嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
171 / 178
第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第3-6節:ポプラの決断と異変

しおりを挟む
 
 そんな私たちに対し、旗色が悪くなったことを感じた暗殺者アサッシンは慌てふためきながらポプラに向かって叫ぶ。

「ま、惑わされるな、ポプラっ! コイツの話はデタラメだ! お前の家族がそんなに簡単に助け出されるわけがないだろう! もし俺たちを裏切れば確実に家族は皆殺しになるんだぞ! いいのかっ?」

「もうお前を縛るものはない。シャロンを解放してくれ。もちろん、僕の話が真実かどうか、どう捉えるかはお前次第だ。判断はポプラ自身に任せる」

 暗殺者アサッシンの言葉に続き、すかさずリカルドは冷静かつ真顔でポプラに問いかけた。対照的な意見と態度が彼女に向けられ、その場にいる全員が固唾かたずを呑んで推移を見守る。

 でもその沈黙の間は刹那せつなのことで、私がまばたきをした直後には事態が動く。

 ポプラは私を解放し、リカルドの方へ突き飛ばしたのだ。そしてナイフの切っ先を暗殺者アサッシンたちに向けつつ、私をかばうような位置に素早く移動して彼らと対峙する。

 体がよろめいた私をしっかりと抱き締めて受け止めてくれるリカルド。さらにこの状況を見て、阿吽あうんの呼吸でナイルさんやゼファルさん、リーザさんが動いて暗殺者アサッシンたちの身柄を拘束する。

 それからわずかに遅れて兵士さんたちが詰め寄り、彼らをロープで縛り上げた。

「く……くそ……」

 ロープで体を縛り上げられ、床に伏せった暗殺者アサッシンたちはもはや何も出来ず、悔しそうに歯ぎしりをするばかりだった。

 その様子を見て安心したのか、ポプラは持っていたナイフを落としてその場にへたり込んだ。きっと張り詰めていた緊張の糸が切れたんだろう。心も体もこの上なく疲弊しているだろうからそれも無理もない。

 私がリカルドと視線を合わせると、彼は精悍せいかんな顔つきでうなずき、彼女の方へとそっと背中を押してくれた。その優しくて寛大な気持ちに感謝しつつ、私はポプラに歩み寄ってそのかたわらにしゃがみ込む。

「もう安心していいよ、ポプラ」

「シャロン様……」

「今までつらかったね。でもそれも終わり。これからは心の底から笑える毎日を一緒に送っていこう。ポプラのご家族もフィルザードに呼び寄せて、ね」

「怒って……ないのですか……? それに私の罪だって……」

 ポプラは眉を曇らせ、悲しげな瞳を横に逸らした。

 それに対して私はクスッと笑いつつ、彼女の肩を軽く叩く。

「怒ってるわけないでしょ。そもそも私はずっとポプラを信じてたから。それに罪なんて、何度も私を助けてくれた功績で恩赦おんしゃだよ。――それでいいよね、リカルド?」

 私がリカルドの方へ振り向いて問いかけると、彼は苦笑しながら無造作に頭をいた。そして大きく息をく。

「……やれやれ、キミは言い出したら聞かないからな。ま、ポプラの置かれていた事情を考えれば酌量しゃくりょうの余地はある。今後もシャロンの専属メイドとして、しっかり働いてくれるなら全てを許そう」

「うんっ、それでいい! ありがとっ、リカルド!」

「お二方とも……本当に……ありが……とう……ございますぅ……。うぅ……ううう……うわぁああああぁーん!」

 ポプラは様々な感情がこらえきれなくなったようで、大粒の涙をボロボロとこぼしながら号泣した。短い時間の間に色々なことがありすぎて、頭も心も情報を処理しきれないんだろうな。まるで無邪気な子どもみたい。

 そんな彼女を愛おしく思いつつ、私も周りのみんなもその様子を優しく見守る。



 ――でも!

「……あぐっ! が……ぁ……」

 不意にポプラは全身をビクッとさせ、泣き止んで目を丸くした。その瞳に涙の粒を残しつつ、何かを訴えかけようとする顔で私を凝視する。

 さらに左手で喉元のどもとを押さえ、右手を弱々しくこちらへ伸ばしてくる。

 言葉は何も出てきていない――いや、発したくてもそれが出来ないのか!?

 次第に表情は真っ青で苦しそうなものに変わり、わずかに開いた口元からヨダレが垂れたままになっている。

「っ! っ……は……ぁ……っ……く……!」

「ど、どうしたのっ、歩プラっ!」

「か……ぁ……」

 私は慌ててポプラの上半身を抱き留め、必死にその体を揺らした。でも彼女の反応は変わらない。それどころか全身が徐々に弛緩しかんしていって、目つきもうつろなものになっていく。


 まさかっ、これは呼吸がうまく出来ていないっ!?


 彼女の身に何が起きたのか分からず、私も周りのみんなも戸惑いながら騒然そうぜんとする。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました

樹里
恋愛
社交界デビューの日。 訳も分からずいきなり第一王子、エルベルト・フォンテーヌ殿下に挨拶を拒絶された子爵令嬢のロザンヌ・ダングルベール。 後日、謝罪をしたいとのことで王宮へと出向いたが、そこで知らされた殿下の秘密。 それによって、し・か・た・な・く彼の掃除婦として就いたことから始まるラブファンタジー。

処理中です...