛けることになった。
今のうちにステータスを弄っておこう。
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:11 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:5.25(+1.50)
魔力:12.70(+3.00)
体力:4.50
防御:4.50(+4.80)
敏捷:4.15
器用:2.25
才能:3.00(ステータスポイント0)
メルちゃんのステータスを見ると凹むんだよね。だから、体力と防御に割り振った。
「メルちゃん、鑑定眼でステータス観てもいい? 」
「どうぞ? 」
[鑑定眼!]
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:3 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:9.60(+4.50)
魔力:9.30
体力:6.85
防御:5.25
敏捷:8.05
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント2.0)
「レベル3になってる! ありゃ? ステータスポイントが振られてないね? もしかして知らなかったりする? 」
「ステータス、自分でも観れるんですか? 」
「あぁ~! ごめん、説明し忘れた――頭の中でステータス見たいって念じてみるの。変な画面っぽいのが頭に浮かんだら、余りのステータスポイントを好きなところに割り振ってみて」
「あっ、観れました! ステータスポイントを割り振る――はい、防御に2入れておきました! 」
確かに、メルちゃんみたいな近接戦闘職にとっては防御は重要だよね!
「よし、行こう! 」
心も身体も準備完了、人命救助は急がねば! 盗賊団のアジトに攻めこみます!!
温かな挨拶で目が覚める。
「もう朝? あ、メルちゃんおはよ! 」
ボクの目の前には、ひらひらが可愛いメイド服を、がっちり着込んだメルちゃんの優しい笑顔がある。そうだ、ボクはもう独りぼっちじゃないんだ!
↑メル(清水翔三様作)
昨日は魔法書や召喚で、思っていた以上に魔力を使い込んだようだ。こんなにぐっすり眠ったのはこの世界に来て初めてだね。でも、1晩寝たお陰でMPも完全回復しているみたいで良かった。
「さぁ、準備しようか」
「一通り終わっています、後は食事と、リンネさ……ちゃんの身支度だけです」
「あ、ホントだ! 」
部屋も綺麗に片付けられていて、今すぐにでも出発できる状態になっている。
「リンネさ……ちゃんの服とローブです。勝手ながら洗濯しておきました。髪を結ぶので、後ろを向いて下さいね」
えっ、洗濯までしてくれたの!?
髪は2つ結びにしてもらった。ポニーテールよりも結び目がやや低め。お下げよりは高いので、ツーサイドアップと言ったところかな。
「綺麗な髪ですね! よくお似合いですよ! 」
「ありがとう! 」
褒められると相変わらず恥ずかしい――。
「では、朝ご飯をいただきましょう。はい、どうぞ。こちらはアイテムボックスに」
「えっ? これって、宿屋の? 」
「はい。今まで食べてなかった分と、今日の分をお弁当にしてもらいました。朝食べる2食と、旅の途中で食べる4食分あります」
うわっ! しっかりしてる! メイドスキル恐るべしだねっ!
「メルちゃん凄い! ありがとう! あと、敬語はなしだよ? ボクを妹だと思ってね! 」
「い、妹ですか? 妹……妹……分かりました、です」
えっと――まぁ、徐々に慣れるでしょ。
朝食を食べ終え、着替えをちゃっちゃと済ませたボクたちは、宿屋の女将アイリスさんに挨拶をして宿屋を出る。
★☆★
暁が町を照らし始めている。神秘的な優しい光が町を包み込み、徐々に目覚めさせていく――。
もうすぐ朝6時を迎えるという頃、町の北門前には既に旅商人と依頼を受けた護衛達の姿があった。
「おはようございます! 同乗をお願いしましたリンネとメルです。遅れてすみません」
「遅ぇよ! 新入りは30分前行動だろ! 」
「おい、止めとけ。美少女は何をしても無罪だ――」
護衛の男たちが定番的な初心者虐めをしてきたかと思ったら、どうやら自然に収まりそうだ。美少女の抑止力? あんまり喜べない。あ、メルちゃん、そんなに睨まないであげて――。
「可愛いお嬢さんたち、俺は今回、護衛のリーダーを任されたリュークだ。28歳独身の槍使い、冒険者ランクはCだ。宜しくな」
「僕は、ランクDのアレルだ。普段は斧を使う。さっきは悪い。あ、18歳独身だ」
「アレル、お前、もっとちゃんと謝れ。おっと、俺はグスタフ、Dランクの剣士だ。アレルの保護者みたいなもんだ。歳か? 歳も言うのか? 31歳――独身だ。この情報必要なのか? 意外と挫折感あるんだが」
そう言いつつ、アレルさんの頭をゴツンと叩いて羞恥心を紛らわせている。別に年齢とか独身かどうかはイラナイんだけど、長旅と必要なのかな? なんで?
