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激動のロンダルシア大陸
56.南へ
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「レオン王子、あなたには3つの道がある。
アルン国王として国を纏めるか、王子としてフリージアへ亡命するか、もしくは一市民として生きていくか。よくお考えください」
『俺が選ぶのは第4の道、勇者リンネと歩むラブラブ新婚生活の道だ!』
「絶対に嫌です」
『では、頼む!俺を下僕にしてくれ!なんなら性奴隷になっても構わない!』
あっ……レオン王子が皆に運ばれていった。
廊下から殴打音と悲鳴が聞こえてくる。まぁ、彼は自分の運命を自分で切り開くでしょ。生きてさえいれば……。
「リンネさん、一旦フリージア王都に戻りましょう」
アイちゃんの一言で我に返ったボク達は、この場を市長さんに任せて転移で帰還した。既にボクの43日目は終わりを告げようとしていた。
★☆★
朝早く、ボクは1人で王宮に転移した。ミルフェちゃんに会うために。
「リンネちゃん!おかえりなさい!!」
「ミルフェちゃん……国王、ただいま戻りました。レオン王子にお手紙を……」
「うん、使い魔の目で全部見てたから大丈夫よ!グスカのことも、アルン王都の惨状も、ニューアルンの暴動も。本当にお疲れ様!」
「以前も聞いたけど、使い魔って……?」
「うふふっ、やっぱり気付いていないのね!メルちゃんは気付いていたけど。ミール、おいで!」
あれ?
ボクの髪がバサッとほどけて肩にかかる。
メルちゃんに結んでもらったポニテが……。
ラピスラズリを彷彿とさせる色のゴム紐が宙を舞う。やがてそれは目の覚めるような鮮やかな青色の蝶の姿となり、ミルフェちゃんの手のひらに止まる。
「あっ……」
そうか。あれはボクがミルフェちゃんに初めて会った日、馬車の中で結んでもらったときの紐。お気に入りだったから、髪を結んでいないときも手首に巻いていた。油断も隙もないね!
「隠しててごめんなさい。でも、リンネちゃんが心配だったから」
「ううん、大丈夫!でも、それ返してね!すご~く気に入ってるんだからね!」
「うん!リンネちゃん、大好きっ!!」
その後、2人で今後のことを話し合った。
南の新興国に召喚石があるという情報を入手したそうだ。そうすると残り2個の召喚石はアルン国内にある公算が高い。アルン王国の統治も心配だけど、まずは召喚石探しが最優先ということになった。魔王復活まであと46日。余裕なんてない!
★☆★
朝9時、食事を済ませたボク達はエンジェルウイング本部の会議室に集まった。闇魔法上級はメルちゃんが習得した。嬉しそうだけど笑顔がなんだか怖い。そこはさすがに闇魔法。
ダフさんは鍛冶スキルが上級になったらしい。ドラゴンの魂シリーズを使っての装備作成に入るんだとか。なんか凄い。
マールさん達は王都の奴隷解放を終え、ギルドを通じてティルス支部とも連携をとりながら、エンジェルウイングの組織作りを始めているとのことだ。順調。
ランディールに向かったエルフのアディさんも順調らしい。ウィズがアディさんやリリィちゃんに手を出さないかが心配なんだけど、杞憂だった。
各班の進捗を確認したあと、今は今後のことを話し合っている。ミルフェちゃんの言う通り、最優先事項は召喚石の探索だ。皆の意見をアイちゃんがまとめてくれた。
「それでは、エンジェルウイングのメンバーは引き続き今まで通りの任務に就いてもらい、わたし達6人は再びニューアルンへと向かいます。
リンネさんはクルンちゃんと南の新興国へ、メルさんとアユナちゃんは北方面を、わたしとレンさんでアルン王国の立て直しをするということに決まりました」
そう、ボク達6人は2人ずつ3チームに分かれて行動することになった。
アイちゃんは、念話による情報提供と共有を図りながら、密かに大陸統一を見据えた統治システムの構築に動く。護衛兼サポート役として日本出身のレンちゃんがニューアルンに残る。
他の4人は戦力や移動能力を加味して、ボクとクルンちゃん、メルちゃんとアユナちゃんに分かれた。嬉しいことに、皆がボクと組みたがってくれた。でも、アイちゃんが合理的に判断した結果なので我慢してね。
「では、改めて。ボクとクルンちゃんは南の新興国へスカイに乗って向かうよ。メルちゃん達は、ニューアルンに置いてきた馬車で北にある祠と塔、及び大森林の探索をお願い。無理はしないでね!
