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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)
第4-1節:仕組まれていた掟
しおりを挟むするとそんな中、拘束されている暗殺者のひとりが楽しげに大笑いをする。
「あはははははっ! 裏切り者には死を! それが我らの掟だ!」
「っく! ポプラに何をしたのッ!」
私は怒りを爆発させて暗殺者たちを睨み付けた。
その言動から彼らがポプラに対して何かをしたであろうことは確実。この期に及んでまだ彼女を苦しめようとするその性根と魂胆が気に食わない。
ただ、私の激しい怒りなんてどこ吹く風で、暗殺者は淡々と答える。
「その表現は正確ではないな。何かをしたのではなく、してあったが正しい」
「そんなのどうでもいいっ! 早く詳細を話しなさいっ!!」
私は焦燥に駆られていた。だって急いで対処をしないとポプラの命が尽きてしまうから。
もし手遅れな状態になってしまったら回復魔法は無意味だし、いくら精霊の力を借りたとしても生き返らせることはほぼ不可能。復活を司る精霊は使役が限りなく難しく、少なくとも今の私にはそれが出来ない。
そんな私の心情を嘲笑うかのように、暗殺者は冷たく言い放つ。
「ポプラには暗示がかけてある。もし我らを裏切れば自ら命を絶つようにな。ただし、必ずしも刃物などの道具が使える状況にあるとは限らんだろう? だから呼吸を止める暗示にしたわけだ。窒息は苦しいゆえ、裏切った罰にもなる」
「なんて酷いことを……っ!」
「だが、この暗示のことはポプラ自身も知っている。我らに逆らえなかったのは家族を人質に取られているだけではなく、自分の命もかかっていたからだ」
その言葉を聞き、私は頭を棒で思いっきり殴られたような衝撃を受けて愕然とした。
――バカだよ、ポプラ!
つまり彼女は自分の死を覚悟した上で私を助けようとしてくれたということだ。
本当にこの子は無茶ばかりする。私が言えた義理じゃないけど。ただ、そういう点でも私たちは似た者同士で、だからこそ気が合うのかもしれない。
「……っ……は……」
ポプラは苦しくて余裕なんか全くないはずなのに、私に向かって少し笑ったような気がした。言葉はなくとも私の想いを察したのかも。それも含め、私たちは心が通じ合っている気がしてならない。
それゆえに私の心の中で、暗殺者たちへの怒りが最高潮に達する。
「っ! この卑怯者っ!」
「……フッ、なんとでも言え。自分の命を握られるような縛りなど、我ら陰で暗躍する者にとっては当たり前のようにあるものだ。珍しいことではない」
どことなく自らへの皮肉や愚痴も込めたような口調で、暗殺者は呟いた。
確かにどんな国や世界であっても、その歴史の裏には綺麗事だけでは済まない出来事があったりそれを実行する人たちがいたりする。光があれば必ず闇もあるのだ。
そう考えると、暗殺者たちにも同情する面があることは否めない。
ただ、今はとにかくポプラを助けなければ。必死に想いを巡らせていると、すかさずナイルさんが駆け寄ってきて私たちの横で片膝を付く。
「安心してください、暗示の解除なら私が」
そう言ってナイルさんはポプラの顔の前に両手をかざし、何かの呪文を詠えようとする。
そうだった、彼は死霊祓いや解毒、呪いの解除など穢れを祓うのが得意なんだった。つまりポプラにかけられた暗示の解除だってきっと出来る。
私は希望の光を瞳に輝かせつつ、事態を見守る。
ただ、なぜかナイルさんは途中で呪文の詠唱を止め、困惑したような表情になる。額にはじんわりと汗が滲み、私たちに何をどう説明すればいいのか迷っているような感じさえする。
……なんだか直感的に嫌な予感がしてならない。
「これは……。私でも時間がかかるほど強力な暗示です。しかも解除魔法を使おうにも、それに対する対抗魔法がかけられています。まずはその対抗魔法を無効化しないと……」
「そんなっ!? つまり暗示を解くには何段階も手順を踏まないといけないってことですかっ?」
「そうなります……。しかもこの邪悪な気配、おそらく暗示をかけたのは魔族……」
「魔族だとっ!?」
ナイルさんの言葉を聞き、リカルドが敏感に反応した。
(つづく……)
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