「ボクは、リンネと言います。雷の魔法を使えます。Cランクになったばかりで、歳は12歳、独身です――宜しくお願いします」
緊張していた訳じゃないけど、早口で自己紹介をした。
独身と聞いて――いや違う、Cランクと聞いて、護衛の3人がどよめく。棒はメルちゃんにあげたから脱棒使いでいく!
「私はメルです。近接戦闘が専門のFランクです。14歳、独身です――」
メルちゃん、下を向いて恥ずかしそう。もじもじしているところも可愛いなぁ。男共はメイドメイド騒いでる。確かに彼女のひらひらメイド服は目立つ。
「はっはっは! 皆さん集まりましたね? お嬢さん方は、そんなに独身をアピールしなくても大丈夫ですよ!! おっと失礼、私は旅の行商をしているメロスと申します。この度はチロルまでの5日間の護衛、宜しくお願いしますね」
一通りの挨拶が済んだところで、リーダーのリュークさんを囲んで打ち合わせをする。
[メルがパーティに加わった]
[リューク?がパーティに加わった]
[アレルがパーティに加わった]
[グスタフがパーティに加わった]
あれ? 円陣組んでないよ?
もしかしてパーティ組むのって気持ちの問題だったりして?
こういう野良パーティでは明確なルールが必要らしい。メルちゃんも真剣に聴いている。
ルールはこのように決まった。
1.男3人が先頭車、ボクたちはメロスと後続車
2.先頭の馭者は交替制、後続はメルちゃん
3.魔物のドロップ等は後で均等に配分
4.休憩は1日2回、昼と夜にとる
5.休憩中の警護は各馬車ごとに決める
6.どんな場合でもリーダーの指示に従う
ボクたちはそれぞれの馬車に乗り込み、リーダーの掛け声で出発する。いろいろな思い出と共に、フィーネの町を後にした――。
★☆★
「来ます! 」
馭者席のメルちゃんが短く叫ぶ。
町を出てからまだ5分しか経っていない。ボクはまだメロスさんと何を話そうか考えている最中だった――。
「魔物の襲撃? 」
「はい、オークが8頭。街道を塞ぐように待ち伏せしています。距離は――800mくらい先ですね」
「リーダーの指示はない? 」
「先頭車はまだ止まりません、まだオークを見つけていないようですね」
メルちゃんの危険察知スキル、ではなくて単に視力が優れているのかな。ボクの目には点にすら見えないのに、“オークが8頭”だなんて識別してるし――この子凄いよ、ほんとに。
しばらくして先頭車が停車し、リュークさんとグスタフさんがこっちに歩いて来た。
「よう、魔物見えてるか? ありゃ、オークだ。人間を拐う豚野郎だ」
グスタフさんがいかにも嫌なモノを見るように嫌悪感たっぷりにオークの集団を指差す。
「町のこんな近くにまで魔物が出るようになったんですね。皆さん、宜しくお願いしますよ」
メロスさんは心配そう。5日間の行程の最初の10分で魔物と遭遇――先行きに不安を抱くのはしょうがないか。
「俺が指示を出す。いいな? まず、今回は皆の力を確認する良い機会だから、俺は支援に回る。お前たちは1人2頭ずつ退治してこい」
リュークさん、サボりじゃないよね?
まぁ、魔法も試したいし、メルちゃんと棒2号の相性も見たいから、その案はこちらとしても渡りに船かな。
「了解です、メルちゃん行くよ! 」
ボクはアイテムボックスからこっそり杖を取り出し、ふりふりしてみる。うん、良い感じ。性能を確認しておこう。
[鑑定眼!]
[エルダートレントのスタッフ:攻撃:1.50 魔力:3.00]
オークの強さはどうかな?
[鑑定眼!]