召喚石はあと3個。多分、アルン国内に2つある!目標は10日以内に見つけること。1つずつ頑張ろう!」
「分かりました」
『分かったよっ!』
★☆★
ボク達は、転移でニューアルンまで飛んだ。やっと皆に会えたのに、またバラバラに分かれて行動することになる。
勿論、寂しさはある。でも、目的も気持ちも一緒だと思うと、寂しさよりも責任だとか信頼という感情の方が強く湧いてくる。
「スカイ!よろしく!」
ボクはスカイを召喚し、その背にクルンちゃんと一緒に跨がる。南の新興国……確か、3年前に建国された国。何かの宗教が基礎にある宗教国家らしい。邪神教とかじゃないよね?実はちょっと怖い。
「リンネさん、あの山の方向に1日飛べば着くと思います。召喚石を入手出来たらすぐに戻ってくださいね!」
アイちゃんが指差す方角には、頂に雪を纏った高い山が見える。富士山よりずっと高くて険しい。皆が竜の山と呼ぶ、霊峰ヴァルムホルンだ。
あれを越えるのは危険だし、無理でしょ。まさかあそこに召喚石はないよね……今回は迂回しよう、そうしよう。
「それでは皆さん、変なおじさんに気を付けて頑張りましょう!」
「「『「「はいっ!!」」』」」
★☆★
アイちゃんからは事前に情報を得ている。
南の新興国……まだ正式な国名すらないらしいその国の国土は、フリージア王国の30分の1しかない。人口はおよそ20万人。首都機能を有する聖都に集中しているそうだ。
スカイは霊峰ヴァルムホルンを避けて飛んだ。ボクの指示通りなんだけど、あからさまに怯えた表情を見せていた。あの山には何かありそうだ。それも、ドラゴン達の故郷のような穏やかな場所ではないだろう。
ボク達は、翌日の昼過ぎに目的地に到着した。
南の新興国の聖都ムーンライトだ。月光か……。陽光が降り注ぐ中、白亜の神殿は負けず劣らず淡い光に包まれていた。何かの結界だろうか、それとも加護だろうか。
聖都に迂回して近づき、城壁の外にスカイを降ろさせると、ボク達は徒歩で向かう。余計な警戒を抱かせたくはない。
城門には衛兵達が、いや神官達がいた。ボク達を見る目が驚きに満ちている。スカイを見られた?それとも一目惚れ?しばらく形式的な身元調査が行われたが、一切身体に触れられることは無かった。
「意外と厚待遇なのかな?」
「リンネちゃん様がいるからです。オーラが違います。可愛いです」
「いや、クルンちゃんの方が可愛いから!あっ、誰か来たよ」
ゴミ箱を被った人が走り寄ってくる。あれ、ゴミ箱じゃなくて帽子だ。枢機卿的な偉い方が被る帽子だ。やはり厚待遇。
緊張する彼の後ろを、ボク達はきょろきょろ辺りを見渡しながら付いていく。建物も、石畳も、服も、馬さえも白い。遠近感がつかめなくなる程の違和感を感じる。
やがて、神殿の礼拝堂らしき場所に通される。
そこには、純白の法衣を纏った人々が大勢いた。そして、その中でも一際きらびやかな刺繍がされた法衣を纏った男性が近づいてくる。
ボク達の、いや、正確にはクルンちゃんの前に立ち、静かに両膝をつく。涙と鼻水を惜しげもなく垂らしながら、男性は床に平伏して叫んだ。
『お待ちしておりました、白様。どうか我らを御導きください!そして、我らが悲願、ロンダルシア大陸統一に御力を御貸しください!』
アルン国王として国を纏めるか、王子としてフリージアへ亡命するか、もしくは一市民として生きていくか。よくお考えください」
『俺が選ぶのは第4の道、勇者リンネと歩むラブラブ新婚生活の道だ!』
「絶対に嫌です」
『では、頼む!俺を下僕にしてくれ!なんなら性奴隷になっても構わない!』
あっ……レオン王子が皆に運ばれていった。
廊下から殴打音と悲鳴が聞こえてくる。まぁ、彼は自分の運命を自分で切り開くでしょ。生きてさえいれば……。