種族:オーク(下級戦士)
レベル:9
攻撃:2.80(+2.15)
魔力:1.65
体力:2.30
防御:2.15(+1.90)
敏捷:1.25
器用:0.80
才能:0.65
種族:オーク(下級戦士)
レベル:10
攻撃:2.90(+2.30)
魔力:1.70
体力:2.25
防御:2.35(+2.05)
敏捷:1.60
器用:0.75
才能:0.70
あぁ、なるほどね。普通の人には勝てないレベルだ。メルちゃんなら大丈夫だよね。
先のことを考えて、初級の雷を撃ってみよう。魔力をお腹で練って……手から杖に……よし。あ、魔法名が分かんないや。確か、魔法の効果はイメージに従うって書いてあったよね。無難にいこう。
「サンダーボルト! 」
杖の先端から蒼白い電撃が迸る!
速い!
バリバリバリッ! ズッゴーン!
『ギャウァァァー!! 』
「えっ、これで初級!? 」
ねぇ、ちょっと強過ぎない? 光の速さでピカッと進んで、しかもこの威力! “軽くダメージを与えてマヒ効果付与”くらいを覚悟していたけど、オークさんは1発で黒焦げになって魔結晶に――。
雷魔法って、空に黒い雲が集まってきて、ゴロゴロッドッカーン!って感じだと思っていましたよ。これ、至近距離だと避けられないよね。
ついでに、もう1頭も――。
「サンダーボルト! 」
『グァァァォォォ!! 』
やはり1発で消し炭だ。かなりオーバーキルな予感が漂ってる。よし、魔結晶を回収して見学に回ろっと!
メルちゃん、こっちの世界での初戦闘がオークとか、厳しかったかも――とか、少しばかり心配しだけど、全くの杞憂でした。
素早いステップから、あっという間に間合いを詰めて、棒2号を一閃! 頸骨を砕かれたオークはもんどりうって地面に叩きつけられた。もう1頭も、振り向き様に一閃! 頭蓋を砕かれて即死。
凄い動きだ――はっきり言って、近接戦闘はボク以上に強いのは確定だね。恐るべし、Fラン青髪美少女!
メルちゃんも魔結晶を2つ回収して戻ってきた。ボクは笑顔で、リーダーは苦笑で出迎える。
アレルさんは苦戦していた。
オーク2頭が連携を上手く取り合って、隙をつく作戦を実行している。オークはそこそこ知能あるんだね。
2頭を剣で斬り捨てたグスタフさんが、アレルさんのオークを微妙に牽制し始めた。手を出すつもりはないらしい。
背後を振り返って隙を見せてしまったオークは、アレルさんの右からの袈裟斬りを肩に受けて後退、連携を失ったもう1頭のオークも、アレルさんの渾身の1撃を防ぎ切れず、肺にまで斧が食い込んで即死――。
こうなれば、さすがにDランカー。落ち着いてもう1匹にトドメをさし、魔結晶を回収して駆け足で戻ってきた。だいぶ息が上がってますけどね。
「ご苦労。思っていた以上の実力だ。今後の対応に役立てる。さぁ、出発するぞ! 」
リーダーの強さが不明ですが、Cランクらしいからランゲイル隊長くらい強そうだね。鑑定眼は使わないでおこう、初日から問題を起こしたくないし。
★☆★
「大蛇です! 体長10m以上!! 」
さらに馬車を進めること30分。また魔物の襲撃ですよ。治安が悪いというレベルじゃない。町や村が孤立状態になるのも時間の問題でしょ、これ。
[鑑定眼!]
種族:グレートレッドスネーク
レベル:18
攻撃:6.80
魔力:10.20
体力:10.55
防御:4.70
敏捷:6.35
器用:2.20
才能:0.90
「グレートレッドスネーク! レベル18!! 」
ボクは先頭車に聞こえるように叫ぶ。
「マジかよ!! 」
アレルさんか誰かの動揺した叫び声が返ってくる。
「あいつは毒持ちだ、近付くなよ! リンネ、魔法で弱らせてくれ!! 」
リーダーからの指示がくる。
願ったり叶ったり。だって、パーティで分配されるとはいえ、ボクが倒した場合は取得経験値2倍で分配されるから、2匹倒すのと同じなんだもん。じゃあなんでボクが全部倒さないかって? それはやっぱり、メルちゃんにも戦闘経験を積ませるため!
よし、雷の中級魔法を試してみよう!!
さっきより時間を掛けて魔力をしっかり練る。手から杖に魔力を流す。魔力が杖の先端部分に溜まっていき、ビリビリっと手に痺れが走る。魔力が増幅されているみたいだ。なかなか良い杖だね。
魔法の名前は何でもいいや。雷がズババンッ!って飛んでいくサンダーボルトと同じイメージで撃つけど、ちょっと威力を上げてみよう!
「サンダーストーム! 」
巨大な雷が轟音と共に杖から弾き出される!
辺り一面に激しい閃光が煌めき、思わず眩しさで目を細める。
ドガァァァーン!!!
『――ッ!? 』
大蛇は全身に雷撃を受け、痙攣する暇もなく黒焦げになって崩れ落ち、すぐに魔結晶へと変わる――。
ん? 何か落ちてる?
[鑑定眼!]
[レッドスネークの牙:強い毒性を帯びた素材。武器や毒薬に加工可能]
危ないアイテムだね。一応、回収しておくか。
ボクの魔法で弱った後、突撃しようと身構えていた男性陣は、突撃どころか、腰が引けて下がり始めている。まずい、勇者は力を誇示し過ぎちゃ駄目だった! 実にまずい展開――。
「リンネちゃん、さすがです! 凄い威力でした!! 」
メルちゃんが誉めてくれた。
“ふっふっふ、今のは中級魔法じゃない、初級魔法だ!”って言いたいのは山々だけど、ボクは空気が読める賢者です。
「あれぇー!? まぐれで倒せちゃいました! 」
内股で杖を抱き締めるぶりっ子の仕草――可愛いポーズ付きで繰り出される、最高の笑顔!
「「「……」」」
リーダー、グスタフさん、アレルさんの沈黙が続く――女の武器が不発だったのか、別の理由なのか分からない。
「リンネさん、凄い魔法でしたね! 」
メロスさんだけは目をキラキラさせながら誉めてくれた。うちの馬車内の空気は大丈夫そうです。
★☆★
その後、日が次第に深く傾き始めた頃、街道脇の平地で夜営に入った。
夜営に入るまでに退治した魔物の数は、なんと100匹を超えている。このペース、本当に5日間でチロルに到着できるのだろうか?
食事の後、先頭車も後続者も各々3時間交代で見張りをすることになった。
ちなみに、メロスさんが馬車の中で寝るので、ボクもメルちゃんも外の木陰に毛布を敷いて休む。身体的にオジサンと一緒には寝られない。今のところ、変な目で見られたことはないけど、気を付けなきゃね!
深夜――。
見張りはボクの番。
満天の星を従えて輝く綺麗な満月を見上げる。地球と同じで月が1つしかない世界だけど、兎さんも蟹さんも見当たらない、全くの異世界だと逆に思い知らされる。
ボクの隣から、メルちゃんの静かな寝息が聞こえる。でも、寝ている振りをして、実は起きてるみたい。根っからのメイド精神だね。けど、馭者全部任せてるから休んでほしいのが本音だよ。
「メルちゃん起きてるでしょ。明日以降もあるんだから、今はしっかり寝てね? 」
「でも――誰かがさっきからずっとこっちを見ています。嫌な視線です」
「護衛の人? 」
「そう、です。あっ、立ち上がりました。こっちではなく、森の方に歩いて行ったみたいです」
「トイレじゃない? ボクたちは楽で良いね! 」
「そうですね。こっちには来ないみたいですので、少し寝ておきますね、ありがとうございます。お休みなさい」
ボクが見張りをしている間、襲撃は3度あった。
ゴブリンの襲撃は、ゴブリンキラーの称号のお陰で労せずして回避、当然追撃はしなかった。
次はダークバットの群れ。サンダーレインという雷を雨のように降らせる範囲魔法をイメージして撃ってみたら、群れが1撃で全滅した――雷属性に弱いのかもしれない。
最後に、またオーク。バカの一つ覚えと言われそうだけど、サンダーボルトの餌食。だって、雷の魔法しか使えないんだもん。
メルちゃんが見張りの時にも数回の襲撃があった模様で、朝起きたら毛布の回りに魔結晶の山が作られていた。アイテムボックス大活躍――と言うか、魔物が多過ぎでしょ!