「リンネさん、一旦フリージア王都に戻りましょう」
アイちゃんの一言で我に返ったボク達は、この場を市長さんに任せて転移で帰還した。既にボクの43日目は終わりを告げようとしていた。
★☆★
朝早く、ボクは1人で王宮に転移した。ミルフェちゃんに会うために。
「リンネちゃん!おかえりなさい!!」
「ミルフェちゃん……国王、ただいま戻りました。レオン王子にお手紙を……」
「うん、使い魔の目で全部見てたから大丈夫よ!グスカのことも、アルン王都の惨状も、ニューアルンの暴動も。本当にお疲れ様!」
「以前も聞いたけど、使い魔って……?」
「うふふっ、やっぱり気付いていないのね!メルちゃんは気付いていたけど。ミール、おいで!」
あれ?
ボクの髪がバサッとほどけて肩にかかる。
メルちゃんに結んでもらったポニテが……。
ラピスラズリを彷彿とさせる色のゴム紐が宙を舞う。やがてそれは目の覚めるような鮮やかな青色の蝶の姿となり、ミルフェちゃんの手のひらに止まる。
「あっ……」
そうか。あれはボクがミルフェちゃんに初めて会った日、馬車の中で結んでもらったときの紐。お気に入りだったから、髪を結んでいないときも手首に巻いていた。油断も隙もないね!
「隠しててごめんなさい。でも、リンネちゃんが心配だったから」
「ううん、大丈夫!でも、それ返してね!すご~く気に入ってるんだからね!」
「うん!リンネちゃん、大好きっ!!」
その後、2人で今後のことを話し合った。
南の新興国に召喚石があるという情報を入手したそうだ。そうすると残り2個の召喚石はアルン国内にある公算が高い。アルン王国の統治も心配だけど、まずは召喚石探しが最優先ということになった。魔王復活まであと46日。余裕なんてない!
★☆★
朝9時、食事を済ませたボク達はエンジェルウイング本部の会議室に集まった。闇魔法上級はメルちゃんが習得した。嬉しそうだけど笑顔がなんだか怖い。そこはさすがに闇魔法。
ダフさんは鍛冶スキルが上級になったらしい。ドラゴンの魂シリーズを使っての装備作成に入るんだとか。なんか凄い。
マールさん達は王都の奴隷解放を終え、ギルドを通じてティルス支部とも連携をとりながら、エンジェルウイングの組織作りを始めているとのことだ。順調。
ランディールに向かったエルフのアディさんも順調らしい。ウィズがアディさんやリリィちゃんに手を出さないかが心配なんだけど、杞憂だった。
各班の進捗を確認したあと、今は今後のことを話し合っている。ミルフェちゃんの言う通り、最優先事項は召喚石の探索だ。皆の意見をアイちゃんがまとめてくれた。
「それでは、エンジェルウイングのメンバーは引き続き今まで通りの任務に就いてもらい、わたし達6人は再びニューアルンへと向かいます。
リンネさんはクルンちゃんと南の新興国へ、メルさんとアユナちゃんは北方面を、わたしとレンさんでアルン王国の立て直しをするということに決まりました」
そう、ボク達6人は2人ずつ3チームに分かれて行動することになった。
アイちゃんは、念話による情報提供と共有を図りながら、密かに大陸統一を見据えた統治システムの構築に動く。護衛兼サポート役として日本出身のレンちゃんがニューアルンに残る。
他の4人は戦力や移動能力を加味して、ボクとクルンちゃん、メルちゃんとアユナちゃんに分かれた。嬉しいことに、皆がボクと組みたがってくれた。でも、アイちゃんが合理的に判断した結果なので我慢してね。
「では、改めて。ボクとクルンちゃんは南の新興国へスカイに乗って向かうよ。メルちゃん達は、ニューアルンに置いてきた馬車で北にある祠と塔、及び大森林の探索をお願い。無理はしないでね!