★☆★
2日目。
ボクたちは、日の出と共に再び馬車を走らせた。
相変わらずの魔物の襲撃を駆逐しながら進むと、街道沿いに村が見えてきた。
「村のようですが――何か様子が変です」
メルちゃんが眉を顰め、怪訝な声を上げる。
先頭車の3人も異変に気付いたらしく、馬車を止めてこっちに歩いて来た。
「皆、集まってくれ。村が魔物に襲われたようだ。様子を見に行きたい。メロスさん、許可をくれ」
「分かりました。私としてもこの村には何度かお世話になっているので――」
「感謝する! まだ魔物がいるかもしれない。グスタフさんとアレル、メルとメロスさんは馬車に残って警戒してくれ。俺とリンネで村を見てくる。何かあれば大声を出せ。いいな? 」
メルちゃんは心配そうにこっちを見ている。
でも、大丈夫。笑顔で手を振って村に向かう。
リーダーは村の東から、ボクは西から入って行った――。
★☆★
西部劇さながらの、寂れた町並み――でも、静か過ぎる。人の気配が全くない。
時々吹き荒れる風に、開かれた扉がパタパタ音を立てている。メルちゃんが居れば気配察知で情報収集できるのに。まぁ、リーダーの指示だから仕方がない。
悪いとは思いつつ、いくつかの家に入らせてもらったけど、人も魔物も居なかった。
いくつ目の家だろう。7軒目くらい?
扉を開けて家の中を覗き込んだ瞬間、黒い影が飛んできた――。
「うわっ!? 」
ボクが咄嗟に放った無詠唱サンダーボルトで消滅するオーク。
おっ!? レベルが上がりましたよ!
いや、今はそんなことどうでもいい!!
家の中に、女性が居た!! しかも、まだ生きてる!!
「こっちに人が居る!! 」
夢中で叫んだボクの声を聞き付けて、メルちゃんとリーダーが駆けつけて来た。
「助けにきました! 大丈夫ですか? 」
「あぁ……旅の?……娘が、シオンが浚われたの! お願い、お願いします! た……助けてくだ……さい」
「オークに浚われたんですか!? 」
「盗賊……オーク襲撃の……後……盗賊が……どうか……娘だけでも……シオン……生きて……生きて……ほしい」
「分かりました! 任せてください! 」
「あぁ、良かった――」
女性は乱暴されていた。目が虚ろだった。自分のことよりも娘の心配を――この人、長くは生きられない。だって、両手両足が……もう、見ていられない!
そうだ、エリクサーがある!!
メルちゃんの方を見る。メルちゃんもこっちを見ている。そして、彼女はゆっくり首を振った――。
「残念ですが、手遅れです。この人は血を流し過ぎています。生きる意思もありません――」
これほどの怪我、そして心の傷。いくらエリクサーでも流れ落ちた血は戻らない、心は癒えない。ボクは泣きながら彼女の生を諦めた。だって、既に女性は息をしていなかったから――。
盗賊!! 絶対に許さないぞ!!!
彼女の娘、シオンさんを絶対に救い出す!!
この辺りでは有名な盗賊団だった。総勢20人強。数は多いが、そんなことは関係ない。一応は対話するつもりだよ。だけど、戦う覚悟だってある。
アジトの場所は、リーダーに心当たりがあるらしい。街道から山道を登った先の自然洞窟だそうだ。
話し合いの結果、グスタフさんとメロスさんを馬車に残し、準備ができ次第、リーダー、アレルさん、メルちゃん、ボクの4人でアジトに奇襲を掛けることになった。
今のうちにステータスを弄っておこう。
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:11 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:5.25(+1.50)
魔力:12.70(+3.00)
体力:4.50
防御:4.50(+4.80)
敏捷:4.15
器用:2.25
才能:3.00(ステータスポイント0)
メルちゃんのステータスを見ると凹むんだよね。だから、体力と防御に割り振った。
「メルちゃん、鑑定眼でステータス観てもいい? 」
「どうぞ? 」
[鑑定眼!]
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:3 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:9.60(+4.50)
魔力:9.30
体力:6.85
防御:5.25
敏捷:8.05
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント2.0)
「レベル3になってる! ありゃ? ステータスポイントが振られてないね? もしかして知らなかったりする? 」
「ステータス、自分でも観れるんですか? 」
「あぁ~! ごめん、説明し忘れた――頭の中でステータス見たいって念じてみるの。変な画面っぽいのが頭に浮かんだら、余りのステータスポイントを好きなところに割り振ってみて」
「あっ、観れました! ステータスポイントを割り振る――はい、防御に2入れておきました! 」
確かに、メルちゃんみたいな近接戦闘職にとっては防御は重要だよね!
「よし、行こう! 」
心も身体も準備完了、人命救助は急がねば! 盗賊団のアジトに攻めこみます!!
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