召喚石はあと3個。多分、アルン国内に2つある!目標は10日以内に見つけること。1つずつ頑張ろう!」
「分かりました」
『分かったよっ!』
★☆★
ボク達は、転移でニューアルンまで飛んだ。やっと皆に会えたのに、またバラバラに分かれて行動することになる。
勿論、寂しさはある。でも、目的も気持ちも一緒だと思うと、寂しさよりも責任だとか信頼という感情の方が強く湧いてくる。
「スカイ!よろしく!」
ボクはスカイを召喚し、その背にクルンちゃんと一緒に跨がる。南の新興国……確か、3年前に建国された国。何かの宗教が基礎にある宗教国家らしい。邪神教とかじゃないよね?実はちょっと怖い。
「リンネさん、あの山の方向に1日飛べば着くと思います。召喚石を入手出来たらすぐに戻ってくださいね!」
アイちゃんが指差す方角には、頂に雪を纏った高い山が見える。富士山よりずっと高くて険しい。皆が竜の山と呼ぶ、霊峰ヴァルムホルンだ。
あれを越えるのは危険だし、無理でしょ。まさかあそこに召喚石はないよね……今回は迂回しよう、そうしよう。
「それでは皆さん、変なおじさんに気を付けて頑張りましょう!」
「「『「「はいっ!!」」』」」
★☆★
アイちゃんからは事前に情報を得ている。
南の新興国……まだ正式な国名すらないらしいその国の国土は、フリージア王国の30分の1しかない。人口はおよそ20万人。首都機能を有する聖都に集中しているそうだ。
スカイは霊峰ヴァルムホルンを避けて飛んだ。ボクの指示通りなんだけど、あからさまに怯えた表情を見せていた。あの山には何かありそうだ。それも、ドラゴン達の故郷のような穏やかな場所ではないだろう。
ボク達は、翌日の昼過ぎに目的地に到着した。
南の新興国の聖都ムーンライトだ。月光か……。陽光が降り注ぐ中、白亜の神殿は負けず劣らず淡い光に包まれていた。何かの結界だろうか、それとも加護だろうか。
聖都に迂回して近づき、城壁の外にスカイを降ろさせると、ボク達は徒歩で向かう。余計な警戒を抱かせたくはない。
城門には衛兵達が、いや神官達がいた。ボク達を見る目が驚きに満ちている。スカイを見られた?それとも一目惚れ?しばらく形式的な身元調査が行われたが、一切身体に触れられることは無かった。
「意外と厚待遇なのかな?」
「リンネちゃん様がいるからです。オーラが違います。可愛いです」
「いや、クルンちゃんの方が可愛いから!あっ、誰か来たよ」
ゴミ箱を被った人が走り寄ってくる。あれ、ゴミ箱じゃなくて帽子だ。枢機卿的な偉い方が被る帽子だ。やはり厚待遇。
緊張する彼の後ろを、ボク達はきょろきょろ辺りを見渡しながら付いていく。建物も、石畳も、服も、馬さえも白い。遠近感がつかめなくなる程の違和感を感じる。
やがて、神殿の礼拝堂らしき場所に通される。
そこには、純白の法衣を纏った人々が大勢いた。そして、その中でも一際きらびやかな刺繍がされた法衣を纏った男性が近づいてくる。
ボク達の、いや、正確にはクルンちゃんの前に立ち、静かに両膝をつく。涙と鼻水を惜しげもなく垂らしながら、男性は床に平伏して叫んだ。
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